ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜 作:Di Gi O
平凡な生活を送っていたこれといって特徴のない日本人女性の主人公。
いつも通り休日に自宅で好物のパンケーキを頬張っていたら喉につまらせドジの連続で窒息死。
死んだと思えば謎空間で白装束の変態集団に魂的なナニカを拘束されてしまう。
このままエロ同人みたいになるかと思ったが、好きだったゲーム、ブルーアーカイブの世界がちらりと見えた主人公は白装束たちが無名の司祭だと気づき、このまま手駒にされてたまるかと必死の抵抗!なんと拘束を自力で解いてそのまま転生してしまった。
そして目覚めたのはゲヘナ学園給食部の厨房。
どういう訳か主人公は全裸で放り出されており、肉体も人型パンちゃんとも呼べる強靱な身体に変わっていた。
しかし目の前にいたのは給食部のフウカとジュリ。
このままでは全裸触手ウーマンとして七囚人の八人目になってしまうと焦る主人公は本能的に触手から催眠ガスを分泌、2人を眠らせなんとか危機を脱する。
そしてひとまず服を入手し、転生直前に産まれていたキャベツの千切り型のパンちゃんと仲良くなった主人公。
しかしフウカが催眠から目覚めた時、主人公は何故かパンちゃんと共にエアロビクスに勤しんでいた…。
ドーモ、ドクシャ=サン。
守秋 透久子(モリアキ スクコ)です。
…あれ、なんか自分の名前が上手く思い出せない…私、誰だっけ?まぁいいか。とにかく。
私は今、仲良くなったキャベちゃん(仮称)たちと共にエアロビクスに勤しんでいました。
しかし楽しい時間はすぐに過ぎるもの。
不幸にも突然乱入してきた黒髪の高級生徒…つまるところフウカに銃撃され驚愕のあまりずっこけてしまいました。
「ひぃいいぃぃ!暴力反対!」
「何が暴力反対よ!こっちは猥褻反対よ!何なの貴方!どこから入ってきたの!?なんでいきなりパンケーキが爆発して全裸の貴方になったの!?なにその触手!?私たちに何するつもりだったの!?」
「ひ、1つづつ!答えるから1つづつ聞いて!ほら!深呼吸!カルムダウン!オーケイ!?」
「すぅ〜…はぁ〜…よし。」
「まぁ素直。」
言われるままに一旦深呼吸するフウカ。もちろん銃はリロードして構えたまま。
「…で、まず貴方は誰。」
「名前はまだn」
「誰?」
「ひぃいいぃ!透久子!守秋透久子!」
「…?なんて?」
「あれ?…透…久…私の名前…なんだっけ…?」
「はぁ?…何、もしかして記憶喪失ってやつなの…?」
「ごめん、それかも…」
「嘘じゃないわね?」
「神に誓って!この世界に神がいるのか知らないけど!」
どういう訳か自分のかつての名前を思い出せない少女。
一度死んでこの世界に転生していると思しき今、前世の名前ということになるから厳密には今の本名では無いのかもしれないが。
これも転生の影響なのだろうか。
「うーん…角とか翼は無いみたいだけど、その触手…ゲヘナに貴方みたいな子、いたかしら…?」
「…あ、そうだ!ごめんなさい、この服、借りてます!私もなんで全裸かは分からなかったけど、さすがにそのままはマズいと思って…。」
「え?あ、そ、そう…サイズ的に多分それ、ジュリ…あぁ、ピンク髪の私の後輩の子なんだけど、その子の服だと思うから。お礼ならその子に言ってあげて。私の隣で寝てたから、そのうち起きると思うし。…で、次の質問だけど。名前…も忘れてるなら、自分のことはだいたい忘れちゃってるのかしら…とりあえず…何で、そこのキャベツ…キャベツ…?たちと踊ってたの?」
\フシュルル…。/
指を指され、「え、俺?」とでも言いたげに触手をもたげさせるキャベツ型パンちゃんたち。
「あぁ、キャベちゃんたちとコミュニケーションを取ってたの。」
「ジュリと同じ名前付けてるし…というか、コミュニケーション?…ソレと??」
\ウシャァ!/
「ソレとはなんだ、ソレとは!」と抗議を上げるような鳴き声を発するキャベちゃんたち。
10cm程のキャベツの千切りの塊が飛び跳ねながら鳴いている様子はパニックホラーのそれである。
「うん、自分でもよく分からないんだけど、敵意は感じなかったし、なんというか、意思疎通できる…気がして。」
「気がして…?自分でもよく分かってないの?」
「うん…元々自分の身体にこんな触手が生えてた覚えも無いし、この子達も触手まみれだから、何か関係があるのかなって…。」
流石に「自分転生者で、ジュリやパンちゃんの事もよく知ってるから多分私もパンちゃんなんだと思う!」と言えばいくらお人好しのフウカでもオブラートに包んで精神科を勧めてくるだろう。
適当な言い訳であたかも今推測しましたという風な物言いをする少女。
しかしここでフウカの脳内に爆発的な妄想が産まれてしまう。
(記憶喪失…謎の女の子…今までなかったはずの触手…ま、まさか…!!)
(たまたま厨房に迷い込んだ子が、ジュリの料理の爆発に巻き込まれてパンちゃんと合体しちゃった!?)
そうはならんやろ。
今の少女の姿を見れば、なっとるやるがいの可能性も捨てきれないのだが。
たちまち頭を抱えダラダラと汗をかくフウカ。
(ど、どうしよう…私、不審者だと思って攻撃しちゃったし…も、もしこの子が本当に被害者だったら、私どうしたら…!?ま、まさか責任を取らされて私とジュリは停学、いや、退学…!給食部は廃部…!)
「…あの…大丈夫…?」
「だだだだだ大丈夫だけど!?」
「大丈夫じゃない時の反応なんだけど!?」
一方少女の方も焦っていた。
(一応警戒は解いて貰えたみたいだけど、ここからどうしよう…仮にフウカには見逃して貰えたとして、この服借りパクしてどこに行けばいいの…?シャーレなら匿ってくれるかもだけど、そもそも今がどの辺の時系列が分からないし…ジュリが居るってことは少なくとも今の1年生はゲーム本編の1年生と同じメンバーのはず…)
普段からあらゆるゲヘナ生を見ているはずの目の前のフウカが自分を知らないと言っているなら、恐らく少女は元からゲヘナにいた生徒ではない。
この時点で誰かの人生を憑依という形で奪ってしまったということは無さそうだ。
そこは安心だが、それはつまり自分は学籍どころか存在を証明する物が何も無い自然発生した不審者ということ。
このまま放り出さればたちまちブラックマーケットに巣食うドロップアウト組の仲間入りである。
運良く河駒風ラブのような人格者にでも拾われればいいが現実はそう甘くないであろう。
というかラブに拾われたら拾われたで災難続き確定である。
気まずい沈黙が流れる。
そして、先に口を開いたのはフウカだった。
「ね、ねぇ貴方…本当に、なんの記憶もないの…?」
「え?…あ、うん。常識的な事は覚えてるけど、自分の名前とか、どこの学校とかはよく分からない…。」
「そ、それなら!行くあてもないでしょうし、しばらくウチで手伝いをしてくれない!?」
「…へ…?」
(このまま放り出してどこかで今あったことを話されて万魔殿の耳にでも入ったら最悪よ!!それにこの子、服もそうだけど銃も持ってないみたいだし…さっきの攻撃でも怪我はしてないみたいだから頑丈みたいだけど、それでもさすがにこのまま追い出すなんて出来ないわ!)
フウカの善性と勘違い、焦りが悪魔合体した結果飛び出した衝撃的な提案。
しかしそれは少女にとって願ってもない申し出だった。
(ま、マジ?私、もしかしてこのまま給食部入りできるの!?毎日数千人分ご飯作るのは気が滅入るけど、それでも推しのフウカとジュリと一緒にほのぼのご飯作りながら青春スローライフが出来るってこと!?我が世の春が来たァァァァーッ!!)
また沈黙が流れる。
手を差し伸べていたフウカが段々汗ばんでくる。
(も、もしかして私、変なこと言っちゃったかしら…?普通に考えて、記憶喪失の子にいきなり自分の部活に入って手伝えって、身寄りのない子の弱みを握って強制労働させようとしてるのと変わらないんじゃ…!?)
フウカが口を開き、やっぱり無しでと言おうとする。
「あ、あの、やっぱり今のなs」
「是非!!!!是非ここで働かせてください!!!!!!」
「声でか!!!」
少女は身を乗り出して両手でフウカの手を握りしめながらブンブンと腕を振る。
腰から生えた触手も嬉しそうにブンブンと揺れ動いている。
「え、ほんとに?ほんとにいいの?自分で言って置いてなんだけど、先に貴方の記憶とか元々いた場所とか…」
「いやいやいや!!!そんなのどうでも良いじゃないですか〜!!だって考えてみて!?もし私がここで自然発生した訳じゃなく、不法侵入した挙句記憶喪失になったんだとしたら、とんでもないイカれ女って事になるじゃん!?つまりそんな奴の記憶なんてどうでもいいってこと〜!ほれよりここで手伝いできる方がずっと重要!!」
「めっちゃ他人事みたいに言うわね貴方。一応自分の話なのよね??」
「細かいことは置いといて!!!そうだ、先輩って呼ばなきゃ!これからよろしくお願いします、先輩!!!」
「え、えぇ…?ほんとにいいのかしら…?」
流されるままのフウカ。いつもハルナに連れ去られるのは本人が押しに弱いのも要因のひとつではないのだろうか。
そして、少女がフウカの手をブンブンと握って喜んでいると。
ベチョッ!
「ひぎゃぁっ!?」
フウカが間抜けな叫び声を上げる。
「へ?…うわ!?な、何で!?私は何も!?」
なんと少女の腰から生えた4つの触手がひとりでに動き、フウカに巻きついて持ち上げていたのだ。
「い、嫌ぁぁぁ!!離して!!!」
「うわぁぁぁごめんなさい先輩!!!こらっ、やめっ、やめろぉぉぉ!!!」
さらに最悪のタイミングでドアが開く。
ガラガラっ。
「フウカ先輩〜…?私、寝ちゃってたみたい…で…」
「ひぃいぃぃ!ネバネバしてるしなんか緑の液体出てる!!いやぁぁぁぁ!!!」
「すぐ離しますから!!すぐ離しますから我慢してください!先っちょだけですから!」
「何が!?何が先っちょなの!?どこに何をどうするつもり!?」
「…」
目の前で自分の先輩が、先程自分たちの目の前に突然現れた謎の触手の変態に縛り上げられ空中でヌメヌメにされている。
その光景を直視したジュリが最初に取った行動は。
「キャァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
当然、絶叫である。
「うわっ!?ジュ、ジュリ!?い、嫌!こっち見ないでぇ!」
「え!?ジュリ!?うわ改めて見ても可愛い!」
スッ。
突然フウカを離す触手。
「ぐぇっ!」
尻もちをつくフウカ。
「はぁっ…はぁっ…な、何するの!?」
「ごめんなさいフウカ先輩!私もよく分からないけど、突然触手が勝手に動いて!」
「えぇ…?べ、別に私、貴方に何もして…いやさっき撃ったか…で、でも、なんでいきなり?」
「わ、分からないですぅ…」
困惑する2人。
フウカは当然、少女本人すら何故触手が暴走するのか分からないのである。
するとそこに割り込んでくる声が。
「な、な、な、ナニしてたんですか2人とも!?フウカ先輩、一体誰なんですかこの方!私という者がいながら、こ、こんな、厨房で、ヌメヌメしてるなんて!」
「ヌメヌメするって言い方やめてくれない!?不本意なんだけど!」
「ま、まさかさっき私がパンケーキを作ってる時にこの人が突然出てきたのもそういうプレイだったんですか!?」
「プレイ言うな!!」
ボケとツッコミを繰り返すジュリとフウカ。
そこに割り込む少女。
「あ、あの〜…ジュリちゃんだよね?その、これは私が悪いの。その、私の触手、うまく制御できなくて。フウカ先輩を勝手に持ち上げてネバネバにしちゃって…」
「はぇ?…そ、そうだったんですか?すみません私、とんだ勘違いを…」
頬を赤らめながら謝るジュリ。
実にいい子である。
「い、いやいや!私がフウカ先輩をヌメヌメしたのが悪いから!謝らないで!」
「ヌメヌメ言うな。」
フウカが呆れ顔で突っ込む。
そうしてようやく3人は落ち着き、とりあえず食堂のテーブルに座るのだった。
「どうぞ、お茶です。」
「ありがとうジュリ。ほら、貴方も。」
「ありがとうございます!」
ジュリが注いでくれたお茶を飲む3人。
特異体質を知っている少女は少し身構えたが、少なくともペットボトルに入った既製品を注ぐ程度は問題ないようだ。
\チュルチュルチュル…/
「ふふ、キャベちゃんたちもお茶おいしいですか?」
\シャー!/
「…当たり前みたいにそのキャベツたちにもお茶あげるのね。というかどこから飲んでるの?」
「触手から吸ってるんじゃないですか?可愛いですね♪」
「そう???」
いつもの顔でげんなりするフウカと笑顔のジュリ。
一方少女の脳内には声が響いていた。
美味。
「美味しいらしいですよ。」
「ほら!やっぱり美味しいらし…へ?」
「言われてみると私も可愛く見えてきたなぁ。確かにブルアカ本編のパンちゃんも変な愛嬌あっt」
「パンちゃんの言葉が分かるんですか!?」
「「声でか!!!」」
「あぁごめんなさい、つい興奮して…」
またしても赤面するジュリ。
生まれたパンちゃんを我が子のように可愛がる母性溢れる彼女としては聞き逃せない情報だったのだろう。
「で、でも!本当にパンちゃんの言葉が分かるんですか!私でも喜怒哀楽くらいしか分からないのに…!」
「喜怒哀楽わかる時点ですごいと思うけど??」
フウカが突っ込む。
「うーん、なんというか、頭の中に響いてくるんですよ。こう、メロンパンを買ってくるのです…的な。」
「なんでメロンパンなの??」
「様式美ですよ様式美。」
ふわっとした説明をする少女。
ジュリは少女の背中で揺らめく触手をまじまじと見る。
「そ、そういえばその立派な触手もパンちゃんの触手とよく似てますし…貴方は一体…」
「それを考えるために今座ってるんでしょ。…まぁ、私も検討がつかないけど…。」
「ほんと、何なんでしょうね私…。」
「ま、とりあえずは改めて自己紹介しましょ。まず私は愛清フウカ。ゲヘナ学園高等部2年生、給食部の部長よ。…まぁ、給食部は2人だけなんだけど…。」
「私は牛牧ジュリ!ゲヘナ学園高等部1年生、給食部所属です!今そこでお茶を啜ってるキャベちゃんは私が産んだんです!」
「産んだって言い方やめない?合ってるんだけどさ…。」
自己紹介してくれる2人。
(ふぉぉぉ!疑ってた訳じゃないけど、やっぱり本物のフウカとジュリ…!私、ほんとにキヴォトスに来たんだ…!)
興奮する少女。
「で、貴方は…記憶喪失なのよね。」
「はい…。」
「うーん…とりあえず、今まで起きたことを振り返ってみませんか?もしかしたら、正体の手がかりが分かるかもしれませんし!」
「…まぁ、それくらいしかなさそうね。身元も分からない状態で万魔殿に転校生だとか手続きがどうとか言う訳には行かないし…。」
改めて振り返ることにする。
まず、最初に考えたのがフウカの考えていた可能性。
少女はたまたま厨房に迷い込んだ一般人であり、ジュリのパンちゃん生成に巻き込まれ融合したという説。
しかし。
「…普通に考えて、どんな目的があって給食部の厨房に忍び込んでくるんでしょう…。」
「一応監視カメラもあるので、記録は残ると思いますが…。」
「…後で風紀委員会に見せてもらおうかしら?でも、どちらにせよよくよく考えるとそれはありえない気がしてきたわね…。」
いくら料理に集中していたからと言って、皿の上に盛り付けたパンケーキの爆発(?)に巻き込まれるほど近づいていたなら直前に気づいただろう。
それに、給食部に忍び込むのなんて美食研究会くらいしかまともな動機がないだろう。
美食研究会の動機もまともじゃないとか言ってはいけない。
次に考えたのが、触手は自前で、本当に偶然パンちゃん生成のタイミングで食堂から厨房に迷い込んできた説。
しかしこれも筋が通らない。
「結局これも監視カメラを見ればわかる話なんですよね…。」
「やっぱり私たちが気づかない間に外から紛れ込むのは無理だと思うわ…。」
「うーん…。」
そして最後に考えた説。
もしこれが合っていた場合、ジュリは人類史に名を刻む偉業を成し遂げた事になる。
「…これは、もしもの話なんですけど…もしかしたら、貴方はあの時作ったパンケーキ、なのかもしれません…。」
「…パンケーキ…パンちゃん、ですか?」
「…にわかには信じ難いけど…今のところ、1番説得力があるのはその説よね。…いや、パンケーキ作ってたら化け物になる特殊能力持ちがたまたま人型を作っちゃったって、それが1番説得力あるってどうなってるの?」
そう言われても仕方ない。
あの時間違いなく厨房に外から人は誰も入ってこなかった。
そしてジュリはパンちゃんが産まれる可能性のある調理法をしてしまった。
そしてパンケーキが爆発し、煙が晴れた時には割れた皿と机の残骸の上で少女が佇んでいた。
どう考えてもこれしかないのである。
「…つまり、この子は記憶喪失というよりは…」
「…私、赤ちゃん…ってコト!?」
「貴方みたいな語彙の赤ん坊がいるもんですか…というか本当にパンちゃんなの…?ヘイローあるし…。」
首を傾げるフウカと少女。
そんな時、ジュリはプルプルと震え出した。
「…す」
「…?」
「いです…!」
「なんて?」
「すごいです!!!人型のパンちゃんだなんて!!!」
「「声でか!!!」」
ジュリは身を乗り出して少女の手を掴みブンブンと上下に振る。
「もしそれが本当なら、私は初めてコミュニケーションが取れるパンちゃんを作れたって事ですよね!!感激です!!!今までのパンちゃんもとっても可愛かったけど、どうしても何を考えてるかまでは分からなくて…!」
「な、なるほど…そういう事なら私、多分パンちゃんたちの考えてること分かるから、通訳できると思うよ。」
「す、す、凄すぎます!!フウカ先輩、是非この子には給食部に入ってもらいましょう!!」
「えぇ…いや、私としてもこの子とその方向で話を進めてたから願ってもないんだけど…ほんとにいいの?」
「私としてはほんとに有難いです。行くあても無いですし、聞いた話だと銃も学籍もない私は色々ヤバいんですよね?ならここで手伝いしながら自分探しする方が有意義かなって…。」
「というか考えてみてくださいフウカ先輩。もしこの子が記憶喪失じゃなく、そもそもここで産まれたというなら…」
「この子は私の娘ちゃんって事になりません?」
「何を言ってるの???」
フウカがいつもの顔でツッコミを入れる。
「だってだって!この子は状況から考えて完全に私のパンケーキが元になって産まれた子じゃないですか!私が手ずから丁寧に料理したパンケーキからこの子が産まれたならそれはもう私が産んだも同然ですよ!」
「いや確かにそうかもしれないけど!!倫理ってもんがあるでしょうが!貴方これから万魔殿に説明しに行く時に『私が産みました♡』なんて言うつもり!?」
「その通りですよ!!」
「なんで食い気味なの!?」
言い合う二人。
一方少女本人はと言うと。
「…私が…ジュリの、娘…?」
「はい♡ほら、ママって呼んでみてください?♡」
「…えーと…ま、ママ?」
「キャァァァァァァァァァァァァァ!!!♡」
「声でか。」
「待って!?当たり前みたいに受け入れようとしてるけどほんとに良いの貴方!?そもそもいくつなの!?状況からだけで判断したら確かに0歳かもしれないけど、見た目とか発育がどう見ても私たちと同じくらいじゃないの!?」
「うーん…自認は成人女性ですし、どちらでもとか…。」
「自分の意見を持ちなさいよ!?」
「決定です!この子は私が一生懸命育てます♡」
「え、えぇ…?本当にこれでいいの?」
「うーん…まぁジュリが楽しそうですしいいんじゃないですか?私も給食部に入りたいですしママ呼びで受け入れて貰えるならウィンウィンですよ。」
(ま、ま、マジか!!!大好きな給食部に入れるどころか推しのジュリの溺愛ゲット!?うっひょぉぉぉぉぉ!!!!バブってオギャ活しよ!!!)
きったねぇ内心が声と表情に出なくて良かったものだ。
ジュリはともかくフウカには撃たれていた事だろう。
「そうだ!ママの子なんだから名前をつけないと!」
「もうママの子定着するのね…まぁ、確かに名前は必要だけど…。貴方、何か希望はある?」
「えぇ、名前ですか…うーん…」
「やっぱり私の最高傑作のパンちゃんですし、『パンナ』ちゃんとか…」
「いや〜…なんか最近似たような名前の子が実装された気がするのでキャラ被りはちょっと…。」
「何の話ししてるの???」
首をひねる少女。
前世の名前もなぜか朧気になってしまった今、自分を表す名前という物がまるで思いつかないのである。
この個性溢れる生徒ばかりのキヴォトスで、自分を表現出来る名前。
どうすればいいのだろうか。
さぁ、目覚めよニスロクよ。失楽園の反逆者よ。
「…!」
突如脳内に浮かんだ文。
何か、どこかで聞いたこの言葉。
よく分からないが、これはハッキリ自覚できる。
このニスロクとかいう名前は、自分に与えられた名前だ。
「…ニスロク。」
「…はい?」
「よく分からないけど。自分はニスロクと名付けられた、そんな気がするんです。」
「…ニスロクちゃん、ですか?…でもなんか堅苦しいというか、ちょっと硬派すぎませんか?」
「まぁ、確かに毎度ニスロクって呼ぶのは違和感があるかも…うーん…。」
「…ニロちゃん。ニロちゃんなんてどうでしょう!響きも可愛くないですか?」
「ニロ…ニロ!いいね!私の名前はニロ!」
「苗字はどうするの?」
「そっちはやっぱりパンちゃん由来にしましょう!パン…小麦…麦…焼麦…パン…麦焼!麦焼なんてどうですか?香ばしくていい響きでは?」
「ちょっと珍しい気もするけど、まぁもろにパンケーキに関連付けるよりはいいかもね。」
「うふふ、決定ですね!それじゃあ今日からこの子の名前は…!」
「麦焼ニロ…私の名前は、『麦焼ニロ!』」