ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜 作:Di Gi O
フウカにダンシングタイムを発見された少女はひとまず対話によって信用を得たものの、感情に呼応したのか暴走した触手が勝手にフウカをヌメヌメしてしまいパニックに。
さらにその現場をタイミング悪く目覚めたジュリに目撃されカオスな状況に。
なんとか落ち着きを取り戻した一行は食堂で少女の素性を考察。
その結果、少女はジュリが生み出した『人型パンちゃん』である事がほぼ確定的となった。
そんな少女に対し母性を抑えきれないジュリと、何だかんだ面倒見がいいフウカの提案によってひとまず給食部預かりとなることが決まった少女。
本人の朧気な記憶とジュリの提案によって、『麦焼ニロ』と名付けられたのだった。
「それじゃあ改めてニロ、貴方にここについて説明するわね。」
フウカが微笑みながら解説モードに入る。
「はい、お願いします!」
「まずこの都市はキヴォトスで、いくつもの学園が集まってできた学園都市。その中でも一際大規模な三大校のひとつ。それが私たちの所属してる『ゲヘナ学園』よ。自由と混沌を重んじる校風で、校風通り所属してる生徒は皆好き勝手で暴れ回るのが好きな子が多いわ。この食堂もよく爆破されたり私も誘拐されたりするから、その時は助けてね?」
「善処します…。」
「まぁそれは置いといて…これから貴方に仮ではあるけど入部してもらうのが私たちの部活、『給食部』よ。その名の通りゲヘナの生徒たちに給食を提供するのが主な活動。ただもう察してると思うけど、三大校に数えられてるうちの総生徒数は数千人、下手をすれば5桁に届く人数なの。例え確実に全員が給食を食べに来ないんだとしても、毎日全員分作るのがうちの…いや、私のモットー。だから貴方にも苦労をかけるけど…」
「いやいや、それはむしろウェルカムです!拾ってもらった恩返しができるなら安いもんだし、私も料理好きなので!」
「そ、そう?えへへ…そう言ってくれると嬉しいわ。」
はにかむフウカ。
可愛い。
さすがはゲヘナの良心である。
「こほん!それで、仮入部するにあたってまず貴方がしなきゃ行けないのは、学籍を手に入れることよ!」
「学籍…。」
「はい!ゲヘナの部活に所属するには当然ゲヘナの学生じゃないとダメなのですが、それを差し引いても学籍ってとっても重要なんですよ!」
フウカの解説にジュリも割り込んでくる。
「ゲヘナだけじゃなくキヴォトスにおいて、生徒の学籍とはそれ自体が存在証明なんです!いろんな免許を取るのはもちろん、電子マネーを使うのにも、色んな行政手続きをするのにも、口座を開くのにも!とにかくキヴォトスで子供が何かをするには身分がないといけないんです!」
「なるほど…ちなみにもし学籍無しでキヴォトスを練り歩いたら…。」
「まず1日目でチンピラと不良に袋叩きにされるわね。」
「まともな場所には所属出来ないでしょうから1文無しになりますね。」
「良くてブラックマーケットでその日暮らし、悪けりゃ誘拐じゃないかしら?身分証明ができない以上、ヴァルキューレに捜索願いとかも出せないし、出してくれる人もいないし。」
「殺伐!!!」
なんと恐ろしきマッポーが如き治安。
しかしこんなイカれた内情だからこそ生徒たちは銃を持ち歩いて自衛するのである。
「まぁそうならない為に今から学籍を作りに行くのよ。心配しなくても貴方を放り出したりしないわ。」
「そうですよ!ママとパパにぜーんぶ任せておいてください!」
「もしかしなくてもパパって私なの?やめてくれない?」
「えぇ?いいじゃないですか〜。ママがいるのにパパがいないなんてニロちゃんが可哀想ですよぅ。…はっ!まさかフウカ先輩は未亡人フェチ…!」
「誰がよ!!!」
「それで、具体的には私はどうすれば?」
ニロが首と触手を傾げる。
元々先生…もといブルアカのプレイヤーだった記憶はあるものの、ゲーム内で描写されていない細かい内情は知らないのだ。
メインストーリーを一通りみた程度のパンピーだが、果たして学籍を新しく手に入れた生徒はアリス以外にいただろうか。
というかアリスですらヴェリタスによる細かい描写を飛ばした不正入手ではなかったか?
「とりあえず一緒に来てくれる?大丈夫、うちの生徒会はなんというか…大雑把だから。心配しなくても変なことしなければすぐに手続きは終わるわよ。」
「私の存在自体が変なんですけど大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫ですよニロちゃん、ゲヘナの生徒会…『
「実力のある天才児とパンケーキから産まれたバケモンの天災児って天と地の差がありません?」
「うふふ、最初は全裸でしたし、月とすっぽんぽんですね!」
「やかましいわ。」
「それでは万魔殿に、レッツゴーです!」
「大丈夫かなぁ…。」
「あ、キャベちゃんたち。留守番よろしくね。」
ニロはしゃがみ込んで足元の数体のキャベちゃんに命令する。
キャベちゃんたちは触手を蠢かせながらニロに思念波を返す。
Okey dokey.
「え、マ〇オ!?」
それから給食部の食堂を出て、本校舎の廊下を歩く3人。
しかし、その姿を周りの生徒たちは怪訝そうな顔で見つめながら小声で喋っていた。
。。。。。。。。。。ヒソヒソ…
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。ヒソヒソ…
。。。。。。。。。。。。。。。。。。ヒソヒソ…
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。ヒソヒソ…
「…あの…なんか…凄く見られてる気がするんですけど…。」
ニロが周りをチラチラと伺いながら廊下を歩く。
「まぁ…仕方ないというか…ニロのその触手はゲヘナでも珍しい…というか見たことない特徴だから…。」
「うちのニロちゃんが可愛くて皆注目してるんですよ!」
「なんだそういう事かぁ〜。」
「貴方たちのそのポジティブ思考どこから出てきてるの???」
フウカの呆れたツッコミもつかの間。
3人の前にガラの悪そうな生徒が数人歩いてくる。
「オイオイなんだァ!?見ねぇ顔だなお前?」
「なんだその腰の気持ち悪ぃの?特殊メイクかふざけやがってよぉ〜?」
「タッパと胸はそこそこある見てぇだけどよぉ、見るからに1年坊の癖してよォ〜、ウチらに上納の品もねぇってのはどういう事だァ?」
道を塞ぐ5、6人のチンピラ。
手にはハンドガンやショットガンが当然のごとく握られている。
「うわぁ、絡まれた…。」
「な、なんですか貴方たち。うちの子になにか用ですか?」
フウカは面倒そうに顔を歪め、ジュリはニロを腕で引き寄せ庇うようにしながらチンピラを睨む。
「おいおい聞いたか!?ウチの子だってよ!」
「お前も1年だろ?どうみたって同級生じゃねーか!頭おかしいんじゃないのか?」
「ママのおっぱいはおいちかったでちゅか〜?ぎゃははははは!」
下品な笑い声と煽りで茶化すチンピラたち。
そんないかにもな三下ムーブをかます不良たちに対し、ニロは何を思うのか。
(うぉおおおぉぉお!生のゲヘナモブだーっ!!!!!)
呑気なものである。
(いやぁ、ブルアカ本編だとモブちゃんと言えば正義実現委員会の子とか、クロレラ観察部の子達がえっちで可愛いから注目されがちだけど、私としては各校のモブも好きなんだよねぇ!なんというか、ある意味では実装されてる生徒よりもその学校を体現してるって感じがサ!いやぁいかにもな治安の悪さ!露出の多さ!たまんね〜!)
ジュリの腕の中で触手をゆらゆらと揺らめかせながら目を輝かせるニロ。
しかしジュリにはその目が涙目にでも見えたらしい。
「ちょっと貴方たち!うちの子が泣いちゃってるじゃないですか!脅かさないでください!」
携帯していたショットガンを構えながらぷんぷんと怒るジュリ。
しかし全く覇気がないせいか歯牙にもかけられないジュリ。
「はぁ?どこが泣いてんだよ?イカれてんのか?」
「変なこと言ってねぇで、ここを通るなら通行料寄越せや通行料!」
「ウチらが優しいうちにさっさと金出すんだな、マヌケ!」
「はぁ…どうしたら…私今あんまり持ち合わせないし、銃撃戦もしたくないんだけどなぁ…。」
フウカがため息をつく。
そんな時、ニロがジュリの手の中からすっと抜け、2人を庇うように前に立つ。
「え?ニロちゃん?」
ジュリの困惑の声も意に介さず、ニロは顔を歪めながら言う。
「…ちょっと貴方たち、いい加減にしてよ。私たち今から万魔殿に行かなきゃ行けないの。さっさとどいてくれない?」
(モブちゃんは可愛いけどウチのフウカとジュリママを困らせるのは許せんねぇ…。というかよく考えたら私、フウカに撃たれた時も怪我はしなかったんだよね。もしかして私、めちゃくちゃフィジカルギフテッドなんじゃない!?)
どうやら自分の力を過信しているようだ。
しかし忘れてはいけない。
サブマシンガンの数十発程度のダメージは、そもそもヘイローを持っていればそれだけで大したことがないのである。
つまり…。
「んだテメェ!」
ズドンッ!
「痛あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
「ニロちゃぁぁああぁぁぁあん!!?!?」
1発土手っ腹にかなりの至近距離でぶち込まれたショットガンの散弾をモロにくらい、発狂しながらのたうち回るニロ。
中距離から撃たれ多少威力も減衰した
どちらの方が痛いかは明白である。
「は、はぁ?なんだこいつ…」
「じ、自信があるから出てきたんじゃねーのかよ…?お、おい…。大丈夫か…?」
ヌチャッ!ビタンッ!ビタンッ!
「ひぎゃぁあぁぁぁあぁぁぁぁ!?痛い痛い痛い痛い!!!!しぬううぅぅううぅぅううぅ!?」
「に、ニロちゃん!落ち着いてっ!大丈夫ですよ!ほら、一緒に息を吸って、吐いて!ひっひっふー!」
「ジュリ、それ出産の時するやつ。というか大丈夫?ニロ。」
触手を床にビタンビタンと叩きつけながら泣き叫ぶニロ。
まず大前提としてカツアゲまがいのことをしている不良が悪いのは間違いないのだが、それにしたって平和ボケした現代人メンタルのニロが堂々と銃口の前に体を晒して挑発したのも迂闊すぎる。
因果応報である。
しかし、不良にとって今の行動はこの後最悪の結果をもたらすこととなった。
「よ、よく分かんねえけど…お前らもこうなりたくなかったらさっさと金出せやコラ!」
「気持ち悪い触手しやがって!というか銃すら持ってねぇじゃねぇか!舐めてんのか!?」
「ひ、酷いです!この子はまだ産まれたての赤ちゃん同然なんですよ!謝ってください!」
「はぁ!?イカれてんのか!?どう見てもうちの高校生じゃねぇか!?」
「ちょ、ちょっとジュリ!もう面倒だから言う通りにしましょ?ほら、ちょっとは持ち合わせあるから…。」
フウカがジュリを制止しつつ、懐から財布を出そうとしたその時、ニロがさらに叫び声を上げる。
「痛い痛い痛い!!!このままじゃ死んじゃうよぉおぉ!!!『助けて』ぇええぇぇええぇぇ!!!!!!」
その声は、よりによって。
思念波という形を取り、彼女の同胞の元へと届くことになる。
…ドド…
「うるっさ!!!クソッ、てめぇ!ダウンしてるなら大人しくしとけや!殺されてぇのか!?」
不良が苛立ちながら泣き叫ぶニロに銃口を向ける。
「ニロちゃん!くっ、辞めてください!どうしても撃つなら私が相手になります!」
…ドドドド…
「ちょっとジュリ!あぁもう、やるしかないの!?」
フウカも説得を諦め、愛用のSMGを取り出す。
「お、喧嘩かぁ?やれやれー!」
廊下を素通りしようとしていた一般生徒たちが集まってくる。
…ドドドドドド…
「…あぁ?おい、なんか聞こえねぇか?」
不良の1人が銃口を少し下げて呟く。
「はぁ?何言ってんだ?こいつの命乞いがうるさくてそれしか聞こえねーよっ!」
もう1人が笑いながら足元で転がるニロの触手を蹴り飛ばす。
「ぎゃんっ!」
「ニロちゃん!もう許しません!!!」
ズドンッ!ズドンッ!
ジュリがショットガンを発砲。
「痛っ!くそっ、てめぇ!やりやがったな!!」
被弾した不良が負けじと撃ち返す。
ズダダダダ!ズドンズドンッ!
「もぉぉ!!なんでこんな面倒事になるのーっ!」
叫ぶフウカ。
ドドドドドドドド…!
「行け行け!撃て撃てー!ぎゃはははは!」
野次馬がヤジを飛ばしながら笑う。
「ね、ねぇ。なんか食堂の方の廊下から来てない…?」
音が近づいてくる方向を見て不安そうな声をあげる一般生徒。
ドドドドドドドドドドドドドド!!!!
「お、おい!!!見ろ!!!何だあれ!?」
銃撃戦を繰り広げていた不良の1人が叫ぶ。
「あぁ!?うるせぇよ、今戦闘中…で…。」
ショットガンを持っていた不良が叫ばれた方向を見て絶句する。
「…あれ!?あの子たちは…!?」
ジュリが口を手で抑えながら驚愕する。
「…はぇ…?」
フウカが呆然としながら自分が歩いて来た廊下を見る。
\フシャァアァアアアァァアァア!!!!!!!/
土煙を立てながら廊下を爆走してきたのは。
ジュリが生み出したキャベツの千切り型パンちゃん、『キャベちゃん』の群れだった。
「「「「「「ぎゃああああぁあぁあぁぁあぁあ!?」」」」」」
その場の全員が
パンピー同士の喧嘩程度の経験しかない一般生徒たちにとって、クトゥルフめいたおぞましいビジュアルの触手生物が砂埃を上げ自らに向かってくる光景は、まさしくトラウマを植え付けるに十分足るカオスなのである!
「いやああぁぁぁぁこっちこないで…あれ?」
ヤジを飛ばしていた一般生徒が涙目で頭を抱えるが、キャベちゃんたちはそれに目もくれず走り抜けていく。
最もパンちゃん族に目があるかは不明だが。
なんにせよ目標は1つの集団のみ。
今まさにご主人たちを襲っている不届き者たちのみである。
「うわぁあぁああぁあ!?なんだあの化け物!?」
「クソッ!!なんなんだ!撃て撃て!!」
ズダダダダダダ!!!!!
やたらめったらとばら撒かれる弾丸。
しかし元より皿の上に収まるほどのキャベツの千切りから産まれた小柄なキャベちゃんたちにとって、連携もまるで取れていないヤンキーたちのヤケクソじみた弾幕など、まさしく『
シュババババババ!!!!!
「はぁぁぁぁ!?何で避けられ…うわぁぁぁぁぁ!?」
30発。マガジンの弾を撃ち尽くした不良の1人が叫んだのもつかの間。
なんと高速接近したキャベちゃんが全身の触手をロープめいた動きで不良へと伸ばした。
その触手は瞬く間に不良の手からサブマシンガンを奪い取り、そのまま胴体へと巻きついて締め上げる!
「ぐぇっ!?じゅ、銃が!?ひぃっ!?」
焦る不良。
自分は一体どうされてしまうのだろうか。
まさかこのまま訳の分からない化け物に絞め殺されるのか?
嫌だ。ただパンピーにカツアゲしただけなのに、こんな殺され方は理不尽だ。
自然と命乞いをしようと口が開く。
しかし、その生物(?)が取った行動は予想のはるか斜め上を行くものだった!
「た、助けtもがァ!?」
大きく開かれた口に触手が4本差し込まれ、開口器のように強制的に口腔を開かせる!
「
不良は縛り上げられた四肢を必死に動かして抵抗しようとする。しかし全く動かせない。
何たる化け物めいた膂力!
口に差し込まれた触手はぬめり、しかし弾力も凄まじく噛み切ることもできない。
そして…。
\フシャァァァァ!!/
ジュブルッ!!!
「がぼぉっ!?」
「ひっ、ひぃいいぃぃぃい!?」
隣で同じように拘束されていた不良のひとりが、仲間の凄惨な状況に悲鳴を上げる。
なんとキャベちゃんは口を開かせた不良の口内へ、自らの体をねじ込んだのである。
さながらその光景は、パニックホラー映画で人間に寄生しようとするエイリアンそのもの。
「もげぁっ!がぼっ!ぎっ!がっ…ごぼぇっ…ぐ…げ…」
暫くビクンビクンと全身を震わせていた不良は、やがて白目を剥き、涎と涙を垂れ流しながら動かなくなる。
仲間の不良数人は拘束されたまま涙を流しながら叫ぶ。
「う、うわぁあああぁぁぁぁあぁあ!?」
一方のニロ本人はというと。
「ひぐっ、えぐっ…いたい…痛いよぉ…」
なっさけなく這いつくばったまま号泣していた。
前世では味わったことのないような激痛を味わったのだ。仕方なくはある。
自分から調子に乗って喧嘩を売った挙句返り討ちにあったという現実がなければ同情できたものだが。
そして問題なのは未だこの場で起こっている状況にまるで気づいていないことである。
イートミー…
「うぅ、せっかく転生してこれからほのぼのスローライフを送れると思ってたのに…こんな情けない退場だなんて…ジュリママ、フウカパパ…先立つ不幸をお許しくださいぃ…」
勝手に死ぬつもりになっているニロ。
散々ブルアカやってたならヘイロー持ちの恩恵くらい理解しているだろうに。
イートミー…イートミー…
「…?何…?さっきから叫び声以外に変な声が…これって、パンちゃんの声?」
ようやく気づいたようで、目をつぶり蹲っていたニロはようやく目を開いて目の前の光景を見る。
ベチョッ!ウジュルッ!ジュブッ!
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!助けて!助けコボぁっ!!!!!」
「悪かった!!もうカツアゲしないから許しグべァ!?」
「私とジュリも襲われてるんですけどおぉおおおぉぉぉ!?」
「やんっ♡ちょっとキャベちゃんたち、そこはだめっ…やっ♡あっ♡」
「ナニしてんのよぉおおぉおおぉぉぉおおぉ!?」
「…どういう状況?」
ニロがようやく現実を受け入れた今。
目の前には筆舌に尽くし難い光景が広がっていた。
既に野次馬たちはほとんど逃げ、残っている数人は腰を抜かしたままへたり込んだり赤面しながらスマホで動画を撮っていたり。
襲ってきた不良たち数人は全員が口にキャベツのような塊を頬張ったまま白目を剥いて気絶している。
そして何より。
「ちょっ!こっ、こらぁっ!離しなさい!離しなさいよぉっ!」
「やんっ♡こぉ〜らっ♡キャベちゃんたち、そういう事は帰ってから…♡」
「ちょっと楽しんでんじゃないわよぉおおぉぉぉ!?」
「た、たたた楽しんでなんていませんがぁっ!?/////」
\フシャァァァ…/
フウカはキャベちゃんに縛り上げられ胴上げのように掲げられている。
そしてジュリはなぜかフウカや不良より遥かにヌメヌメにされながら袖やスカートの隙間から触手を差し込まれ全身を這い回られていた。
その冒涜的な光景を見たニロは、魂の雄叫びを上げる。
「なしてそげにどすけべえっちばい!!?!?」
「なんて!!?!?」
「あ、嫌、違います違います!というかなんでキャベちゃんたちが!?こ、こらーっ!やめなさい!」
正気に戻ったニロはキャベちゃんたちに命令を送る。
途端に触手を動かすのをやめてジュリとフウカを降ろすキャベちゃんたち。
「ひゃっ!?…はぁ…はぁ…わ、訳わかんないもう!!なんでこんな事になったわけ!?」
フウカは尻もちをついたままプンプンと怒る。
「やんっ!…うぅ、ちょっと名残惜しいです…。」
「何がよ!!?アンタそんな趣味あった!?」
ジュリは女の子座りをしながらうっとりと顔に手を当てる。
\シャァァァ…/
フウカとジュリを襲っていたキャベちゃんたちはなぜか満足気に触手をツヤツヤさせながら食堂へ戻って行った。
「2人とも無事ですか!?ごめんなさい、私にもよく分からないんだけど、助けてって叫んだらあの子たちが来ちゃったみたいで…。」
「あ〜…いや、結果的にまぁ助かったのは事実だからいい…いや、良いかなぁこれ…大惨事よ…?」
フウカはいつもの呆れ顔をしながら振り返る。
そこには。
「…。」
ピクっ。ピクピクっ。
数人の不良が白目を剥いて涎と涙を流しながら仰向け、うつ伏せで倒れ込んでいる地獄絵図が広がっていた。
「これ…どうするの?」
「どうすると言われましても…。」
「そういえばこの人達を襲っていたキャベちゃんたち、どこに行ったんでしょう?」
「えぇ?さっきの子達と一緒に食堂に戻ったんじゃないの?」
「でも来た時は数十体いたと思うんだけど…あれぇ?」
「…ま、まさか…口の中に入って、そのまま…。」
「そ、そういえばパンちゃんは自分を食べてもらおうと口の中に飛び込む習性がありました…。」
「あぁ…そういうこと…。」
フウカは遠い目をする。
どうやら半数のキャベちゃんたちはその習性から不良たちの口に自らをねじ込み、生涯を全うしたようだ。
(脳内に流れてきたイートミーってそういう事かぁ…)
ニロは納得する。
「うぅ、ベチョベチョ…流石にこのまま万魔殿に行くのは良くないわね…一旦着替えてきましょうか。」
「うふふ、ちょっと恥ずかしかったけど、キャベちゃんたちの愛を感じました…♡」
「ジュリママってそういうプレイ好きなの?」
「ぷ、プレイじゃありませんっ!母子のコミュニケーションですよ♡」
「それをプレイって言うのよ…。」
3人は談笑しながら給食部へと戻っていく。
「な…何だったんだ…。」
最後まで腰を抜かしながらも野次馬精神で動画を撮影していた一般生徒。
この後この少女はSNSに動画をアップしたものの、あまりに現実離れした光景とその凄惨な絵面から、見たものにはAI生成扱いされ、数時間も立たないうちにセンシティブなコンテンツとして扱われ投稿を削除されてしまうのだった。
ゲヘナ学園、風紀委員会。
混沌渦巻くゲヘナという学校の中で、最も、そして唯一と言っていい規律を重んじる集団。
自らの欲望に身を任せ暴れ回る不良たちを、信念を貫くためちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返す武闘派治安部隊である。
当然この学校では日々トラブルが絶えないため、今日も激務に追われていた。
「行政官、報告が!第46-B地区にて乱闘騒ぎが発生しました!如何しましょう!」
「やれやれ…待機中の第18部隊から20部隊を派遣してください。容疑者の速やかな確保の後、こちらへ押送を。」
「了解しました!」
「すみませんアコ行政官、こちらの万魔殿への予算申請案なのですが…。」
「あぁ、そちらは既に修正し印刷済みです。これをタヌキ共の元へ持って行って置いてください。」
「分かりました!ありがとうございます!」
当然風紀委員会の仕事とは不良の鎮圧だけではない。治安だけでなく学校の風紀を守るため、行政に関する仕事もある程度請け負っている。
そういった業務の最終判断や統括を請け負うのが行政官たるこの少女、天雨アコである。
「はぁ…毎度のことですが、トラブルが絶えませんね…。」
アコは自分で淹れたコーヒーを飲みながら独りごちる。
風紀委員会の幹部たるメンバーは4人。
ゲヘナ最強、風紀委員長空崎ヒナ。
実働部隊の切り込み隊長、銀鏡イオリ。
風紀委員会の救護担当、火宮チナツ。
そして風紀委員会No.2たる行政官、天雨アコ。
この4人が風紀委員会を回している。
しかしヒナは書類仕事もそつなくこなしはするものの、日々ゲヘナの不良たちの殆どを単身で飛び回り制圧しているため身体的疲労が凄まじく、あまり頼る訳には行かない。
イオリは書類仕事はできないことはないがそれでもヒナやアコ程は効率が良くなく、さらに幹部の中では武闘派な為現場への派遣が主な仕事。
その為書類や一般業務はチナツとアコ、その他の一般風紀委員で回すしかないのである。
「麗しの委員長は出張中、イオリはともかくチナツも人手不足で現場への出撃中。…これだけの治安の悪化、連邦生徒会長が失踪したというのはあながちデタラメという訳でも無さそうですね…。」
無論ゲヘナは元から治安が終わっている地区代表ではあるのだが、それにしても幹部がほぼ全員別の現場へ駆り出される程の事態は今までにも無かった。
何か、キヴォトス全体を巻き込む事態が起きる、そんな気がする。
「はぁ…このままではまた委員長のお手を煩わせる事態に…私が何とかしなければ…。」
そうアコが改めて自分に気合を入れた時。
ドタドタドタっ…
慌ただしい足音が迫ってくる。
そしてバンと扉が開かれ。
「ぎょ、行政官!緊急事態です!」
叫ぶ一般風紀委員。
「…はぁ。今度はなんですか騒々しい…幹部と主要部隊は全員出撃中です。相当な事態ではない限り、これ以上は人員は動かせませんよ。」
「そ、それが…!」
「本校舎通路のど真ん中で、不良たちが謎の化け物に触手プレイされているとの通報が!!!」
「なんて?」