ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜 作:Di Gi O
誠にありがとうございます!
自分の筆の乗る限りは書き続ける所存ですので駄文続きとなりますが今後ともよろしくお願いします!
〜前回のあらすじ〜
フウカとジュリからキヴォトスについての最低限の常識と、やるべき事を教えてもらった主人公、ニロ。
2人の提案でまずは学籍を得るべく万魔殿へと向かうが、そこはゲヘナ学園。
当然のごとくチンピラたちに絡まれてしまう。
調子に乗ったニロは自分から前に進み出るがショットガンで撃たれあっけなく撃沈。
激痛のあまり助けを求めるとなんと現れたのは留守番していたキャベちゃん軍団。
あっという間にチンピラともののついでにフウカとジュリをヌメヌメしノックアウト。
ドレスコードが終わり散らかした2人は着替えるために給食部へと戻り、準備をして再度出発する。
一方通報を受けた風紀委員会、天雨アコも事態を認知したようで…?
「…今監視カメラを確認しました。確かに、ヌメヌメされていますね…被害に遭っているのは不良数人と…これは給食部の方々では?」
アコは困惑から立ち直り、報告を受けた箇所の監視カメラを確認していた。
その映像には給食部にカツアゲをかけ、発砲からの乱戦後、ビクビクと震えながら気絶している不良の姿まで全ての一部始終がしっかりと映っていた。
「はい、通報の内容とも一致しています。給食部の方々は正当防衛でしょうし、建物や当事者以外への人的被害も出ていない上、戦闘も終了しているので緊急出動する必要は無いと思われますが…。」
「…そうですね。現在はほぼ全ての部隊と幹部が出払っている状況、無駄に人員は割けません。とりあえず気絶している不良をすぐ回収して尋問室へ。それと念の為手が空いてからで構わないので、現場にいた被害者にも聞き込みをしておいてください。…ん?」
「分かりました。ではこれで。」
報告を完了した風紀委員は退室しようとする。
しかし、制止の声が。
「待ってください。」
「?どうかされましたか?」
「いえ、この映像の端っこ、見切れていますが…この方、ゲヘナにこんな触手のついた生徒なんていましたか?」
モニターを指さすアコ。
そこには端の方で見切れてはいるが、半身だけ映っている少女がのたうち回った後、立ち上がって給食部と共に歩いていく姿が映っていた。
「これは…確かにそうですね。エプロンをしていますし、給食部のようですが…」
「給食部に所属しているのは2人だけのはず、ましてや度々美食研究会に襲撃されているので我々と関わることも多い部活です。新入部員が入ってきたなら報告のひとつもあるはずですが?」
「…いかがいたしましょう。」
「…フウカさんやジュリさんと行動を共にしているなら、少なくとも当人たちは受け入れているのでしょう。今は人員も少ないですし、派手には動けません。…指示を追加します。不良の回収に向かう人員を減らし、その分を給食部の追跡、及び生徒リストの調査に当ててください。」
「了解しました。」
改めて退室する風紀委員。
(ただでさえ様々なトラブルが起こっている今、詳細不明の謎の生徒…さすがに考えすぎとは思いますが、何かのトラブルの種となるかもしれません。調査するに越したことはない…委員長の手を煩わせるような人でなければいいのですが…。)
アコは深く椅子に座り込みながら考えるのだった。
「それにしてもニロちゃん、私の制服だとパツパツですね?」
給食部に戻っていた一行は更衣室で着替えながら談笑する。
「ごめんねママ、制服借りっぱなしで…。」
「いいのいいの!学籍作るまではまだお買い物とかも難しいだろうし、それにペアルックみたいで嬉しい♡」
「既にママ呼びを本人たちが不自然に思ってないことに恐怖してるんだけど。」
フウカは呆れ顔で突っ込む。
「にしてもニロ、制服は今のところジュリのを借りてるみたいだけど、下着はどうしてるの?」
「あ〜、それ、最初は制服と一緒に借りようかと思ったんですけど、ここのロッカーにあったの、制服とエプロンだけで下着がなくて…あともしあったとして、流石に下着はまずいかなと…。」
「まぁそれはそうね…ってことはまさか、今は下は何も…?」
「えぇっ!?ニロちゃんノーパンノーブラなんですか!?いけませんうちの子がそんなふしだらなっ!キャーッ!!!」
「うるさ。」
「落ち着いてママ…大丈夫、ちゃんと穿いてるから。…布地巻いてるだけだけど…。」
「あぁ…まぁ下着買いに行けるようになるまでは仕方ないわね…。百鬼夜行にふんどしっていう布を巻いただけみたいな下着は実際あるらしいし…。」
「良かったです、うちの子のノーパンノーブラを見ていいのはママとパパといずれできる彼氏さんだけですからね♡」
「別に私見たかないんだけど…あとパパ呼びやめて?」
「というか私、彼氏できる前提なのママ?」
「あっ、もしかして彼女ちゃん派ですか?♡」
「ノーマルです。」
着替えた後、改めて出発した一行。
「さっきのでゲヘナのヤバさは分かったでしょう?ニロは特に目立つ見た目をしてるから、万魔殿で用事を済ませたらすぐに銃を買いに行きましょうね。」
「え、銃…?あぁ、確かにみんな持ってますね…うぅ、銃撃つのかぁ…。さっきみたいにパンちゃんを呼ぶのじゃだめですか?」
「行く先々で触手レ〇プ事件を起こして矯正局行きになっていいなら私は止めないわよ。」
「ほんとすみません。買います。」
「よろしい。…まぁそれはさておき、そろそろ着くわね。」
談笑もそのまま、今度はトラブルもなく目的地にたどり着いた一行。
目の前には無駄に豪華な装飾が施された数メートルはある巨大な扉が。
「ここに来るまでもレッドカーペット敷いてあったし、なんか鎧とか金色の人の像とかありましたけど…ゲヘナって結構裕福な学校なんですね。」
「あーいや、むしろウチは多分財政難よ。」
「え?でもすごくおっきいステンドグラスとか飾ってあったし、シャンデリアとかも…。」
「万魔殿の議長…つまりうちの生徒会長の人は羽沼マコトって言うんだけど、その人がすごく自己愛が強い人でね?噂だと風紀委員会の予算を削ってそれで自分の銅像を建てたりしてるらしいの。」
ジュリが手を頬に当てながら困り顔で話す。
まさしく井戸端会議のママである。
(あぁ…そういえばマコトってそんなキャラだったなぁ…。)
ゲヘナに存在するあらゆる部活の予算決議から校則の決定、年度の教育、行事の方針決定まであらゆる行政手続きを取り扱うまさしくゲヘナのトップ組織である。
…しかしその実態は酷いもので、議長である羽沼マコトは実質的な生徒会長でありながらその知名度は同組織のマスコットである丹花イブキに劣り、議長選挙での得票率は3.8%。
(ちなみにこの数字はゲヘナ全校生徒に対するマコト個人への投票率なので、全体の1割程度しか投票に参加していないという事実を鑑みると凄まじい数字である。マコトはちゃんと優秀、いいね?)
絶対に決めなければいけない場面では持ち前のカリスマと頭の良さでかっこよくキメるが、それ以外では個人的な空崎ヒナへの嫌がらせやイブキへの溺愛、適当で自分本位な政治活動などが目立つ、所謂『肝心な時にしか役に立たない女』なのである。
「まぁそんな人だから、とりあえず入ったらちゃんと挨拶して、目的を話してあとは適当におだててたら許可してくれると思うわ。」
「ほんとですか?本当に私みたいな正体不明のクリーチャーをそんな感じで受け入れてくれるんでしょうか?」
「大丈夫ですよ!もしダメだったら私が匿ってあげますけら♡」
「今ばかりはすごく頼もしいよママ…。」
「ほら、ふざけてないで入るわよ。すみません門番さん、ゲヘナ学園高等部2年、給食部部長の愛清フウカです。突然の訪問になって申し訳ないのですけど、転入生の手続きがしたくて…。」
「ん…?あぁ、こんにちはフウカさん。いつもお疲れ様です。議長なら中でイブキちゃんと遊んでると思うので、大丈夫ですよ。…おーい、開門!中に通してあげて!」
門番の万魔殿メンバーがフウカの顔を見た途端、笑顔で対応し、反対側の門番に声をかける。
このスムーズな顔パスは、普段から分け隔てなく生徒たちに給食を振る舞う健気な少女の徳が成すところである。
「おぉ…こんな簡単に開けてもらえるとは…。」
「私はよく給食部の予算のことで直談判しに来たりするから、結構顔見知りって事で楽に通して貰えるの。それに…。」
「それに?」
「万魔殿のマスコットのイブキのプリンも作ってあげてるから、向こうも私の事は割と気にかけてくれてるのよね。」
「あまりにも私情だった…。」
「開門!!」
ギィイィィイ…
門番の掛け声と同時に、大きな扉がゆっくりと開かれる。
中にはいくつかの議員席と様々な美しい装飾。
そして真ん中には無駄に大きな議長席が見える。
フウカを先頭に、おずおずと3人が入っていくと…。
「酷いわマコトちゃんッッ!!私とは遊びだったって言うのッ!?」
「待ってくれサツキ!これは違うんだ!」
「誰よその女〜。マコトさんは私のモノよ〜。…なんで私が浮気妻役なんでしょう…。」
「イブキちゃんっ!見ちゃダメです!パパとママは今大事なお話をしてますから、向こうで遊んでましょう、ね?さァお三方、取材を!!」
「チアキちゃん、これおままごとだから本当の浮気騒動じゃないわよ?」
「きゃーっ!パパ、ママ、イブキの為に争わないで〜っ!」
「え、リアルおままごと!!?!?」
どういう訳か、中に一般議員はおらず、議長席から離れた場所で、5人の生徒がリアルおままごとをしていた。
余りの予想外な光景に突っ込むニロ。
「もう話も聞きたくない!さよなら!」
「待つんだサツキ!これは誤解なんだ!」
「何が誤解なの〜。やっぱり今の女が本命って事なのね〜。」
「これは特大スクープですね!万魔殿議長、情報部部長と戦車長との禁断の二股恋愛!見出し確定です!!」
「チアキちゃん、あなた今一応イブキちゃんのお姉ちゃん役なのよね?」
「サツキママ、行っちゃダメー!でもイロハママも好き!イブキ、どうしたらいいの!?キャーッ!」
「おぉ、ほ、本物の万魔殿メンバーだ…というかサツキ先輩胸でか!?」
「?ニロ、サツキ先輩の事知ってるの?」
「あー、いや!廊下を歩いてくる時噂を聞いて!あはは…。」
「?そう。」
ヒートアップしていくおままごと。
給食部の3人は呆然とその光景を眺めていた。
見かねた一般議員が割り込んでくれる。
「あ、あの〜、議長?こちらにお客さんが…。」
「なんだ貴様!!今私が追い込まれているのが見て分からないのか!?クソッ、なぜバレたんだ!?スマホのロックも厳重にしていたのに!?」
「これおままごとなんですよね!?」
一般議員も思わず突っ込んでしまう。
「…?おや、誰かと思えばフウカさんじゃないですか。」
本を片手に心底面倒そうにおままごとに付き合っていたらしい万魔殿議員にして戦車長、棗イロハがようやく気づいてくれた。
フウカに声をかける。
「お邪魔してるわ、イロハ。…また面倒な遊びに巻き込まれてるのね…。」
「はぁ…。イブキが何処で観てきたのか、所謂昼ドラにハマってしまったようで。リアルおままごとがしたいと言い出したは良いのですが、なぜか私が浮気相手役で…その上マコト先輩が随分と役に入り込んでしまって。」
「頼むサツキ、もう一度やり直してくれ!私が心の底から愛しているのは、イブキとお前、2人だけだ…!」
「そんな…今更ずるいわ…もう何回目だと思って…。////」
「…ご覧の通りです。」
「なんで普通に仲良くするおままごとにしなかったの?」
「フウカ先輩、女の子の成長は早いんですよ。」
「だとしても11歳で昼ドラのシチュエーションを体験したいって思うことある?」
既にげんなりしているフウカ。ここからどうやって話を切り出そうか。
しかしそこは面倒くさがりではあるが何だかんだとても優秀なイロハ。
「マコト先輩、イブキ。おままごとは中断です。お客さんですよ。」
「あぁっ、サツキ…!このマコト様の真実の愛は、いつでもお前だけに…ん?客だと?訪問を許可した覚えはない、即刻帰らせろ。」
「もう…本当にこれきりよ?次こんなことがあったら…あら?お客さんって、フウカちゃんにジュリちゃん?また給食部が爆破でもされたの?それとも予算不足かしら?」
「ケンカはだめだよぉ!仲直りして、パパ、ママとママー!…あれ!?フウカお姉ちゃんにジュリお姉ちゃんだ!またプリン持ってきてくれたのー?」
「おぉ、和解!これはこれでスクープになりますね!しかし浮気相手だったイロハちゃんにはどう落とし前を…おや、給食部の皆さん!何かまた特ダネを持ってきてくださったのですか!?」
役にのめり込んでいた万魔殿の幹部たちをすぐにこちらへと注目させてくれた。
「ありがとうイロハ。助かるわ。」
「ありがとうございます!イロハ先輩!」
「いえ、私もそろそろ面倒になってたので助かりました。イブキのおやつもよく頼んでいますしね。…それで、要件は…その後ろの方の件ですか?初めて見ましたが…」
イロハは謙遜しつつ、フウカとジュリの後ろで万魔殿のおままごとを鑑賞していた少女に目を向ける。
「…え?あ、わ、私!?」
「私!?じゃないわよ。貴方の学籍を作るために来たんでしょ…そうなのイロハ。色々説明すると複雑なんだけど…とりあえずこの子、学籍が無いみたいで。本人もゲヘナに入りたいって言ってるから、ゲヘナの学籍と、あとうちの給食部に入部させるための手続きをお願いしたいんだけど…。」
「給食部に新入部員…それも正体不明の学籍すらない人が、ですか…また面倒そうな…。ということだそうですが、マコト先輩?」
「フン、アポすら取らずに来た挙句、なんの情報も開示せずにゲヘナに所属したいだと?片腹痛いわ!」
「まぁそう言うわよねぇ…。」
そうなるだろうと思っていたという反応をするフウカ。
どう交渉したものか。
「そもそも貴様は何者だ?このマコト様はゲヘナのトップとして大抵の生徒たちの顔は覚えているが、それでもお前のようなやつは見たことがない!どこからどうやって入ってきたのだ?場合によっては貴様に風紀委員をけしかけねばならんかもしれんぞ?」
マコトは腕を組みながら後ろで突っ立っているニロを睨みつける。
やはり一大学校のトップとしての威厳を示さんと振舞っているのだろう。
「私とイブキの貴重なコミュニケーションの時間を邪魔した挙句、献上品の一つもないとはどういうつもりだ!?」
全然小物だった。
「でも、たしかにマコトちゃんの言う通りねぇ。私、これでも情報部部長なんだけど、貴方の顔は全く見覚えがないわ?それに、ゲヘナの制服を着てるみたいだけど、それってジュリちゃんの予備でしょ?2人と一緒に来たなら少なくとも2人は貴方の事を把握してるのよね?」
サツキが鋭く指摘。
「わぁ!私、立派な角や羽を持っている方はゲヘナで沢山見ましたが、触手がついている方は初めて見ました!生まれもゲヘナの方ですか?それともどこかから引っ越されてきたので?私、触手が生えている生徒さんなんてほかの学区でも聞いたことがありません!取材させて頂いてもよろしいですか?」
チアキは持ち前のジャーナリズム精神を発揮して詰め寄る。
「おわっ!チアキ…ほ、本物だ…!陽キャすぎてかわいい…!…え、えっと、うん。私はゲヘナの生まれなんだけど…うーん、なんというか…。どう説明したものか…。」
グイグイ来るチアキにタジタジのニロ。
どうやって自分について説明しようか考える。
その時。
「うふふ、この子の名前は麦焼ニロちゃん!何を隠そう、私とフウカ先輩の娘ちゃんです♡」
「「「…は?」」」
マコト、サツキ、イロハが素っ頓狂な声を上げる。
「なんとっ!」
チアキが特ダネ発見とばかりに目を輝かせる。
「えぇ!?」
イブキが素直に驚く。
(눈_눈)…
フウカはある意味では予想できていた、なんなら宣言されていた通りの発言に心の底からうんざりしていた。
「あ〜…」
ニロは頭を抱える。想定していた中で1番面倒な事になってしまった。
「む、むむむむむ娘だとォ!?馬鹿な!そ、そもそも貴様らは同性だろう!?」
「そ、そんな!どうやって!?ま、まさか私たちが知らなかっただけで、もしかしてどちらか生えて…!/////」
「…いや、流石に言葉の綾なんですよねフウカさん?…そうですよね?」
「これは超特大スクープですよぉ!!『給食部員の2人の間に禁断の恋の果実が実る!!』一体どうやって娘さんをご出産されたので!?山海経やミレニアムにはそういった技術もあるとの噂が流れていますが、やはりそれを使って!?」
「お姉ちゃんたち、恋人さん同士だったのー!?すごーい!ねぇねぇ、どうやって恋人さんになったのー!?」
浴びせられる大量の質問。
フウカとニロはなんとか挽回しようと口を開こうとしたのもつかの間。
「私とフウカ先輩の馴れ初めですか?うふふ、どこから話しましょうか…まずはさっきの愛の営みから…♡」
「営み言うな!!!パンケーキ焼いてるの隣で見てただけでしょうが!!」
「ごめんちょっと黙っててジュリママ!!あぁママって言っちゃった…。と、とにかくややこしくなるから私たちに説明させて!!」
「そ、そんなぁ…」
ジュリはくすんと悲しそうに口を噤んだ。
「つまりかくかくしかじかダイ〇ツムーヴで…。」
「かくかくしかじかダ〇ハツムーヴで何がわかるんですか?」
「何ぃ!?牛牧の料理が突然爆発していつもの化け物ではなく人型のお前が産まれただとォ!?」
「キッショ、なんで分かるんですか。」
ニロの短縮した説明のような何かをなぜか理解するマコト。
イロハはまだギャグ時空についていけないようだ。
「パンちゃん、だったかしら?私もいくつか上がってきた情報を見たわ。あの時は都市伝説の類だと思ってあんまり気にしてなかったけど…。まさか人型の子が産まれちゃうなんて。」
サツキは落ち着いて真面目に分析する。
「お2人の恋愛がフェイクだったのは悲しいですが、これはこれで特ダネですね!ニロさん、また取材させていただいても!?」
「あぁ、はい。それはまた時間がある時に全然受けますけど…。」
チアキは取り乱すこともなくニロに取材許可を取る。
「何がフェイクだったのが悲しいよ。私とジュリはそんな関係じゃないし、そもそももし昨日今日でそういうその…え、エッチなことしたとして…////そんなすぐ子供が生まれるわけないし、こんな大きくなる訳ないでしょう?」
「パンケーキが爆発して人型の生物になる方がよっぽどそんな訳ないと思いますけどね。」
「言わないでイロハ、私も受け入れきれてないから…。」
「初めまして、ニロお姉ちゃん!イブキはイブキだよ!」
「あぁ、初めましてイブキちゃん!麦焼ニロだよ、よろしくね?」
「うん、よろしくー!えへへ!お姉ちゃん、背中からにょろにょろしたの伸びてるよ?タコさんみたい!」
「あぁ、これは私の…うーん…もう4つの腕…みたいなものなのかな…?」
「腕ー!?じゃあ腕が6本もついてるってこと!?すごーい!」
「そ、そう?えへへ…もうやだまじ最高、可愛い…」
一切の邪気も無く、初めて見たニロに挨拶し、コミュニケーションを交わすイブキ。
万魔殿の天使は伊達じゃない。
「おい貴様ァ!得体の知れない化け物の分際で、馴れ馴れしくイブキと喋るんじゃなぁい!」
正気に戻ったマコトは、イブキに駆け寄って庇うように抱き寄せながらニロを睨みつける。
「大体なんだその触手はァ!イブキの教育に悪いものを見せおって!」
「えぇ?いやぁ、これは自前というか、ジュリママから産まれた以上逃れられない身体的特徴と言いますか…。」
「産まれたとか言うな!いや実際奴の料理から生まれたというのは理解したが!というかそもそもの質問をさせてもらう!」
「麦焼ニロ!!率直に問う!貴様の正体は何だ!?人間か?パンちゃんか?」
「…!人間です!!!」
「え、キッツ・ヴェー〇マン!?」
「なんの話してるんですかサツキ先輩?」
「何にせよ!お前のような得体の知れない触手のついた化け物など我がゲヘナに迎え入れることはない!即刻立ち去れ!」
マコトはそう吐き捨てる。
「そんな!酷いですマコト先輩!よく見てください、この子は得体の知れない化け物なんかじゃありません!」
ジュリがニロを抱き寄せ、マコトに訴えかける。
「ふん、貴様が作り出したのだから庇うのは当然だろう、どうしてもゲヘナに入れると言うならこのマコト様にそいつをゲヘナに受け入れることのメリットを示してみろ!」
「メリットですか?うーん…マコト先輩とサツキ先輩が営みをする時、ニロちゃんのヌメヌメをこう…♡」
「するかァーッ!!!!私とサツキはそんな仲ではないわ!!!!」
「…わ、私はその、マコトちゃんが望むなら…////」
「やめろサツキ!!!このSSはR15で止める方針なのだぞ!それにタグにカップリングもつけていない!!」
「なんの話してるんです?」
「これまた特ダネですね!『羽沼マコトと京極サツキ、夜に密会、背徳のヌメヌメ』…」
「やめないか!!!!」
「ジュリ、ちょっと黙ってて!…えっと、マコト先輩。この子は今、学籍もなければ頼れる人も場所もないんです。このまま放り出してしまってはキヴォトスではきっと生きていけません。それに料理も好きみたいで、私たちと一緒に働きたいって言ってくれました。勝手なことを言っているのは分かっていますし、急ぎの案件だったとはいえ、事前に連絡をしなかった事も謝罪します。なんとか、受け入れて貰えませんか…?」
フウカが真摯に説明し、頭を下げる。
「フウカパパ…。」
「パパ呼びしないで?台無しなんだけど?」
「…フン、まぁ誠意は受け入れてやるとしよう。しかし生憎今キヴォトス全体が未曾有の治安の悪化に見舞われている。このマコト様ですら激務に追われている状況だ。」
「え、でもさっきまで楽しそうにおままごとを…。」
「貴様は黙っていろイロハァ!…とにかく!ただ無償で貴様を受け入れてやるほど我々に余裕はない!何かメリットを示してみろ!そうすればこの寛大なマコト様は受け入れてやらんこともないぞぉ?キキキ!」
マコトはふんぞり返りながらそう言う。
しかしどうすればいいのだろうか。
「うーん…メリット…そりゃあニロが部員になってくれたら、純粋に人手が増える分、私たちの作れる料理のクオリティや幅も上がると思うけど…。」
「恥ずかしながら私が料理を作ったら大体パンちゃんになっちゃいますからね…。」
「私、料理はそこそこ出来ると思うけど、それでどうやってマコト先輩を納得させようかな…。」
首をひねる3人。
そこに、救いの手が差し伸べられる。
「ねぇねぇフウカお姉ちゃん。ニロお姉ちゃんが給食部に入れたら、その分お仕事も楽になるよね?」
「?え、えぇ。そうね、イブキ。」
「なら、私に任せて!」
イブキはふんすと自信ありげにマコトの所へとてとてと歩いていく。
「ねぇねぇマコト先輩!」
「おぉ?なんだぁイブキぃ。またリアルおままごとするか?それともおやつか?」
「私ね、いつも給食部のお姉ちゃんたちに、プリンとかいろんなおやつをもらってて、とっても嬉しいの!だからイブキもお姉ちゃんたちに恩返ししたい!」
「む?…そうか、まぁそれは確かに…認めるべき功績だな。」
「でもイブキ、万魔殿のお仕事とかお勉強があって、私だけじゃ恩返しできないの。だから、ニロお姉ちゃんを入れてあげたら、その分給食部のお仕事も楽になると思うの!だから入れてあげて欲しいの!…だめ、かな?」
「グゥっ!?」
うるうるとしたあまりにも可愛らしい上目遣い。
マコトはその純粋かつとてもキュートな目線にハートを撃ち抜かれた。
「ぐぬぬ…ふ、フン!良いだろう!特例ではあるが、貴様の特別編入を認めよう!!光栄に思うがいい!」
「…!!ほんとですか!!よ、良かった!」
「ありがとうイブキ!助かったわ!」
「えへへ、こちらこそ、いつもプリンありがとう!フウカお姉ちゃん、ジュリお姉ちゃん!」
「い、イブキぃ…!なんていい子なの…!」
「イブキちゃん、うちの子のためにありがとうね♡」
「?やっぱりニロお姉ちゃんってジュリお姉ちゃんの子供さんなの?」
「ジュリ、ややこしくなるからやめて?」
「そんなぁ…。」
なんとか勝ち取ったマコトの許可に喜ぶ一行。
「ただァし!!」
「うわびっくりした!」
突然声を張り上げるマコト。
「ただで入れてやるというのも面白くない。故に麦焼ニロ、そして給食部!貴様らに『編入試験』を実施する。」
「へ、編入試験…?」
3人は首を傾げる。
「マコト先輩、今度は何を考えてるんですか…?」
「キキキ、まぁ黙って見ていろイロハ。…貴様らに与える編入試験、その内容は!」
「ズバリ、『イブキの為のプリン作り』だ!!!」
「…えっと、マコトちゃん?それって自分とイブキちゃんのプリンをすぐ作らせたいだけじゃ…。」
「黙っていろサツキ!これはこいつらがゲヘナにふさわしい能力を持っているかを測るための必要なテストだ!」
「…まぁ、そういうことにしておきましょうか…。」
「はぁ、また面倒なことを…。」
「…そ、それで、私たちはどうしたら?」
フウカがマコトに質問する。
「キキキ、内容は簡単だ。今回貴様は麦焼ニロが部員として給食部に参加すれば、その分料理の質も上がると言ったな。その発言を証明しろと言うだけだ。つまり、今まで我々に献上していたプリンよりも高品質なものを、今日中に我々万魔殿に献上するのだ!審査員は我々万魔殿メンバーの5人、そのうち半数、つまり3人以上が合格を出せば晴れて麦焼ニロの編入を認めてやる!キキキ、素晴らしく合理的な試験だろう?」
マコトは胸を張って笑いながら得意げに説明する。
「おぉ!我々は審査員ですか!これはまた特ダネです!『謎多き少女、麦焼ニロ!学籍を手に入れるため、議長へ勝負を挑む!』」
「チアキちゃん、さすがにこれは記事にしちゃダメよ?ニロちゃんの編入、もし実現したらかなりイレギュラーな案件だから。」
「そうですか?うぅ、なら仕方ありませんね。嫌がる方を無理に記事にする訳には行きません。」
「チアキちゃんが良心のある子で本当に良かったわ…クロノスに行かなかったことも…。」
チアキを宥め、安堵するサツキ。
「わぁ!お姉ちゃんたち、私たちのためにプリンを作ってくれるの?イブキ、楽しみ!!」
「キキキ、さぁ給食部諸君、イブキがこれだけ期待しているのだ。まさか断りはしまい?」
「…フウカ先輩、ジュリママ。手間をかけることになるけど…。」
「…ふふっ、何言ってるのよ。ちゃんと面倒見るって言ったでしょう?大丈夫、プリンなら何度も作ってるし、そんなに複雑な料理でもないから何とかなるわよ。」
「はい!ママも全力でサポートしますからね!一緒に試験を乗り越えましょう!」
「フウカ先輩、ママ…!ありがとう!…よし!それじゃあ早速給食部に戻りましょう!」
「キキキ!制限時間は今から3時間以内、17:30の放課後までだ!それまでに献上しなければ不合格とみなす!グズグズせずさっさと作ってくることだ!」
「頑張ってね、フウカちゃんたち〜!」
「記事の一面を飾れるほどの極上の品、お待ちしてます!」
「はぁ…まぁ、程々に頑張ってください。私はサボってるので。」
「お姉ちゃんたち、ファイト!」
見送る5人の万魔殿メンバー。
「給食部としての、最初のお仕事!」
「『極上プリン作り』、スタート!」
[パンちゃん図鑑 No.001]【パンちゃん】
危険度:C
言わずと知れた通常型パンちゃん。
重なったパンケーキのような胴体を持つがその体色はショッキングな毒々しい紫色。
頭部(?)からはこれまた毒々しい緑色の粘液を常に滴らせ、重なった胴体の隙間から4本のタコのような吸盤付きの触手を伸ばしている。
元がジュリの作った料理である為か、本能的に自分を食べてもらおうと目につくあらゆる生物の口内へと突撃していく習性を持つ。
懐いているのはジュリとフウカ、そしてニロにのみ。
最もスタンダードなタイプであるため、ニロが運用するパンちゃん部隊の中でも最も大きな数を占める。