ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜 作:Di Gi O
一般委員からの報告に宇宙猫状態だったアコは映像を見てようやく事態の全貌を理解。
しかし風紀委員の殆どが出払っている状態での無理な詮索は得策ではないと判断し、ひとまず最低限の調査員だけを派遣する事にしたのだった。
一方出直して着替えた給食部たちは今度こそ万魔殿に到着。
しかし幹部5人によるリアルおままごとを目撃しフリーズ。
いち早く給食部の存在に気づいたイロハに事情を説明したが、マコトにはニロの編入を拒否されてしまう。
そこで給食部メンバーとも交流のあるイブキによる説得が行われた結果、編入試験と称して給食部たちはイブキたち万魔殿幹部のために、『いつも万魔殿に納めているものより高品質なプリン』を振る舞うことになったのだった。
風紀委員会、本部。
一般委員より給食部と行動している謎の生徒に関する報告を受けたアコは、ひとまず最低限の人員を派遣したあと、また自分の仕事に戻っていた。
「はぁ…この書類の山はいつになったら無くなるのでしょうか…?もうお昼も過ぎて2時ですし、いい加減出張に出た部隊も帰ってきていい頃合なのですが…。」
壁にかけられた時計の針を見ながら独りごちるアコ。
現在出払っている部隊の殆どは今日の午前中、09:00〜10:00辺りに出発しているのである。
派遣先がすべてゲヘナの学区内である上に増援などの要請も無いため、少なくとも何かに手間取っているということでは無いはずだ。
いったい何処で油を売っているのだろうか。
そう考え苛立っていた所、足音が近づいてきた。噂をすればなんとやらである。
「ふぅ…銀鏡イオリ、帰還した。」
健康的な褐色肌に銀髪のツインテールと悪魔のような尻尾が映える少女、銀鏡イオリ。
ゲヘナ風紀委員会の誇る切り込み隊長である。
「おやイオリ、お疲れ様です。随分と手間取ったようですね?定期報告も無いので心配しました。」
「心配じゃなくてイライラしただけだろアコちゃんは…別にサボってたわけじゃない、ただ…。」
「脇と横乳を丸出しにしたタヌキ耳の生徒がいて、露出狂かと思って事情聴取してて…。」
「脇と横乳を丸出し!?どこの変態ですか!?」
「いやアンタもだよ!?」
「はぁ!?これは機能性を重視した合理的な衣装ですが!?」
「あっそ…はぁ、話を聞いたら百鬼夜行の生徒だったんだけど、なんか『ゲヘナの爆発騒ぎの中でも安眠する修行をしに来たの〜。』とか言ってて…。まぁ服がヤバいだけで実害は無かったし、別の地区の生徒だったから注意だけにしといたんだ。」
「そうだったんですか…何にせよお疲れ様です。少し休憩したら、また書類業務を手伝って頂けますか?」
「分かった、そしたらちょっと休憩貰うね。」
(…当てつけのつもりで言ったんだけど、アコちゃんって自分の衣装の事マトモだと思ってたのか…。)
イオリは分かりきっている地雷発言は口に出さず、休憩の為仮眠室へと向かった。
そしてちょうどイオリと入れ違う形で、また1人の幹部が帰還する。
「おやイオリ、貴方も丁度帰ってきたのですね。」
「お、チナツお疲れ。そうそう、色々あってさ。悪いけど先に休憩もらうよ。」
「分かりました、しっかり休息を取ってください。ただでさえ最近はトラブルが多いですから。」
「うい、ありがと。」
柔らかな笑顔を浮かべてイオリに労いの言葉をかける赤メガネの似合う知的な少女。
彼女の名は火宮チナツ。ゲヘナ風紀委員会の救護部隊の統率や医療物資の管理を担う幹部である。
「チナツ、お疲れ様です。あなたの方は医療物資の買い出しと備品整理、それと巡回任務でしたね。いつもより時間がかかったようですが、何かありましたか?」
「すみません行政官、医療物資の買い出しについては、いつも通っている店舗のいくつかが品薄や臨時休業だったので少し遅れてしまいまして。」
「そうでしたか、それは仕方ないですね…。まずは休んでください。」
「ありがとうございます。あぁ、それと…」
「金髪で狐耳が生えた脇と横乳が丸出しの方が歩いていたのですが、行政官のお知り合いの方でしたか?」
「脇と横乳が丸出しの金髪狐耳!?どんな変態ですか!?」
「いや貴方もでしょう!?」
「はぁ!?ですからこれは機能性を重視したデザインなんですが!?」
「まぁ行政官の制服がイカれているのはいつもの事として…流石に見過ごせなかったので事情聴取した所、百鬼夜行の方でして。『チセにゃんがゲヘナ自治区の温泉で俳句を詠んだらしく、聖地巡礼しに来たんです!』などと仰っていたのですが、なんの事だったんでしょう?」
「また百鬼夜行ですか…横乳と脇を出さなくてはならない校則でもあるのでしょうか…?まぁいいです、休憩が明けたら買ってきた医療用品の整理をお願いします。」
「分かりました。」
(行政官、やっぱり自分の服のおかしさには無頓着なんですね…。)
内心を口にすることはなく、丁寧なお辞儀をした後チナツは出口へと歩いていく。
そしてまたすれ違うようなタイミングで、1人の風紀委員が帰還した。
「はぁ…。帰ったわ、アコ。…あら、チナツ。貴方も今帰ったの?」
「委員長、お疲れ様です。はい、私も丁度休憩に入るところでした。すみませんが、お先に頂きます。」
「えぇ、ゆっくり休んで。体が資本だから。」
軽い笑みを浮かべながらチナツを見送る、身長程ある長い白髪に立派な角とコウモリのような翼を生やした小柄な少女。
彼女こそゲヘナの誇る最強の武力を持つ風紀委員長、空崎ヒナである。
「あぁ!委員長、本日も見目麗しい…!!」
「帰還直後に出てくるセリフがそれなの?まずお疲れ様ですじゃない?」
「失礼しました、お疲れ様でございます!マイスウィート委員長!!!」
「貴方のスウィートになった覚えは無いんだけど。」
ヒナは流れるようなツッコミもそのままに、自分の席へと座る。
「すぐコーヒーをお淹れしますね♡」
「ありがと…はぁ、今回は流石に手間取ったわ。」
「温泉開発部と美食委員会が同時に事件を起こした上、見事に対極の位置からの通報でしたからね。委員長おひとりに苦労をおかけし申し訳ありません…。」
「別にいいわ、私にしかできない事だったし。ただ…」
「なぜかブラ丸出しみたいな格好で、しかもブラの先端に何に使うか意味不明なチャックが着いたピンク髪の生徒が歩いてて、流石に事情聴取したわ。」
「ブラの先端にチャック!?え、乳〇の位置ですか!?」
「〇首とか大声で言わないでくれる?そうだけど。」
「委員長にそんな姿を見せて色目を使うなんて、許せません!!どこの変態ですか!?」
「一番色目使ってる貴方が言えたことじゃないと思うんだけど。というか変態に関してはブーメランじゃない?」
「委員長まで!?ですから私のこれは合理性に基づいたデザインですぅ!!!」
「何をどう考慮したら制服のサイドをカットして横乳を晒すデザインになるの?…はぁ、今更突っ込むのも面倒だから良いけど。事情聴取したら『うちの部長がゲヘナの特異現象について調査してこいって。』とか言ってたし、ミレニアムの子だったみたいだから、多方自分の部活の研究とか調査に来てたんじゃないかしら?流石に目に余る服装だったから注意だけしておいたけど。」
「甘すぎませんか?そんな風気を乱す服装をしてほかの自治区に来るなんてなんと非常識な生徒なんでしょう!」
「ツッコミ待ちなの?」
「えぇ!?私に突っ込みたい!?い、委員長、いきなりそんな激しいのは/////」
「そう、そんなにその横乳にデストロイヤーを突っ込んで連射して欲しいのね。」
「委員長の銃弾を直に受けれるなんて光栄です♡」
「貴方無敵なの?」
コントのような会話の流れに呆れながらも自分の机の上に積まれた書類を片手間に凄まじいスピードで捌いていくヒナ。
武力と統率力はもちろん、行政に置ける能力もずば抜けているのである。
本人がやりたいかはさておき。
「…ん?この報告書は…?」
「?…あぁ、それは先程私の方に報告が上がってきたものでして。なんでも給食部にゲヘナの制服を着ているのに、学籍登録がされていない謎の少女が同行しているようで。先程一般生徒と一悶着あったようですが、自分たちで解決していた上、実害もなくこちらも人手不足でしたのでひとまず最低限の調査員だけ派遣しておきました。」
「そう…。『麦焼ニロ』…出身、年齢、身長、体重、etc…あらゆる詳細が不明。…情報部でも調べたの?」
「はい、今万魔殿のタヌキ共に調査依頼は送っているのですが、未だ詳細な情報は出ていないらしく…。」
「…はぁ、また面倒そうな案件ね…。その子がトラブルの種でなければいいけど。…情報部で調査中なら、マコトやサツキも把握しているということ。つまり黙認している…なら私がわざわざ出張る必要は無さそうね。」
「やはり委員長もそう思われますか?」
「えぇ、藪をつついて蛇を出すような事になるのはごめんよ。現状大した騒ぎも起こしていないのでしょう?」
「はい、触手生物を呼び出して廊下の往来ど真ん中でヌメヌメしていた程度ですね。」
「ごめんなんて言った?」
「触手生物を呼び出して廊下の往来ど真ん中でヌメヌメしていた程度ですね。」
「…働かせすぎたのかしら。疲れているみたいね。休みなさいアコ。」
「ち、違いますよ!?本当にヌメヌメしてたんですって!ほら!!」
映像を見せるアコ。
『「やんっ♡ちょっとキャベちゃんたち、そこはだめっ…やっ♡あっ♡」』
「…//////…ろ、廊下のど真ん中でこんな…///」
「ほら、言ったでしょう!?傷害騒ぎになっていないとはいえ、完全に警戒を解くのも憚られると思うんです!」
「…ま、まぁそうね…分かった、私も気にかけておく。」
「ご安心ください!もしその生徒が委員長の手を煩わせるような存在であれば、私が必ずや排除して見せます!」
「そう、頼りにしてるわ。まずはその風気を乱す服装から直してくれるとなお嬉しいわね。」
「そんな!これは風紀を正す意気込みを見た目から体現しているもので…!」
「貴方が体現してるのは風紀じゃなくて淫気よ。」
「酷い!?」
「よぉし!それじゃあ早速作りますか!」
場面は変わり、給食部厨房へと戻ってきた3人。
ニロは気合を入れてエプロンをしっかりと着直す。
「はい!うふふ、ニロちゃんとママ、初めての共同作業ですね♡」
「うん、頑張ろうね!」
「ナチュラルにハブらないで?」
「いやいや!ハブってないですよ!パパ!」
「…この際パパ呼びはいいけど絶対他の生徒がいる所で呼ばないでね?」
突っ込むのも面倒になったフウカはため息をつきつつ釘を刺す。
そして改めて目標を確認する。
「それじゃあ改めて確認するけど、今回作るのはマコト議長がリクエストしてきたプリンよ。ニロ、貴方は一応料理についての知識は多少持っていると考えていいのよね?」
「はい、どうして知ってるのかとか説明するのは難しいんですけど、とりあえず人並み以上には料理できると思います。」
「うふふ、0歳で料理を作っちゃうなんてうちの子は天才ですね?」
「生物としての基盤が違いすぎて私たちの基準で評価していいのか分からないけど…ま、それなら何とかなりそうね。」
多少安堵したフウカは話を続ける。
「それで作るプリンなんだけど、いつもは普通のカスタードプリンにクリームとサクランボをトッピングするくらいのシンプルなものを持って行ってるの。でも今回指定されたのはいつもより豪華な物。ってことで『プリンアラモード』を作ろうと思ってるんだけど、どうかしら?」
「『プリンアラモード』、ですか?」
「わぁ!いいですね、同じプリンでもなんだかオトナって感じがします!」
プリンアラモード。
たまにファミレスやカフェのメニューで名前は見かけるが、実際のところ普通のプリンとどう違うのか把握していない人もいる事だろう。
ざっくり言えば、プリンの他にアイスクリームや色とりどりのフルーツなどを皿に盛り付けた、プリンが主役のパフェのようなものである。
アラモードとはフランス語で『流行』『現代風』といったニュアンスだが、実の所発祥は1930年代の日本である。
「なるほど…単体のプリンより豪華な盛り合わせって感じなんですね。」
「ゲヘナのカフェでもたまに見かけるけど、私もあんまり頼まないわね。」
「私、アラモードってチョコのお菓子か何かが乗ってるのかとばかり…。」
「え、ア〇フォート?」
「それか音楽用語とかかと。」
「え、アジタート?」
「イタリアのアイスとコーヒーのお菓子かと…」
「え、アフォガート?」
「私はやりました!やりましたぞ!」
「え、アル〇レート?」
「仲良いのは分かったから早く作るわよ。」
【プリンアラモード】
[材料(8人分)]
『カスタードプリン』
・卵(Mサイズ):×7〜8個
・上白糖orグラニュー糖:160g
・牛乳:300ml
・生クリーム:300ml
・バニラエッセンス:3〜4滴
・上白糖orグラニュー糖(カラメル用):200g
・水(カラメル用):100ml
・お湯(カラメル用):100ml
『バニラアイス』
・牛乳:400ml
・生クリーム:400ml
・卵黄:8個
・上白糖orグラニュー糖:160g
・バニラエッセンス:6〜7滴
・食塩:適量
『トッピング』
・ホイップクリーム:
・イチゴ:×8個
・みかん(薄皮なし):×16切 ※缶詰でOK
・メロン:×8切
・バナナ:×1本(8等分)
・サクランボ:×8個 ※缶詰でOK
「おぉ、こうやって数値で見るとやっぱり砂糖すごい量入ってるんですね。」
「まぁちゃんと甘味を出すには仕方ないのよ。人工甘味料じゃどうしても違和感は出るしね。」
「なんだか生クリームも多い気がしますね?大体牛乳との比率って1:3のイメージでした。」
「よく知ってるわねジュリ。一般的なレシピでは1:3がメジャーよ。ただ今回はイブキの好みに合わせて作るから、生クリーム多めのリッチな配分にしてみたわ。」
「なるほど!さすがパパ!子供心をよく分かってますね!」
「…ダメよ私、もうパパ呼びにはツッコまないって決めたんだから…。」
【バニラアイス】
[(1):牛乳、上白糖orグラニュー糖を鍋に入れ弱火にかける。]
「冷やす時間があるからまずはアイスから作りましょうか。ニロ、片手鍋に牛乳と砂糖を入れてくれる?」
「はい。…そしたら弱火にかける、ですね。」
「そうね。この加熱はあくまで砂糖を牛乳に溶かし込むための行程だから、中火や強火で沸騰させちゃだめよ。」
「沸騰させるのはママへの愛だけにしてくださいね♡きゃっ!」
「(눈_눈)…」
「フウカ先輩、まだ始まったばっかりですよ…。」
[(2):卵黄のみをボウルに入れ、解きほぐす。冷ました(1)を混ぜ合わせしっかりと混ざったら目の細かいザルで濾し、再び火にかける。]
「それじゃあジュリ、卵黄を卵白と分けてくれる?」
「はい!えっと、卵を割って…。ああっ!黄身が崩れちゃいました…。」
「割った殻で黄身を受ける方法はやっぱり難しいわよね、私もたまにミスするわ。」
「うぅ、もっと練習しないとですね…そういえば、ミレニアムには全〇動卵割り機なるものがあるそうですよ。」
「びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛!」
「ニロうるさい。」
「ごめんなさい…。」
「ちなみに自爆機能もあってナ〇パのクンッぐらい爆発するそうですよ。」
「ミレニアムってもしかしてゲヘナよりも治安悪いんじゃない?」
[(3):中火で5分ほど加熱しながら木べらでかき混ぜ、とろみが出たらボウルにうつし、氷水を張ったより大きなボウルで冷やす。]
「焦げ付かないようにちゃんと底を混ぜないと、ですよね。」
「そうそう、よく出来てるわニロ。」
「よし、とろみが出たら火からおろしてボウルに入れて…氷水で冷やす、ですね。」
「熱されたり冷やされたり踏んだり蹴ったりですね♪」
「そんな楽しそうに言うセリフでは無いわね?」
[(4):別のボウルに生クリームを泡立てる。冷めた(3)と食塩と混ぜ合わせ、バットに移してラップをし冷凍庫へ。1〜2時間ほど冷凍。]
「ちなちに生クリームは4〜6分立てがおすすめよ。ゆるすぎると分離して上手く混ざらないし、立てすぎるとアイスの食感の滑らかさが損なわれちゃうの。」
「6分立てって実際どのくらいなんですかね?」
「キャベちゃんの触手から出てたドレッシングみたいな何かはそれっぽい粘度だったよ。」
「物凄く分かりやすいのに物凄く分かりたくないんだけど。」
【カスタードプリン】
[(1):オーブンを170℃に余熱しておく。鍋にカラメル用の砂糖と水を入れて火にかける。かき混ぜながら中火で加熱し、色が飴色から茶色に変わってきたらすぐに火から下ろしてお湯を入れ、かき混ぜてからプリンカップに均等にそそぎ入れる。]
「うぅ、私カラメル作り苦手なんですよね…お湯を入れる時一気に蒸発して水滴が跳ねてやけどするのが怖くて…。」
「あら、そうなのジュリ?怖かったらしっかりと冷まして尚且つカラメルが固まっちゃう前に熱湯を注ぐか、片手で鍋蓋を盾みたいにしながら注ぐといいわよ。」
「ふふん、見てくださいフウカ先輩!触手4本全部に鍋蓋持ってクシャト〇ヤ!」
「アホな事やってないではやくカラメル混ぜなさいよ?もう色変わるわよ?」
「あっはいすみまs\ジュッ/アッツゥゥゥゥゥゥ!?」
「ニロちゃん!?」
「何のために鍋蓋大量に持ってたの?」
[(2):ボウルに卵を割り入れて解きほぐす。鍋に牛乳、生クリーム、砂糖を入れてかき混ぜながら中火にかけ、沸騰する直前で火からおろし、バニラエッセンスと共に卵液に流し込んで混ぜる。]
「今度は私が鍋を混ぜますね!ニロちゃんは卵をお願いします!」
「分かった!今こそ私の秘技、両手同時の片手卵割りを…!あっ。」
「…殻入ったわね。」
「すみません、大人しく触手で割ります…。」
「その流れで普通に両手で1個ずつ割らないことある?」
「みてみてフウカ先輩、触手から出てくる粘液かけてみたらなんか殻だけ溶けて薄皮と中身だけになった。」
「当たり前のように触手から出る得体の知れない液体使わないで?というか小学校の時にやったお酢で殻だけ溶かす自由研究みたいなのやめて?」
「それって今の子に伝わるんです?」
「今の小学生ってこどもちゃ〇んじしてないのかしら…?」
「メタいですよフウカ先輩。」
[(3):カラメルを入れたカップに(2)を目の細かいざるで濾し入れ、耐熱プレートに熱湯をカップが半分浸かるほどまで注ぐ。予熱しておいたオーブンに入れて20分蒸し焼き。その後冷蔵庫で1時間ほど冷ます。]
「…オーブンで焼いてる間、どうします?」
「…フルーツはもうカットしてあるし、器の準備もアイスの冷凍もできてるしね。…洗い物でもしましょうか?」
「あ、それなら私、前にフウカ先輩が見たっていうニロちゃんのダンス見たいです!私だけ見れてないの、なんだか寂しいじゃないですか?」
「いやそうはならないでしょ…。ミュージカル映画じゃあるまいし…。」
「お、それならママも一緒に踊る?」
「はい!一緒に踊りましょう♡」
「え、ほんとに?ほんとに踊るの?この状況で?」
「よし、キャベちゃんズ集合!」
\キシャーッ!/
「え、どこから出てきたの!?窓も閉めてたし引き戸開いて無いんだけど!?怖い怖い!?」
「細かいことはいいんですよフウカ先輩!さ、ミュージックスタート!」
ニロはノリノリで叫びながら備品のラジカセで音楽を流す。
「踊ってない夜を知らない♪踊ってない夜が気に入らない♪」
「前と曲違くない???というかキャベちゃんが虹色に発光してるんだけど?」
「これじゃあフレデ〇ックというよりサイケデリックですね♪」
「やかましいわ。」
【プリンアラモード】
[(1):パフェ用の器にプリンをひっくり返して出し、アイスクリームとフルーツ、ホイップクリームを盛り合わせて完成。]
「よし、それじゃあ盛り付けて完成ね!…こんな感じかしら。私は出来たけど、2人はどう?」
「…出来ました!パンちゃんプリン!これ給食部の名物デザートにしません?」
「グロすぎるから却下。」
「そんな…。」
「というかよくそんな生々しい触手再現したわね…え、堂ほんとにその小さいパンちゃんの飾りどうやって作ったの?」
「え?本物ですけど。」
\シャーッ!/
「んなもんイブキちゃんに出せるか!!!!」
「はーい。仕方ないからこれはマコト先輩用にしますね。」
「…まぁ、マコト議長ならいいか…。」
「そこは止めてあげましょうよフウカ先輩?」
「はぁ…ジュリはどう?」
「い、今最後のサクランボをのせる所です!…い、行きますよ…!」
恐る恐るサクランボを乗せるジュリ。
「…。」
「…何も起きないわね。」
「…も、もしかして今回こそ成功でs」
ボフンッッ!!!!!
「きゃぁっ!?」「おわっ!?」「うわぁっ!?」
\フシュルルルル…。/
突然爆発したジュリのプリンアラモード。
爆煙が晴れ、現れたのはプリンからカットフルーツとホイップクリームが突き出た胴体、乳白色の触手の生えた異形だった。
「…あぁ…やっぱり…。」
「…まぁ、仕方ないわよ…こうなること想定して多めにプリン液作ってて良かったわね…。」
「…あれ?そういえば、この子もキャベちゃんと同じで、いつものパンちゃんと見た目が違いますね?」
「…そういえば、確かにいつもは何作ってもパンケーキ型のパンちゃんになるわよね。…よく考えると、キャベちゃんが産まれたのもニロが生まれる直前だったわね。…やっぱり、貴方とパンちゃんは何か深い関係があるのかしら…?」
「うーん…私も私のことはさっぱり分かんないですしねぇ…。」
\フシャ!フシャ!/
3人が首を捻っていると、ニロの足元へ擦り寄ってくるプリン型パンちゃん。
「…ひとまず害意はなさそう?」
ニロはパンちゃんを抱き上げる。
どこか得意げな様子を見せるプリン型パンちゃん。
ニロの脳内に、思念波が送り込まれる…。
慢心セズシテ何ガ王カ!
「え、ギル〇メッシュ!?!!?」
「何はともあれ、これで!」
「えぇ、プリンアラモード完成ね!」
「やりました〜!初めての共同作業、大成功ですね♡」
「うん、ママ!」
「…まぁ大成功って事にしておきましょうか…。」
フウカは渋々といった表情ではあるが、頷く。
「…さて、まだ30分以上制限時間も残ってるし、まずは私たちで実食してみましょうか。」
「やったー!」
「うふふ、良かったですねニロちゃん♡」
フウカの提案のもと、テーブルの上に完成したプリンアラモードを配膳する。
「それじゃ、手を合わせて。」
「「「頂きます!」」」
3人はスプーンを手に持ち、それぞれ好きな箇所から食べ始める。
「それじゃ、私は早速プリンから!」
ニロはメインのカスタードプリンにスプーンを差し込み、カラメルがついた部分と本体部分をバランスよく掬う。
ぷるんっ。
「おぉ…すごい、ぷるぷるだ…!あ〜むっ…。!」
口に入れた瞬間、解けるように形が崩れるプリン。そこから口内に広がる生クリームと卵黄のコクのある風味、優しく舌を包み込む濃厚な甘味。くどさを感じさせない苦いカラメルのアクセント。
「甘〜い…。」
ニロはうっとりしながら頬を抑える。
「それじゃ、私はフルーツを…。」
フウカはスプーンで器用に盛り付けられたイチゴやみかんを掬い、口に持っていく。
「はむっ。…ん〜…」
フレッシュで甘酸っぱいイチゴ。
シロップがよく効いた甘みの強いみかん。
濃厚で後を引く甘みのメロン。
ねっとりとした食感のバナナ。
強い酸味で味をまとめてくれるサクランボ。
種類の違うフルーツ同士が互いの味を引き立て、食感の違いによるメリハリを演出する。
「うん…。これは、美味しいわね!」
「私はアイスから行っちゃいます♪」
ジュリは出来たてのキンキンに冷えたバニラアイスにスプーンを入れる。
シャーベットとジェラートの中間のような質感のバニラアイスをひと欠片、スプーンに乗せて口へと運ぶ。
「はぁむっ!…ん〜♡」
舌にのせた瞬間ほろりと溶けるバニラアイス。
鼻に抜けるバニラエッセンスの芳醇な香りとほんの少し感じる塩味、それによって引き立てられるコク深いバニラと生クリームの風味。
「美味しいです〜♡」
「ニロちゃん、私のバナナも上げますね♪ほら、あーん♡」
当たり前のようにあーんをしようとするジュリ。
(うっひょ〜!!!ジュリママのあーん…!というかこれ関節キスでは!?ま、まさか推しとイチャイチャ背徳母子プレイどころか関節キスできるなんて…!)
キモオタが爆発している本心を顔に出ないよう必死に押し殺し、あくまで恥ずかしそうな演技をしながら口を開けるニロ。
「ん、あーん…////…んむぅ…♡ジュリママのバナナ、ねっとりしてて濃厚…♡」
「…もしわざとならやめてくれない?」
「えぇ?私はただジュリママの白いクリームがたっぷりまとわりついた濃厚で太いバナナを味わっt」
「はっ倒すわよ?」
「ごめんなさい。」
フウカの無言の圧を受けたニロはふざけるのをやめた。
悪戯に虎の尾を踏むものではない。
「うふふ、美味しいですか?プリちゃん。」
「…やっぱりその子にも食べさせてあげるのね…というかまた安直な名前ね?」
「え〜?可愛くないですか?」
「いやまぁ、分かりやすくていいと思うけど…。」
パクパクと遠慮なくアラモードを食べるプリン型パンちゃん、名付けてプリちゃん。
\フシュルル!/
鳴き声とは別に、ニロの脳内に思念波が流れ込む。
粋がるな雑種。
「…美味しいらしいよママ。」
「うふふ、良かった♡」
流石に直訳を伝えるのは憚られたニロは優しい嘘をついた。
「ふう、ご馳走様…!」
「とっても美味しかったですね♪」
「えぇ、これなら流石に合格でしょう!よし、それじゃあ持って行きましょうか。」
フウカは笑顔でパンと手を叩き、出発を促す。
3人はテキパキと食器を片付け、食堂を出ようとする一行。
しかし、そこで異変が起きる。
「…!?うっ…ぐっ…。」
ニロが突然苦しそうにお腹を抑え、膝を着く。
「!?に、ニロちゃん!どうしたんですか?お腹が痛いんですか!?」
「な、なんか急に、お腹が痛いというか…い、異物感が…!」
「ちょっとニロ、大丈夫!?立てる?横にしましょうか?」
フウカも驚いてすぐにニロの側へ駆け寄り、横にしてあげる。
「うぐ…うぅうぅ…」
苦しそうにお腹を抑えるニロ。
「ニロちゃん!ど、どうしたらいいんでしょう!?」
「落ち着いてジュリ。とりあえずセナ先輩を呼んでこないとダメかしら…。」
フウカがゲヘナにおける救護活動を行っている部活を思い出し、助けを呼ぶため部屋を出ようとする。
しかし。
「…る…。」
「…ん?」
「はい?」
「…まれる…。」
「何?何か言ってるの?」
「ま、まさか遺言じゃないですよねぇ!?」
「ちょっと、不謹慎な事言わないで!?」
2人は困惑しながらも何かを口走るニロの口元に耳を近づけよく聞こうとする。
「な、なんか…産まれるぅ…!!」
「「え、産まれる!?!?」」
「な、なんか触手の付け根あたりから、その、い、異物感が…」
突然の爆弾発言をかますニロ。
「ちょ、え!?う、産まれるって何が!?何を産むつもりなの!?」
「に、ニロちゃんいつの間に交〇を!?」
「〇尾言うな!!」
「いや…した覚えないんだけど…!うぅ、おなかいたい…。」
ニロは蹲ってお腹を抑えている。
「ど、どうしたらいいの!?というかそもそもそれ産んでいいものなの!?」
「と、とりあえず私、お湯とタオル持ってきます!」
ジュリは慌てて駆け出し、フウカは頭を抱えて焦っている。
そもそも人間なのかパンちゃんなのかも分からない人型の何かがいきなり産気づいているのだから当然である。
「だ、大丈夫なのニロ!?お腹痛いって、別に下してる訳じゃないんでしょう!?」
「いや、むしろ感覚的にはうん〇出そうな時に近いんですけど…。」
「嘘でしょ!?ここで出すの!?」
「そ、それが感覚はお尻じゃなくて触手の付け根辺りで…ほなう〇ちちゃうかぁと…。」
「そ、そうなの?ならいいか…いや良くないわ!?それはそれで何が産まれるの!?」
「わ、分からないですぅ…!」
フウカに支えられながら触手を震わせいきむニロ。
するとジュリが戻ってくる。
「お湯とタオル持ってきました!」
「あ、ありがとうジュリ!タオル絞って汗拭いてあげて!あともう1枚は…と、とりあえず触手の付け根に当てたらいいのかしら?正解が分からなすぎるしそもそも普通の出産にも立ち会ったことないから何も分からないんだけど!?」
「あ、やばい!ほんとに出る!うぐっ…!」
「嘘!?ほんとに!?ほんとにこのままなんか出しちゃうの!?」
「がんばってニロちゃん!ひっひっふー!ひっひっふーですよ!」
「ち、ちーふーふー…。ちーふーふー…。」
「え、姉弟子!?」
「ふざけてる場合じゃないでしょ!と、とにかくもう仕方ないからそのまま出しちゃいなさい!」
「う、う"〜!」
ジュボッ!
「あ、良かった!足が…出…ま…」
ジュリが4本の触手の根元にある穴から何かが出てきたのを見て安堵する。
しかし、その出てきたものは。
うじゅるっ…にちゃっ…
「「きゃあぁあああぁぁぁぁぁああぁあぁあ!!?!?」」
ニロの自前の触手よりは細身の、
「に、に、ニロ!!ニロの穴から、新しい触手がぁあああぁあ!?」
「ま、まさかニロちゃんがその、え、エッチしちゃった相手ってぱぱぱパンちゃん!?」
「あっ、ちょっとスッキリした…って待って!?何産んだの私!?フウカ先輩!?ジュリママ!?私の身に何が起きてるの!?」
「ひいぃいいぃ!?わ、私どうしたらいいの!?いくらなんでもこれはうちで育てられないわよぉ!?」
「で、でもよく考えたらニロちゃんも推定ではありますがパンちゃんの突然変異なんですもんね!?それならパンちゃんとシちゃうのも自然なんですか!?で、でもママが知らないうちにそんなマセてたなんて!キャーッ!/////」
「私が言うのもなんだけど2人とも落ち着いてくれない!?というかなんかまた背中に違和感が!ぜ、全部出そう!うぅ…!」
ニロは腰部に感じる違和感を拭うべく、触手の根元に力を入れていきむ。
そして…
ぬぽんっ!
「いやぁああぁ全部でたぁぁあ!?」
「げ、元気な子が産まれるのは嬉しいですけど予想外すぎて心の準備がぁ!?」
慌てふためく2人。
しかし、3人の目の前に産まれてきたのは。
「ふぅ、スッキリした…。で、でも何が産まれ…て…。」
\ウシャァァァァァ!!/
「「「プリちゃん!!?!?」」」
なんとニロの触手の根元から産まれてきたのは先程ジュリが生み出したプリちゃんと瓜二つの個体だった。
「…え?これどう見てもプリちゃんですよね!?」
「じゅ、ジュリが作っちゃったやつとそっくりね…?」
「えぇ…?な、なんで…?私がプリン食べたからってこと…?」
「いや私に聞かれても困るわよ…そ、その、声は聞こえるの?ほら、貴方パンちゃんの言葉分かるって言ってたでしょ?声が聞き取れるならパンちゃんなんじゃない?」
「た、確かに…えーと…。」
ニロは目を閉じて意識を集中し、目の前で触手を蠢かせているプリちゃんらしき生物に思念を送る。
問オウ。貴方ガ私ノマスターカ?
「え、アルトリア・ペンド〇ゴン!?」
「と、とりあえず声が聞き取れるなら、パンちゃんって扱いでいいのかしら…?」
「そもそもパンちゃんが意味不明な生物ですし、もうそういう事でいいんじゃないですかね?」
「うふふ、ニロちゃんに似て人懐っこい子ですね?ほら、おいで?」
\フシュルル!/
何ヲ言ッテイルノデスカキリツグ!
「声真似セイ〇ーみたいな事言ってるけど?」
「うーん…。もう考えるのも疲れたわ…とりあえず暴れたりもしてないし、一旦保留にしない?プリンも持っていかないとだし…。」
「…そうですね。考察はまた時間がある時に…。」
「やっ♡ちょっとプリちゃん、オイタはダメですよ♡」
「当たり前みたいにヌメヌメするな!!」
「ジュリママ、もしかしなくてもパンちゃんの事そういう目で…。」
「ちちち違いますっ!親子のコミュニケーションですっ!!」
その後、とりあえず2匹のパンちゃんはキャベちゃん同様外出時のみしっかり施錠することを気をつけて一時的に給食部で飼う事にした。
「はぁ…もう疲れたんだけど…。」
「うふふ、家族サービスおつかれさまですパパ♡」
「何が家族サービスよ!?」
「あはは…すみません変なの産んじゃって…。」
「いや、産まれるのはもう体質的に仕方ないかもしれないから良いんだけど…いや良くはないわね…?今後も何か食べる度産まれるの…?」
遠い目をするフウカ。
そもそもパンちゃんに食事が必要なのかとか、排泄とかどうしているかとか疑問は絶えないが、少なくとも面倒事は確実に増えてしまった。
「…まぁ今考えても仕方ないわね。とりあえず万魔殿に戻りましょうか。」
「分かりました!」
「イブキちゃんたち、喜びますかね?」
3人は笑顔で完成したプリンアラモードをクーラーボックスへ詰め込み、食堂を出る。
「よし!それじゃあ万魔殿へ、出発よ!」
「「おーっ!」」
[パンちゃん図鑑 No.002]【キャベちゃん】
危険度:D
通常型パンちゃん以外で初めてジュリが産み出した突然変異型パンちゃん。
キャベツの千切りをジュリが盛り付けることによって発生するようだ。
見た目はマリモのような円形で、全身からキャベツの千切りに酷似した細長い触手が生えている。
元が唐揚げの付け合せ用の量だったからか、配膳用のお皿に乗る程度には小柄であり、動きも機敏。
触手からはマヨネーズやドレッシングのような白い粘液を分泌することができ、キャベちゃん自身の味もドレッシングのかかったキャベツの千切りそのものである。
強いて言うならパンちゃん特有の分泌液のせいで、ローションのような感触と味もするため手放しで味は美味しいとは言えない。
基本的には温厚であり、自ら攻撃を仕掛けることは少ないが、ニロの命令によって行動する時や、自らを食させようとする時には容赦なく身体能力を発揮する。
数匹の群れで行動し、動きが速く小柄なため射撃による討伐は困難。
複数体で獲物を撹乱し、瞬く間に口内に滑り込み自らを食させる。
ちなみにビタミンCやビタミンU、通称キャベジンが豊富で、摂取する事で免疫力の向上や美肌効果、消化器の粘膜保護などの効能がある。