ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜 作:Di Gi O
今回と次の話で第1章は終了となる予定です!
今のところ間章を挟みつつ原作ストーリーに介入していく流れにしようと思っていますが、作者はブルアカの原作知識については本当ににわかもいい所ですので、もしキャラ崩壊や矛盾点などがありましたらお気軽にご指摘くださいませ……。
〜前回のあらすじ〜
プリンアラモードを完成させ万魔殿に戻った給食部たち。
突然始まったバラエティ番組のような採点方式に困惑しつつも合格を勝ち取り、麦焼ニロは晴れてゲヘナへの入学を許可された。
住む場所もゲヘナ学生寮、フウカとジュリの隣の部屋に住むことが決定し、ようやく生活の目処が立ったニロ。
お祝いのお泊まり会を開催する前に、ニロはキヴォトスでの必需品たる銃を買いに行くため、フウカとジュリとともにガンショップへと向かうのだった。
ゲヘナ自治区。
そこはまさしく混沌の領域。
そもそもゲヘナ学園自体が授業に出席する真面目な生徒は全体の半数以下、自治区内で最も静かと評されるアラバ海岸ですら年間の事故・事件数が100件以下ならいい方という無法地帯っぷりである。
そんなゲヘナのガンショップが位置する商業地区。
となれば当然……。
「Here We Gooooooo!!!!! Lets Party!!!!」
「紅だァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
ズダダダダダ!!!!
バンバンバン!!!!!
ドカァァァァァァン!!!!!
「「「……。」」」
目の前に広がるのは地獄絵図。
既に目的だったガンショップは全壊しており、店主も店員も既に逃げたのか見当たらない。
ヘルメットを被った集団とスケバンの集団が互いに銃器をぶっぱなしあっており、グレネードランチャーやロケットランチャーなどの爆発火器まで持ち出している始末。
「……どうします?」
「どうしますと言われても……。流石にあの戦いに突っ込んでいく気になれないんだけど……。」
「うぅ、でもこのままだとニロちゃんの銃が買えませんし……。」
3人は顔を見合せ悩む。
ジュリもフウカも戦えない訳では無いが、少なくとも2人とも戦闘力はお世辞にも高いとは言えない。
それに荒事も元来好きではないのだ。
いくら目的があるとはいえ、数十人の撃ち合いのど真ん中に突っ込んでいくことはできない。
というかそもそも目的のガンショップぶっ飛ばされてるわな。
「まぁ、銃くらい後で買っても大丈夫でしょ……。帰りましょうか……?」
ニロが触手をだらんと垂らしながら言う。
しかし、その言葉に素早く反応したのはジュリだった。
「ダメです!うちの子を全裸以上の危ない姿で歩かせるなんてママが許しません!」
「え、全裸以上!?」
驚愕のあまり自然に突っ込むニロ。
「まぁ……ジュリの言ってることも大袈裟って訳じゃないのよね……。ゲヘナ……というかキヴォトスは銃社会が極まってるから、例え撃たないんだとしても見える位置で銃を持ってないと直ぐにカツアゲとかのターゲットになるの。」
「な、なるほど……。分かってたつもりだったけど、そんなに深刻なんですね……。というかその理論なら今の私って……。」
「とんでもないド変態ね。」
「全裸なのに何故か靴下と手袋だけ付けてるレベルの変態さんです♡」
「そんなに!!?!?」
途端に自分の体を自分の腕と触手でギュッとかばうニロ。
例えるなら服を着ていたはずなのに気がついたら全身から剥ぎ取られていたようなそんな感覚である。
「な、なんか改めてそう言われると途端に恥ずかしくなってきたんだけど……。」
「いや、あくまで例えであって銃を持ってないからって別に猥褻って訳じゃないから……。」
「だとしても、うちの子がそんな無防備なのはママとして見過ごせません!ハンドガンでもいいので何とかして手に入れないと……!」
ジュリが意気込んで宣言。
しかし現実問題あの数は3人では制圧できない。
ましてやニロは空手なのだ。
「うーん……他に店があったりは?」
「近くにコンビニはあるけど、銃弾とグレネード類ばっかりでパーツとか銃本体はないわね……。」
「銃弾とグレネード類はあるの???」
「あるわよ?」
「あるんだ……。」
文化の違いに困惑しつつも受け入れるニロ。
そうなるとやはり銃はガンショップでないと手に入らないようだ。
「どうすればいいでしょうか……。」
「うーん、別に倒さなくても、不良たちが戦えないようになってくれればいいんですよね?」
「それはそうだけど、そんな方法なんて……。」
「いや、1つ思いついたんです。」
「思いついた?」
何かを思いついたらしいニロ。
フウカとジュリが首を傾げる。
「フウカ先輩とジュリママが私と初めて会った時のこと、覚えてます?」
「覚えてるわ。というか今朝……なんなら今日のお昼の話だし。」
「その時2人がパニックになったと思ったら、急に寝ちゃったんですよ。その時私の触手からなんかガスみたいなのがふわふわ出てて、多分2人が寝ちゃったのってそのせいかなって……。」
「それ先に言いなさいよ!?アンタめちゃくちゃバケモンじゃない!?」
「それはそう!!ごめんなさい!!!」
腰を折って全力謝罪するニロ。
普通に催眠ガス散布してるのはもはやテロ行為もいいところである。
「……いやよく考えたら起きたあともなんかニロが踊ってたりして聞くべきことを聞いてなかったから、まあ私達も悪いといえば悪いけど……次からそういうことは直ぐに教えなさいよ?」
「善処します……。」
「で、でもそれを使えばあそこで暴れてる人たちもすぐ眠らせられるんじゃないですか?」
ジュリは希望が見えたと言わんばかりにパンと手を合わせる。
「いやいや、吸って大丈夫なのか検証もしてないガスをばら撒くなんて流石に危ないでしょう?ここは素直に風紀委員会にでも通報して……。」
「でもフウカ先輩、あそこにいるのって……?」
「へ?」
ニロが触手で指した方向を見るフウカ。
そこでは。
「イヤーッ!!!!!」
「ンアーッ!!!!!!」
「ザッケンナオラーッ!!!!!!」
「ンアーッ!!!!!!!!!」
そこでは見慣れた風紀委員の制服を着た生徒が、不良たちの一斉砲火を受けボコボコにされていた。
「……ボコボコにされてますけど……。」
「……言われてみれば、最近どこに行っても風紀委員会の子達見てたし……そりゃ疲れも出るわよね……というかよく考えたら不良たちもやけに装備が良いというか……。」
フウカの言う通り、不良たちが普段使うものと言えば精々旧型のアサルトライフルやサブマシンガンが関の山なのだが、目の前で戦火を広げている不良やスケバンたちの装備は官制の新型銃器やグレネードランチャーなどの爆破武器が大半。
売っていないことはないが、価格や維持費も高く不良たちはあまり好まないはずのものばかりである。
「そういえば、最近はいつにも増して治安が悪かったですね。」
「そうね。ニュースでも毎日事件の報道ばかりしてるし、噂じゃ連邦生徒会長が失踪したなんて情報も流れてきてるし……。」
(今サラッと言ったけど、そうか……今って原作開始前なのか……。)
ニロの言う通り、ブルーアーカイブ本編はプレイヤーキャラクター、そして主人公たる先生がキヴォトスに赴任する所から物語が始まる。
そしてその直前に連邦生徒会長が失踪する。
その噂が流れており、治安が悪化しているということは先生は未だ到着しておらず、連邦生徒会も対応できずに手をこまねいている状況という訳だ。
道理でこのお祭り騒ぎである。
「風紀委員会の皆さんがやられている今、ゲヘナであの人たちを止められる正規の戦力はいないはず!つまり、私たちがやるしかないんですよ!さぁニロちゃん、やってしまいなさい!」
ジュリは元気よくニロに指示を出す。
「ほ、ほんとにやるの……!?ど、どうなっても知らないわよ……!?というか私達もガス吸っちゃわない!?」
「うーん……自分でもあの時は無意識だったので、なんとも……。とりあえず2人は後ろに下がっててください。なんとか前に向かってガスを出してみます。」
「わ、分かったわ……。」
「はい!任せましたよ♪」
おずおずとニロの背中側に移動するフウカとるんるんと気分よく移動するジュリ。
授業参観に来たバカ親のような様子である。
「よし……えっと、たしか前は触手の力を少し抜いて……感覚的には……長くため息をつくような……。吹奏楽やってたの思い出すなぁ……。」
前世の思い出を振り返りながら、紫色の生々しい触手をゆったりと脱力させ、先端に意識を集中させるニロ。
すると触手の先端がほんの僅かに開くような感覚。
やがて、淡い水色のガスが放出されていく。
シュオオォオォォ……
風に乗って不良たちがいる方向へと飛んでいくガス。
「ユニバアアアアアアァァァァァァァァァs……zzz……」
「なんとおおおおォォォォォォォォ……zzz……」
ドサッ……バタッ……。
ガスを吸った途端に順番に倒れていく不良たち。
「おい!なんだ!?なんでいきな……り、た……ぉ……zzz……」
「なんだこれ!クソッ、ガスグレネードか!?」
「おい!あっちから水色のガスが!」
「アイツらか!楽しくやってる所に水差しやがって!」
ガスの出処に気づいたらしい不良たち。
怒り狂いながら銃を持って給食部たちの元へ走ってくる。
「うわ!バレましたよ!?」
「そりゃバレるわよ!どうするの!?」
「と、とりあえず応戦するしかありません!フウカ先輩!」
「あーもう!!厄日よ厄日!!」
ジュリの指示でひとまず銃を構えるフウカ。
「ニロちゃんはそこにいてください!私たちで守りますからね!」
「わ、わかった!」
「睡眠ガスはそのままにして!できるだけ風上で戦うから私たちのことは気にしないで!」
「分かりました!」
ニロに指示を飛ばして前線で戦うふたり。
しかし。
ぎゅるるるる……。
「……うぅ……なんか、お腹がギュルギュル鳴って……力が抜ける……。」
へたっ。
途端に触手から出ていたガスが止まり、ニロは触手をへたらせながら座り込んでしまう。
「え!?ちょっとニロ、大丈夫なの!?」
「ニロちゃん!?お腹が痛いんですか!?」
「いや……なんか、力が抜けちゃって……。……も、もしかして……」
「が、ガス欠!?」
いくらニロの身体が常識の埒外たる変異パンちゃんボディとはいえ、無から永遠にガスを生成して分泌し続ける事はできない。
気体が霧散していく屋外で長時間ガスを放出したニロは、体内に保持していた催眠物質を全て使い切ってしまったのだ。
「よ、よく考えたらそりゃそうよね!?体から永遠にガス出せるわけないものね!?」
「お前ら!!よくも茶々入れてくれたなぁ!」
バンッ!バンッ!ズドンッ!
「痛っ!?うぅ、このままじゃ……。」
元より多勢に無勢。被弾し、少しずつ押されるフウカとジュリ。
へたりこんだニロは焦り始める。
「ど、どうしよう……!その辺の石なんて投げたって意味ないし、触手で戦うにも多すぎるし……!」
ニロは必死に考える。
「何か、何かないの!?何か……!?」
ニロは自分の服をまさぐって何か状況を打破できる物がないか探す。
すると、エプロンのポケットに何かの感触を感じる。
何かの包装のような。
「……これは……。ガム……?」
ポケットの中に入っていたのは、個包装の銀紙に包まれたガムだった。
めくってみると、中に入っていたのはミントっぽい色のガム。
「うわぁ、懐かしい。出勤中に眠気覚ましに噛んでたなぁ……って、こんなの役に立たないし……。あれ、でも……。」
ニロは思い出す。先程万魔殿に献上品したプリンアラモードを作って試食した時、突然触手に違和感を感じ苦しんだと思えば、根元の穴からプリちゃんが生まれた。
そして今のところ、この世界に転生してからいわゆる便意を感じていない。
では、自分が食べたものや飲んだものはどこへ行ったというのか。
「もしかして……私が食べたものって、全部パンちゃんになるか、体の中に貯まるの!?」
ニロは驚愕する。
排泄いらずで吸収した栄養を全て種の反映と生命の存続にフル活用できるのは生物としては凄まじい性能だが、だとしても色々と法則に反している気がする。
ニロのような生物が増えればたちまちキヴォトスからありとあらゆる食料と動植物が消えるだろう。
「わ、私ってとんでもない生物兵器なんじゃ……で、でも、もしそうならこのガムを食べれば……。」
ニロは手のひらの上のガムを見つめる。
ガムとは本来ある程度噛んで味が無くなれば口から出して捨てるのがメジャーだと思われるが、もしこれを飲み込んで吸収すれば、何かしらガムの特徴を備えたパンちゃんを産み出すことができるのではないか。
「先輩たちもまだ戦ってくれてるのに、ずっと隠れてる訳にもいかないし……や、やるだけやってみるしか!」
ニロは覚悟を決め、包装紙をめくって口にガムを放り込む。
噛み始めるとたちまち砕けるコーティング、中から溢れ出すミントの強い香味と僅かな甘み。
しかし味わっている暇はない。
ごくんっ。
「うぇ、普段吐き出すものを無理やり飲み込むのって変な感じ……。と、とにかくこれで予想が当たってたらパンちゃんが産まれるはず……!」
ニロは祈るように触手の根元に意識を寄せる。
すると数秒後、触手の根元に違和感が。
「……!き、来た!なんかぎゅるぎゅる言ってるけど、この感覚は前と同じ!……産まれるって分かってたらしんどいのもちょっとマシかも!よし、で、出てこい役に立つパンちゃん!」
ぐっと触手の根元に力を入れていきむニロ。
やがて……。
ブチュウッ!
「うわっ!で、出た……!」
ニロの触手の根元から、新しい触手がおぞましい音を立てながら産まれてくる。
その触手は自ら穴から這い出てくるように動き、やがてボトリと地面に落ちる。
\シュイイイイィィィ……。/
産声をあげるパンちゃん。
それは僅か5cm程にも満たない小さなパンちゃんだった。
体色は薄い緑と水色が混ざったような色で、触手は他のパンちゃんに比べ遥かにブヨブヨとしており地面に引っ付いて伸びている。
本体は長方形で硬いコーティングに覆われており、トッピングのようにミントのような形の葉が1枚くっついている。
「おぉ……ミントガムそのまんまだ……よし、君を仮称『ガムちゃん』とする!」
ビシッと指を指し命名するニロ。
\シャ。/
ピッと触手を立て返事をするような鳴き声を上げるガムちゃん。
するとニロの脳内に翻訳された言葉が流れ込む。
イキマスワヨ。
「あ、そんなお嬢様みたいな口調なんだ……。」
なんともいえないシュールな口調に困惑するニロ。
しかしフウカとジュリが教えてくれている今、時間を無駄にはできない。
「と、とりあえずあそこの二人を助けてくれないかな?あの不良たちを何でもいいから無力化できる能力とか持ってる?」
ニロはしゃがみ込んで産まれたガムちゃんに話しかける。
するとガムちゃんは自分の胴体のコーティングを自分の触手で擦りまくる。
だんだん剥がれてくるコーティング。
そして剥がれたコーティングは粉末状になり、べっとりとガムちゃんの擦られた触手に張り付く。
オマカセ。
「え?あ、ちょっと!」
ニロの制止も聞かず、ガムちゃんは前線へとぴょんぴょん跳ねていく。
ズドン!ズドン!バババババ!
「あいたっ!もう!!いくら撃っても無限に出てくるじゃないの!!」
「うぅ、もう弾切れしそうです……。」
フウカとジュリは劣勢だった。
当然ながら撃ち続けていれば銃弾も尽きる。
弾切れが近い二人は無駄に牽制射撃をすることもできず、わらわらと出てくる不良に押されていく。
「ぎゃはははは!私たちの邪魔するからそうなるんだよ!!」
「大人しく身ぐるみ剥がされるがいいや!あははは!!」
銃を乱射しながら声を張り上げる不良たち。
いつの間にか元々撃ち合っていた勢力がどちらもフウカたちを狙っている。
ヘイトを買いすぎたらしい。
「うぅ、このままじゃジリ貧よ……。」
「に、ニロちゃんは無事でしょうか?」
二人は後ろにいるはずのニロをちらりと見る。
すると、そんな2人の足元を、何かがぴょんぴょんと跳ねていく。
「……?何、いまの。バッタ?」
「こんな所にバッタなんて生息してましたっけ?」
二人は飛んで行った影を目で追う。
その影はよく見ると、触手のようなものが生えており……
「……ねぇ、あれって……。」
「パンちゃん!?まさかニロちゃんが新しいパンちゃんを!?」
フウカはいつもの顔( 눈_눈)でその生物を見つめ、ジュリはニロが生み出したとすぐに察する。
「……何するか分からないけど、とりあえず隠れましょう。巻き込まれたくないし。」
「一体どんなパンちゃんなんでしょう?」
二人は物陰へと走って隠れ、様子を伺う事にした。
「オラオラオラァ!隠れてないで出てこぉい!」
ズダダダダダ!!
アサルトライフルを乱射しながら、物陰に隠れた二人を追い詰める不良たち。
しかしそこに。
「そんなちっこい瓦礫なんてグレネードで1発だぞぉ!諦めて出て」ヌチャッ。「……ん?うわ!?なんだこいつ!?」
ヌチャッ!ピチャピチャピチャッ!
足に何かが張り付いたと思えば、触手を動かし足を凄まじい速度で登ってくる謎の生物。
「うわぁああぁぁ!?キッショォオオォオオォォ!?」
不良はパニックになり銃を投げ捨てて暴れ回る。
「お、おい!?何してんだ!?うわ!?なんだその化け物!?」
「ひぃいいぃ!?だ、誰か!?誰か取ってくれ!?」
あっという間に顔面まで登ってきたそれは、そのまま不良の目元まで体を動かし這い上がる。
そして……。
シュッ。
「痛"ァ"ア"ア"ァ"ア"ァ"ア"ア"ア"ァ"ア"!!?!?」
なんと自らの体のコーティング粉末をたっぷりと擦り込んだ触手を、不良の眼球に直に押し当てた。
おぞましき目潰しである。
「目がァ!!?目がぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
両目を抑えて号泣しながらゴロゴロと転がりのたうち回る不良。
「ひ、ひぃいいぃぃ!?なんだ!?何なんだ!?」
「お、おい!あいつに張り付いてた化け物、どこ行った!?」
他の不良たちがパニックになる中、1人が化け物の居場所が不明になったことに気づく。
慌てて周りを見渡すが、どこにもいない。
ヌチャァッ……。
「……へ?」
ふと、自らの足元から妙な音が聞こえた事に気づいた不良の1人。
錆び付いているかのような動きで首を下に向けるが、そこには何もいない。
強いて言うなら、
シュッ。
「あ"ばぁ"あ"あ"ぁ"ああぁぁぁあ!!?!?」
何が起こったかも理解できないまま、突然両目の激痛に襲われる不良。
「ま、またかよ!?何なんだ!?何が起きてるんだよ!?」
それを見た不良はなんとか化け物を捉えようとするが、信じられないスピードでバッタが如く跳ね回るそれは決して銃で撃ち落とすことはできない。
そして。
パシュッ!パシュパシュッ!
跳ね回っていた影の触手のシルエットが数回高速でブレる。
その直後。
ビチャッ!ビチャビチャッ!
「うがぁ"あ"ぁ"あ"あぁあ!?」
「あだぁ"あ"あ"ぁ"ぁあ!?」
「ぐあ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁあぁぁ!?」
数人の不良が一斉に目を抑え転がり回る。
「う、うわぁあああぁあぁあ!?」
「な、何なんだ!?クソッ、ロケットランチャーだ!全部ぶっ飛ばしちまえ!」
ヤケクソ気味に1人の不良がロケットランチャーを構える。
動き回る影が直線的に飛んでいく先にエイムを置き、引き金を引こうとする。
「死ね、化け物ッ!」
指先に力を入れ、発射する直前。
目の前が、水色に染まる。
「うがあぁぁあぁあ!?目がぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
ロケットランチャーを持っていた不良はあまりの痛みに照準を大きくずらしてしまい、自らの足元へ。
思わずそのまま指を引いてしまい、弾頭は真下の地面へと叩きつけられる。
ドカァアアアァアァアン!!!!!
「ギャァァァアァァァァァァ!!?!!?」
最後まで化け物の姿をまともに捉えられないまま、数十人で戦っていたはずの不良たちは自らのミサイルやグレネードによって自爆し、全員が戦闘不能となったのだった。
「「……」」
フウカとジュリは唖然とし、その光景を最後まで見守っていた。
「……ねぇ、ジュリ。見えた……?」
「は、はい……見えました……。あ、あのパンちゃん、触手を不良の皆さんの目にねじ込んで、粘液と何かの粉みたいなのを塗り込んでました……。」
「それだけじゃないわ……。遠くにいた不良にも、すごい速さで触手を振って、粘液と粉が混ざったのを目に狙い撃ってた……。あ、あれ失明とかしないわよね?」
「……と、とにかく!これで不良さんたちも大人しくなりましたし、勝ちなんじゃないでしょうか……?」
「え、えぇ……?い、良いの?本当にこれで良いのかしら……?」
二人が困惑しながら話していると。
「おーい!フウカ先輩!ジュリママ〜!」
「……あ、ニロちゃん!大丈夫でしたか?怪我は?」
「私は大丈夫だよ!そっちこそ大丈夫!?ずっと戦わせてごめんなさい!」
「あーいや……結果的に私達も怪我してないからいいのよ……そ、それよりあのパンちゃんは何?今気絶してる不良の口に無理やり潜り込もうとしてるあのパンちゃんは……。」
「あー、その、多分ガス欠なのか、催眠ガスが出なくなっちゃいまして。それでなんとか他の方法で助けないとって思って色々探したら、服のポケットからミント味のガムが出てきて。それでもしかしたらさっきのプリちゃんみたいに、ミントガムのパンちゃんが産まれないかと思って試しにやってみたら……。」
「銃弾より速いスピードで跳ね回りながら粘液と触手で目潰しするとんでもない生物兵器が産まれたのね?」
「そういう事ですね。」
「貴方バケモンじゃないの!!?!?」
「それはそう!!!!」
否定しようもない指摘に声をあげるニロ。
「凄いですね!あの子がいれば銃の撃ち合いをしなくても安全に制圧できます!」
「いやどこが安全よ!?あれ本当に目は大丈夫なの!?」
「うーん……まぁ悪いのは暴れてた不良ですし、気絶したのも自爆したせいですし。ミントのスースーするメントールって、確か目薬にも入ってたりするんじゃないですっけ?案外目にいいかもしれませんよ?」
「いやめっちゃ痛がってたじゃない!もう少し人の心とかないの!?」
「あぁ、アイツが全部持って行っちまったからな。」
「え、禪院〇希!?」
怒涛の激ヤバ発言をする2人に絶えず突っ込むフウカ。
戦っていた時より疲れているように見える。
「はぁ……と、とりあえず、ここまでやったんだから最初の目的くらいは果たさないとよね……。」
「そ、そうでした!私たち、ニロちゃんの銃を買いに来たんでした!えっとガンショップ……。あ……。」
3人は当初の目的のガンショップがあった場所を見る。
しかし。
メラメラ……パチパチパチ……
「……何も無いですね。」
「強いて言うなら瓦礫と灰がありますね。」
「……これ私達も何かしら罪に問われるのかしら?」
かつてガンショップだった何かは、今や炎上する瓦礫と灰の山となっており、銃器はおろか弾薬や火薬すらまともに残っているとは思えなかった。
「よく考えたら仮に銃が無事だったとしても、店主さんも逃げてるからお金払って買えないし……。」
「こ、この戦いはなんだったの……?私たち、何のために戦ったの……?」
「キラ・ヤ〇トみたいなこと言ってますね。」
「やかましいわよ……。はぁ……。」
途方に暮れる3人。
そんな時。
スタスタ……。
誰かの足音が、後ろから近づいてくる。
「?後ろから誰か……来、て……。」
最初に気づいたニロが振り返り、その足音の元を見る。
そこに立っていたのは、長い白髪と大きな角、背負われた巨大なLMGが目立つ切れ長な目の少女だった。
「動かないで、風紀委員会よ。ここで何があったのか詳しく聞かせ……待って、貴方は……。」
「そ、空崎ヒナちゃん!?」
「ふ、風紀委員長!?なんでここに!?」
風紀委員会委員長 空崎ヒナ、現着。
[パンちゃん図鑑 No.004]【ガムちゃん】
危険度:B
ニロがガムを食べることで産まれたパンちゃん。
今回はミント味だった為、ミントガムに似た堅い長方形の胴体から爽やかな青緑の触手を生やした姿で、胴体の上にはミントの葉のようなものが乗っている。
全長は5cmあるかないか程で、銃弾で狙い撃つ事は至難の業。
その触手はガムのようによく伸び、何にでも張り付き、粘り強い。
その特性を活かし、まるでスーパーボールのように跳ね回っての高速移動と、粘着力を活かした3次元的な動きが可能。
さらに生成元のガムの味によって様々な特殊能力を持ち、ミント味であればメントールを含んだ粘液と胴体甲殻を削り出した粉末による目潰しが可能。
高速で触手を振る事で、粘液を飛ばす中距離攻撃までできる。
高速移動、小柄な体格、目潰し、粘液発射。
並大抵の実力では瞬く間に視界を潰され、口内に潜り込まれて爽やかミントと凄まじい苦味が混ざった味を感じることになるだろう。
ミントミントミントミントミントミントミントミント。