ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜   作:Di Gi O

9 / 15
 いつも閲覧、評価、ここすき、コメント、誤字報告などありがとうございます。
 今回で序章は終了となります!
 まずはここまでのニロの物語を読んで下さりありがとうございました!
 次回からはゲヘナ生との交流を少し間章として挟み、その後原作に介入していく流れになると思われます!
 今後とも素人の駄文となりますが、何卒お付き合いをよろしくお願いします!






 〜前回のあらすじ〜

 万魔殿、羽沼マコトから課せられた編入試験をなんとかクリアした給食部たち。
 当面の生活の目処が何とか立ったニロに対し、フウカは次は銃が必要だとアドバイス。
 3人はゲヘナ自治区内のガンショップへと向かうことに。
 しかし現在は先生が来る前、連邦生徒会長が失踪しているタイミング。
 治安が悪化した街中はそこかしこで騒動が起きており、当然ガンショップも既に破壊され不良たちが銃撃戦を繰り広げていた。
 ジュリとフウカは応戦するが多勢に無勢、武器を持たないニロはなんとかアシストすべくたまたま服に入っていたミントガムを食べて新たなパンちゃんを産みだす事を狙う。
 結果産まれたミントガムのパンちゃん、『ガムちゃん』はその身体能力を活かして縦横無尽の大活躍、なんとか不良たちを制圧することに成功した。
 しかしガンショップは既に破壊されており、どちらにせよ銃は手に入らないので途方に暮れていた3人。
 そこにゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナが突然現れたのだった。


第8話 私の名前は麦焼ニロ

 ニロたちが銃を買いにゲヘナの商店街地区へと向かった同時刻。

 風紀委員会本部にてヒナとアコの2人はげっそりとしていた。

 

「……。」

 

 死んだ目で機械のようにひたすら書類を捌いていくヒナ。

 震える手でアコの煎れてくれたコーヒーの入ったカップを口に運ぶ。

 そんなヒナの元に書類を持ってくる一般風紀委員。

 

ジャアアァァァ……

 

「委員長、この書類についてnってえぇぇぇ!?委員長!!零れてます!!!全部机の上の書類に零れ出してます!!」

 

「何?零れてる?アコの胸はいつも零れてるでしょ。」

 

「いや行政官の胸部の事ではなくて!!」

 

「……あぁ……本当ね……。」

 

 ヒナは今気づいたようで、茶色に染まりインクが滲んだ書類をゴミ箱に丸めて投げ捨て、タオルで机を拭く。

 その姿を見て心配する一般委員。

 

 

 

 

「委員長、お言葉ですが少し休んだ方が良いのでは……?というかそのタオル、えらく丸い形というか、布地が変な感じですね?」

 

「え?あぁ、これね。アコが制服から切り取った布地。」

 

 

「え、行政官って自分で制服切り取ってたんですか!?あの横乳の為に!?」

 

「えぇ。もったいないからタオルにしてるの。」

 

「まず横乳丸出しを止めさせませんか!?」

 

「あぁもう、うるさいですよ貴方。委員長が仕事に集中できないでしょう?」

 

「半分ほどは貴方が原因なのですが!?……って、行政官。あなたも随分げっそりされているではないですか……。」

 

 近くで仕事をしていたアコの小言に突っ込み返す一般委員。

 当のアコ本人も目の下に深い隈を作り、虚ろな目をしている。

 

「当然でしょう……ここ数ヶ月の治安の悪化は目に余ります。万魔殿のタヌキ共は相変わらず仕事をせず、事件は増える一方。先程帰ったばかりのイオリとチナツもまた緊急出動してしまいました。我々に休む暇など無いのですよ。」

 

 アコはコーヒーをグイッと飲み込んでため息をつく。

 

「はぁ……。アコ、恨み言を言っても仕方ないわ。起きている事件を解決できるのは私たちしか居ないんだから、まずは目の前の仕事を終わらせないと。」

 

 ヒナが諌める。事実としてヒナが言っている事は正論であり、このゲヘナにおいて積極的に治安を維持しようと動く勢力は風紀委員会くらいのものであり、彼女らが崩れれば辛うじて学園の体裁を保っているゲヘナの風紀は瞬く間に崩壊するだろう。

 しかし、そんな彼女らを嘲笑うような報告が、一般委員から伝えられる。

 

「あの、大変恐縮なのですが……また、緊急出動要請が出ていまして……。」

 

「また!?またなんですか!?」

 

 アコが机を叩いて立ち上がる。

 

「アコ、うるさい。その子は悪くないでしょう。」

 

「はっ!も、申し訳ありません!」

 

 アコはすぐ詫びを入れ、席に座る。

 

「はぁ……それで、要請はどこが出してるの?下手人は誰?温泉開発部?それとも美食研究会?」

 

 ヒナが尋ねる。

 

「いえ、騒ぎを起こしているのは有象無象の不良たちです。商業区画で二つの勢力が抗争を起こしているようで、その地区でガンショップを営んでいる方から通報があったのですが……。なんでもその不良たちの装備が妙だったらしくて。」

 

「妙?具体的には?」

 

「えっと、大抵不良たちが使う爆発物と言えば、IED(即席爆発装置)や市販のグレネード、使い捨てのロケットランチャーが関の山なのですが……そこの不良たちは装填式の誘導ランチャーやナパーム弾を使用していたとの報告が。監視カメラの映像もあります。」

 

「なるほど……どう思われますか、委員長?」

 

 アコは手を顎に当て考えながらヒナに問う。

 

「……確かに気になるわね。ここ最近の妙な治安悪化に加え、やけに装備の整った不良。いくらブラックマーケットと言えど、PMCや特殊戦闘部隊でもないと扱わない誘導ランチャーを売っているとは思えない。……そこの不良たちを確保して尋問すれば、今の騒ぎの原因に少しでも近づけるかもしれない。私が直接行く価値は十分にありそうね。」

 

 ヒナは即座に判断し、立ち上がって壁に立てかけていた愛銃『終幕:デストロイヤー』を肩に担ぐ。

 手袋を嵌め、目の前の一般委員に言葉を投げる。

 

「緊急出動要請、了解したわ。私が直接出る。先遣隊は?」

 

「はい!既に現場に第4小隊、第5小隊を派遣しています!彼女らだけで鎮圧することは難しそうですが、移動中の情報は彼女らから伝達されるかと。」

 

「分かった。アコ、悪いけどここは任せたわよ。」

 

「お任せ下さい!お帰りになられるまでに委員長の分まで全て処理して見せましょう!」

 

「……ふふっ、頼りにしてるわ。」

 

 ヒナは少し微笑み、風紀委員会本部から出ていく。

 その姿を見たアコは鼻血を垂らしていた。

 

「……行政官、鼻血出すぎです。殺人現場なんですけど。」

 

「ヒナ委員長の可愛さなら死人くらい出て当然でしょうが!!?」

 

「なんでキレてるんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 別の一般委員が出してくれた車両に乗り込み、現場へと向かうヒナ。

 

「……いつも荒れてるけど、最近はいつにも増して酷いわね……。」

 

 車両の窓から外を見れば、そこかしこに半壊した建物、既に制圧され気絶した不良たち、消火や後片付けに追われる一般委員たちが。

 

「ですね……噂じゃ連邦生徒会長が失踪したなんて話もありますけど、もし本当ならゲヘナどころかキヴォトスがまずいんじゃないですかね?」

 

「……連邦生徒会からの公式声明もないし、近々こちらから調査員を出すべきかもね……チナツかイオリに任せようかしら……。」

 

 運転手の言葉で連邦生徒会への疑念も深まったヒナは調査員の派遣も検討し始めた。

 そんな時、ヒナの通信機に一件の連絡が入る。

 

『失礼します、委員長!!』

 

「こちら空崎ヒナ、慌ててどうしたの?」

 

 その連絡は先に商業区画、ガンショップ付近に派遣された先遣隊の委員のものだった。

 しかしその声は焦燥混じりである。

 

『あ、慌ただしくてすみません!偵察を行っていたところ、不良たちに見つかってしまい戦闘中です!しかし多勢に無勢で、こちらはほとんど壊滅状態です!至急救援を!』

 

「分かってるわ、既に現場に向かっているから安心してちょうだい。ちなみに残存勢力と敵対勢力はどのくらい?あと現場の様子は?」

 

『は、はい!ありがとうございます!こちらの戦力は私ともう1人以外の第4小隊メンバーは全員戦闘不能、第5小隊は既に壊滅しているものと思われます!』

 

「かなり逼迫しているわね……敵対勢力と現場の様子は?」

 

『敵対勢力は揃ってヘルメットを被った不良と一般ゲヘナ生がそれぞれ50名以上!大規模な組織の抗争のようで、殆ど数は減っていませ……なっ!?何あれ!?』

 

 突然声を張り上げて驚愕する通信先の風紀委員。

 ヒナは突然の大声と変わった様子に目を細める。

 

「落ち着きなさい、状況を報告して。」

 

『はっ!す、すみません!その、突然状況が変わりまして……第3勢力が乱入したようです!』

 

「第3勢力?別の不良グループでも来たの?」

 

『い、いえ!数はたったの3人です!服装から見てあれは……きゅ、給食部!?』

 

「……給食部?うちの給食部?」

 

『し、信じられませんが、確かにあれはゲヘナの給食部の人達です!なんでこんな所に……?』

 

 通信機の向こうから聞こえてくる困惑の声。

 しかしそれはヒナも同じである。

 

(今朝アコから報告を受けて、少人数は尾行させてたけど、マコトから課せられた編入試験をクリアした所で怪しいところは無いと判断して1度調査は止めさせた。だけど今、このタイミングで騒ぎに関わってくるなんて……。)

 

 フウカとジュリは積極的に自分からトラブルを起こしに行く性格ではないはず。

 ジュリの方はその能力故事故を起こすことはあるが、本人は望んでそういった事はしないはずだ。

 となればアコから聞いた麦焼ニロの仕業だろうか。

 

『あっ、給食部のお2人が不良と交戦しています!もう1人の方は……見覚えがないですね、そもそも給食部の部員は2人だけだったのでは……ん?……ひ、ひぇええぇぇぇ!?』

 

「何、どうしたの?状況を報告して。」

 

 突然情けない悲鳴を上げる一般委員に報告を要求するヒナ。

 すると震えた声が返ってきた。

 

『きゅ、給食部らしき謎の生徒の腰の触手のようなものから、水色のガスが発生しています!風下の不良たちが次々倒れていきます!』

 

「ガス……?」

 

 触手、給食部の服装。間違いなく麦焼ニロだろう。しかし調査の時点ではあの触手にガスを発生させる能力がある事など報告に上がらなかった。大方この子がパニックで認識できていないだけで、ガスグレネードやガスの発生機器があるのだろう。やはり万魔殿を信用せず詳細な調査を行うべきだったか。

 ヒナは歯噛みする。

 

「とにかく落ち着きなさい、あなた達はガスを吸わないようにして。吸った不良たちの様子は?」

 

『は、はい……えっと、偵察してる限りでは、命に別状は無さそうです。倒れた不良も規則正しい呼吸をしているようで、致死性は無さそうです。……催眠ガスの類でしょうか……?』

 

「そう……死人が出てないなら良いわ。」

 

 ヒナは安堵する。

 万魔殿が認可し編入したばかりの生徒が殺人事件を起こすなど、学園間の問題になりかねない。

 しかし、麦焼ニロへの疑念は深まる。

 

『……?件の生徒が、何故か突然へたりこみました。……ガスの発生も止まっている……?……あ!不良たちが彼女に気づきました!接近して制圧を試みている模様!』

 

 考えているうちに、不良たちもガスの発生源に気づいたようだ。

 

「……ガスを発生させた方法はともかく、自衛をしているだけと仮定しましょう。あなた達は援護できそう?」

 

『申し訳ありません、残存戦力もそうですが、弾薬も切れており援護は難しそうです。』

 

「そう、分かったわ。なら無理せず自分の身の安全を優先しつつ状況を報告してちょうだい。」

 

『分かりました!……あっ、給食部のお2人が件の生徒を庇っています!……?件の生徒が、自分の服を探っています。……何かを取り出しました。あれは……お、お菓子の包み紙?ガム?』

 

「……ん?」

 

 通信に耳を傾けながら現場への到着時刻を逆算していたヒナは、突然の突拍子もない報告に気の抜ける声を出す。

 

「……ガム?触手の生えたその子がガムを取り出したの?」

 

『は、はい。暫くあたふたしたと思えば、突然ガムらしきものを取り出し……あ、紙をめくって……食べました。よく噛んでますね。』

 

「……???前の給食部の2人は?」

 

『未だ応戦中です。後ろの生徒を庇っているようで……あれ?後ろの生徒がお腹を抑えてうずくまっています……苦しんでいる……?お腹でも下……し……なっ、なぁっ!?』

 

 またしても突然の大声。

 ヒナはだんだん頭痛がしてくるのを我慢して報告に耳を傾ける。

 

「落ち着きなさい。今度は何が起きたの?」

 

 

『なっ、な、ななな……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『しょ、触手から新しい触手がぁああぁあ!?』

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 今までで1番理解できない報告に頭が真っ白になるヒナ。

 触手から、触手が?……触手と言えば、麦焼ニロの腰部から生えていたように見えたあれの事だろうか。……そこから、新しい触手が?

 

「……詳しく説明して。何がどうなっているの?」

 

『ひ、ひぃい……!きゅ、給食部らしき生徒の腰部から、触手が出てきて……!う、うわぁあぁ!ちぎれたぁあぁ!?』

 

「落ち着きなさい!言語化が難しいなら動画を撮って私の連絡先に共有しなさい!」

 

 ヒナは即座にスマホを取り出し風紀委員会の連絡用チャットを開く。

 

『……!わ、分かりました!……えっ!?ち、ちぎれた触手が消えて……「ぎゃああぁあ!!目が、目がぁぁぁぁ!」!?はぇ!?ふ、不良が突然両目を抑えて叫び出して……「あがあぁぁあ!?」も、もう1人も!?』

 

 通信機から聞こえてくる、未だ途切れない困惑の声。その中には風紀委員ではなく、今騒ぎを起こしているはずの不良の悲鳴も混ざっている。

 

(よく分からないけど、何が異常な事が起こっている。言葉だけで判断する限り、麦焼ニロが触手を使って何らかの手段で戦闘を行っている……?それを考慮するなら先程のガスも武器や道具ではなく彼女本人が発生させた可能性が高い。彼女は一体何者……?)

 

『も、もうよく分かりませんが……!と、とりあえず動画は送りました!』

 

 思考を巡らせていると、一般委員のアカウントからチャットに動画ファイルが送られてくる。

 ヒナはすぐにファイルを開き、動画を再生する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うがぁ"あ"ぁ"あ"あぁあ!?」

 

「あだぁ"あ"あ"ぁ"ぁあ!?」

 

「ぐあ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁあぁぁ!?」

 

 

 

 

「これは……。」

 

 ヒナに送られた動画。

 その映像の中では、つい先程まで給食部相手に一方的に戦っていたはずの不良たちが、突然自らの目を抑えて苦しみながら転げ回り始めていた。

 大抵の生徒には、この現象の元凶を特定することは出来ないだろう。

 しかし、ヒナの動体視力は通常捉えられないはずのそ(・)れ(・)の輪郭を捉えていた。

 

 

「……この生物は……給食部のジュリが生み出す怪物に、似ている……?」

 

 

 

 

 映像の中を殆ど残像すら残さずに跳ね回る薄緑の何か。

 ヒナは数フレーム単位に残るか残らないかギリギリのその影を確かに認識した。

 

『……い、委員長……も、目視できる範囲の不良が、全滅しました……。……あ、給食部の二人と、謎の生徒が合流しました。……親しげに会話しています。接触しましょうか?』

 

「……いえ。大体見当はついたわ。万が一こちらと敵対した時危険よ、貴方はこのまま私に任せて撤退しなさい。」

 

『りょ、了解しました!お気をつけて、委員長!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、現在。

 現場に到着した風紀委員長、空崎ヒナは車両を近くに停めさせ、徒歩で現場を見回りながら給食部たちと遭遇したのだった。

 

 

 

 

 

「そ、空崎ヒナちゃん!?」

 

「ふ、風紀委員長!?なんでここに!?」

 

 突然現れたゲヘナ最強に困惑するニロとフウカ。

 

「ここで商売をしていた市民から通報があったのよ。先に一般委員を派遣したようなのだけど、それもほぼ壊滅状態で救援要請が送られて、動ける私が来たってわけ。」

 

「な、なるほど……。」

 

 納得する二人。

 しかしヒナの方は未だ納得していない。

 

「……それで、貴方たち給食部は何をしていたの?買い出しにしては随分遅い時間だし、何よりそこの子は私の確認した限り生徒名簿に情報がない。」

 

 鋭い目線を後ろのニロに向けるヒナ。

 フウカは汗をかく。なんとか穏便に収めなければ。

 そう考え唾を飲み込みながら、前に出て口を開く。

 

「じ、実はこの子はうちで保g「この子は私の娘で、入学準備をしにk」コルァ!!」「ぎゃんっ!!?」

 

 フウカが口を開いたと思えば割り込んで勝手なことを言い出すジュリにゲンコツを落とすフウカ。

 油断も隙もない。

 恐ろしく速いゲンコツに一瞬反応が遅れたヒナは、何が起きたのか認識して困惑した。

 

「……えぇ……。」

 

「ななな、何するんですかフウカ先輩ぃ!」

 

 涙目でたんこぶを抑えながら抗議するジュリ。

 

「何するんですか、じゃないわよ!!今穏便に済ませようとしてるんだから余計なこと言わないで!!」

 

「うぅ、ニロちゃぁん。パパがDVする……。」

 

「おぉよしよし、暴力夫は怖いねママ。」

 

「あんたたち後で覚えてなさいよ?」

 

「「ごめんなさい。」」

 

 般若のような顔になったフウカにたちまちふざけるのをやめて平謝りするジュリとニロ。

 給食部のパワーバランスが垣間見えた瞬間である。

 

「……はぁ。ごめんなさい風紀委員長、今のは違うのよ。」

 

「……いや、いいわ。何となくあなたの苦労は察した。大変ね。」

 

「……そう言ってくれると助かるわ……。」

 

 いつもの顔( 눈_눈)でげんなりするフウカ。

 しかしこの一件だけで温情をかける訳にはいかないヒナは顔を引き締めて口を開く。

 

「……ただ、それでも聞かなくちゃ行けないことはある。悪いけど少しだけ質問させてもらうわ。まずはここに何のために来たのかと、今に至るまでの経緯を教えて?」

 

「分かったわ、ええっと……。」

 

 フウカは何が起きたか思い出しながら、説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど。麦焼ニロはジュリの料理から産まれた突然変異種の人型の怪物で、学籍が無いと生きていけないから万魔殿で手続きして、今は銃を買いに来てると……。」

 

「そういう事なの。」

 

「いやどういう事なの?なんで人型の怪物が?」

 

「それはそう。」

 

 ごもっともである。

 

「……いやまぁ、ジュリが変なものを生み出すのは今に始まったことじゃないし、貴方がそんな嘘をつくとは思えないし……良いわ、一先ず信じておく。」

 

「ありがとう……助かるわ……。」

 

 ほっとするフウカ。

 なんとか委員長とのいざこざは避けられたようだ。

 

「うふふ、私とニロちゃんの愛が委員長にも伝わったんですね♡」

 

「いや、そういう訳では無いのだけど……というか監視カメラに今朝の騒動が映ってたわよ。個人の関係まで口出しするつもりはないけど、その……つ、通路の往来ど真ん中でその、あ、あんな触手でするなんて……////さ、流石にあれは今後控えてちょうだい。」

 

「えぇ!?今朝の私とパンちゃんの営みが見られてたんですか!?キャーッ!!」

 

「ジュリうるさい。」

 

「ママ、やっぱりあれ楽しんでたんだ……。」

 

「……大変ね、フウカも貴方も。」

 

 げんなりするフウカ、なんとも言えない顔のニロを見て色々と察するヒナ。

 しかし、話はまだ終わっていなかった。

 

「……とにかく、これで給食部自体の疑いは解消した。……ただ、もう1つ確認しなければならないことがあるわ。」

 

「確認しないといけないこと?」

 

「えぇ。……麦焼ニロ。貴方に質問するわ。」

 

「……え!?わ、私ですか!?は、はい!なんなりと!」

 

 突然の指名に触手と姿勢をピシッと正して応答するニロ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あそこで転がってる不良の口に潜り込んでる得体の知れないものは何?」

 

「私が産んだガムちゃんです。」

 

「なんて?」

 

 

 

 

 

 

 ヒナは何も理解できないという顔をしながら聞き返す。

 情報量が多すぎてODしそうだ。

 

「いやぁ、なんてと言われましても……。」

 

「……産んだっていうのは、ジュリみたいに貴方も料理が突然変異を起こすということ?」

 

「いや、ガチに産みました。ここから。」

 

 

ニチャァ……

 

「……うわ……。」

 

「ひどい反応!?」

 

 後ろを向いて自らの4本の触手の付け根、くぽくぽと開閉する穴を見せつけるニロ。

 糸を引いているそれを見てヒナは物凄く顔を顰める。

 

「……え、じゃあ何?あの生物……生物?は貴方が本当に文字通り産んだという事!?」

 

「はい。最初は武器がないので催眠ガス出して眠らせてたんですけど「催眠ガス!?え、本当に催眠ガス出せるの貴方!?」あーはい、なんか出せまして……ただなんかガス欠なのか出なくなっちゃって、それでなんとか打開できないかって服をまさぐったらガムが出てきて、一か八か賭けて食べたらあれが産まれました。」

 

「……ごめん、ちょっと時間をちょうだい?……つまり、あの生物は貴方が単一で産んだと言うこと?その、なんというか……こ、交尾……////を、したわけでなく?」

 

「そうですね。ガム飲み込んだらなんかお腹が変な感じして、いきんだら出ました。」

 

「貴方バケモンじゃないの!?」

 

「それはそうですね。」

 

 開き直るニロ。

 事実として自分は間違いなく人の枠を外れた化け物である。

銃弾が痛いで済むキヴォトス人も十分化け物とか言ってはいけない。

 

「……はああぁぁぁぁ……。学籍を作れたということは、万魔殿はあなたの存在を認めているのよね?……なら私個人の判断で貴方をどうこうする訳には行かないわね……。良いわ、これ以上話を聞いてたら精神がおかしくなりそうだから一旦保留にする。頼むからあまり騒ぎは起こさないでね?」

 

「ありがとうございます!!」

 

 ひとまず見逃すという体の返事をするヒナに感謝するニロ。

 勘違いしては行けない、これは温情ではなく、ただヒナが面倒になっただけである。

 連邦生徒会の機能停止に治安悪化、その上で得体の知れない怪物の相手などしていられない。

 幸い給食部には馴染んでいるようだからもう全部万魔殿に丸投げしよう。うん、なにか起きたら全てマコトのせいだ。その時マコトをイシュ・ボシェテすれば良い。

 

「……これ、なんて報告書に書けばいいのかしら……もういいわ、とりあえずそれは帰ってから考えるとして。ひとまずあなた達への質問はこれで以上よ。足を止めて悪かったわね。」

 

「はあぁぁぁ……良かったぁ……。」

 

「うふふ、これでヒナ委員長に認められたも同然ですね、ニロちゃん♡」

 

「そうかな……?」

 

「いやそんなつもりは無いんだけど……。」

 

 呑気なジュリに呆れるヒナ。

 

「……それで、話を聞く限り、ニロは武器を買うためにここに来たのよね?でもあそこにあったガンショップは崩壊しているし、今の時間じゃほかの自治区に行くのも面倒でしょう。」

 

「そうね、明日別の自治区に行ってもいいのだけど、私もジュリも給食部の仕事があるから付きっきりにはなれないし……。」

 

 ヒナの質問に答えるフウカ。

 フウカとしても明日からは早速ニロに色々と仕事を仕込みたいのだ。

 銃の問題はできるだけ早く解決したい。

 

「……成り行きとはいえここの不良を制圧してくれたのは貴方たちな訳よね。お礼ってわけじゃないけど、うちで使ってる制式銃で良かったら一丁くらい工面してあげる。その代わり、今後なにかあなた達にも頼み事をするかもしれない。どうかしら?」

 

 ヒナから持ちかけられた提案。

 風紀委員会で採用されている制式銃ならまず性能は間違いないだろう。

 

「えぇ!?い、いいんですか!?」

 

 ニロが真っ先に反応する。

 元々銃にも詳しくないニロにとって、確実な性能が保証されている制式銃が貰えるのはこれ以上ない有難い申し出である。

 

「良かったですね、ニロちゃん!」

 

 ジュリも嬉しそうにニロを見つめて微笑む。

 

「あ、有難い話なんだけど、本当に良いの?私たちが風紀委員に協力出来る事なんて、情報提供とご飯を作るくらいだと思うけど……。」

 

 フウカは申し訳なさそうにヒナをチラチラと見る。

 

「……1人部員が増えるなら、その分あなた達も今までより料理の質や量を増やせるでしょうし、私もたまに給食は食べさせてもらってるもの。互いに理がある事だから、あまり気にしないで。」

 

「……ありがとう、風紀委員長。次来てくれたらサービスするわ。」

 

「気にしないでと言っているのに……いいわ、ありがとう。」

 

 握手する二人。

 苦労人同士通じるところがあるのだろう。

 

「それじゃあ決まりね。なにか銃の種類の希望はあるかしら?」

 

 ニロの方に向き直るヒナ。

 ニロは考える。

 

「うーん……私、あんまり銃に詳しくなくて……その、狙うのが下手でも当たるような、いっぱい弾をばらまく銃ってありますか?フウカ先輩とジュリママがどっちも近接用の銃なので、カバーできるような中距離か遠距離のものだと有難いです。」

 

「中遠距離で弾幕を張れる銃……それならLMG(ライトマシンガン)がいいわね。私のこれもLMGよ。」

 

 そう言いながら担いでいたLMG『終幕:デストロイヤー』を見せるヒナ。

 ニロは途端に目を輝かせる。

 

「ひ、ヒナちゃ……ごほん、ヒナ委員長とお揃い!それにします!」

 

「即決ね……大丈夫なの?LMGは重量もあるし取り回しも悪いから、初心者向けとは言えないけど……。」

 

「大丈夫です大丈夫です!練習すれば何とかなるでしょ!」

 

「……それなら構わないけど……ちゃんと申請してくれたら、うちの射撃訓練場も使わせてあげるから、いきなりその辺りで誰かに向けて撃つのはやめてね?」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 お礼をしながら即決するニロ。

 相変わらず深く考えない性格である。

 

「何から何まで本当にありがとう、風紀委員長。」

 

「うちの子の為にありがとうございます♡」

 

「う、うちの子……?いや、良いわ。気にしないで。それじゃあ私は戻るわ。銃の方は手配でき次第また渡すから、連絡先を交換しましょうか。スマホはある?」

 

「あ、それがまだ持ってなくて……」

 

「なら私が代わりに聞くわ。モモトークは持ってたわよね?」

 

「えぇ、と言っても今まで業務連絡にしか使ってなかったけど。それならまたフウカに連絡するわ。」

 

 スムーズに話が進む。

 

「……それじゃあ話は終わりね。付き合わせて悪かったわ。」

 

「いやいや、気にしないで。……隈が酷いわね、ちゃんと寝てる?」

 

 フウカが心配そうにヒナの顔を覗き込む。

 

「……大丈夫……とは言えないわね。近々連邦生徒会に人を送って、今の治安悪化について問いただすつもり。」

 

「……大変ね……私が言えたことじゃないけど、無理しないでね?」

 

「……ふふ、ありがとう。フウカ。」

 

 ヒナは微笑み、踵を返す。

 

「それじゃあ、またね。気をつけて。」

 

「ありがとうございました、委員長!また私特製のパンケーキを作ってあげますね!」

 

「丁重にお断りしておくわ。」

 

「そんなぁ……。」

 

 ジュリの好意を受け流しつつ、ヒナは車両を停めていた方向へ歩いて行った。

 

「……私達も、帰りましょうか。」

 

「はい!帰ったらパーティーですね!」

 

「もう遅いし、ちょっと料理して食べて泊まるだけよ……?」

 

「うふふ、楽しみですねニロちゃん!」

 

「うん、ママ!」

 

「仲良いわねぇ……。」

 

 3人も談笑しながら給食部へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!おかえりなさい、委員長!どうでしたか?」

 

「……まぁ……話すと長いから、また報告書にまとめるわ。」

 

「そうですか、分かりました。不良たちの回収は粗方手の空いた部隊が済ませてくれました。このまま戻りますか?」

 

「えぇ。……はぁ、今日は少し残業する事になりそうね。」

 

「お疲れ様です……。」

 

 部下と会話しながら車を出させるヒナ。

 今日は下校時間通りに帰ることは出来なさそうである。

 

 この後戻ったヒナは報告書をまとめアコに渡したが、ニロについて再三問いただされゲンナリしたという。

 

「委員長!!?この報告の『麦焼ニロが怪物を産んだ』って何なんです!?彼女は人間なんですか!?」

 

「……はぁ……お願いだから今は休ませて……。」

 

 

 

 また、回収された不良たちの診察をしていたチナツも困惑していた。

 

「……目の痛みを訴えていた不良の方々を診察した結果、全員の視力や目の状態が視力検査の時に比べて大幅に回復していました……一体、何が起きたのでしょうか……?」

 

「さぁ?委員長の報告書も訳わかんなかったし、例の変な新入りが産んだとかいう化け物がなんかしたんじゃないか?」

 

「理解できません……はぁ……。」

 

 イオリの脳天気な回答に頭を抱え困惑するチナツ。

 これがガムちゃんの攻撃による視力回復だと知るのはもっと先になりそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 給食部、食堂。

 そこでは3人がささやかなパーティーを開いていた。

 

「それじゃあ、ニロちゃんの正式な入学を祝って!」

 

「「「乾杯!」」」

 

 カチャン。

 ジュースの入ったグラスを軽く打ち合いながら、ニロの入学を祝うフウカとジュリ。

 テーブルの上には3人分の唐揚げやエビフライが。

 

「えへへ、美味しそうですね、ニロちゃん!」

 

「うん!今日一日色々あったのに、お祝いの料理まで作ってもらって、すみませんフウカ先輩。」

 

「良いのよ、貴方も手伝ってくれたし、私としても何だかんだ部員が増えるのは嬉しいから。ほら、遠慮しないで食べなさい。」

 

「はい!頂きます!」

 

 ニロは唐揚げをひとつ箸で取り、口に運ぶ。

 

 サクッ、ジュワァ……。

 

 衣が砕ける心地よい音、中から溢れる透明の肉汁と旨味。

 

「う〜ん……最高!白ご飯も美味しいし、キャベツもシャキシャキ!」

 

「口にあったみたいで良かったわ。」

 

 何だかんだ美味しく料理を食べてくれることがうれしいフウカ。微笑みながら食べる様子を見ている。

 

「……あれ?でもニロちゃん、さっきの感じだと食べた物に合わせてまたパンちゃんが産まれちゃうんじゃ?」

 

 ふと口を挟むジュリ。

 

 

 

 

「「……あぁ!!」」

 

 途端に立ち上がるフウカとニロ。

 

「ま、また新しいのが産まれるの!?今度は一体どんなトンチキなのが!?」

 

「ど、どうしよう!?キャベちゃんは前に不良に食べられて(正確には無理やり食べさせて)減ったしプリちゃんは元々数が2体だけだけど、これ以上増えても飼えないよね!?」

 

 あたふたしながら口走るニロ。

 

「う、産まれるな〜!今(・)は(・)産(・)ま(・)れ(・)な(・)く(・)て(・)い(・)い(・)の(・)〜!」

 

 触手をキュッと締めて穴を塞ぐニロ。

 なんとか産まれないように力を入れてみる。

 無駄な行為に思えたそれ。

 しかし、数十秒経っても産まれる様子がない。

 

「……あ、あれ?」

 

「産まれませんね?可愛い子が見れると思ったのに……。」

 

「なんで落ち込んでるの?」

 

 ポカンとするフウカとジュリ。

 なんならジュリはちょっと残念そうである。

 

「……うーん……も、もしかして、私が産まれないでと念じたら、本当に産まれないとか……?」

 

「えぇ?そ、そんな都合いいことがあるの?」

 

「ほら、ピク〇ンでも地上に100匹いたらオニヨンの中で溜まっていくじゃないですか。そんな感じでお腹の中に保持してるのかも?」

 

「何の話してるの?」

 

「まぁとにかく、食べる度大量に産まれないなら安心です!さぁ食べるぞぉ!」

 

「え、えぇ?……いや、今から検証するのもしんどいわね……もうそういうことにしておきましょうか……。」

 

「うふふ、いっぱい食べて大きくなりましょうね、ニロちゃん♡」

 

「これ以上成長されても困るんだけど……。」

 

 呆れるフウカをよそに、美味しそうに揚げ物を食べ進めるニロとニコニコしながら見守るジュリ。

 慎ましくも楽しいパーティーはあっという間に終わり、3人は泊まる準備をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャワーにパジャマまで借りちゃってごめんね、ママ。」

 

「いいのいいの!3人仲良くお風呂に入れて楽しかったし!」

 

「いくら洗っても触手から緑色の液体が出てきた時は悪夢かと思ったわ……。」

 

「ご、ごめんなさい……なんかある程度は常にコーティングされちゃうみたいで……。」

 

「いや、身体的なものは仕方ないから良いのよ……。」

 

 

 

 話しながらジュリの部屋で3つの布団を横並べに敷く3人。

 準備も済み、3人はそれぞれの布団に横になる。

 

「今日は色んなことがありましたね……。いつも通り忙しいお昼を乗り切って、いつも通り料理の練習をしてたら、突然ニロちゃんが産まれて。」

 

「いきなり厨房に触手が生えた全裸の女の子がいたらそりゃ驚くわよ……。まさか当日のうちに給食部に入ることまで決まるとは思わなかったけど……。」

 

「あ、あはは……ご迷惑をおかけしました……。」

 

 それぞれが言葉を紡ぐ。

 3人それぞれにとって、人生の中でも5本の指に入るほどには濃い一日となった事だろう。

 談笑が続き、やがてそれぞれまどろみ始める。

 

「……そろそろ、ちゃんと寝ましょうか。明日からはニロに色々と教えないといけないしね。」

 

「そうですね。……うふふ、明日から楽しみですね、ニロちゃん。」

 

「うん……改めて、これからよろしくね、ママ、フウカ先輩。」

 

 ニロはこれからの未来に思いを馳せる。

 突然しょーもない理由で死んだと思えば、どういう訳かキヴォトスに人外となって転生した自分。

 予想外が続いているけど、気がつけば推しの2人に拾われ、仲間になれた。

 自分自身のことすら今は分からないことが多いけど、少なくとも前世よりはずっと楽しい人生を送ることができそうだ。

 

 

 

 

(……よし!明日からも頑張ろう!)

 

 

 

 

「それじゃあ、おやすみなさい。」

 

「はい、良い夢を!」

 

「うん、おやすみ、2人とも。」

 

 3人は目を閉じ、規則正しい寝息を立てながらゆっくりと夢に沈んでいく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Zzz……」

 

 

 

「……。」

 

「Zzz……。」

 

 

 

「……。」

 

 

 

「Zzz……。」

 

「……っ。」

 

「Zzz……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやZzzって口に出して寝るなァ!!!!!あとニロの触手がめっちゃ布団に入ってきてるんだけど!?どんだけ寝相悪いのよ!?というか粘液で布団ベッタベタなんですけどォ!!!」

 

 

 

 

 

 フウカが安眠できる日は、暫く訪れ無さそうである。




 これにて序章は終了となります!
 ここまで呼んでくださった皆様、本当にありがとうございます!
 今後も作者の仕事の都合などにより不定期更新となりますが、これからも当小説をよろしくお願いします!






















 [パンちゃん図鑑 No.000]【麦焼ニロ】
 危険度:?

 牛牧ジュリの持つハーゲンティの神秘の権能によってパンケーキを素体に産み出され、更に無名の司祭に導かれた異世界で死んだ人間の魂、そして本来別の場所で産まれるはずだったニスロクの神秘を持つ魂が混ざり合うことで突然変異を起こし、生徒の姿を取って産まれたイレギュラーな個体。
 正しくパンちゃんを統べる女王とも言うべき個体であり、その能力は触手の自由自在の操作から取り込んだあらゆる危険物質の凝縮、放出から身体の再生まで多岐にわたる。
 キヴォトス人と比べても高い身体能力と知能を備えており、さらに高温、低音共に高い耐性を持つ。
 消化器官も特殊で、摂取した食物をほぼ無駄なく吸収してエネルギーへと変換するため排泄は不要。
 代謝能力も凄まじく、3ヶ月は食事も水分も取らず生存できる。
 何より特筆すべきはその繁殖能力。
 薬品、加工食品はおろか無機物であっても有機物であっても体内に取り込めば同族へと作り替えることが可能であり、産み出す同族は取り込んだ物の特徴を備えた独自の進化を遂げる。
 その気になれば単一であらゆる物質を取り込み同族を増やし続け、一晩の内にキヴォトスを滅ぼすことが可能。
 もしも守秋 透久子の魂が抵抗せず司祭の傀儡となりキヴォトスに生まれ落ちていれば、その夜キヴォトスは滅んでいた。


【挿絵表示】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。