荒唐無稽だと笑う者もいない。
目の前の男が本気で言っていることだけは分かった。
気づけばその剥き出しの熱に、罪人だけではなく護送の死神達までが呑まれていた。
反発を抱えたまま、それでも誰一人として口を挟まず、盃の次の言葉を待っている。
盃はそんな顔を見渡し、ふと義衛門へ目を向けた。
「早蕨!」
名を呼ばれ、義衛門が顔を上げる。
「いつまでそんな面して突っ立ってる! 見せてやるよ。貴様らにとっての先をな!」
「……先?」
「ああ!」
盃は白砂の彼方へ腕を振った。
「ここには何もない! 家も、国も、己らを守ってくれる奴もいない! だが――」
転がる大虚の骸へ視線をやる。
「力ならある」
義衛門の眼が僅かに動いた。
「さっき見ただろう。吉良惨蔵ですら手を焼いた化け物だ。あれがこの世界では群れを成して歩いている」
盃の笑みが深くなる。
「なら、もっといるだろうよ。あれより強い奴が。あれより厄介な奴が。この馬鹿みてえに広い世界のどこかにな」
「……それをどうする」
「使うんだろうが」
即答だった。
「別にいいだろう? 尸魂界にないものがここにあるなら、片っ端から己らの力にしちまえばいい!」
ざわめきが起こる。
「虚を……?」
「正気か」
盃はむしろ機嫌良さそうに頷いた。
「そうだな。普通に考えりゃそうなる」
そこで周囲を見回す。
「だが――貴様ら、さっき見ただろう?」
盃は少し離れた場所へ顎をしゃくった。
禽雀に抱かれた懐がいる。
その仕草につられて、何人かがそちらを振り返った。中には、先ほどから懐を気にしていた者もいる。
集まる視線に気づいたのか、禽雀の表情が険しくなる。懐を抱く腕へ僅かに力を込め、その身体を庇うように抱き直した。
「あの娘が刀を抜いた途端、何が起きた? 何を感じた?」
先ほどまで声を上げていた者達が黙った。
「己も止まった。早蕨も止まった。あれだけ殺す気でぶつかっていたのにな」
義衛門の眼が細くなる。
盃は遠くの懐へ目をやった。
「流魂街の聖女様の力は、本物だったようだ」
「……それと虚に、何の関係がある」
「あるさ」
盃は白砂に転がる大虚の骸へ視線を移した。
「奴らは腹が減れば喰う。怒れば襲う。危なけりゃ逃げる。獲物を選ぶ奴もいれば、知恵を回す奴だっている。言葉を使う奴までいるそうじゃないか」
指先で、自分の胸元を軽く叩く。
「孔が空いていようが、仮面を被っていようが、何もかも失くしたわけじゃない。あれだけ好き勝手に感情を撒き散らしておいて、心はありませんじゃ通らんだろう?」
盃の笑みが深くなる。
「心があるなら、傾く」
義衛門の表情が僅かに強張った。
「憎しみだろうが、飢えだろうが、殺意だろうが関係ない。あの娘は現に、殺す気で昂っていた早蕨を止めてみせた」
「……お前」
義衛門が低く漏らす。
「何を考えてるんだ?」
「何?」
盃は笑った。
「そりゃお前、明るい未来の話だ」
両腕を広げる。
「みんなと仲良くする、明るい未来のな」
あまりにもふざけた言い草に、何人かが顔を顰めた。
「……馬鹿馬鹿しい」
「虚だぞ。心が残ってるって、話が通じるとは限らねえだろ」
「そもそも、あの子の力が虚に通じるかも分からん」
もっともな声が飛ぶ。
盃は否定もせず、にやついたまま聞いていた。
「……いや」
その中で、小さな声が漏れた。
近くにいた男が振り向く。
「何だよ」
「さっきの、あれ……俺も浴びた」
「だから何だ」
「分かんねえよ。ただ……」
男は少し離れた場所にいる懐へ目を向けた。
「あの子なら、って……ちょっと思っただけだ」
「は?」
「俺だって意味分かんねえよ」
苛立ったように返しながら、それでも視線は懐から外れない。
別の場所でも、似たような顔をしている者がいた。
「……俺も、少し分かる」
「お前まで何言ってんだ」
「知らねえって。ただ、あの時……なんか、大丈夫な気がしたんだよ」
怪訝な顔を向ける者達の中で、何人かだけが黙っていた。
盃はその割れ方まで楽しむように眺める。
「別に己は、今ここで虚と肩を組んで踊れと言っとるわけじゃない」
白砂の先へ手を広げた。
「試せばいいんだよ。通じるなら使う。通じんなら別の手を考える。それだけだ」
義衛門が眉を寄せる。
「……簡単に言う」
「簡単な話だ。ここに突っ立っていてもそのうち死ぬんだ」
即座に返され、義衛門が黙る。
「何もない。助けも来ない。だったら、あるもの全部使って足掻けばいい」
盃は足元の白砂を踏んだ。
「己らも、お前らも、死神共も、聖女も。向こうにはいなかった化け物どもも。使えるものは全部だ」
そこで一度、周囲を見渡す。
「勘違いするなよ。己は貴様らに命令する気はない」
何人かが眉を上げた。
「ついて来いとも言わん。嫌なら勝手にどこへでも行けばいい。野垂れ死のうが、死神に尻尾振ろうが自由だ」
盃は肩を竦める。
「己も好きにする。貴様らも好きにしろ」
そこで『逸軸(いちじく)』の柄へ手を掛けた。
「ただし――」
僅かに鞘走る音がした。
「己について来る奴には、先を見せてやる」
刃がゆっくりと抜かれていく。
ざわついていた声が途切れ、視線が一点へ集まった。
鬼蜘蛛もようやく手元の刀から顔を上げる。火黒は何かを察したように歯を見せ、義衛門も黙ったまま盃の手元を見ていた。
盃は抜き放った『逸軸』を眺める。
「本来は見せ物じゃあないんだがな」
刃を肩へ担ぎ、にやりと笑った。
「はっ。今日は良いもんをたっぷり見せてもらった。見物料代わりだ」
刀を掲げる。
「こんな泥舟じゃねえ。先に続く道を見せてやる」
その声に、辺りの空気が張り詰めた。
「――真打」
瞬間。
何かが、軋んだ。
刀でもない。
舟でもない。
もっと遠く、もっと大きなものが噛み合わなくなったような、不快な音が白い砂漠を震わせる。
空中に細い輪郭が滲み出した。
一つ。
また一つ。
やがて無数の歯車が何もない空間から浮かび上がる。
大小入り乱れた歯車。
軸。
ばね。
歯を噛み合わせる駆動部。
どれも実体があるのかすら判然としないまま、薄く透けた姿で空間そのものへ組み込まれていく。
盃の背後では、ひときわ巨大な一本の軸がゆっくりと姿を現した。その周囲へ無数の機構が絡みつき、低い軋みを上げながら動き始める。
「『天軸逸軸天(てんじくいちじくてん)』」
歯車が一斉に回った。
ごり、と。
世界そのものが軋んだ。
白砂の一部が不自然に横へずれる。
崩れたのではない。
地面そのものが、見えない境目に沿って位置を変えている。
少し離れた場所では、大虚の骸が砂ごと持ち上がった。巨体が傾くより早く、その下を走る巨大な歯車が半回転し、別の場所へ押し出していく。
「……なんだ、ありゃ」
誰かが呟いた。
空も同じだった。
何もないはずの頭上を幾本もの軸が貫き、噛み合った歯車がゆっくりと回っている。回転するたび、遠近も上下も曖昧になり、見慣れた景色そのものが巨大な機構の一部へ組み込まれていく。
鬼蜘蛛は口を半開きにしたまま見上げていた。
火黒も、今は笑っていない。
義衛門は盃ではなく、その背後に広がった異様な光景を見つめていた。
その中心で、盃だけが楽しそうに笑う。
「世界ってのは、ずいぶんとでかい舞台装置らしい」
肩へ担いでいた『逸軸』を下ろす。
その動きに合わせるように、背後の巨大な軸がゆっくりと回った。
「だがな」
歯車が噛み合う。
「己にとっちゃあ、こんなものも掌の上のおもちゃだ」
盃は刀を掲げた。
「ずらして、噛み合わせて、繋ぎ直す。ここが虚圏だろうが、向こうが尸魂界だろうが関係ない」
護送の死神達の表情が変わる。
「胡散臭いボロ舟なんぞなくても、己が帰り道くらい繋いでやる。向こうまでの道を通すなんざ、取るに足らん」
つい先ほどまで失われたと思っていた帰還の手段を、目の前の男があまりにも当然のように口にしている。
盃はそんな反応を眺め、笑った。
「だが、まだ己は帰らん」
刃の向こうで、無数の機構が回り続ける。
「全部ぶち壊さなきゃ、帰るに帰れねえ。そのためには足らねえもんばかりだ。分かるだろう?」
盃は広がる機構を見上げた。
「こんな大げさなもん持ってても、己一人じゃできることなんてたかが知れてるってことだ」
再び周囲を見る。
「使えるものはなんでも受け入れる」
罪人も、死神も区別せず、その場にいる者達へ視線を巡らせた。
そして笑う。
「ついてきたい奴だけ――己に並べ」
*
そこまで言い切ると、盃はふっと肩の力を抜いた。
足元へ目を落とし、自分で投げ捨てた煙管を拾い上げる。濡れた砂を軽く払い、いそいそと刻み煙草を詰め直して火をつけた。
深く吸い込み、長く煙を吐く。
それまでの大仰な演説が嘘のように顔をほころばせた。
「……終わった。たまらん」
「始まったばかりだろうが」
最も付き合いの長い同心、夢枕蔵人(ゆめまくら くらんど)が呆れたように言った。
盃は煙管を咥えたまま横目で見る。
「己の仕事は終わっただろう。言いたいことは全部言った。あー、すっきりした」
「焚きつけるだけ焚きつけて、いつも後は知らん顔だからタチが悪い」
「はん。燃えるか湿気るかはあいつら次第だ。なぜ己がこれ以上よしよしと導いてやらないといけない」
「そういうところ投げやりなんだよ、お前は」
蔵人は溜息をついた。
その間にも『天軸逸軸天』の機構は空間を埋めたまま、低い軋みを響かせ続けている。その中心で当の本人だけが、ようやくありついた煙草を心底美味そうに吸っていた。
周囲から歓声が上がるようなことはなかった。
あまりにも話が大きい。
誰もが、目の前に現れた巨大な機構と盃を交互に見ている。
蔵人もその様子を眺めてから、ふと鼻を鳴らした。
「まあ、あの様子じゃ遅かれ早かれだな」
盃が煙を吐きながら振り向く。
「貴様は来るのか?」
「は? え? わざわざ付いてきた親友の俺にそれ言う?」
「あぁ、来るのか。はぁ、そっか」
「露骨にがっかりしてんじゃねえよ親友!」
蔵人が顔をしかめる。
盃は愉快そうに煙管を咥え直した。
そんな、先ほどまでの様子とはあまりにも落差の激しいやり取りを、義衛門はまじまじと眺めていた。
その視線に気づいた蔵人が、どこか気まずそうに苦笑する。
「付き合わせて悪かったな。それと――あんたには、悪いことをしたようだ」
蔵人の言葉に、義衛門が何かを返すより早く、盃が煙管を咥えたまま口を挟んだ。
「いらんことを言うな」
先ほどまでの軽薄さが、ほんの少しだけ薄れる。
「早蕨がどう思おうが、惨蔵はどの道仕留めなければいけなかった。後ろめたく思うことは奴への侮辱だ」
そう呟いて、盃はふと虚空へ目を向けた。
煙管の先から細い煙が昇り、白い空へ溶けていった。
義衛門は、しばらく何も言わなかった。
盃の横顔を見つめる。
「……お前は、吉良殿を認めていたのか」
「認める、な。妙な言い草だ」
盃は虚空へ目を向けたまま、煙を吐いた。
「あの化け物をして、そこまで傲慢になれるつもりはない。強かった。厄介だった。放っておけば己らは何一つ始められなかった」
そこでようやく義衛門を見る。
「だから殺した。それだけだ」
「……勝手な話だな」
「あぁ、ずっと勝手さ。今さら気づいたか?」
義衛門は眉を寄せた。
だが、先ほどまでのように刀へ手を伸ばすことはなかった。
「お前を許してはいない」
「生まれてこの方、許しを乞うた事は一度もないな」
「いけ好かん奴だ」
「分かる。こいつ常にむかつくよな」
「おい」
盃は不満そうにそちらを睨んだが、義衛門はもう一度、遠くに倒れた惨蔵へ目を向けていた。
許せる訳がない。
納得したわけでもない。
ただ、今すぐ目の前の男を斬ることが、惨蔵――世話になった人間への答えではないような気がしていた。
*
義衛門が惨蔵へ視線を向けている間にも、遠くの砂丘の向こうで低い咆哮が響いた。
一つではない。
間を置いて別の方向からも声が上がり、それに呼応するように、白砂の果てへ黒い影がぽつぽつと現れ始める。
ここには惨蔵をはじめ、死神も罪人も、濃い霊圧を持つ者があまりにも多い。先ほどまで大虚の群れが暴れ、そのうえ真打まで立て続けに解放されたのだ。周囲の虚が集まってくるには十分すぎる。
盃もそれに気づき、煙管を咥えたまま遠くを眺めた。
「……まだ来るのか」
苦笑する。
「さすがに疲れたな。全員、舟に乗れ。面倒だからどっか移動するぞ」
空間を埋めたままの『天軸逸軸天』が、低い軋みを響かせる。
巨大な軸がゆっくりと回り、無数の歯車が噛み合った。舟を囲むように機構が組み替わり始める。
護送の死神達も罪人達も、近づきつつある影を一瞥すると、今度ばかりは大人しく舟へ向かい始めた。
そんな中、少し離れた場所では、鬼蜘蛛が何本もの刀を抱え、えっちらおっちら白砂の上を歩いていた。
一度に運ぼうとしているせいで腕から何本かがずり落ちかけ、そのたびに肩や顎まで使って押さえ込んでいる。それでも諦める気はないらしく、足元に一本見つけると、どうにか空いた指へ引っ掛けようとしていた。
盃がそちらを見る。
「おい、小僧。置いてくぞ」
鬼蜘蛛が顔を上げた。
「あ?」
抱えた刀の隙間から、怪訝そうな目だけが覗く。
「知らん。誰じゃおっさん」
盃の頬が、ぴくりと引きつった。
一つ、呼吸を置く。
「……小僧。いいか。今後気を付けろ」
妙に真剣な顔で鬼蜘蛛を指差した。
「俺は『お兄さん』だ」
「……はぁ?」
鬼蜘蛛はしばらく本気で意味が分からないという顔をしていた。
「きついぞ、おっさん」
「…………」
今度こそ盃が黙る。
その隣で、蔵人が顔を背けた。肩が小刻みに震え、声にならない笑いを必死に噛み殺している。
義衛門までもが僅かに口元を押さえ、吹き出した。
盃がゆっくりと二人を見る。
「……何がおかしい」
「いや」
蔵人は震える声で答える。
「別に、お兄さん」
腹の立つことではあるが、盃にこの少年を逃がす気はなかった。
先ほどの演説で盛大に「ついてきたい奴だけ――己に並べ」などと啖呵を切っておきながら、興味を引いた人間をやすやすと逃がすつもりは欠片もない。
それを知る昔馴染みは、呆れた目を盃へ向けてから鬼蜘蛛の方へ走った。
「坊主、虚がこっちに集中してきてる。ここにいたら食われちまうぞ」
「巻き藁が向こうから来るならありがたいな。何から試そうか」
鬼蜘蛛は腕いっぱいに抱えた刀を、おもちゃでも選ぶように眺めている。
「……いや、そうじゃなくてな」
蔵人は頭を掻いた。
「その刀なら舟に積め。まとめて運んでやるから」
鬼蜘蛛の動きが止まった。
そこへ火黒が歩いてくる。両脇には、これでもかというほど大量の刀を抱えていた。
「ガキ、こいつどうすんだ? 女共が捨ててった分もあるぞ」
「おぉ! 気が利くな犬っころ! 賢いぞ!」
「全部捨てるぞ、てめえ」
鬼蜘蛛は火黒へ視線を向けた。
正確には、その両脇の刀へ。
「……犬、いや、あにさん。この先、ずっとワシの刀持ちを続ける気概はあるか?」
「ある訳ねえだろクソガキ。それで機嫌とってるつもりか?」
鬼蜘蛛はむすっとした顔をすると、蔵人の方へ向き直った。
「運ぶなら渋々乗ってやってもいい」
「可愛くねえチビだな」
蔵人はわしわしとその頭を乱暴に撫でくると、同心を呼び、二人から刀を預かった。
一本ずつの扱いについて口うるさく物申す鬼蜘蛛の文句は無視され、そのまま一行は舟の中へ消えていった。
盃は面倒臭そうに鬼蜘蛛達から目を逸らすと、少し離れた二人へ視線を向けた。
禽雀はまだその場にいた。
罪人達が次々と横を通り過ぎ、舟へ乗り込んでいく。その流れの中で、懐を抱いたまま動かない。
一度、舟を見る。
それから、遠く白砂の向こうへ目をやった。先ほどから響く虚の咆哮は、少しずつ近づいている。
禽雀の腕に、僅かに力が入った。
――使えるものはなんでも受け入れる。
先ほどの盃の言葉が耳に残っている。
その時、手を引かれた。
懐が禽雀を見上げていた。
何も言わず、周囲を見て、それから舟を見る。
どうして自分達は行かないのか。
そんな顔だった。
「……くもくんも、行くみたい」
「……そうですね」
懐はもう一度、舟を見る。
「姉様、懐達も行かないの?」
禽雀はすぐには答えなかった。
また咆哮が響く。今度はさらに近い。
禽雀は懐の手を握り直し、一度だけ盃へ視線を向けた。
煙管を咥えたまま、こちらを見てもいない。
乗れとも、残れとも示さないその様子に、禽雀の目が僅かに鋭くなる。
「……姉様?」
懐が小さく首を傾げた。
禽雀は目を伏せる。
「……行きましょう」
「っ、うん!」
懐の顔が僅かに明るくなった。
二人が舟へ入ると、鬼蜘蛛と火黒は他の罪人まで巻き込みながら、すでに賑やかに揉めていた。
「ええか、細心の注意を払って並べろ犬。お前の繊細さには定評がある。そうじゃ、あぁ、そこ、良いぞ犬」
「うるっせえんだよ! 知るか! てめえで並べろ!」
「お前らがうるせえぞ! なんだこれ邪魔だな!」
「おいこら! 今鞘蹴ったかそこの小汚いハゲ! 貴様の不要な毛根を鞘にしてくれようか!」
「あんだとこのガキ!」
「すまん犬。あと全部並べといてくれ。こいつ殺してもう一振り増やすから」
「一回全部砂漠に撒くぞ!!」
懐が思わず小さく笑った。
禽雀はその横顔を見てから、あまりにもガラの悪いこの環境に、今引き返すべきか強く思い悩んだ。