爛熟の迷宮 ~祝福の果実に身体も心も変えられていく三十人の少女たち~ 作:a-ru
探索へ出る者が五人になった翌日。
皮肉なことに、その日の迷宮は驚くほど順調だった。
青い果実を一個ずつ使ったことで、五人とも数日前より身体の負担が軽くなっている。胸の奥に残る熱や張りまで消えたわけではないものの、防具の補助も加われば動くこと自体に大きな問題はなかった。
人数が減った以上、以前のように複数の道を同時に調べることはできない。その代わり、これまでに作った地図を頼りに、五人は迷うことなく最も深い場所へ向かっていた。
「……なんか変じゃない?」
先頭近くを歩いていた葵が、ふと足を緩めた。
「何が?」
蛍も周囲を見回す。
「いや、道」
言われて初めて気づいた。
ここまで何度も分岐していた通路が、いつの間にか一本だけになっている。
壁の造りも違った。これまでの迷宮は、荒く削られた石や継ぎ目の目立つ床が多かった。それが少し前から、壁も床も一枚の石から切り出したように滑らかになっている。
装飾らしいものすらほとんどなかった迷宮に、細い線を組み合わせた模様まで刻まれていた。
「昨日、こんなのあった?」
琴音が壁へ手を触れる。
「ないと思う」
香奈恵が地図を確認した。
「少なくとも、ここまで明らかに造りが違う場所は初めてね」
麗華も周囲へ警戒するように視線を走らせた。
「魔物もいないわよ」
それもおかしかった。
ここまで深く潜れば、長い通路を一本歩くだけでも何度か魔物に遭遇する。それなのに、この場所へ入ってから一匹も姿を見せていない。
魔物の気配もなく、辺りは妙なほど静かだった。自分たちの足音だけが、異様なほど遠くまで響いている。五人とも自然と口数を減らし、そのまま一本道を進んだ。そして、しばらく歩いた先で。
「……え?」
最初に声を上げたのは葵だった。
通路が終わっている。
正確には、その先を巨大な扉が塞いでいた。蛍たちがこれまで見てきたどの扉とも違う。
五人が横に並んでもまだ余るほど幅があり、見上げなければ上端さえ見えない。滑らかな白い石の表面には複雑な模様が幾重にも刻まれ、その中央には大きな円が描かれていた。
明らかに、これまでの迷宮とは扱いが違う。
「……これ」
琴音が息を呑む。
「それっぽくない?」
「何が?」
葵が聞き返したものの、答えを待つ必要はなかった。
少なくとも蛍には、全員が同じものを思い浮かべているように見えた。ここへ来てから、ずっと探し続けてきた最深部。
「……あった?」
葵の声が震えた。
「まだ分からない」
香奈恵が慎重に答える。
「扉の先を見てないんだから、決めつけるのは早いわ」
「でも、今までと全然違うよ」
「それはそうね」
蛍も扉を見上げた。
胸の奥が、身体の変化とは別の理由で熱くなっていく。何階降りたのかも、何日歩いたのかも、途中から分からなくなった。本当に最深部など存在するのかと疑った。
三十人いた仲間も、探索へ出続ける者はとうとう五人しか残らなかった。それでも歩き続けた先に、初めて明確に違うものがある。
「……あったんだ」
思わず声が漏れた。
「まだそうと決まったわけじゃないって」
香奈恵に注意されても、今度ばかりは葵も笑っていた。
「いいじゃん。今日くらい」
その時だった。
「待って」
琴音が扉の手前を指差した。
大きな扉ばかりに気を取られていたが、床にも今までなかったものがある。一つは、淡い白色に光る大きな円。もう一つは、その左右へ並ぶ複数の小さな魔法陣だった。
「これ……」
蛍は白い円へ近づく。
見覚えがあるわけではない。けれど、その形を見ていると、不思議と何のためのものなのか想像できた。
「転移?」
「かも」
琴音がしゃがみ込んで模様を調べる。
「試す?」
葵がすぐに言った。
「いきなり全員で乗るのはやめましょう」
香奈恵が止める。
「どこへ飛ばされるか分からないんだから」
「じゃあ私が――」
「私が行く」
蛍が先に答えた。
「蛍」
「もし教室じゃなかったら戻ってくるから。たぶん一方通行ではないと思うし」
香奈恵は少し迷ったあと、頷いた。
「分かった。無理はしないで」
蛍が白い円の中央へ足を踏み入れる。
最初は何も起きなかった。
しかし二歩、三歩と進み、円の中心まで来た瞬間、足元の光が一気に強くなる。
「蛍!」
葵の声が聞こえた直後、視界が真っ白になった。
浮遊感は一瞬だった。
「……え?」
次に目を開けた時、蛍は見慣れた教室の中央に立っていた。
目の前には二十五人の仲間たちがいて、壁際にはいつもの荷物が積まれ、その向こうには大浴場へ続く扉まである。見間違えようがなかった。
自分は、本当にあの扉の前から教室へ戻ってきたのだ。
「蛍?」
待機組の一人が驚いたようにこちらを見る。
「どうしたの?」
蛍は自分の足元を見る。
そこには、昨日まで存在しなかった白い円が淡く光っていた。
「……繋がった」
呟いてから、すぐに振り返る。試しにもう一度円へ乗ると、光が広がり、次の瞬間には巨大な扉の前へ戻っていた。
「蛍!」
葵が駆け寄ってくる。
「大丈夫?」
「うん。教室だった。向こうにも同じ円ができてる」
「ほんとに?」
葵の顔がぱっと明るくなる。
「それと、蛍がいない間にこっちも少し見たんだけど」
琴音が左右に並んだ小さな魔法陣を指した。
「やっぱり交換用みたい。武器とか防具が置いてある」
「対価は?」
蛍が尋ねると、麗華が露骨に顔をしかめた。
「胸囲プラス三十センチ。一回で、よ」
「……三十?」
「詳しく調べるのはあとでいいでしょ。それより」
葵が待ちきれないように白い円を見る。
「一回戻ろうよ。みんなに言おう!」
「何を?」
「見つけたって! 多分だけど、最深部を!」
◇ ◇ ◇
「あったよ!」
教室へ戻るなり、葵が叫んだ。突然現れた五人へ向いていた二十五人の視線が、一斉に集まる。
「最深部かもしれない場所!」
葵は興奮を隠そうともせず、両手まで動かしながら続けた。
「今までと全然違う大きな扉があった! 壁も床も違うし、その前にここへ戻ってこられる転移の魔法陣まであった!」
「本当?」
誰かが目を丸くする。
「うん!」
「すごいじゃん」
「やっと見つかったんだ」
「よかったね」
口々に声が上がった。
けれど、その反応はそこで終わった。
蛍は、知らず知らずのうちに教室を見回していた。
誰も立ち上がらない。武器へ手を伸ばす者も、防具を探し始める者もいない。少し前までなら、最深部らしきものを見つけたなどと報告すれば、教室中がひっくり返るほど騒ぎになっていたはずだった。
帰れるかもしれない。願いが叶うかもしれない。その可能性だけで、全員が詰め寄ってきたはずだ。
今は、違う。
二十五人は驚いているし、喜んでもいる。けれど、それはまるで、自分たちとは少し離れた場所で起きた良い知らせを聞いているような反応だった。
「……それだけ?」
葵も気づいたらしい。
「え?」
「いや……」
周囲を見回す。
「一緒に行く人、いないの?」
教室が少しだけ静かになった。
待機組の何人かが顔を見合わせる。
「私、もう誰かが手伝ってくれないとお風呂に行くのも大変だし」
一人が、自分の巨大過ぎる胸を両腕で支えながら苦笑した。
「わかるー。それに最近、一日くらいお風呂入らなくても全然気にならなくない?」
「分かる。赤い果実食べてるせいかな」
「防具着ければ動けるかもしれないけど……今さら怖いし」
「私もー」
「五人でそこまで行けたなら行けるんじゃない?」
悪気のない声が返ってくる。
「行けるかどうかは、まだ分からないけど」
蛍が答える。
「扉の向こうも見てないし」
「じゃあ、見てきてくれる?」
それも、ごく自然な言い方だった。
「何かあったら教えてよ」
「……うん」
蛍はそれ以上言えなかった。
「最深部だったら、帰れるかもしれないんだよ?」
葵がまだ納得できないように言う。その言葉にも、以前なら一斉に反応したはずだった。今度は、少し違った。
「帰れるんだ」
一人がぽつりと言う。
「まだ分からないよ」
「そっか」
その少女は隣に座っていた相手へ目を向けた。相手もこちらを見ていた。
「……帰れるようになったら、その時考えればいいんじゃない?」
誰かが言った。
「今すぐ決めなくてもいいでしょ」
「うん」
「私もそれでいいかな」
葵が何か言おうとして、口を閉じる。
蛍も同じだった。帰るかどうかを、その時になって考える。少し前までなら、そんな言葉が出てくること自体あり得なかった。
帰りたい。
それだけは三十人全員に共通していると思っていた。けれど今、その前提すら同じなのか、蛍には分からなくなっていた。
「……もう一つある」
沈黙を切ったのは麗華だった。
「扉の前に、交換の魔法陣があったわ」
「交換?」
待機組の一人が尋ねる。
「何がもらえるの?」
「まだ詳しく見てない。でも、武器とか防具みたいなものが置いてあった」
「じゃあ使えばいいんじゃない?」
あまりにも軽く返され、麗華の眉が動く。
「対価、胸囲プラス三十センチよ」
「三十?」
「一回で」
教室が少しだけざわついた。
けれど、麗華が期待したほどではなかったらしい。
「……それくらいなら」
一人が自分の胸元を見ながら言う。
麗華の顔が引きつる。
「それくらい?」
「だって、今さら三十増えても……」
「簡単に言わないで」
「ご、ごめん」
相手は本当に困った顔をした。
「必要なら使った方がいいんじゃないかなって思っただけ」
別の少女も頷く。
「最深部行くために必要なんでしょ?」
「まだ必要だって決まったわけじゃない」
「じゃあ、必要になったら」
そして笑う。
「帰ってきたら、楽にしてあげるし」
「……だから、そういう問題じゃないのよ」
麗華はそれ以上言わず、顔を背けた。
蛍にも、何が正しいのか分からなかった。待機組からすれば、三十センチという数字自体が、もう以前ほど大きな意味を持っていないのだろう。
待機組にとっては、胸囲が二百センチを超え、そこからさらに二百二十、二百三十と増えていくことさえ、もう以前ほど重大な出来事ではなくなっているのだろう。
胸がどれだけ大きくなっても毎日は続く。張って痛くなれば誰かが助けてくれるし、生活の中で不便なことが増えれば、今度はどうすれば少しでも楽に過ごせるのかを皆で考えればいい。
そんな暮らしに慣れてしまった彼女たちにとっては、今さら三十センチ増えることさえ、命を懸けて避けなければならないほどの問題には見えなくなっているのかもしれなかった。
「……行きましょう」
麗華が先に言った。
「これ以上ここで話してても仕方ないわ」
蛍も頷く。
五人は、もう一度白い魔法陣へ向かった。
青い果実の入った袋だけは、教室へ置いていくことにした。転移陣を使えばすぐに戻ってこられる以上、十五個すべてを持ち歩く必要はない。今では何より貴重なものなのだから、むしろここへ残しておく方が安全だった。
「気をつけてねー」
「無理しないでねー」
「帰ってきたら何があったか教えてね」
二十五人の声に送り出される。やはり誰一人、立ち上がる者はいなかった。
◇ ◇ ◇
再び巨大な扉の前へ戻った五人は、今度こそ左右に並んだ魔法陣を調べた。
「……本当に三十だ」
葵が顔をしかめる。
魔法陣の中央には、それぞれ武器や防具、装飾品らしきものが一つずつ置かれていた。
形も用途もばらばらだったが、どれもこれまで迷宮で手に入れてきた装備とは明らかに違う。一目見ただけでも、格が違うものだと分かるほどだった。
そして、そのすべての魔法陣の手前には、同じ簡潔な文字が刻まれている。
『対価 胸囲+30cm』
どれを選んでも、要求されるものだけは変わらなかった。
「五センチじゃないのね」
麗華が低い声で言う。
「今までの交換と桁が違う」
琴音が計算するように指を動かした。
「青い果実一個で五センチだから……一回交換したら六個分」
「六個……」
葵が顔をしかめる。
「全員が一回ずつ使ったら?」
「百五十センチ増える」
琴音が即答する。
「全部青い果実で戻すなら三十個必要。教室に残してきたのは十五個だから、半分しか戻せない」
「……冗談じゃないわ」
麗華が吐き捨てた。
「それに、一人一個で足りるとも書いてない」
琴音の言葉で、さらに空気が重くなる。
誰も交換しろとは書かれていない。扉にも、交換しなければ開かないとは書いていない。ただ、最深部らしき場所へ続く巨大な扉の前に、今までとは比べものにならないほど強力そうな装備が並べられ、その代価として三十センチを要求されている。
「……まず、使わずに行こう」
蛍が言った。
香奈恵がこちらを見る。
「私もそう思うわ」
「だよね」
葵がすぐに頷く。
「勝てるなら払う必要ないし」
「扉の向こうに何があるかも分からないしね」
琴音も同意する。
麗華に至っては、答えるまでもないという顔だった。
「決まりね」
香奈恵が巨大な扉へ向き直る。
「まずは中を見る。危険だと思ったら、すぐ戻る」
「うん」
五人はそれぞれ武器を構え、蛍と葵が前へ、香奈恵、琴音、麗華がその後ろへと位置取った。いつの間にか、それが五人だけになった今の基本陣形になっている。
配置を確かめてから、蛍は巨大な扉へ手を掛けた。見た目どおりずっしりと重かったが、身体へ力を込めると、扉は低い音を響かせながら少しずつ動き始める。
やがて地響きのような音とともに隙間が広がり、その向こうに現れたのは、これまで見てきたどの部屋よりもはるかに巨大な広間だった。
「……何これ」
葵が呟く。
広間はあまりにも大きく、天井は見上げても途中から暗闇へ溶けていた。床も壁も、これまで歩いてきた迷宮とは比べものにならないほど遠くまで続いている。
そして、その広すぎる空間の中央に、何かがいた。
最初は、巨大な岩の塊かと思った。だが、蛍たちが足を踏み入れたのを待っていたかのように、その塊がゆっくりと動き出す。
折り畳まれていた二枚の翼が大きく広がり、長い首が持ち上がる。太い四本の脚が床を踏みしめ、その後ろでは、床を這うほど長い尾がゆっくりと揺れた。
全身を覆う鱗は黒く、わずかな光を鈍く返している。
「……竜?」
琴音の声がかすれた。
蛍も、それ以外の呼び方を知らなかった。
広間の中央でゆっくりと首を持ち上げた竜が、五人を見下ろす。その視線が自分たちを捉えた瞬間、蛍の背中を冷たいものが走った。
「……来る」
竜が大きく口を開いた。
まだ何も放たれてはいない。それなのに、周囲の空気そのものが引き寄せられるように動き始める。巨大な胸郭が膨らみ、竜が深く息を吸い込んでいるのだと気づいた。
「まずい!」
香奈恵の声が飛ぶ。
「止めて!」
「分かってる!」
葵が駆け出し、蛍もほとんど同時に地面を蹴った。
何が来るのかは分からない。ただ、あれを撃たせてはいけないことだけは、本能で理解できた。
後方では琴音と麗華もすでに魔法を組み上げ始めている。近づいて攻撃するか、せめて何かをぶつけて動きを止める。それしかない。
蛍は全力で走った。
竜との距離が縮まる。
剣が届くところまであと少し――。
「蛍!」
誰かの声が聞こえた。
次の瞬間、竜が息を吐いた。
それが炎だったのか、光だったのか、蛍には最後まで分からなかった。
視界が白く染まった。
◇ ◇ ◇
「――っ!」
蛍は息を呑んで目を開いた。
目の前にあったのは竜でも巨大な広間でもなく、何度も見慣れた教室だった。何が起きたのか理解できないまま、蛍は荒い呼吸を繰り返す。
「蛍!」
葵の声がした。
振り向けば、すぐ近くに葵がいる。香奈恵も、麗華も、琴音もいた。
五人とも生きている。
「……戻った?」
琴音が呆然と呟く。
蛍もまだ状況を飲み込めないまま、自分の身体を確かめた。どこにも痛みはなく、火傷もなければ骨を折ったような感覚もない。あの光に呑み込まれた瞬間ですら、熱さや衝撃を感じた記憶はなかった。
おそらく、感じるよりも先にここへ戻されたのだ。
「……死亡判定?」
琴音が震える声で呟いた。
「私たち、あれを受けた時点で……死んだことになった?」
誰も答えられなかったが、それ以外に説明のつくものも思い浮かばない。あの攻撃を受けた瞬間、致命傷を負うより先に迷宮の何かが働き、五人を教室へ強制的に戻したのだろう。
そう考えながらもう一度自分の身体へ目を向けたところで、蛍はようやく別の違和感に気づいた。
「……え?」
そこで蛍は、身体が妙に軽いことに気づいた。
何気なく視線を落とし、そのまま思考が止まる。
身体には何も身につけていなかった。防具だけではない。迷宮へ入る時に着ていた衣服も、腰に下げていた剣も、その他の装備も、何一つ残っていない。
「ちょ、ちょっと待って!」
隣で葵も同じことに気づいたらしい。慌てて両腕で身体を隠しながら周囲を見回したものの、状況は変わらなかった。
「私の武器……」
麗華が青ざめた顔で呟く。
「ない」
琴音も自分の身体や床を確かめている。
「弓も、装備も……全部」
香奈恵まで言葉を失っていた。
五人とも、同じだった。
迷宮へ入ってから少しずつ集め、交換し、何度も命を預けてきた武器も防具も、一つとして戻ってきていない。
竜のブレスを受けたあの一瞬で、すべて消し飛んだ。
残されたのは、自分たちの身体だけだった。
「……嘘でしょ」
麗華が掠れた声を漏らしたが、蛍も返す言葉を持てなかった。
戦いに負けた、という感覚ですらない。こちらは竜へ触れることもできず、ただ最初の一撃を受けただけで五人全員が教室へ送り返された。
それどころか、ここまで迷宮を進みながら集めてきた武器も防具も、身につけていた衣服さえ、一度の攻撃ですべて失っている。
勝てなかったのではなく、そもそも勝負になるところまで辿り着けなかったのだ。
教室はいつの間にか静まり返っていた。何が起きたのか分からないまま、二十五人が何も身につけていない五人を見つめている。
その視線を感じながら、蛍の頭に浮かんだのは、巨大な扉の前に並んでいた魔法陣だった。
『対価 胸囲+30cm』
そこには、これまで手に入れてきたものとは明らかに格の違う武器や防具が置かれていた。そして、そのすぐ先にいたのは、今の五人をたった一撃で全滅させるほどの竜だ。
蛍はそこでようやく、あの交換陣が何のために用意されていたのかを思い知った。
念のために置かれていた装備などではない。
少なくとも今の五人にとって、あれは使わなくてもどうにかなるようなものではなかった。