オルフェウス:国際公安捜査網   作:松コンテンツ製作委員会

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 パルタ人ザウルによる内閣総理大臣暗殺未遂事件とそれに伴う総理襲撃犯拉致・爆殺事件の謎を追い、パルタ共和国に渡った桜警視ら公安特別捜査隊は、誇り高く心優しいパルタの人々から歓待を受け、パルタ人憎しの認識を改める。
 内閣総理大臣暗殺未遂事件では、警護プランの変更がエーデルシュタイン王国当局から漏れていた。総理襲撃犯拉致事件では実行役の特殊部隊にパラノイアAIの端末の所持が認められた。パラノイアAIとは、CIAやモサドが導入した諜報AIである。
 桜警視は共通の黒幕を疑いつつある。


第4話『荒野の追跡者!』

 目一杯の地平線にまばゆい朝陽が昇る。

 ニワトリのさえずりが聞こえ、家畜が鼻を鳴らす。 

 あっという間に空が水色になる。

 パルタの朝は早い。

 炒り卵と薄焼きパンと野菜にヤギの乳の朝食を、桜警視らは部族らと共に食べる。

「どうじゃったかな、わしらの村は」

 桜警視より早く日向警部補が答えた。

「とても新鮮で、だけど懐かしい体験でした」

「それはよかった。嬉しいよ」

 朝食の後片付けは老若男女問わず平等に分担してやっている。桜警視は皿洗いを申し出る。

「あんた家事の筋がいいな」

 部族の男のひとりが褐色の肌に白い歯を見せて笑う。

「でないと妻に怒られる」

 桜祐警視と桜春警部は仲の良い夫婦として知られていた。

「あんたの女房は幸せ者だ」

 タウロンは地図を広げ、これからのスケジュールを確認後する。

「我々はこれからジープで原野を走って首都に戻り、パルタ陸軍、内務警察と面会し今回の総理暗殺未遂事件、警視庁襲撃事件について情報交換します。パルタ共和国出国は明日です」

「タイトなスケジュールだな」

 大河内は苦笑した。

 いよいよノータム部族長と別れの時。

「それでは部族長、お世話になりました」

 桜警視は、何も手土産を持参していないことに気づき、冷や汗をかいた。

「いいんじゃよ、ただ、パルタには悪人ばかりではないことも思い出しておくれ」

 ジープのエンジンがかかる。 

 別れを惜しみ、互いに姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

 

     *     *

 

 タウロンが険しい面持ちでジープのハンドルを握る。

「どうかしましたか」

「実はここ、つい数日前民間軍事会社PMCホライズンの支配地域になったみたいで」

「は?」

 ガァン! と甲高い金属音が鳴った。

「前方! 今度こそ敵襲です!」

 タウロンは叫んだ。桜警視、日向警部補、大河内二佐が頭を低めながら銃を握りしめ、伏せる!

「俺に任せろ!」

 大河内がライフルを構え、応撃!

 すでに大河内は数人倒している。

「大河内さんなんて正確な射撃だ! 自衛隊の特殊部隊か何かですか」

「あ、タウロンさんには言ってませんでしたね、大河内二等陸佐は別p──」

 大河内が口が軽い日向の口を塞ぐ。

「ベッパ、別班?」

 大河内は舌打ちするが、射撃は継続。

 ん? と大河内が後ろを見る。

 ヘリコプターの回転翼の音が上空を支配し、旧ソ連製と思われる戦闘ヘリコプターの姿が見えた。

 桜警視が噴き上げる砂埃に咳込みながら空を見上げる。

 戦闘用に改造された大型輸送ヘリ(ガンシップと言う)と三機の戦闘ヘリコプターが上空を旋回し、チェーンガンで民間軍事会社をなぎ倒す。水色の空に迷彩色のヘリコプターが目立つ。

『タウロン大尉応答せよ、こちらパルタ政府軍、状況は理解している。PMCホライズンは我々が制圧した』

 パルタ政府軍。桜警視らがこれから情報交換しようとさていたパルタ当局のお出ましだった。

 

     *    *

 

 大型輸送ヘリのガンシップで桜警視たちは運ばれたが、乗組員は話を振っても沈黙を貫く。

「PMCの支配地域に入ったのに気づかないなど、間抜けな話だ」

 その一方でタウロン大尉は軍人たちから叱責されていた。

「いや、ここまでのPMCホライズンの支配地域拡大は私でも予測できなかった」

 と、擁護する軍人もいる。

「PMCも最近羽振りがいいからな、大方スポンサーがついたのだろうぜ」

「その話、詳しく聞かせろ」

「おっと、何だこの日本人、急にマジだぜ」

 大河内和夫が真剣な眼差しとなり、軍人を揺する。

「いや、お偉いさんの話を盗み聞きしちまったんだよ、PMCホライズンにスポンサーがついたって」

「そのスポンサーの名前は!?」

 今度は桜祐が食らいついてきた。

「そこまでは知らない」

 大河内はため息をついた。

「だけどよ、世界中の軍や民間軍事会社に出資してる大金持ちらしいんだ」

 桜警視はさらに喰らいつく。

「待ってほしい、日本にはパラノイアAIというCIAやモサドにも納品したパラノイア社という武器商人がいる。CIAとかとは違うのか?」

「俺が知るか!」

 騒ぎを聞きつけた機長が振り返る。

「静かにしてくれ! どの道お前たちは助かって今運んでやってるんだ。お偉いさんとの面会の機会はこれからなんだから、部下をいじめるな」

 公安特別捜査隊は気まずくなり、押し黙るしかなかった。

 

      *     *

 

 パルタ内務警察を管轄する内務省にて、桜警視らは、警視正を名乗る幹部と数名の部下から、事情聴取を受けた。

 会見はまずはパルタのペースで進んだ。

 やっと日本側のターンとなり、内閣総理大臣暗殺未遂事件、警視庁襲撃事件について説明する。

「そちらの首相暗殺未遂事件の件ではパルタのボウガンが使われたのは残念に思う。だが、それだけでパルタ共和国政府の関与を疑うのは早計ではないかね。むしろ警護プランを漏らしたエーデルシュタインをこそ疑うべきではないか」

 桜警視もパルタ内務警察のこの言い分は予想通りだった。

「もちろんです。私は別の可能性があると思っています」

「と言うと?」

「日本政府によるグローバル人材活用法案による移民推進政策、総理大臣暗殺未遂事件、日本の警視庁に現れたパラノイア社の端末を持っていた特殊部隊、エーデルシュタイン治安警察による警護プラン漏洩、パルタのPMCホライズンの拡大、世界情勢を見る限り何か共通の黒幕が、動いているのでは?」

「一理あるな。では逆に問うが、それは何と考える?」

「私は──オルフェウスだと考えるのですけど」

 

 




登場人物

○パルタ内務警察の男
 パルタ共和国における公安のような立場。
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