オルフェウス:国際公安捜査網   作:松コンテンツ製作委員会

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 内閣総理大臣襲撃事件と警視庁襲撃事件が発生。桜警視率いる公安特別捜査隊は、南の島パルタ共和国で情報を集める。背後にはオルフェウスなる組織の影が見え隠れする。
 陸上自衛隊別班もオルフェウスを追っていた。
 桜警視らはアルプスのエーデルシュタイン王国に着く。王女レリアにオルフェウスについて聞くと途端に冷遇を受けた。
 エーデルシュタインでは、宰相マーゲル侯爵が息子マルス男爵をレリアと政略結婚させようとしていた。


第7話『政略結婚』

 シルクのような金髪がシーツにたゆたう。

 月夜に美しい身体を照らされたレリア王女は、夢を見ていた。

 セピア色の思い出の世界、祖母マリアがレリア

を膝枕しながら。

「おばあさまって政略結婚だったんでしょ? 嫌じゃなかったの?」

「政略結婚でも、幸せは見つけられるわよ」

 そこでレリアは上半身をベッドから起こした。

 夢はいつもその台詞で終わる。

「(あの時はなんて失礼なことをおばあさまに聞いてしまったのだろう、おばあさまは国を背負って政略結婚したというのに)」

 レリア王女は、マーゲル侯爵の息子マルス男爵と政略結婚しなければならない定めだった。

 

      *     *

 

 今日はマルスとの食事の日である。マルスが強引に予定をねじ込んできた。

 マルスは宝石に身を固め、ポマードに髪を固め、嫌味たらしい貴族そのものだ。

 対してレリアは清楚なワンピースの装いだ。

 クラウスを含む従者と共に、馬車で街へ出る。

「私とあなたが結ばれれば、いずれ私は王室入りだな。作法の勉強の日々ですよ」

 そう言う割には、マルスは滲み出る品性の無さを隠せない。

 馬車の横をクラウスが馬で闊歩する。思うところがあるようだが、押し黙っている。

 その時。

 馬車列の前方に女の子が飛び出し、尻餅をついた。

 馬車が急に停まり、馬が鳴く。

「何だ子供か! 捕えよ!」

 レリアはその発言に目を見開いた。

「クラウス、その前に様子を」

「かしこまりました。殿下」

 馬に乗り前進してくる騎士に女の子は怯えるが、クラウスは優しく手を取り、誘導する。

「今からお姫様の馬車が通るから、道を空けてくれるかな?」

「は、はい」

 女の子は頬を染めた。

 やっと追いついた女の子の母親が娘を叱りつけ、王侯に対する非礼を詫びる。

 ようやく馬車が動き出す。

 マルスは鼻を鳴らし、不機嫌を露わにした。

 レリアは、自分もクラウスに憧れた時が──いや、今も思慕の念は変わらないが──ある。

 

     *     *

 

 花畑の向こう、丘で幼い女の子が少年に駆け寄る。

「クラウス〜」

「なんでしょう、殿下」

「また騎士ごっこして?」

「僕は騎士見習いですから、軽々しくできませんよ」

 幼き日のレリアとクラウスだ。

「でも、そうですね、ごっこでよければ」

 クラウスがレリアに跪いた。

 クラウスはレリアに忠誠を誓う──今も昔も。

 

     *     *

 

 エーデルシュタイン王国宰相マーゲル侯爵は、部屋でひとりつぶやきながら考えをまとめる。

 エーデルシュタイン王室は、他国王室との政略結婚で地位を得て、他国からの侵略・併合を防いできた。

 同時にエーデルシュタインは、貴族どうしの交流により情報を得て、諜報国家、永世中立国としての地位を確立してきた。

 だが、今、世界に君主制国家、すなわち王侯貴族がある国は少ない。

 そこでエーデルシュタイン王室に持ち上がった、というよりマーゲル侯爵が望んだのが、嫡男マルス男爵とレリア王女の政略結婚なのだ。

 そして、その政略結婚には裏があった──

 

      *     *

 

 エーデルシュタイン、城の図書館では、海外の商社マンらしき紳士が本棚に立つ。

 本棚を挟み、通路に立つのは──マーゲル侯爵だ!

「連絡は秘書官を通せと言ったはずだ」

 本人らにしか聞こえない囁き声で会話を交わす

「オルフェウスの名が、日本の公安筋に漏れている」

「知っていたのか」

 どうやらこの商社マンは、オルフェウスと関係があるようだ。

「レリア王女の挙式を早めろ」

 商社マンは侯爵、宰相という格上の肩書きのマーゲルに命令口調だ。

「……わかった」

「レリア王女は、わがオルフェウスにとって、諜報国家を開く鍵だ。宰相のご子息との結婚はまさに天佑」

 マーゲルは口角を上げる。

「我々としても、オルフェウスには何かとご恩があり、互いの結びつきにより利を得たいと思う」

 宰相が言い終わるより前に、商社マンは本棚の前から消えていた。

 

     *     *

 

 日向竜介が都市伝説として話していたが、世界のどこかの国の地下に、オルフェウスの地下要塞があるという。そしてそれは──事実だった。

 先程マーゲル侯爵と図書館で密談していた商社マンが車を走らせながら、通信をその地下要塞に繋げる。

「猊下、エーデルシュタイン王家のレリア王女の挙式は早まりました。これで我々は諜報国家エーデルシュタインの鍵を手に入れます」

「安心は早いぞ」

 猊下と呼ばれる肌の白い男はたしなめる。

「この世界に国はエーデルシュタインだけではない。全ての国の国境をなくし、ひとつにするのが、われらオルフェウスの悲願よ」 

「心得て、ございます」

 通信は切れた。

 商社マンは急ハンドルを切り、車は山のトンネルへ入っていった。

 

 

 




登場人物

○「猊下」
 オルフェウスの指導者。
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