「で、お前は未来の月からタケノコに乗って来たと……」
「そうだよ!月の技術は時間すらも越えられちゃうの!!」
話を聞いてみると、どうやらこいつは本当に月から来たかぐや姫らしい。それでいて俺のいた時代よりずっと未来から来た
……いや、普通に考えなくても意味わかんないな。でも、そうでもないと今の状況に説明がつかないのが現実だ
それだけ今の俺が置かれている状況は意味不明なのだ。
しかし、今はこの村に迎えてもらっているが、いつ誰が牙を剥いてくるかわからない。それに死なない人間と喋るウミウシとかすっごい不気味だし
俺なら絶対関わらない。だからこそ周りの人間が信じられない
このままじゃ体は持っても心が擦り減っていく。一刻も早く帰らなければならない
「じゃあさ、多分今少なくともお前の時代から数千年は昔だけどどうすんの?」
「え?ちょっとまって、数千年……?」
「うん、だって見たところ縄文か弥生らへんだと思うし、紀元前だから下手したら1万年前かもな」
人類、それも縄文時代は約一万6000年前から2300前にまで及ぶ。故に、今の大まかな時代すらも分からないのだ
「じ、じゃあ彩葉は……」
「その彩葉って言うのが誰かは知らんが、確実にこの時代には居ないだろうな」
「そ、そんな……」
かぐやは全てを知った後ウミウシの体にも関わらず顔を青ざめさせて絶望したようにそう呟いた
「お前の乗ってきたタイムマシンで帰ったらいいだろ?ついでに俺も乗せてってくれよ」
「それが出来たらとっくにやってるよ……。もと光る竹は乗ってきた時に事故って故障しちゃったからもう使えないよ…」
「え?……。そ、そうだ!お前、月のお姫様なんだろ?だったら迎えとか呼べるんじゃないのか!?」
「それも月の人と連絡が取れないから出来ないよ」
「「………」」
しばらくこの場に重い沈黙ができた
お互いがしばらく固まっていたがその静寂を破ったのは俺だった
「じゃあ、じゃあだ。つまり俺たちはこのまま数千年、下手したら数万年、このまま二人っきりってことか……?」
「…………」
再びこの場に深い沈黙ができる
それをかぐやの甲高い声が破る
「………や、ヤダ〜〜!!やっと仕事終わって彩葉と会えると思ったらこんな!!こんな村の人猿呼ばわりするやばい男とそんな時間一緒に居なきゃいけないの!!彩葉〜〜!!助けて〜〜!!」
「うるせぇ俺だって嫌だわ!!大体何でお前は事故ってるんだよ!!役に立たねぇな!未来から来たってんなら秘密道具の一つや二つ出してみろよ!!この状況を何とかしてみろよ!!」
「無茶言わないでよ!!私だって好きで事故ったわけじゃないから!!」
冗談じゃねぇ!!何でこんなウミウシと歴史の教科書体験ツアー行かなきゃいけねぇんだよ!!そもそもこいつ人間ですらねぇよ!!綺麗なお姉さんにしてくれ!!罰ゲームにしてはタチが悪すぎる!!
「ふぅ、ちくしょう、何でこんなことに………て、ちょっと待てよ?そもそも、そもそもだ。俺はまだ歳を取らないって確定したわけじゃないよな」
「え?」
冷静に考えてみればそうだ。
今のところ虚の見た目、不死身と思しき回復力。そして人間とは思えない力。この三つだけだ
なら俺が歳を取らないと言う確証はまだ無いってことじゃ無いか!?
「ち、ちょっと待ってよ……。じゃあかぐやはこの何も無い時代でずっと一人きり、ってこと……?」
「そうなるな、お先にあがります!!」
「や、やだ〜〜さっきはやばい男とか言ったの謝るから!!だからかぐやのためにずっと長生きして!!」
「そんな頼まれたくらいで何千年も生きる人間がいてたまるか!!まぁとにかく俺は絶対途中で死ぬと思うが、まぁ頑張れよ。ハッハッハッ!!」
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150年後
「とうとう、この村の人間は私たちだけになっちゃったね」
「あぁ、そうだな……」
本当にこの村の人たちは俺たちに良くしてくれた。俺たちが来た時子供だった子達のさらに子供、人によっては孫の顔まで見れた。
飯は不味すぎて軽くトラウマになったけど。現代人は舌が肥えすぎて昔の飯が食えないって本当なんだな
だからこそ飯を食わなくても生きていけるこの体に少し感謝した。あの飯まじでうんこの味したからな。
うんこだぞうんこ。あのうんこ味のカレーかカレー味のうんこっていう究極の二択に上がってくるほどの劇物だぞ?
ちなみにこっちに来る前まではうんこ味のカレー派だったけど今ではカレー味のうんこ派です。カレー食いたい!!
……さて、みんなの墓も作り終えたし、また新しい
村とか探さないとな……
ん?でもなんか違和感が……
「……って、違ぇー!!」
「わっ!!びびった〜、急に叫ばないでよ〜!」
「そんなんどうでも良いんだよ!!何で俺はナチュラルに見送る側になってんだ!!おかしいだろ!!三途の川から手を振る側の予定だっただろ!?今んとこ三途の川どころか河川敷すら見えてこねぇよ!?」
こっちに来てから10年くらい経った時からおかしいなとは思ったよ?肌もこの時代に来ても全然荒れずピチピチだし、飯も食わなくても生きていけるし。
そして今、こっちに来てから遅150年、白髪もなければ肌もピッチピチすぎてもうビッチビチ
最初は見た目が変わらないだけでいつかぽっくり逝くのかな?と思ってたよ!!でももうここまで来たらそんなわけないじゃん!!もう死なないですやん!!
「まぁ、玄哉!」
「ん?」
「かぐやと未来まで一緒に行こう?
「い、嫌だーー!!!」
───────────────────
8000年後
「ヤチヨ?これは一体どういう事だ?」
「い、いや〜その〜……」
俺は今、目の前にいる綺麗な白い髪と青い瞳をした少女を正座させている
「じゃあ罪状を読み上げろ」
「はい、私は我慢できずに1日にパンケーキを5枚食べました」
「俺はあれだけ言ったよな?パンケーキは一日2枚までだって。しかも粉没収したからって店の商品を勝手に食べやがって。これ何回目だ?」
「さ、三回目……?」
「残念43回目だ。惜しかったな、ニアピン賞にこれをやろう」
「あいたっ!」
俺は容赦なくこの食いしん坊の額にデコピンをした。
……はぁ、何やかんやここまで来ちまったよチクショウ。
今、俺は街の隅で小さな百貨屋を経営している。あまり儲けはないが、街の子供達の憩いの場所のような、昔ながらの駄菓子屋のような感じになっている
まぁ正直、ヤチヨがツクヨミで稼いだ金と俺がツクヨミのプログラミングで稼いだ金でもう一生暮らせる金はあるから問題はないのだが
……いや、俺らの場合これで一生は暮らせるか怪しいか
そして去年、ついにヤチヨの意識を入れる肉体が完成した
まだまだ機能面で足りないところはあるがそれでも本人は十分だと言ってくれている
しかし
「まったく……次やったらお前の味覚機能3日間オフにしてやるぞ?」
「そ、そんな…う、嘘だよね……?ヤッチョそんな事されたら生きていけない……ね、ねぇ
「知りません、自業自得です!」
「そ、そんな〜〜!!」
そう、ヤチヨが味覚を取り戻したあの日から食べる量がとんでもないのだ。
最初は数千年ぶりだからと思って見守っていたが、さすがに食べ過ぎである。
「まったく……そんなに食べたら太るぞ?」
「──は?今なんて?」
あっ、やっべ地雷踏んだ
このスイッチが入ったヤチヨは話の通じないバーサーカーと化す
「ねぇ、いい?ヤッチョはどんなに食べても太らないの。はいリピートアフターミー、『ヤチヨ様はどんなに食べても太らないし可愛いです』はいっ!!」
「いや、ごめ──「リピートアフターミー」ヤチヨ様はどんなに食べても太らないし可愛いです」
「よろしい」
ヤチヨは怒ると目のハイライトを消して闇の宿った捕食者の如き瞳でこっちをジっと見てくる
てかいつのまにか立場逆転してない?俺が怒る側だったよね?東堂いつ手叩いた
そんなことを考えるが、まぁ今の発言は俺が悪かったのでさっきのは許してやろう
「そういやヤチヨ」
「ん?な〜に?」
「今日ここにバイトの面接に来る子いるから」
「あっそうなんだ〜!ちなみにそれは男の子?」
「いや女の子」
「あ?」
そう俺が言った瞬間ヤチヨの目からハイライトが消えた。この間0.00001秒
この瞬間俺は悟りましたね。あっ終わった……って
「……ふ〜ん、そうなんだ?ヤッチョじゃ満足出来なかったんだ?へー」
「いや、別にこれはそういうのじゃ……」
「じゃあなに?別にお客さんが増えたわけでも人手が足りないわけでもないのに女の子雇う理由が私欲以外にあるのかな〜?ならヤッチョにも考えがあるよ?」
そう言ってヤチヨは店の奥に下がっていって何かを探すようにゴソゴソし出した
そしてヤチヨが何かを持って笑顔で戻ってきた
目から光の消えた暗い笑顔で
ジャラッ…カチッ……
「……ヤチヨさん?これは一体……?」
気づけば俺の手にはキッチリと俺の手のサイズピッタシの手錠が嵌められていた
「これはね、松陽が悪いんだよ?松陽が他の女の子に目移りしちゃうんだもん。なら、ヤッチョ以外見えなくすれば良いんだ。お金ならいっぱいあるし、しばらくお日様見れると思わないでね?」
「待て待て待て待て!!ゴリゴリのバッドエンド行こうとするな!!踏みとどまれ!!ひのまず話を聞け!!」
「ふ〜ん、じゃあ言ってみなよ。ヤッチョが浮気を許すような深〜〜い訳でもあるのかな?」
まずいまずいまずい
ここで一言でも誤れば間違いなくバッドエンドに行ってしまうと確証するほどの圧を感じる
そこでこれは端的に、それでいてわかりやすく理由を伝えなければならない
そこで俺はある人の名を叫んだ
「酒寄さんだよ!!」
「………え?」
俺のこと言葉をきいた瞬間、しばらく目を見開いて固まった後、小さく声を漏らした
「この前道でお前の作った酒寄さんのイメージ画像そっくりの人がいたんだよ。そこでうちのバイトに来ないかって誘ってみたんだ」
「な……な……な……!」
それを聞いた途端ヤチヨはワナワナと口を震わせて言葉に詰まっているようだ
きっと久しぶりに酒寄さんに会えることを喜んでいるのだろう。いや〜良いことするのは気持ちがいいなぁ!!
「何でそんな大事なこと早く言わないの〜!!!」
この店に、ヤチヨの魂の叫びが響いた
この百貨店のイメージはどこぞの安西先生似の伝説の殺し屋の店です