「本当にお休みの日にすみません……」
「いえいえ、大丈夫ですよ。貴女が人を頼ることなんて珍しいですから。私からすればもっと人を頼るべきだと思いますよ」
今日、この三連休お休みの予定だったこの店に俺と酒寄さん、そして暫定かぐやが居る。
ヤチヨはあれからニコッと笑って『赤ちゃん用品買って来るね〜』と言ってどこかへ行った
「して、酒寄さん」
「はい、何でしょう」
「この子は誰との子供ですか?」
「違いますよ!?」
「大丈夫。若さとは過ちと共にあるものです。私はそれを咎めはしません。ただ相手の人にはすこ〜しばかり優しく授業をしようかと」
「だから違いますって!ゲーミングに光る電柱からこの子が出てきたんです!」
「そういう幻覚を見るほどまでに追い詰められていたとは……。気がつかなくてすみません」
そう言って俺はグスングスンと泣き真似をする。それを見た酒寄さんは『あぁ〜もう!どうすれば…』と頭を抱えている
「まあ、冗談はさておき「冗談で済ますかは私が決めますよ?」……貴女はこの子をどうしたいですか?」
「!……」
「貴女はまだ若い。これからまだまだたくさんのことを経験するでしょう。しかし、この子の存在はその輝かしい未来を曇らせる可能性がある。もし、貴女さえ良ければ私たちに預けるという選択肢もある。」
酒寄さんは見た感じ本当に余裕がない。勉強、スポーツ、バイト、節約、人付き合い、その全てを完璧にこなしている
そう、完璧にこなしすぎているのだ。それはとてもじゃないが健全とは言い難い
本来高校生なんてまだまだ未熟で大人に依存して生きていても全くおかしくない年齢だ。なのにこの子は大抵のことを一人で出来るがために多くのものを背負い過ぎている
さらにそこにかぐやの存在が加われば、彼女は押し潰されてしまうのではないか。俺はそれが怖い
「……本当に、いつもありがとうございます。でも、それは遠慮させてもらいます」
「……そうですか、一応理由を聞いても?」
「この子は私が拾いました。親…って訳でもないですけどそれでも私にはこの子を育てる責任があります。それを他人に押し付けて自分はのうのうと生きるなんて、──寝覚が悪いじゃないですか!」
……あぁ、やっぱりこの子は眩しいな。
ヤチヨのものとは違う、ヤチヨが月だとすればこの子は金星のようないつかフラッと消えてしまいそうなのに強く、眩しい輝き
俺がとうの昔に失ってしまった、輝き
この子もこのまま俺のようにこの輝きが霞んでしまうのだろうか。そんなものを俺は見たくない
ならば俺が出来ることは
「なら、貴女が学校に居る間だけでもこの子を預かっていましょう。金銭、人手、何でもいいです。他にも困り事があれば私に言ってください。絶対に何とかします」
「いえ、そこまでしてもらうわけには……」
「もし、この子を拾った貴女に責があるとすれば、貴女をここに雇った日から私は貴女を拾ったようなもの。つまり!私にも責任があります!……なので、一人でそんなに抱え込まないで私にも分けてください」
「そんな人を捨て猫みたいに……でも、そうですね。──お願いします!手伝ってください!」
「ガッテン承知の助です!」
「ただいま〜!」
話がまとまってこの子をどうするか決まった時にタイミングよくヤチヨが帰ってきた
その手には大きな袋が二つ握られており当のヤチヨはやけに機嫌良くニコニコしている
「はい彩葉!赤ちゃんグッズとか色々買ってきたから使って!」
「あ、ありがとうございます……。あの……何かありましたか?」
「ん?いや!ぜ〜んぜん!!でもこれからちょっと松陽に話あるから今日はここらでお開きって事で!」
「え、えっと……」
「お開きで!!」
「はい!失礼します!」
そう言って酒寄さんはヤチヨに貰った袋を持って店から逃げるように去っていった
そしてヤチヨはこちらを振り返りながら酒寄さんに渡さなかった方の袋をゴソゴソしだした
「な、なあヤチヨ……あの子は──」
フシュッ
「──え?うっ……な、何を……」
ヤチヨは袋からスプレーのようなものを取り出し、俺の顔に吹きかけた。
俺の意識はここまでだった
──────────────────
ん?あれ?俺はさっきまで酒寄さんと話してたはず……うっ、何故かそこから先が思い出せない
「ん……?っ!?むー!むー!?」
おいおいおいおい、まて、ちょっと待て!!何だこれは
今、俺の口にはエロ同人でしか見ないような口枷に両手両足に手錠、さらに椅子に縄でぐるぐる巻きにされて身動きが取れなくなっている
「あっ松陽起きた!!」
そう言っていつの間にか目の前にいたヤチヨは俺に微笑みかける。ハイライトの消えた暗〜い瞳で
……っ!そうだ、思い出した!あの後ヤチヨになんか振りかけられて眠らされて……
「ふふっなんでこんな事になってるって思ってるでしょ。でも、松陽が悪いんだよ?」
「む?はひほはふへへ!?」
「今までずっとアピールしてきたのに食べてくれるどころか味見すらしてくれないんだもん。それなのに彩葉にはそんなに簡単になびいちゃってさ。ついには赤ちゃんまで作っちゃって。私それを知った時から気が気じゃなかったんだよ?松陽がいなくなっちゃうのが怖いの。松陽が誰かのものになっちゃうなんて私絶対に嫌なの。例え相手が彩葉でもね。そこで私思ったんだ!大好きな人同士でくっついちゃったんなら私もその中に入っちゃえばいいんだ。松陽も彩葉もまとめて頂いちゃえば問題ないでしょ?ねぇ松陽もそう思うよね?そうじゃなきゃ許さないよ?でも松陽も嬉しいよね?こんな美少女に身も心も預けて気持ちよくなれるんだから。もう私以外じゃ気持ちよくならないようにしてあげるから。覚悟しといてね?」
「むー!!
やばいやばいやばいこの子目がイッちゃってるよ。瞳孔ガン開きですよ。こんなの見た事ねぇよ奥さん
というか誰だよ!この子をこんなになるまでほっといちゃった人は!先生言ったよね、ちゃんと毎日水あげなさいって!こんな炎天下で放置しちゃったらそりゃこんなんなっちゃいますよ!
……いや、俺じゃないから。絶対違うから。そうだ、これは酒寄さんが悪い。うん、そうだ。そういう事にしておこう
っ!?こいつ!ベルトに手をかけ始めやがった!ふざんけんな!この8000年散らさなかった俺の純潔をこんなムードもクソもない形で失ってたまるか!
8000年ものの童貞だぞ!?30年で魔法使いなら俺はもう賢者とかだよ!?もう常時シなくても賢者モードですよ!?なので間に合ってるんでお引き取りください!!
ガチャっ「すいません!ちょっと忘れも……の……」
「「あっ」」
この時、酒寄彩葉の目に映ったのは椅子に完全拘束された松陽の姿と血走った目で息を荒げながらズボンを脱がせているヤチヨの姿だった
「……スッ…パタン……」
「
─────────────────
「WHO is this?」
「ねぇ彩葉〜、この人誰?」
三連休が終わり暫定かぐやをここで預かる……はずだった
しかし酒寄さんが死んだ魚の目をして連れてきたのは高校生くらいのタレ目の美少女だ
「へぇ〜これがあの赤ん坊?最近は何でも発達が早いって聞くけどここまでとはな。にしても背はこんなに伸びたのに胸の方は大して……ひぇっ!?」
「松陽?」
しまった!かぐやはヤチヨの過去の姿だった!!
にしてもこいつ胸小さいこと気にしてたのか?なら別にツクヨミの中でも現実でもいくらでも作れるのにな
「うぇ〜〜どこ見てんの?彩葉、この人のとこ行くのヤダ!ネットで見たもん!男はみんなオオカミだって」
「我慢しなさい。こんなんでも他に行き先がないんだから」
「こんなん言うなし。あと俺のタイプはボンキュッボンのお姉さんだ。お前みたいな胸も年齢もまだまだなガキ興味ねぇよ」
「ぬぁにお〜!!見てろ!!私だってもうちょっとしたら松陽だってメロメロのお姉さんになっちゃうから!」
「はいはい、牛乳飲んで出直してこい」
ひとまずここでかぐやを引き取り酒寄さんが学校に行った後、かぐやは特に何かしたと言うこともなく店の中を走り回ったり客としてくる子供と一緒に遊んだりしていた。
しかし俺たちが休憩でお昼を食べている時かぐやが何やら出入り口で何かをしていた
「よし、二人はご飯食べてる。今のうちに──」
「どこへ行くんだぁ?」
「へっ!あっ!いや、その〜……トイレ?」
「おうおう、ならそのまま野糞して警察のお世話にでもなってこい」
かぐやが脱走しようとしたのだ。
まぁ大方酒寄さんのところへ行こうとしたんだろうけど。ホントにまだそんな日も経ってないのに仲のいいことで
「ほら、これ服。奥の部屋で着替えてこい。酒寄さんに会いに行くんだろ?」
「へ?」
「せっかく行くならやるでしょ、サプライズ!!」
「サプライズ!!やる!!」
「ならちゃっちゃと着替えちゃいなさい。酒寄さん学校終わっちゃうよ?」
「分かった!着てくる!!」
そう言ってかぐやは店の奥の生活スペースへと走っていった
「ついでに買い物でも行くか。せっかくだしここで色々揃えちゃおう」
「じゃあヤッチョへのプレゼントとかも買ってくれていいんだよ?」
「自分で買いなさい」
「え〜!!もう、松陽のが欲しいのに」
「ん?なんか言ったか?」
「べっつに〜?ただいつも通り松陽はクソボケだなって」
「俺が何したってんだ!?」