「ふんっ!!」
朝日君が武器を振り下ろすと地面に大きな亀裂が入る。
朝日君の武器は細くて長い金棒だ。射程もそこそこあり振る速度も早い。破壊力もある。バランスが良く一人で大体何でもできるいい武器だ
対して俺の武器は───
「いいんすか?そんなロマン武器ばっか使って!!」
そう、俺の武器は太刀だ。
見た目と射程はちょっとだけ長いだけのただの刀だ。しかしアバターに与えるダメージが刀の1.5倍であり少し当たっただけでも大きいダメージを与えられる
ここだけ聞くと最強の武器だろう。……そう、ここだけなら
この武器の問題は振る速度と破壊力だ
振る速度、そしてあと隙共にハンマーよりも数フレーム大きく、さらに特筆すべきは破壊力が
これは誇張なんかじゃなく文字通りほんっとうに破壊力がないのだ。つまり、アバター以外の障害物などは全く切れない
これが意味するのはKASSENなどでは櫓の占拠も大将落としを打ち込むことも出来ないということだ
なのでほとんどSETSUNA専用のロマン武器になっている
「いいんですよ。だってこういうロマンを嫌う男なんていないでしょう」
「ははっ!それはそうですね。配信者はリスナーに夢を見せないといけませんから」
「いつ私が配信者になりましたか?」
「これからなるんですよ。この試合で俺が勝って!!」
そう言って朝日君がこちらに向かってくる。あと隙の狩られにくい良い動きだ。本当に長い間、努力し続けないと身につかない洗練された動き
それをこの年にして身につけている圧倒的な才能
多くの人が言うだろう。天才だ、と
それは間違いではない。ただ、努力できる天才と努力できない天才には埋められない溝がある
それを一括りにすることも、才を言い訳にする事も俺はしない。というかしたくない
なぜかって?それはね
凡人でも長い時間と執念で天才の努力に追いつくこともある。それを知っているからだ
「確かに前よりも洗練された良い動きだ。さて、路傍で授業を一つ」
「なっ!?」
「武器は振るだけが全てではない」
俺は朝日君が金棒を振った後の少しのあと隙の内に刃を朝日君の首元に押しつけた
そして朝日君の金棒が振り下ろされるより先に俺は刃を横に引き切った
「ふぅ……これでまた、私の勝ちですね。どうやら、まだ渡りの時期には早いようだ」
「かぁ〜〜っ。やっぱ強いっすね。まだ届かない」
朝日君が手を額に当て上を見上げている。
……これこの年でやる人いるんだ。やっぱ色々苦労してんのかな?この兄妹ちょっと油断したら無理するからな
後でルマンドとロールバームいっぱいあげよ
「そういや知ってます?彩葉、配信者始めたみたいっすよ。名前はかぐやいろPって言うんすけど」
「ふっふっ。知っているとも。さぁ!これが目に入らぬか!!」
そう言って俺は懐からある一枚のカードを取り出す
その内容は──
「こ、これは……」
「そう!かぐやいろPチャンネルのメンバーシップカードNO.1だ!!」
そう!俺はヤチヨの配信の後四六時中画面に張り付いてかぐやいろPと検索をし続けていたのだ!
その甲斐もあって視聴回数1回いいね数1回チャンネル登録者1人と言う正真正銘、最初のファンを名乗れる画像まで持っているのだ!!
「……松陽さん。5でどうすか?」
「だめ」
「10」
「やだ」
「15!」
「無理」
「えぇい!20でどうすか!?」
「やだっぴ」
「ちくしょぉぉぉ!!」
「ハッハッハー!!まぁ別に良いと思いますよ?今でもまだまだ古参名乗れますし?あぁ〜でもぉ?やっぱ最初のファンになってこそって感じもありますよね〜?」
「あぁぁぁぁぁ!!」
膝をついて地面に拳を打ちつけている
違和感
……殺気?
違和感
いや、これでいい!
「!なにや……つぅ…?」
「へー、松陽。見ちゃったんだ。アレ。私の黒歴史」
「あっ……」
「じゃあ俺帰りますね。今日はありがとうございました!またお願いします!」
「待て!待ってくれ!!頼む!!行かないでくれ!!俺を置いていかないでくれぇぇ!!」
「は〜い。松陽はちょ〜っとこっちこようね〜。大丈夫!……何もしないから」
「や、やめろ!来るな!!俺の側に近寄るなーー!!」
──────────────
ザザーンっ……ザパーンっ……
波の音が広がる砂浜の上にキラキラの女子高校生が四人
「きゃーーっ!!彩葉の水着可愛すぎ!!何あれ!?破壊力!?」
……を、見つめる不審者一名
そう、
8000年分の経験だけではなく他の溜め込んじゃいけないものもどっぷり溜め込んだ
……どうしてこうなった
俺は確かに嫌だと言ったし抵抗もした。なのに気づいたら水着着て酒寄さん達ストーキングしてた
な、何を言っているかわからねぇと思うが俺も何をされたのか分からなかった
あれは不審者なんてチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
まぁ、このハァハァ言ってる一歩間違えばヘイ!ポリスメン!になりそうな不審者からはちょっと距離とってかき氷でも買お
そう思って海の家で焼きそばとかき氷を買ってヤチヨのところに戻っている時
「ねぇねぇお兄さん。ちょっと私と遊んでくれません?」
「え?」
「ホントにちょっと、ほんと先っちょだけで良いんで」
「何の話をしているんだい?」
「何って、ナニですよ。言わせないでください」
「お〜い誰か〜!!ここに口が上も下も何するか分からない子何とかしてあげて!!俺じゃ手に負えないから!!」
ヤッベェよ。いきなり逆ナンしてきて何言い出すんだと思ったらナニとか言い出すし。最近の子はみんなこうなの?こんないろんなとこガバガバなの?
「ねぇ、いいでしょ?お兄さんお一人っぽいし。一人より二人の方が楽しいですよ。あっ来年は三人かもですね。ふふっ」
「いや、ほんと。間に合ってるんで。俺には可愛くておっぱいデカくて金持ちで俺のこと一生養ってくれるお姉さんの彼女がいたらよかったなぁ……」
「つまりいないって事ですよね?じゃあ行きましょう!そして一緒にイきましょう!」
ヤバいよヤバいよ!
ホントこの子どうなってんの?話せば話すだけ地上波じゃあ流さないワードがボロボロ出てくるんすけど。怖いんすけど
ていうか、こんなとこヤチヨに見られたら殺されr──
「先……生…?」
「あっ……」
今、俺の状況は俺の腕を掴んで密着している金髪の若い女の子とそれを見つめる教え子
そして酒寄さんは
つまり、これはいわば中学のいつもは厳しい生徒指導の先生の不倫現場を目撃した生徒みたいな状況だ
ここから繋がるルートは三つだ
一つ、これをヤチヨに報告されて死亡
二つ、こうしている内にヤチヨに見つかって死亡
三つ、ヤチヨの野生の勘でバレて死亡
つまり、詰みや。死ぬで?俺
「えっ……お兄さんこんな歳の子に手出してるの?うわぁ流石にドン引きだわ。ごめんなさい、さよなら」
「あっ……ちょっ!」
そして女の人は急に冷めた目をしてスタスタとどこかへ行ってしまった
「「………」」
何してくれとんじゃあの女ぁ!!
この状況なんとかしてからどっか行けよ!?何でこの状況で帰っちゃうかなぁぁ!!
見ろよ!酒寄さんの顔!!生ゴミを見るような目でこっち見てるよ。養豚場の豚を見るように俺を見てるよ!?
「え、えっと酒寄さ──」
「──大丈夫です」
俺が弁明しようとした時、酒寄さんが穏やかな、それでいて暗いという同時に存在できない表情を作るという神技を見せながら口を開く
「ヤチさんには内緒にしといてあげますよ。
「おぉっ!ありg──」
「──でも、さっきから先生私たちのことつけてましたよね?」
「ぐっ!」
バレてた。おもっくそバレてた
やべぇよ、この前女子高生ストーキングして捕まった成人男性のニュース見たけどまさか俺がそうなるとは
次は君だってか?やかましいわ!!最悪のワンフォーオール受け継いじゃったよ。ということはあのオッサンはオールマイトだったのか
「それに加えてさっきの女の人といい、えらい女の子が魅力的に見えるみたいでほんま羨ましいわ」
「やめて!京都弁でアタシを刺さないで!心にグサッとくるから!!後誤解だって、あれは…」
「それ何の話〜?ヤッチョにも聞かせてほしいな〜!」
どんなタイミングだよ!?俺が神様に何したってんだよ!?
……いや違うじゃん。別に神社のお供物食べたのは久々の甘味を目の前にしたら我慢できないじゃん。
お地蔵さんの額に肉って書いたのは謝るからさ!!だからもう許してくださいお願いします!!
「へー。ちょっとこれは教育がいるかな?ねぇ彩葉」
「さ、酒寄さん……?」
俺が縋るような目と声で酒寄さんに歩み寄ると酒寄さんはニッコリ笑って言った
「はい。やっちゃえ日産」
「アイアイサー!」
「酒"寄"さ"〜ん"!!!」
この後、全身拘束の後に俺の命懸けの弁明により執行猶予がついた。次はないらしい。おっかねぇ……
帝の5とか10とかは全部100万倍した金額です