Fate/ Grand Order ーSecond Repeatー 作:FGOキッズ
話変わるが、オルガマリーはかわいいと思います。可愛いと思うので早い段階で馴染みます。多分檻我鞠音ぐらい可愛いと思います。
DDDが読みたいです。
DDDをください奈須きのこ先生。もうFGOで十分稼いだのでDDDと月姫とまほよをください。
弓兵と魔術師が燃え盛る町を飛び回る。因縁の対決、その最終戦の火蓋が切って落とされた。鈍色の宙に舞う火花を目に先を目指す一行。
「キャスターにアーチャーは任せよう!大聖杯への入口である洞窟までは案内できる。最速で向かおう」
「万が一キャスターが負けたら挟み撃ちに合うからでしょ!?向こうが決着つく前に俺たちはセイバーを倒す!って感じであっているよね!?」
藤丸がサーヴァントの狙いを代弁する。灼熱に染まる街並みの中、ギリギリ息が上がらぬ足で走り抜けている。
「貴方、結構慣れてきたんじゃない?結構慣れているの?なんというか、後先考えて行動するの」
少しばかり緊張が解れてきたのか。気高く冷たき誇りの花たるオルガマリーの、もう一つの性根が見えた気がした。
「うーん、わからないです、オルガマリー所長。ゲームとか読書の賜物だとは思うんですがねぇ……!にしても、ナビゲーターさん!?なんで道がわかるの?さっきの提案だって貴方はかなり適格だった!」
そういえば、と皆が思った。先ほど登場したばかり。交流もどのような身の上かもわからないのに、彼の判断は正しかった。
「ああ……あれは俺のクラス別能力が影響しているんだ。ナビゲートスキルがこのクラスのサーヴァントに付与されている。今の俺はC相当だから道に迷わず進むことができるくらいだ」
「──クラス別能力?何それ?」
マスターの疑問も仕方がない。彼は本当に無知なのだから。そこを補佐するのは現状最もサーヴァントシステムについて知る魔術師オルガマリー・アニムスフィア。
「サーヴァントには宝具やスキルの他に、そのクラス独自の持つものなの。マシュや、セイバー、ランサー、アーチャーは対魔力。ライダーであれば騎乗といった具合ね。マシュがあの時アサシンに一撃入れられたのはアサシンのクラス別能力である気配遮断による影響だと思うわ。そんなことよりナビゲーター。貴方は私達に協力してくれるのは感謝するのだけれど──多少時間を使ってでも貴方について知りたい。この
そのまま、当然回答すべき問いを口にした。進む足が遅くなる。
「ああ、それなら応えよう。でも後少しで入口に着く。”今わかったことだけど”、キャスターは必ずアーチャーを倒せるから、挟み撃ちの心配は無くなった。休憩がてらっていうのかな?セイバーと戦う前に息を整えておく必要があるだろうし、そこで語るとしよう。とは言いつつ、覚えていることなんてほとんどないんだけどね」
そう口にして進んだ先に山があり、さらに進めば岩壁がそびえたつのみだ。あの地獄の街並みも自然の中は静かで何者にも汚されていない。
「あっれぇ?可笑しいなぁ……本来ココは通れるはずなんだけど……」
当てが外れたと頭を書くサーヴァントの青年。少し万能感が薄れたと感じる三人。
「驚いた。貴方でもわからないことがあるのね、ナビゲーター。まぁ任せて頂戴?最低限構造を読み取るくらいはできるから」
オルガマリーは岩に触れる。
「ナビゲーターの言う通り、道自体はあったわ。一応人目隠しの結界が張られているくらいで物理的に塞がれていると言っても過言ではないみたい。強いて言えば野良の魔術師に見つかることを恐れたくらいのものね。そうはいっても、ほとんど効力が切れたものだったけど……。マシュ、お願いできる?」
「任せてください。所長」
盾の一撃が岩を粉砕する。岩を払えば地底へと続く洞窟が姿を現す。行き場を失い停留していた空気が外へと走り去っていく。ここに来てから初めて感じる、物理的に冷たい空気だった。と同時に確かに感じる魔力の波。非魔術師である藤丸を除けば魔術回路を持ち、神秘に触れる彼女ら3人はその魔力が果てしない悪意と憎悪に汚染されたものだと理解してしまう。キャスターが言っていた”汚染”とこの先にあるのだろう大聖杯がどのような関係であるのか。解明するべく足を踏み入れる。
冬木の根源。正常な世界では遠坂家が管理し、マキリ、アインツベルンと共に築き上げた根源の渦への道。本当の魔法──受けて未来を示す三つ目の奇跡が眠る神秘の穴。4人は黙って進んでいる。するとちょうど良いスペースを見つけたので、そこで座ることにした。
「約束だったな、俺に関することを教えるって」
薪を中心に全員が頷く。ボロボロの外套を取り、改めて全容を晒す。背には現代的なケース。赤と黒を基調としたレザーのような材質で作られたコートを着ており、その隙間から見える胸部にはいくつもの傷が見える。さながらサーヴァント、歴史上の英雄というよりは傭兵のような出で立ちだ。右目と違って潰されなかったのだろう左目の碧眼が懸命に言葉を選んでいることを示していた。
「俺のクラスは《
え!?と藤丸は困惑するが試しにじろ~っと凝視してみる。傷ついた赤髪混じる金髪の青年が映るだけで何も見えない。そう感じた時。
「──見える……見える、何か文字が……え……なんて読むんだ?N……a、v、igate……。ナビゲート?ランクC?」
「そう。俺が唯一最初から覚えている能力はこの《ナビゲート》だけだ。ランクはC。道に迷わず、目的地への道のりをなんとなく直感的に理解できる。運が良いと少し先の未来も見ることができる。自分の意志で見るものじゃなくて、やっぱり直感的に”こうなるのだろうな”を理解できる程度だけどね。だからといって万能ってわけじゃなくて召喚直後から今に至るまで、大聖杯への道のりがわかるだけで君たちを探すことは全部自力だったんだ。だから何というか、ライダーに君たちが襲われた時、救出に間に合ったのは本当に運がよかっただけと言える。あ、マスターその目は大事にしとけよ?別に魔眼ってわけじゃない。強いて言えば……マスターの特権だ。サーヴァントのステータスを見ることができる。試しにお嬢さん……マシュ君を見てみると良い」
彼に促されるままにマシュを凝視する。まじまじと見つめれて良くも悪くも関わりが浅く、同年代の男性慣れしていない少女は照れ臭そうにモジモジしている。
「ホントだ、確かに
マシュと違い
「ああ。俺の自覚や考えとは別で、俺にはステータスを隠ぺいする効果を持つ宝具かスキルを持つらしい。その対象が俺にまで及んでちゃ意味が無いのが困りモノだよ」
「私からも良い?」
オルガマリーも質問者に加わる。
「さっきアーチャーの狙撃を打ち払った時に放った光。あれについて何か知っていたりしない?勝手な考察で申し訳ないけど、ただの魔力放出で終わりにできるものでは無さそうなのよね。実際に見たわけじゃないんだけど、一度そんな力を使うサーヴァントの話を学院時代に聞いたことがあるの」
──それは瞼の奥底に眠るお伽話。まだ幼く右も左もわからぬ時に出会った男の話をする。その男は正義に執着するものだった。錆びた赤髪、目にするもの全てを複製した剣製の魔術使い。宝石を扱う魔女と共に聞いた英雄譚。その男の運命。
「視界全て覆う光帯。貴方はまるでそれを剣のように振るっていた。黄金の輝くそれは──イングランドの伝説的な君主、魔術世界において人類の脅威を打ち払う聖剣を携えし騎士王──”アーサー王”のそれと似ているように感じたの。その関係者だったりしない?」
蒼の目が一段と輝く。答えを見つけてはしゃぐ子供のようで、どこか違う擦り切れた色。彼は「わからない。でも多分自分は本人ではないし、関係者ではないと思うんだ」と答えた。それはどうしてと聞けば、なんとなくそう思うと言う答えになっていない答えが返ってくる。
「だけど、オルガマリー君。君の問いはあっているかもしれない。俺は聖剣の担い手ではないが、仮にエクスカリバーではなくても聖剣を振るっている可能性は否定できない。記憶が無いから可能性だけは残されているって意味合いになるけどね。ああ、そこで一つ思い出したんだが……俺はあの攻撃をあと使えても回が限度だろうね」
サーヴァントの青年はコートの袖をまくり、巻きつけられた襤褸と手袋を外す。そこには黒焦げになった、今もなお熱を持ち続ける腕が残されていた。皮膚は罅割れ、壊死を続ける、ボロボロの手。隙間から零れる血も熱によって固められてこれ以上流れることもできない。皮膚を一枚挟んだ先にある肉は僅かに光り輝いている。オルガマリーは即座にそれが酷使を超えて酷使され、破壊され尽くされた魔術回路だと理解する。
「俺はあくまで導くもの。《
そう言われたので再び凝視すれば確かに”Mana Burst:D”と理解できる。
「ランクはいくつだった?」
「Dです。マナ・バーストもとい魔力放出。ランクはDでした」
そりゃそうだろうなと返される。
「……、やっぱ敬語はやめてくれ。変な気持ちになる。にしても気づいたら解放されていくシステムんだろうか。ランクの振り分けがどういう基準でそうなっているかわからないが、俺の場合はアレだろうな。《魔力放出》自体は高威力だが、その威力にこの体が耐え切れないのだろう。最初に使ったのはライダーと戦った時だ。視線を外しながら戦い続けるのは至難の業だったし、正直石化も始まっていた。だから使わざるを得ず、一回使ったよ。できる限り君たちに気づかれないように加減したがこの様だ。あ、そうそう強力に威力を発揮しない時の魔力放出は微弱でね、持っている道具を多少強化する程度しかできないんだ」
そう言って彼は懐から、おそらく町で拾ったのだろう錆びて煤汚れた包丁を取り出し、力を籠める。すると僅かに光り輝いたが数秒と持たずに消えてしまいには刃は崩壊した。彼らにはまだ共有されていないが、アーチャーの見立ては恐らく正しかったと言える。一つ付け加えるとすれば、《
「一回目で壊れたのは左手だけだった。だが二回目、あの魔剣を打ち払った時は左手全体が痛んだ。そうしたらこれさ。辛うじて原型を保っているが……次は上半身を持っていかれるだろうな。その次は全身。つまり退去する。まぁそこは大丈夫だろ、俺はあくまでサーヴァントだから死んでも良い。それより」
「そう言わないでよ、ナビゲーター。死なれて気持ちが良いなんてこと、絶対にないんだから」
「──そうだな」
しばし沈黙が訪れる。
「だが、約束はしないぞ。再度言うが俺は抑止力から召喚された身だ。君たちカルデアを守るために命を使うことが”至上の命題”になる。信じることができないんなら、信じなくても良い。俺は勝手に君たちを守り抜くだけだからな。だいたい、あと1回は上半身がお釈迦になるとはいえ使えるんだから気にすんな。それよりも、セイバーの対策をするべきだと思う」
それなら、とマシュが起立する。
「キャスターさんの口ぶりから考えるにセイバーの真名はアーサー王だと思います」
「薄々そう思っていたけど、やっぱりね。セイバー……いやアーサー王は強敵よ。私知っているもの、この特異点での歴史はさておいて、私が知る聖杯戦争の勝者はそのアーサー王だもの。マスターだった彼共々、並み居る猛者を破っての勝利だったと聞いているわ。そのセイバーが、今は大聖杯に繋がれて無限に等しい魔力を使うことができる。マシュの防御性能を以てしてもかなり難しい相手よ。私の魔術刻印その全てを防御に回して何秒持つかもわからない」
「防御なら、任せてください。キャスターさんが帰って3体1の状況になるまで耐え抜いて見せますので!」
そういう強がる少女はまだ少し震えている。それに気づいたマスターの青年が一言口にする。
「今更聞くんだけど、この右手にある令呪はどう使えばいいの?強力な命令をすることができるとは聞いたけど、具体的には……」
「それはね藤丸。言ってしまえば──逆転の切り札にもなる魔力リソースよ。本来の令呪は魔法に近いことも可能な超強力な命令権。その使い方次第では契約するサーヴァントに自害すら命じることもできるものよ。けれど、カルデア式に令呪にはそこまで強力な命令権はないわ。そりゃ勿論、膨大な魔力を束ねて作り上げたものだから、宝具の連射や更なる威力向上、傷ついた霊基の回復とかはできるけどね」
「そうですよね、オルガマリー所長。だから思うんです。今、俺はマシュとキャスター、そしてナビゲーターと契約している状態。だから令呪を使えばどうにかあの魔力放出をもう一度できないものかな?って」
彼の閃きは正にナイスアイデア。国民栄誉賞並みのものだった。ただ、当のナビゲーターの反応が良くない。
「不可能って話ではないだろう。あるいはまだ使っていない右手で振るえば良いかもと思うかもしれない。けれど、多分思うに──藤丸君。これはね、見かけの話ではないんだ。あの魔力放出をするための顕現は本来俺にはない。それを無理やりに使っているから、限度がある。ぱっと見右手は無事かもしれないけど2回目でわかったことに使用する度に俺の霊基が破壊されていくんだ。次右手で使用してもおそらく上半身が焼けただれることに変わりはない。霊基へのダメージをこのように見た目で分かりやすくしているだけって俺は思っている。けどその発想はナイスアイディアだ!令呪の魔力を以てすれば1回分は余分にできるかもしれない。実際にやってみなくちゃわからないから……そこは賭けだな。そんな運否天賦に賭けるより、君はマシュの生き残りを最優先にしてほしい。あの橋での四射目を防いだ時の防御を見れば彼女の盾、そして宝具が、どれほど強固なものであるかわかるはずだ。マスター、君もまた彼女を信じろ」
──この言葉が、
全部さ、全部。
火を消して腰を上げる。洞窟の出口は近い。それは決戦の舞台が近いことを意味している。暗く深く、神秘が焼き付いた世界の果てへの扉が眠る冬木の地下。そこで、確かに魔法の道は開かれ、けれど何の因果か汚染され現在に至る。そしてその汚染があふれ出し地上を地獄に彩り、ランサーを残して全てを飲み込んだ。残されたランサーはキャスターとなり、今は好敵手であるアーチャーと死闘を演じている。
ならば、彼らはどうするべきか。決まっている。勝つのだ。残る、事実上最後のサーヴァントであるセイバーを倒しこの異常を祓わねばならない。
大聖杯が眠る場への道のりに会話は起きなかった。
暗い洞窟に光が差す。気を失いかねない狂気が無造作に溢れる広場へとやってくる。奥には黒い太陽が昇る。いいや、あれは太陽では決してなく
「これが……大聖杯……。万能の願望期、根源への扉。超抜級の魔術炉心、いやそれどころかそこに確かに魔法への道があるのね……。改めて、なんでこんなものがココに──」
カルデアからの通信で情報が補足される。
「ようやく来たのか」
広い空間に最後の声が響き渡る。変色した願望期の前に立つ黒い剣士が一人。卑王を下し、その手に変わり神秘の島たるブリテンを終末へと導いた伝説の騎士王。アーサー王、あるいはアルトリア・ペンドラゴン。またの名を人理の防人。泥に汚染されながらも気高き瞳がこちらを見下ろす。
漆黒の鎧に身を包むしセイバー。緊張の糸が一瞬にして張られ、もはや微動だにしない。
「そこの娘、面白いものを持っているのな?懐かしい、古き我が友が持っていた其れを」
「え──貴方は何を知っているのですか……?」
マシュの目が開く。敵を前にしても知ろうとしたい欲求が口を動かさせる。
「知っているとも。だが──我が友のことだ。訳在って名を伝えぬことを選んだのだろう。故にそこの娘。貴様に教えるものは無い。これから続く長き旅の中でその名を知ると良い。貴様が真の名を取り戻した時その盾はあらゆる攻撃をも防ぐ究極の守りへと変ずるだろう。最も、我が《
いつの間にか、彼女の手には剣が握られていた。黒く輝き、なお切れ味衰えることなき聖剣。アーチャーが使用した贋作でもなければ、ナビゲーターが使用した魔力放出でもない。この世に二振りと手存在しない星の聖剣。その頂点に君臨するもの。
《
例え汚染されようとも王は”正義”のために力を振るう。それがどのような正義なのか、口を閉ざすセイバーを除き、誰も知らぬ。
冷静に考えるのであれば、抑止の守護者たるアーチャーが彼女に味方しているのは、そういうことなのかもしれない。正義の味方が何も問わず、彼女を信じたのだから。
この特異点において最後の戦いが始まる。震える手、おじけづく心を思い盾で支える。
騎士が微笑み、龍の炉心が咆哮する。
後方の大聖杯は生存を願い、最後の騎士王はその願いを叶える
「マシュ・キリエライト、出撃します!」
「あいつを倒さねぇと何も始まらないんだ!」
啖呵を斬る人理の守護者。最後の希望の声を聴きとげ、王も自ら戦場に降り立ち。
「貴様の未来も絶望も希望も、我が剣が切り捨てるだろう。死力を尽くして、来るが良い──!」
そのまま、ただの《魔力放出》で戦場全てを薙ぎ払う。
その剣一振り一振りが致命の一撃。矢継ぎ早に、あのアーチャーが放つ渾身の一射に匹敵する火力が放たれる。近づく等もっての他だ。その剣戟を二人のサーヴァントは紙一重で避け続ける。混沌の魔力を無垢な盾が弾き続ける。幾度も弾いて、耐えて、そうして生み出す僅かな隙にナビゲーターが攻撃を仕掛ける。僅かに光を放つナイフを手に。
「──っ!くっそ、硬ェ……!」
纏う魔力量が違いすぎる。攻撃に使用する魔力を少し防御に回すだけで傷の一つもつけられない……!
戦力比、竹槍vs機動戦士。力持たぬサーヴァントにとって彼女の打倒は人の身で星を打ち落とす覇業に等しい。けれど、完全に負け試合というわけではないことが救いだった。男の小賢しい一突きを防ぐことに使った腕。もう片手には剣が握られ、今胴はがら空きだ。
「やぁぁぁーーー!!」
高速で叩きつけられる10トン越えの鉄塊。無限の魔力を以て固くなれど、そのダメージカットには上限がある。飛び回り、死の一撃を躱す二つの影。受け止めきれない衝撃で後退る。
マシュとナビゲーター。出会った数時間と無いが、奇跡的にコンビネーションは抜群で話し合わずとも攻守を成立させていた。
「今の良い一撃だ。褒めてやろう。だが」
天井にまで届く極光。黒の魔力が常軌を逸した刀身を作り上げる。
「その程度では、先行きが危ぶまれるぞッ!」
常に更新される破壊力。なのに動きは洗練されていく。目覚めを迎え加速を続ける獣にとって人間はなんと弱く遅いのだろうか。彼らは獣に並ぼうとして本来なら帰るべき土俵で戦った。加速を続ける獣は常に本気だ。だがその本気は餌を手にするための狩りに向けたもの。この騎士王にはまだ、自分の命を懸けて戦うべき互角の敵が見いだせていない……!
それでも正道を美徳とする騎士王は慈悲深いほうではある。何故ならアーチャーと違ってマスターに攻撃を仕掛ける意図はないからだ。あくまで挑んだものに対して刃を返すのみであり、さて挑戦する意思はあれど物理的な危害を加えぬ魔術師は依然無視を貫いている。
戦いのボルテージが上がっていく。セイバーが二人を圧倒する。
「まだ、まだァァァーーーー!」
傷だらけの盾の騎士。しかし立ち向かう姿は獅子のよう。崩れていく足場を蹴りながら、僅かにナビゲーターに向いた隙をついて全力の一撃を叩きつける。窮鼠猫を嚙む。命の危機を感じて、生き残る為に振るった衝撃が初めて騎士に剣での防御を使わせた。
「──見事。ならばこちらも全霊で以て応えよう」
迸る闇の斬撃。重たい大気の切断面。防がれた剣に黒聖杯の魔力を投じて弾く。
「っーーーーーー!!」
少女を遥か後方へと吹き飛ばすレーザー。伝説の聖剣はその威光を驕れること無く発揮し敵を屠る。
「マシュ……!」
壁に叩きつけられた彼女を見て、体が勝手に動き出した。魔術師なんて生き方は知らないし、こんな神秘に触れたのも今日が初めてだった。でもわかる。わかってしまうんだからわかる。今、彼女は危ない状態にあると。魔力の繋がり、そしてそれ以上の心の繋がりで今弱りだした命の焔を理解する。着込む礼装は魔術使いとして最低限度の素養も無いような彼にも扱えるべく作られたもの。速度を引き上げる魔術と力を増幅させる魔術と傷を癒す魔術。その全てがこの激闘の中で使用され、インターバルを終えるまでには時間がある。でも、今、どうにか彼女を守らなければ、その前に彼女を失ってしまう。
それだけは絶対に、嫌だった。
それは運命を手放すまいと頑なに駄々をこねる子供のよう。
「
右手に刻まれし赤の紋章が光り輝く。刻まれし魔力が出番を前に歓喜する。
「令呪を以て命ずる────」
三画あるうちの一つが手から離れ少女に宿る。無垢の魔力は、その無垢さ故に全ての可能性を内包する。混沌にして白紙。まだ何ものでもないが故にあらゆるものになることができる。魔力はただ
「マシュに癒しを。君を失うわけにはいかないんだ…………」
流れる血が逆行していき、傷という傷が塞がっていく。消えかけの意識に熱が戻り、力強く彼女は立ち上がる。
「ありがとうございます、マスター!マシュ・キリエライト……完全に復活です!」
その光景を見て、黒の剣士が微笑んだ。悲しそうに、愛おし気に。眼前の少年少女の温かな心を見て、剣を握る力が綻ぶ。
「──令呪、令呪か。懐かしい響きだ。”シロウ”、貴方の声を聞かなくって久しい……。」
後にも先にも聞くことはない。その瞬間だけ、鬼よりも恐ろしい暗黒の騎士の顔は、狂おしいほどに親愛と悲哀に満ちた目をしていた。あるいは──恋をした少女の声を上げている。
「アーチャーも散った今、私も主役を明け渡すときが来たようだ。そうか──今宵は変化の月であったか。気が変わった──盾を構えよ騎士なる娘。もはや、大聖杯なんぞの助力はいらぬ。我が宝具、我が聖剣──《
重圧が全てのモノに降りかかる。以前の放っていたものとはわけの違う、文字通り桁違いの魔力が一つの剣に収束する。
「宝具解放──。卑王鉄槌、極光は暗転する。光を吞め──」
さぁ目に焼き付けよ、剣無きの無辜の血筋。あれこそ
この場にいる、全ての人間が己が使命を理解する。
「マシュ、令呪をもって命ずる──」
覚悟が、祈りが、いや、それを遥かに上回る相棒への信頼が少年の心に火をつける。魔力が燃焼し、火種を超えて火薬となり、数秒後に訪れる命の奪い合いに発狂する。
「絶対に、負けるな!あの剣に勝つんだーーーーッ!!」
同刻。少女の誇りに力を与える。勝たねばならぬものに勝とうとする意志が、決意が、己に決して砕けぬ力を与え、極限の炎となって狂い咲く。不撓不屈の英雄は逆境にこそ誕生するのだから。
双方魔力がはち切れんばかりに膨張し、一つは砕くために、一つは守るために形を最適化させていく。得物を信じて構えを取り。
「”
「”
全ての決着はここに。全ての因果の始まりはここに。騎士王に挑む盾の騎士。よそ者要らずの真っ向勝負。最強の剣を打ち砕かんとする、最強の盾が挑戦状を叩きつける。矛盾対決、これに雌雄を決する!
「”
「”
浮かび上がる誇りの壁。築かれた純白の守り。視界全ての光を飲む闇の斬撃になおも落ちること無く健在する。跳ね返され続ける光閃は天井を破壊し昇天していく。地下数十メートルの地盤を破壊して天井に文字通り穴をあける。全身全霊、生存をかけて自分の全てをぶつけあう。
ここにいる全てのものが知らぬことだが、奇しくもこの光景はある世界でセイバーが敗れた状況と酷似していた。
──言い訳不要の宝具対決。高ぶりに高ぶった熱の中で、黒の剣はマスターであった少年の盾を貫けず、そして”
──ここに、最後の剣を持つものは、いた。
覚悟の声が体を薪へとくべる。
「──”この《聖剣》を、これより──《
獅子が咆哮し神代の奇跡が寄り添う。投じられる無限の魔力。それは際限なく加速する赤獅子だ。眩い輝きが暗黒星より出でて洞窟の全てを黄金に染め上げる。完全に崩壊する肉体。沸騰する魔術回路。全身に刻まれた刻印が霊基の全てを燃やし尽くして、一世一代の超火力を呼び覚ます。
「貴様、その光は──」
セイバーの声は誰にも届かない。二振りとて存在しない聖剣は確かにこの瞬間だけ、二つ存在した。
──誰も静止するモノはいない。誰もがただこの光景に何も言えぬまま、瞼を開き続けている。
いや、止めようとしている。約束したはずだと声を上げようとする少年がいる。なのに、声が出ない。その抜刀は、音より早く。光は、まさに光速で。極光を防ぎ切った盾が力尽きると同時に、”それ”は振り下ろされた。
「──《
──────
────
──
彼らが意識を取り戻したのは決着の後。
勝因を知るのは、セイバーのみ。彼女以外、二振り目の聖剣を忘れている中で。
「──フン、抑止力め。気色の悪いことをする」
そんな呟きも、はやり誰も聞くことも無いまま、剣士は眠るように消えていった。
一部の設定公開
ナビゲーター:C
《先導者》のクラス別能力。
自分が”どこに行けばよいのか?”を直感的に理解することのできる能力。そのため、迷宮の概念が付与された異界に放り込まれても(時間を大いにかけるが)最終的には脱出が可能となる。
エクスカリバーのオンパレードです
よかったねリチャード!憧れがいっぱいだよ!