どーも丑三清志郎です。とりあえず俺が今世紀の神です。 作:かーかーかーいーか
事件の聴取が終わった頃には既に時刻は20時を回っていた。運び込まれて、長い長い診察が終わったと思ったら、休む暇もなく多対一で尋問。
仮にも要入院患者にする仕打ちではないなと思う。
「ここで大人しくしてろ」
粗暴な警官に指定の病室まで連行され、通されたのはベッドが3つ並んだ病室だった。
「君も〝だるま〟と〝まねきねこ〟の生き残りかい…!?」
「!………あー…一応…?」
「良かった!
どうもとこちらも簡単に自己紹介した。
そして一番奥のベッドに座るもう1人に視線を飛ばすが、備え付けのテレビから目を離す様子はない。
「インターネット上では生き残った高校生たちを〝神の子〟と神格化する風潮が早くも広まりつつあります。これについて犯罪評論家の───」
「───は?」
「あんな事があって出てきてみれば…ネットのオモチャなんてふざけてるよね」
僕は1つ大きな勘違いをしていたらしい。
原稿を読むニュースキャスターからも動揺が伝わってくるレベルの内容を噛み砕くと以下の通りである。
①日本全土で同様に殺人事件が起こり、死亡者の総数は300万人以上にも上る。
②被害現場は全て高校。
③殺しの手口が完全に一致している。
④生存者はいづれも高校生である。
⑤世界各地でも似たような事件が起きた。
「………頭が痛くなってきた」
「分かるよ、世界観が完全にSFだもんな」
2人に全く見覚えがないなと…おかしいとは薄々感じてはいたんだ。
子門という目の前の青年はともかく、奥の眼鏡男はかなりのイケメンであり存在感もある。同じ学校に通っていれば噂くらい聞くだろうし、目にしていれば忘れるはずがないのだ。
それがどうだ。事件はうちの学校1つでは収まらず他校、それどころか日本中、最悪なことに世界中で起こっていると言う。
道理で2人とも顔に覚えがないはずだ。
「竜胆君でいいかな呼び方は。あー俺は名字でも名前でも可だよ」
「君はいいよ、竜胆で。僕も子門って呼ぶんで」
お話もそこそこに夜は更けていく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
病院側が用意してくれた遅すぎる夕飯を食べ終えた現在、消灯時間5分前である。
「子門どこ行くの?」
「ん?トイレだよトイレ、バタバタしててすっかり忘れてたから」
「そ、気を付けて」
「?心配性だな。ものの5分だよ」
だといいけど。その言葉は閉まるドアの音に吸収され、子門の耳には届かなかった。
「どういう意味だそりゃ」
「!…何が?えーと……ごめん名前なんだっけ?」
子門からちゃんと聞いとくんだった。
「質問に質問で返すな。まずは俺の質問に答えろ」
「っ………答えるも何もそのままの意味だ。いつまた
今回の事件の狙いが高校生なのは既に疑いようがない事実。ただニュースを見て1つ疑問に思った。
それは、
死体は高校からしか発見されておらず、出席者の極少数が生き残った。
では欠席者はどうなったのか?
答えは生きている、だ。
普通は運が良かったで片付くもので、そこに引っ掛かる人間なんて居ない。
だが穿った見方をすれば、高校生の集まる場所で事件が起こった、と言い換えることもできる。
こじつけだと思ってる。根拠も薄い。
だが確信している自分がいる。
この病院でも何かが起こる、と。
標的である僕ら高校生が固まっている場所で何も起きないとは到底思えない。
「少しは考える頭を持っているみたいだな」
「………それであんたは」
「来た」
眼鏡男がベッドから降りたとほぼ同時に
ゴッ…ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
建物の揺れは5秒ほどで収まった。震度で言えば5強くらいあったんじゃないか?
「見ろ」
眼鏡男の言われるがままテレビ画面を見る。そこには既視感を覚える文字が映し出されていた。
─────────
カギで扉
開けたなら
おわり
─────────
───ガラガラ
スライドドアが開く。子門が帰ってきたと思った。その姿を確認するまでは。
『お前…ひとりか?ともだち…いないか?』
「!」
そこに居たのは本日何度目かの得体の知れない生物(?)だった。2mを越える長身、足のない単純構造の胴体。身体の8割を占める胴体には〝えんがちょ〟と刻まれている。
竜胆に赤黒いペイントが施された強面の顔面が目前に迫る。
違和感を感じたのは次の瞬間。視界が不自然なほどゆっくりと引き伸ばされ、視覚以外の感覚が遠退いていく。
初めての感覚だ。そのはずなのに僕はこれを既に知っている気がする。
でもどこで?
答えの出ないまま自問は続く。この間僅か0.1秒。ふと、頭の中で1本の短いフィルムが回り始めた。
荒く霞がかった映像が1人称視点で進む。
────────────────────────
『ちっ…フザけんなしマジで……ありえんし…マジキモいし…』
『そっすね。じゃあ僕はこの辺で』
『ああ…用済みだ』
ベキッ!!ゴトッ…ゴロン…
『あへ…』
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
────────────────────────
フィルムはここで終わっている。*1
『ちっ…フザけんなしマジで……ありえんし…マジキモいし…』
また再生が始まった。とすれば次に来る言葉は…
『男同士で手つないでキモ…』
あれ…台詞が違う。
視覚が戻った。今のは一体………?
「見ての通りひとりじゃない」
『マジありえんし…死ねし…』
〝えんがちょ〟は悪態をつくと、そのままブツブツ言いながら部屋を出ていった。*2
ドアが閉まりきると眼鏡男はそそくさと手を振り払った。うん、だいたい分かってきたぞコイツの性格。
「ボーッとすんな。行くぞ」
「………状況が見えねえ」
「全部説明しねぇと分かんねーのかアホ面。もう始まってんだよ昼間の続きは」
〝えんがちょ〟の言動から推察するに狙われるのは1人で居る奴。事実襲いかかってきた。
一方で眼鏡男が僕の手を取っている間は悪態をつくだけで何か仕掛けてくることはなかった。
以上のことから導き出される答えは…
「理解した…事態は思った以上に最悪ってことをな」
「俺としても不本意だが、これ以上に合理的な手はない」
どこに行くにも2人3脚で行動すること、それが生き残る上で最低限の条件。
互いに名前も知らない、性格の反りも合わない。だというのにため息を吐くタイミングはぴったりの2人だった。
───コンコン
「「!」」
僕がドアの取手を手に取ったと同時だった。狙い済ましたかのようなタイミングのノックに1歩後退し、成り行きを見守る。
『ひーがーしーはーまーくーん』
ひがしはまくん…それって…?
───ガラガラ
何だ…!!?こけし………!!?
『あーそーぼー』
「OK」
『即答ー!?かっちょいいねー!』
『やったー♡』
現れた3体のこけし達。それぞれ性格や声、喋り方に見た目と個性があるようだ。
シンプルに怖い。
例えるなら市松人形を見ている感覚に近い。
『じゃあじゃあ始めるよー!』
〝こかど〟と胴体に刻まれたこけしが意気揚々と宣言した。