停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

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第13話 物資交換

一隻の輸送艦が、ジオン宙域へ向かっていた。積荷は連邦政府が用意した医薬品だった。

「前方に艦影」

 

乗員たちが緊張した。

「識別は?」

「ジオン艦です」

 

艦はそのまま近づいてくる。通信が入った。

「こちらジオン軍。登録番号を確認した」

「こちら連邦軍輸送艦。事前通告どおりです」

「確認した。ここから我々が護衛する」

 

乗員が窓の外を見る。少し前まで敵だった艦が、輸送艦の横についた。

「……予定どおり護衛している」

「……妙な感じだな」

 

連邦軍の輸送艦とジオン艦は、そのまま並んで進んだ。

 

◇

 

輸送艦は目的地へ到着した。港では作業員たちが待っていた。コンテナが次々と降ろされる。

 

一人の作業員が箱を見る。

「……本当に連邦から来たんだ」

「そうだ」

「敵の物を使うのか……」

「薬に連邦もジオンもあるか?」

「まあ、それもそうか……」

 

作業員たちは箱を運び始めた。そのうちの一人が、箱に書かれた製薬会社の名前を見る。

「……これ、昔も来ていたな」

「知ってるのか?」

「戦争前は、よく扱っていた。まだあったのか……」

「会社がなくなるわけじゃないだろう」

 

箱はトラックへ積み込まれた。

 

◇

 

病院。

 

医薬品を積んだトラックが到着した。職員たちが箱を運び込み、医師が中身を確認する。

 

医師が一つの箱を手に取った。

「懐かしいな……」

「知っているんですか?」

「戦争前は、これを使っていた」

 

看護師が箱を見る。

「連邦製ですね」

「……当時は、そんなことを気にしていなかった」

「不足していた薬です。すぐに使えます」

「では、各病棟へ回してください」

 

看護師たちは箱を運んでいった。

 

◇

 

逆方向にも輸送艦が出る。

 

ジオン政府が用意したのは、取り決めたレアメタルだった。港では積み込みが続いていた。

 

一人の作業員が積荷を見る。

「このレアメタル、戦争前も地球へ送っていたな……」

「そうなのか?」

「ああ。同じ港からだ」

 

別の作業員が言った。

「結局、昔に戻るだけか」

「全部が戻るわけじゃないだろう」

「まあな」

 

レアメタルを積んだ輸送艦は、出港の準備を進めていた。

 

◇

 

その話を聞いた一人の商人がいた。戦争前、地球との貿易をしていた男だった。昔の航路は知っている。取引先も残っている。ジオンでは、物資が不足している。連邦には、物がある。

 

商人は考えた。

「連邦で買い付けて、ジオンで売る」

 

少し考えた。

「……大儲けだな」

 

今なら儲かる。しかし、停戦が破れれば、船も積荷も失う。大損だ。

「……危険だな。やめた方がいい」

 

だが、誰もやっていない。それなら、最初に始めた者が一番儲かる。

「いや、だから儲かるのか」

 

だが、まだ民間の貿易は認められていない。

「問題は許可か……」

 

商人には役所に昔からの知り合いがいた。少し金を渡せば、便宜を図ってくれるかもしれない。

 

その夜、商人は知り合いの役人を港の外れにある古い酒場へ呼び出した。

 

店の奥で、二人が向かい合っていた。

「久しぶりだな」

「わざわざこんな所に呼び出して、何の用だ?」

「ちょっといい話がある」

「その言い方をするときは、大抵ろくな話じゃないな」

 

「失礼だな。今回は本当にいい話だ」

「何だ?」

「連邦との貿易だ」

 

役人が商人を見る。

「まだ認められていないぞ」

「知っている。昔の航路も取引先も残っている。船も用意できる」

「それで?」

「そこを何とかするのが、お前の仕事だろう」

「私の仕事ではない」

「そう言うな。もちろん、ただとは言わない」

 

役人の表情が変わった。

「待て」

「まだ金額も言ってないぞ」

「そういう問題じゃない」

 

商人が黙った。役人が言った。

「もしかして、自分だけが思いついたと思っているのか?」

「……違うのか?」

「同じような問い合わせが、かなり来ている」

「…………」

 

「政府でも通商再開の準備をしている」

「準備中?」

「ああ。正式に決まるまで待て」

 

商人は少し考えた。

「どのくらい来ている?」

「言えない」

「多いのか?」

「多い」

「……みんな考えることは同じか」

「そういうことだ」

 

「分かった。正式に始まったら、すぐ教えてくれ」

「普通に発表を見るように」

「そこを少しくらい早く――」

「駄目だ」

 

役人に渡すつもりだった金は、そのまま商人の懐に残った。

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