停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

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第15話 総帥、お見合いをしてください

サイド3。

 

戦争が止まってから、ギレンの仕事は変わった。以前なら毎日のように届いていた戦況報告は減った。

代わりに届くのは、停戦協議、捕虜交換、物資交換、通商規則。

 

その日、ギレンの机の上に、見慣れない書類が一枚置かれていた。

写真、経歴、年齢、家族、学歴。

軍事報告ではない。

 

「……これは、何だ?」

 

側近が答えた。

「総帥のお見合いです」

 

ギレンは書類を見る。

「……私が?」

「独身ですので」

「それは理由になっていない」

 

ギレンは書類を机に置いた。

「却下だ!」

「デギン公王からです」

 

◇

 

夕方。ギレンはデギンに呼び出された。

なぜか妹のキシリアもいる。

「ギレン、見合いをしろ」

「お断りします」

 

即答だった。

「まだ何も説明しておらん」

「お断りします」

「相手の名前も聞かんのか」

「必要ありません」

 

デギンがため息をついた。

「お前は昔から、そういうところがあるな」

「国家運営と私生活は別です」

「その私生活が何もないから言っておる」

 

ギレンは話を戻した。

「父上。現在も連邦との和平交渉は継続中です」

「交渉はマ・クベに一任したのだろう」

「はい。地道に進んでいます」

 

「前線は?」

「停戦が続いています」

 

「捕虜交換は?」

「担当部署が進めています」

 

「通商は?」

「規則を整備中です」

 

「では、何が問題なのだ」

 

デギンは続けた。

「兵士に休暇を与えた」

「はい」

「その兵士たちは、家族のもとへ帰っているそうではないか」

「……はい」

 

デギンは息子を見る。

「お前も、少しは自分の人生を考えろ」

「……」

 

今度はキシリアが口を開いた。

「私は兄上が結婚されるかどうか自体には、それほど興味はありません」

 

ギレンが見る。

「ならば黙っていてくれ」

「しかし、後継問題は別です」

 

ギレンの表情が変わった。

 

キシリアは淡々と続ける。

「兄上はジオン公国の総帥です。国家の最高指導者の一人である以上、後継問題を完全に私事として扱うことはできません」

「私が今すぐ死ぬとでも?」

 

「その可能性を考えなかったのですか?」

「…………」

 

正論だった。

「現在は停戦しています。しかし、将来何が起こるかは分かりません。兄上が国家の長期的な安定を考えるのであれば、ご自身の後継について考えることも不自然ではありません」

 

ギレンはしばらく黙っていた。

「分かった」

 

デギンはすぐにうなずいた。

「それでよい」

 

◇

 

ギレンはキシリアを見た。

「ただし、条件がある」

「何です?」

 

数秒してから。

「キシリアも見合いをしろ」

 

キシリアが止まった。

「兄上!」

「何だ」

「今の話と私に何の関係があるのです」

「お前も独身だ」

 

「それは理由になっていません」

「……」

 

キシリアも黙った。

 

デギンがうなずいた。

「それが良い」

 

キシリアがデギンを見る。

「父上?」

「ギレンだけというのも不公平だろう」

「公平、不公平の問題ではありません」

 

デギンはキシリアを見る。

「お前も国家の重要な地位にいる」

「だから何です」

「先ほど自分で、後継問題は国家の安定に関係すると言ったではないか」

 

こうして、ギレンとキシリアのお見合いが決まった。

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