停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

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第18話 距離を置く

サイド3。

 

会議室には各方面の将官や基地司令官が集まっていた。

 

会議は、最初から紛糾した。

 

「反対です」

 

「連邦軍人を我が軍の基地に入れるなど認められません」

「査察する場所を限定すればいい」

「基地の位置、規模、警備体制。それだけでも情報になります」

「見せる場所を事前に指定すればいい」

「問題はそれだけではありません」

 

別の将官が言った。

 

「民間での交流とは話が違います。ここは我々の軍事基地です」

「連邦側も同じだ」

「だからこそ、双方とも簡単には受け入れられません」

 

さらに別の将官が口を開いた。

 

「基地に入れば、査察対象以外のものも目に入ります。部隊の配置、艦艇の状態、物資の量。それだけでも軍事情報になる」

「査察区域を限定すればいい」

「移動経路から分かることもあります。完全に隠すことはできません」

 

「ならば、必要な場所だけ見せればいい」

「必要範囲を誰が決める?」

「南極で詰めればいい」

「連邦がこちらの条件を受け入れる保証はない」

 

意見はまとまらなかった。

 

◇

 

やがて、一人の将官が言った。

「問題は、連邦軍人を直接基地に入れることではありませんか」

 

別の将官がそちらを見る。

 

「第三者を使う案か?」

「それは、すでに検討した」

「民間人、あるいは中立勢力です」

「民間人に軍事施設を査察させるのか?」

「軍事知識のない者に、兵力移動の確認ができるのか」

「ならば軍事知識のある者を選べばいい」

「軍事知識のない者でも確認できるようにすればいい」

「そんな都合の良い方法があるか」

「それを含めて検討する必要があります」

 

別の将官が言った。

 

「どこの人間を使う?」

「中立勢力から選ぶ方法があります」

「中立だから信用できるとは限りません」

「それを言えば、誰も信用できなくなる」

「だから人選が重要なのです」

 

議論は続いた。

 

「一勢力に任せるのは危険だ」

「複数の中立勢力から出させればいい」

「人数を増やせば、機密漏洩の危険も増す」

「では少人数にする」

「少人数で十分な査察ができるのか?」

 

今度は別の将官が資料を見ながら言った。

 

「第三者でも機密の問題は残る」

「査察区域は限定すべきだ」

「記録についても制限が必要だ」

「写真や映像を自由に撮らせるわけにはいかない」

「持ち込み機材にも制限が必要だ」

 

次々と条件が増えていった。

 

ギレンはそれまで黙って聞いていた。やがて議論が途切れたところで、口を開いた。

「ほかに意見は?」

 

一人の将官が言った。

「相互査察には問題が残ります。ただし、第三者による査察なら検討の余地はあります」

 

別の将官もうなずいた。

「誰を選ぶか、どこまで見せるか。その二つが決まらなければ判断できません」

 

「ほかには?」

 

しばらく待ったが、新しい意見は出なかった。

 

ギレンが言った。

「それを含めて南極で詰めさせよう。方向性はこれでいい」

「承知いたしました」

 

「では、南極に伝えろ」

「はっ」

 

会議は終わった。

 

◇

 

その夜。

 

ギレンが帰宅すると、猫はいつもの椅子で寝ていた。

 

ギレンは猫を見る。

「お前を査察する必要はないな」

「ニャア」

「調べることがない」

 

猫は動かない。

 

「お前の名前も決まっていないな」

「ニャア」

 

ギレンは猫を見る。

「まあ、それは後でいい」

 

◇

 

翌日。

 

執務室。

 

側近が資料を出した。

「総帥、民間通商について報告があります」

「問題か?」

「いえ。予想以上に取引が増えています」

「どの程度だ?」

「貨物船の便数を増やす必要が出ています」

 

ギレンが資料を見る。

「始めたばかりではなかったか?」

「はい。民間企業からの申請が増え続けています」

「そうか。問題がないなら続けろ」

「承知しました」

 

「総帥。それから、キシリア閣下の方ですが……」

「どうした」

 

「現在、調査中とのことです」

「……何をだ?」

 

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