停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

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第2話 戦争が止まると、休暇が始まる

停戦交渉は、二日目を迎えていた。

 

交渉はマ・クベに一任されていた。連邦側も複数の代表を送り込み、双方は朝から議論を続けている。だが、話はまとまらなかった。

 

連邦側の代表が言った。

「ジオンの独立は認められない」

マ・クベはしばらく考えた。

「では、今は認めなくても結構です。後ほど話し合えばよろしいかと存じます」

 

連邦側が少し戸惑った。

「……自治権についても合意できません」

「それも後ほどでよろしいかと」

「軍縮についても、約束することはできません」

「承知しました。それも後ほど話し合いましょう」

 

連邦代表は困ったようにマ・クベを見る。

「では、今日は何を決めるのです?」

 

マ・クベは答えた。

「撃つのをやめることです」

「しかし、それでは何も解決していない」

「その通りです。何も解決していません」

あっさり認めた。

 

「独立も自治も、何も解決していません。しかし、それらを今日中に決めなければならない理由もありません」

 

連邦側から反論が出る。

「問題を先送りしているだけでは?」

「その通りです。問題を先送りしております」

また認めた。

 

「しかし、今日決められない問題を無理に決めようとして交渉を決裂させ、明日からまた殺し合うよりは良いでしょう」

 

会議室が静かになった。マ・クベ自身も疲れていた。初日から何時間も話し続け、今日も朝から同じような議論を繰り返している。そして、おそらく連邦側も同じだった。

 

◇

 

マ・クベは椅子の背にもたれた。

「私は疲れました。早く家に帰りたいです」

 

突然の言葉に、連邦側の代表者たちが顔を見合わせた。

 

「皆さんも、本当はそう思いませんか」

誰も答えない。

 

「連邦が勝つのか、ジオンが勝つのか。それを決めるために、あと何人死ななければならないのでしょう」

 

マ・クベは続けた。

「今日決められないことは、明日また話せばいい。自治も、独立も、連邦の制度も、時間をかけて話し合えばいい」

 

そして、会議場を見渡した。

「でも今日は、とりあえず撃つのをやめませんか」

 

一呼吸置く。

「家に帰りましょう」

 

誰も何も言わなかった。

 

しばらくして、マ・クベが尋ねた。

「皆さんはどう思います?」

 

また沈黙が続いた。

 

連邦側の文官の一人がマ・クベを見た。

「……私も帰りたいです」

 

緊張が少しだけ緩んだ。

 

政治的な結論は出なかった。しかし停戦は、もう一日延長された。

 

◇

 

数日が過ぎた。

南極では相変わらず交渉が続いていた。

 

独立について話す。

まとまらない。

 

自治について話す。

まとまらない。

 

軍備について話す。

やはりまとまらない。

 

マ・クベは急がなかった。決まらない問題は保留にした。そして一日の会談が終わるたびに、双方が確認する。停戦を継続する。それだけは毎日決まった。

 

奇妙な状態だった。和平は成立していない。戦争も終わっていない。しかし、戦闘も起きていない。前線では防衛に専念し、不必要な行動を控えるようになった。戦争中でありながら、戦場が静かになっていった。

 

全軍をいつまでも最高度の戦闘態勢に置き続ける必要はない。ジオン軍上層部で、この問題が議題になった。

 

「停戦が長期化しています。前線からも、今後の勤務について問い合わせが来ています」

「警戒は維持すべきだ」

「もちろんです。しかし、全員を配置しておく必要はありません」

 

「どうする?」

「交代で休ませます」

 

会議室の視線が集まった。

「一定数は警戒任務を続けます。残りの将兵には順次休暇を与え、休暇が終われば交代します」

 

◇

 

サイド3。

 

ギレン総帥は報告書に目を通した。

「戦力の低下は?」

「交代で一割程度の将兵に休暇を取らせます。防衛に必要な戦力は常に確保します」

 

「交渉決裂時は?」

「休暇中の将兵に帰還命令を出します」

 

ギレンはしばらく考えた。

「よかろう」

 




毎日、1話を投稿予定
第一話投稿後、44時間で「1000UA」達成、ありがたや。
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