停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

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第20話 帰る場所を作る

南極。

 

停戦が長引き、前線基地では兵士の仕事が減ってきた。双方とも余剰の兵士を帰したい。その点では一致している。

 

「兵士を帰還させることには賛成です。しかし、停戦が続くとは限りません」

 

マ・クベが尋ねる。

「戦闘が再開する可能性がある、ということですか?」

「はい。その場合、兵士を再び前線へ戻す必要があります」

 

ジオン側からも声が上がる。

「こちらも同じです」

 

連邦側の担当者が資料を配った。

 

「そこで、軍籍を残したまま、復興事業に従事させる案が出ています」

「軍籍は残すのですか?」

「はい。戦闘が再開した場合には、元の部隊へ戻します」

 

マ・クベは資料を見る。

「問題ないと思われます」

 

◇

 

ジオン側の担当者が別の資料を出した。

 

軍で輸送車両を扱っていた者なら輸送業務で働ける。工兵なら道路や橋、建物の復旧。整備兵なら工場や交通機関。通信兵なら通信網の復旧。

 

「復興には人手が必要です」

「帰ってくる兵士がいます」

「双方にとって都合がいいですね」

「では、その方向で進めましょう」

 

担当者が説明を続けた。

「しかし、現在の復興部門には一つ問題があります」

「どのような問題でしょうか?」

「復興部門は事業を管理する部署であり、実際に復興作業を行う部署ではありません」

「何か対応策はあるのでしょうか?」

「民間企業に軍人を派遣する制度が提案されています」

 

連邦の担当者が尋ねた。

「派遣ですか? 復興作業を行う部署を新設すればよいのでは?」

「それも検討されました。しかし、組織が肥大化し、官僚的な弊害が生じるおそれがあります。そのため、民間企業への派遣が望ましいとの報告です」

 

マ・クベは資料を見る。

「まずは、民間企業との協議が必要かと思います」

 

◇

 

連邦側の担当者が言った。

「しかし、帰る家のない兵士もいます」

 

戦争によって住宅を失った者。家族を失った者。故郷そのものが戦場になった者。そして宇宙では、帰るべきコロニーそのものを失った者もいる。

 

マ・クベは資料を見た。

「……そうですか」

 

しばらくして、ジオン側の担当者が言った。

「住宅建設を、復興事業の最優先事項の一つにしてはどうでしょうか」

 

マ・クベが尋ねる。

「兵士だけではありませんね?」

「はい。戦争で住む場所を失った人は大勢います」

「では、まず帰る場所を作る必要がありますね」

 

連邦側の代表がうなずいた。

「住宅建設を、復興事業の最優先事項の一つにしましょう」

 

◇

 

サイド3。

 

ギレンのところにも、新しい提案が届いた。

『前線兵力削減に伴う復興事業への人員活用』

 

ギレンは資料を読む。民間企業への人員派遣。住宅建設。インフラ復旧。

「認めろ」

「よろしいのですか?」

「金は使うためにある。兵器を作って壊すために使うよりは、家を建てた方が残る」

 

側近がもう一つの資料を出した。

「それと、通商拡大についての計画書がまとまりました」

「そうか」

「民間企業からの申請も増えています」

 

ギレンが資料を見る。

「税は取れるのか?」

「もちろんです」

「上手くいけば、ここにも金を回せるな」

「はい」

 

ギレンは復興事業の資料を指した。

「ならば進めろ」

 

◇

 

その日の仕事を終え、ギレンは帰宅した。

 

猫がいつもの場所で寝ていた。

「今日は家を作る話だった」

 

猫が目を開ける。

「帰る家がない兵士もいるらしい」

「ニャア」

 

ギレンは猫を見る。

「お前には、ここがあるな」

 

猫はまた目を閉じた。

 

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