停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。 作:山田 川田
サイド3。
ジオン議会の議論は続いていた。
完全独立を求める議員と、高度自治を受け入れるべきだとする議員の差は縮まらない。
そこへ、新しい意見が出た。
「そもそも、我々だけで決めてよいのでしょうか」
議場がざわついた。
「どういう意味です?」
「これは政府や議会だけの問題ではない。これからサイド3に住む人々が、どのような国で暮らすかという問題です」
「国民投票を行えと?」
「少なくとも検討すべきです」
反対する議員もいた。
「戦時中に国民投票など前例がない」
「今は停戦中です」
「連邦との交渉が遅れる」
「急ぐ必要がありますか?」
議場が少し静かになった。最近、どこかでよく聞く言葉だった。
◇
ギレンは議会からの報告を受けた。
「国民投票?」
「はい。完全独立、高度自治、あるいは別の案について、国民の意思を確認すべきだという意見です」
「選択肢が決まっていないのに投票するのか」
「そこが問題になっています」
ギレンは少し考えた。
「まず議会で案を作れ」
「国民投票には反対されないのですか?」
「案もないのに賛成も反対もできん」
「では、交渉案がまとまった段階で?」
「そのとき考えればいい」
◇
南極。
マ・クベは連邦側にジオン議会の状況を説明した。
「国民投票ですか」
「まだ決まっておりません」
「ずいぶん大ごとになりましたね」
「国家の将来に関わることです。必要なことです」
連邦側の代表が少し考えた。
「以前にも話に出ましたが、もしサイド3が高度自治を選んだ場合、他のサイドも同じ権利を求めるでしょう」
「はい、その可能性はございます」
「本当に、連邦の仕組みそのものを変えることになります」
「そうなります」
マ・クベは資料を見た。
「以前にも申し上げましたが、元に戻す必要はありません。ジオンだけを特別扱いするから難しいのかと。すべてのサイドに同じ権利を認めればよろしいかと存じます」
「簡単に言いますね」
「簡単ではありません。しかし、時間をかけて話し合えばよろしいかと思います」
連邦側の代表は苦笑した。
◇
その夜。
ギレンは南極から届いたマ・クベの報告を読んでいた。
「連邦そのものを変える、か」
猫は身をかがめた。
「ニャア」
「ジオンが連邦から自由になるのではなく、連邦を自由な者たちの集まりにする」
猫は机に飛び乗った。
「それなら、独立という言葉にこだわる必要もなくなるかもしれんな」
「ニャア」
「お前はどう思う?」
猫は書類の上に座った。
「そこはマ・クベの報告書だ」
「ニャア」
「お前は変わらないか」
猫は動かない。
ギレンは報告書を引き抜くのを諦めた。
「こちらは、ずいぶん多くの者に聞くことになりそうだな」
「お前の名前だけは、私が決める」
「ニャア」