停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

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第26話 連邦を変える

南極。

 

政治交渉は、再び難しい段階に入っていた。

 

マ・クベが資料を開いた。

「すべてのサイドに同じ権利を認めるのであれば、連邦政府との役割を分ける必要があります」

 

「具体的には?」

 

「各サイドに議会と政府を置く。内政については、それぞれが決める。連邦政府は外交、広域交通など、全体に必要な仕事を担当する」

 

連邦側の代表が資料を見た。

「外交や広域交通以外は、各サイドに任せるということですか?」

「基本的には、そうなります」

 

それはジオンの独立を認めるより、はるかに大きな話だった。

「連邦議会が認めませんよ」

「では、議論していただきましょう」

「簡単に言いますね」

「ジオン議会も今、議論しております。連邦だけ楽をするのは不公平かと思います」

 

◇

 

地球。

 

南極から送られてきた提案は、連邦政府でも大きな議論になった。

 

「各サイドにこれほどの権限を与えれば、連邦政府の力が弱くなる」

「しかし、現在の制度を維持すれば、第二のジオンが生まれる可能性がある」

「反乱すれば自治権を得られるという前例になるぞ」

「だからジオンだけに与えるのではない。制度そのものを変えるんだ」

 

議員たちの意見はまとまらない。

 

ある議員が尋ねた。

「そもそも、なぜ地球にある政府が、宇宙に住む人々の生活まで細かく決める必要がある?」

 

議場がざわついた。

「連邦を解体するつもりか」

「逆だ。連邦を残すために変えるんだ」

 

その言葉で、議論はさらに大きくなった。

 

◇

 

サイド3。

 

ギレンも連邦側の反応について報告を受けていた。

「かなり揉めているようです」

「当然だろう」

「連邦政府の権限を大幅に縮小することになります」

「我々も同じことをしている」

 

「ジオン議会のことですか?」

「そうだ。私は自分の権限を議会に渡し始めている。連邦政府だけが権限を手放さないというのも妙な話だ」

 

ギレンは資料を読んだ。

「ただし、連邦政府を弱くしすぎても困る」

「と申しますと?」

「各サイドが好き勝手に軍備を始めれば、今度はサイド同士で戦争になる」

 

「外交と宇宙航路の管理は連邦に残す。軍事についても何らかの共通制度が必要だ」

「連邦軍を残しますか?」

「形は変える必要があるだろう」

 

側近はギレンを見た。

「総帥が連邦政府の制度を考えることになるとは思いませんでした」

「私もだ」

 

◇

 

南極。

 

数日後、マ・クベは新しい連邦案を受け取った。以前に提示された高度自治案を、すべてのサイドに広げたものだった。

 

各サイドの大幅な自治。

内政への連邦政府の介入を制限。

各サイドから連邦議会への代表を選出。

外交、安全保障などは各サイドも含めた連邦全体で管理する。

 

まだ草案にすぎず、ジオンが受け入れるかも分からない。

 

マ・クベは最後まで読んだ。

 

「これは、独立とは言えません」

「ええ」

「しかし、従来の連邦とも異なります」

「ええ。その中間を探しています」

 

マ・クベは資料を閉じた。

 

「ようやく交渉らしくなってきました」

 

◇

 

その夜。

 

ギレンは南極から届いた新しい案を読んでいた。

各サイドの大幅な自治。連邦政府の権限縮小。外交、安全保障は各サイドも含めた連邦全体で管理する。戦争前なら、考えもしなかった制度だった。

 

猫は机の上に飛び乗った。

 

「ジオンでは議会が揉めている。連邦でも議会が揉めている。南極ではマ・クベたちが揉めている」

 

「ニャア」

 

「私が決めれば早いのだがな」

 

猫は書類の上に座った。

「またそこか」

 

ギレンは猫を見る。

「お前の名前は私一人が決めるから、揉めないな」

「ニャア」

「問題は、まだ決めていないことだ」

 

猫はその場で丸くなった。

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