停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。 作:山田 川田
サイド3。
キシリアは四度目のお見合いに来ていた。
今回の相手も連邦軍人だった。
「ワッケインです」
「キシリア・ザビよ」
「本日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
二人とも姿勢がいい。少し離れた場所で護衛が見守っていた。
普通だ。
「…………」
「…………」
護衛はしばらく待った。
しかし会話がない。
前回のブライトでは一分で議論になった。この二人は違った。二人とも相手の出方を待っている。
やがてワッケインが口を開いた。
「仮にルナツーへ攻撃を仕掛けるとしたら、どうします?」
キシリアがワッケインを見る。
「正面からは攻めない」
「理由は?」
「損害が大きすぎる」
「私もそう思います」
「では、なぜ聞いたの?」
「閣下が正確に状況を把握しているか確認したかったのです」
キシリアが少し笑った。
「私を試したのね」
「失礼しました」
護衛は驚いた。
笑った。
料理が運ばれてきたが、二人ともほとんど手をつけない。
「和平後、軍備をどこまで縮小できると思う?」
「難しい問題です」
「でしょうね」
「軍隊は必要ですが、現在の規模は必要ないでしょう。少数精鋭への切り替えが順当です」
「そうですね」
護衛は二人を見た。
ものすごく話が合っている。しかし――一切、お見合いらしくない。
◇
一時間後。
さすがにキシリアも、お見合いだったことを思い出した。
「あなた、趣味は?」
「…………特にありません」
「閣下はありますか?」
「美術ね」
「美術ですか」
「…………」
「…………」
再び沈黙した。
ワッケインが努力する。
「では……食事については?」
「何でも食べるわ」
「私もです」
「…………」
「…………」
先に耐えられなくなったのはキシリアだった。
「ルナツーの補給体制だけれど」
「私もちょうどその話をしようと思っていました」
護衛は目を閉じた。
なぜこうなった?
◇
二時間後。
食事はすっかり冷めていた。
「艦隊をここへ置けば――」
「いや、それでは補給線が伸びます」
「ならば中継基地を――」
「その費用を考えれば――」
ついにはホワイトボードまで出している。
キシリアが配置を書き、ワッケインが修正する。
キシリアが言った。
「やはり、正面から攻めるだけでは無理ね」
「では、どうします?」
「内部から崩す」
キシリアはワッケインを見つめた。
「第一部隊と第二部隊。司令官同士の仲が悪いでしょう?」
「よくご存じですね」
「その対立を利用する。一方に偽の情報を流せば、互いに疑い始める」
ワッケインは少し黙った。
「よくご存じですね。でも、対策は取ってありますよ」
「そうでしょうね。第二部隊の参謀の何名かが、あなたのお仲間ですね」
「…………」
ワッケインがキシリアを見る。
「閣下。今度は私を試しましたね」
「あなたも私を試したでしょう」
キシリアが少し笑った。
「……あなた、面白いわね。私の部下になったら、仕事の大半を任せられるわ」
「それは光栄ですが、恐ろしいので遠慮しておきます」
「みんなそう言うのよ」
護衛は二人を見た。
これはお見合いではない。普通の作戦会議だ。
◇
その夜、デギンはキシリアから報告を受けていた。
「どうだった?」
「面白い人ね。そして非常に優秀な軍人だったわ」
「それで?」
「私のパートナーに欲しいわ」
「おお!」
「……でも、断られた」
デギンは少し黙った。
「二時間も何を話していた?」
「ルナツーの防衛について――」
「見合いでルナツーを攻略するな!」
「攻略していない。むしろ攻略しない方が合理的だという結論になったのよ」
「そういう問題ではない!」
◇
一方、地球。
ワッケインもレビル将軍に報告していた。
「将軍。非常に有意義でした。ジオン軍の戦略思想について、参考になる話を聞けました」
「ほう」
「また話したいと思います。次回は軍縮後の宇宙防衛について意見交換を――」
「ワッケイン」
「はい」
「君は何をしに行ったのか覚えているか?」
ワッケインは少し考えた。
「見合いです」
「そうだ」
「…………失敗でしょうか?」
レビルはため息をついた。
「合同参謀会議としては大成功だ」