停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

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第27話 合同参謀会議

 

【挿絵表示】

 

 

サイド3。

 

キシリアは四度目のお見合いに来ていた。

今回の相手も連邦軍人だった。

 

「ワッケインです」

「キシリア・ザビよ」

「本日はよろしくお願いします」

「こちらこそ」

 

二人とも姿勢がいい。少し離れた場所で護衛が見守っていた。

 

普通だ。

 

「…………」

「…………」

 

護衛はしばらく待った。

 

しかし会話がない。

 

前回のブライトでは一分で議論になった。この二人は違った。二人とも相手の出方を待っている。

 

やがてワッケインが口を開いた。

「仮にルナツーへ攻撃を仕掛けるとしたら、どうします?」

 

キシリアがワッケインを見る。

「正面からは攻めない」

「理由は?」

「損害が大きすぎる」

「私もそう思います」

「では、なぜ聞いたの?」

「閣下が正確に状況を把握しているか確認したかったのです」

 

キシリアが少し笑った。

「私を試したのね」

「失礼しました」

 

護衛は驚いた。

 

笑った。

 

料理が運ばれてきたが、二人ともほとんど手をつけない。

 

「和平後、軍備をどこまで縮小できると思う?」

「難しい問題です」

「でしょうね」

「軍隊は必要ですが、現在の規模は必要ないでしょう。少数精鋭への切り替えが順当です」

「そうですね」

 

護衛は二人を見た。

 

ものすごく話が合っている。しかし――一切、お見合いらしくない。

 

◇

 

一時間後。

 

さすがにキシリアも、お見合いだったことを思い出した。

「あなた、趣味は?」

「…………特にありません」

「閣下はありますか?」

「美術ね」

「美術ですか」

 

「…………」

「…………」

 

再び沈黙した。

 

ワッケインが努力する。

「では……食事については?」

「何でも食べるわ」

「私もです」

 

「…………」

「…………」

 

先に耐えられなくなったのはキシリアだった。

「ルナツーの補給体制だけれど」

「私もちょうどその話をしようと思っていました」

 

護衛は目を閉じた。

 

なぜこうなった?

 

◇

 

二時間後。

 

食事はすっかり冷めていた。

 

「艦隊をここへ置けば――」

「いや、それでは補給線が伸びます」

「ならば中継基地を――」

「その費用を考えれば――」

 

ついにはホワイトボードまで出している。

キシリアが配置を書き、ワッケインが修正する。

 

キシリアが言った。

「やはり、正面から攻めるだけでは無理ね」

「では、どうします?」

「内部から崩す」

 

キシリアはワッケインを見つめた。

「第一部隊と第二部隊。司令官同士の仲が悪いでしょう?」

「よくご存じですね」

「その対立を利用する。一方に偽の情報を流せば、互いに疑い始める」

 

ワッケインは少し黙った。

「よくご存じですね。でも、対策は取ってありますよ」

「そうでしょうね。第二部隊の参謀の何名かが、あなたのお仲間ですね」

「…………」

 

ワッケインがキシリアを見る。

「閣下。今度は私を試しましたね」

「あなたも私を試したでしょう」

 

キシリアが少し笑った。

「……あなた、面白いわね。私の部下になったら、仕事の大半を任せられるわ」

「それは光栄ですが、恐ろしいので遠慮しておきます」

「みんなそう言うのよ」

 

護衛は二人を見た。

 

これはお見合いではない。普通の作戦会議だ。

 

◇

 

その夜、デギンはキシリアから報告を受けていた。

 

「どうだった?」

「面白い人ね。そして非常に優秀な軍人だったわ」

「それで?」

「私のパートナーに欲しいわ」

「おお!」

「……でも、断られた」

 

デギンは少し黙った。

 

「二時間も何を話していた?」

「ルナツーの防衛について――」

「見合いでルナツーを攻略するな!」

「攻略していない。むしろ攻略しない方が合理的だという結論になったのよ」

「そういう問題ではない!」

 

◇

 

一方、地球。

 

ワッケインもレビル将軍に報告していた。

 

「将軍。非常に有意義でした。ジオン軍の戦略思想について、参考になる話を聞けました」

「ほう」

「また話したいと思います。次回は軍縮後の宇宙防衛について意見交換を――」

 

「ワッケイン」

「はい」

「君は何をしに行ったのか覚えているか?」

 

ワッケインは少し考えた。

 

「見合いです」

「そうだ」

「…………失敗でしょうか?」

 

レビルはため息をついた。

 

「合同参謀会議としては大成功だ」

 

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