停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。 作:山田 川田
カイはホワイトベースの食堂で新聞を広げていた。
『各サイド代表、南極会議への参加を表明』
『連邦制度改革、地球各地域からも自治要求』
『停戦継続――戦闘発生件数は過去最低』
「また和平の話か」
向かいに座っていたハヤトが新聞を見る。
「いいことじゃないですか」
「そうなんだけどよ。最近、俺たち何してるんだ?」
「……待機?」
「そればっかりだな」
二人は格納庫の方向を見る。ガンキャノンもガンタンクも、今日も出撃予定はなかった。
「最初の頃は、毎日のように出撃してたのにな」
「出撃しない方がいいですよ」
「分かってるよ。でも暇なんだよ」
◇
その日の午後、ブライト艦長は乗組員を集めた。
「本日の任務を伝える。民間向け物資をルナツー方面へ輸送する」
「また?」
「まただ」
「ホワイトベースって輸送船でしたっけ?」
「撃たれるよりいいだろう」
「そりゃそうですけど」
◇
格納庫では、乗組員たちが次々と資材を運び込んでいた。ガンキャノンの横には大きなコンテナが並び、整備員たちも積み込み作業を手伝っていた。
以前なら積み込まれるのは弾薬やモビルスーツの部品だった。今は建設資材や機械部品など、復興に必要なものが多い。
ハヤトが荷物を見ながら言った。
「これ、食料プラントだって」
「ガンダムより役に立つかもな」
「カイさん」
「今は、だよ」
誰も否定しなかった。
◇
ガンダムは整備が続けられ、いつでも出撃できる状態だった。
コックピットの近くには、新しい注意書きが貼られていた。
『無許可での出撃禁止』
『出撃には本部長の許可が必要』
アムロはガンダムを見つめていた。
「今日も乗っていない。……もう何日だろう」
◇
出港時間になった。
ホワイトベースは静かに港を離れた。警戒態勢は取られているが、敵の姿はない。積んでいるのは弾薬ではなく、復興資材だった。
ブリッジでブライトが報告を聞く。
「周辺宙域、異常ありません」
「了解。このまま予定航路を進む」
◇
出港後、カイは再び新聞を広げていた。
「艦長」
「何だ」
「この新聞に、キシリア閣下が連邦の若い士官と会ったって書いてありますよ」
ブライトの手が止まった。
「それがどうした」
「この記事の日付、艦長が出張してた時ですよね」
「特別任務だ」
ブライトは新聞を取り上げた。
「航行中だ。くだらないことを話していないで、任務に戻れ」
「了解」
カイはそれ以上、何も聞かなかった。
ブライトは新聞を一度だけ見た。
「若いって、いいわね」
あの時、キシリアが何を言いたかったのか。今でもよく分からない。
原作の時系列では、停戦になると、アムロたちは戦闘に巻き込まれず、ホワイトベースに乗ることはありません。今作ではサイド7への強行偵察が原作より早まったことで、アムロはガンダムのパイロットとなり、ホワイトベースに乗艦している設定とさせていただきます。