停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

29 / 29
第29話 ホワイトベース

カイはホワイトベースの食堂で新聞を広げていた。

 

『各サイド代表、南極会議への参加を表明』

『連邦制度改革、地球各地域からも自治要求』

『停戦継続――戦闘発生件数は過去最低』

 

「また和平の話か」

 

向かいに座っていたハヤトが新聞を見る。

「いいことじゃないですか」

「そうなんだけどよ。最近、俺たち何してるんだ?」

「……待機?」

「そればっかりだな」

 

二人は格納庫の方向を見る。ガンキャノンもガンタンクも、今日も出撃予定はなかった。

 

「最初の頃は、毎日のように出撃してたのにな」

「出撃しない方がいいですよ」

「分かってるよ。でも暇なんだよ」

 

◇

 

その日の午後、ブライト艦長は乗組員を集めた。

 

「本日の任務を伝える。民間向け物資をルナツー方面へ輸送する」

「また?」

「まただ」

「ホワイトベースって輸送船でしたっけ?」

「撃たれるよりいいだろう」

「そりゃそうですけど」

 

◇

 

格納庫では、乗組員たちが次々と資材を運び込んでいた。ガンキャノンの横には大きなコンテナが並び、整備員たちも積み込み作業を手伝っていた。

以前なら積み込まれるのは弾薬やモビルスーツの部品だった。今は建設資材や機械部品など、復興に必要なものが多い。

 

ハヤトが荷物を見ながら言った。

「これ、食料プラントだって」

「ガンダムより役に立つかもな」

「カイさん」

「今は、だよ」

 

誰も否定しなかった。

 

◇

 

ガンダムは整備が続けられ、いつでも出撃できる状態だった。

 

コックピットの近くには、新しい注意書きが貼られていた。

 

『無許可での出撃禁止』

『出撃には本部長の許可が必要』

 

アムロはガンダムを見つめていた。

 

「今日も乗っていない。……もう何日だろう」

 

◇

 

出港時間になった。

 

ホワイトベースは静かに港を離れた。警戒態勢は取られているが、敵の姿はない。積んでいるのは弾薬ではなく、復興資材だった。

 

ブリッジでブライトが報告を聞く。

「周辺宙域、異常ありません」

「了解。このまま予定航路を進む」

 

◇

 

出港後、カイは再び新聞を広げていた。

「艦長」

「何だ」

「この新聞に、キシリア閣下が連邦の若い士官と会ったって書いてありますよ」

 

ブライトの手が止まった。

「それがどうした」

「この記事の日付、艦長が出張してた時ですよね」

「特別任務だ」

 

ブライトは新聞を取り上げた。

「航行中だ。くだらないことを話していないで、任務に戻れ」

「了解」

 

カイはそれ以上、何も聞かなかった。

 

ブライトは新聞を一度だけ見た。

 

「若いって、いいわね」

 

あの時、キシリアが何を言いたかったのか。今でもよく分からない。




原作の時系列では、停戦になると、アムロたちは戦闘に巻き込まれず、ホワイトベースに乗ることはありません。今作ではサイド7への強行偵察が原作より早まったことで、アムロはガンダムのパイロットとなり、ホワイトベースに乗艦している設定とさせていただきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ギレン社長の野望 ジオン食品の系譜(作者:はめるん用)(原作:機動戦士ガンダム)

 ガンダムの二次創作だからって戦争とか戦闘を書かなきゃいけないなんて決まりはないよねぇ?


総合評価:429/評価:8.36/連載:3話/更新日時:2026年08月08日(土) 08:22 小説情報

【完結】黒いガンダムの宇宙世紀(作者:いずりょう)(原作:ガンダム)

U.C.0070、地球。▼三歳のレン・イズミは、前世で三十五年間を生きた記憶を取り戻す。自分が生まれたのは、人類が宇宙へ進出した未来――宇宙世紀。▼そして九年後には、ジオン公国と地球連邦による一年戦争が始まる。▼レンは原作はある程度知っている。▼ジオン軍のモビルスーツ コロニー落とし サイド7への襲撃▼アムロ・レイがガンダムへ乗り、ホワイトベースの戦いが始ま…


総合評価:1751/評価:6.97/完結:103話/更新日時:2026年08月17日(月) 18:00 小説情報

技術試験隊斯ク戦ヘリ(作者:ザクスキー2世)(原作:ガンダム)

欠陥機、鹵獲艦、飛べるが帰れない試作機。▼まともなものが一つも回ってこない第603技術試験隊で、名家のお嬢様が愚痴を言いながら戦うお話。▼主人公は転生者ではないです。▼原作で死亡するキャラは、そのまま死んだり生き残ったりする予定です。▼基本的にMSIGLOO準拠ですが、一部ジオリジンの設定を持って来ます。▼箸休め程度に気楽に読んでもらえると幸いです。▼第1章…


総合評価:2712/評価:8.91/連載:41話/更新日時:2026年10月21日(水) 11:00 小説情報

朱き蜉蝣の残光(作者:ゆのじさん)(原作:ガンダム)

※※作るにあたりAIを多分に使用しています。※※▼デラーズ紛争を生き延びたシーマ・ガラハウと、その艦隊。▼戦いの果てに彼女たちが辿り着いたのは、宇宙世紀ではない、別の歴史を歩む世界だった。▼知らないMS。知らない技術。知らない戦争。▼そして、この世界にもまた、利用される者と、利用する者がいる。▼帰る方法はない。▼ならば、生きるしかない。▼やがて彼女たちは、こ…


総合評価:355/評価:8.12/連載:65話/更新日時:2026年10月08日(木) 23:53 小説情報

​『逆襲のシャア』の総帥に憑依した元商社マン、アクシズを落とさず地球圏を支配する 〜静かに暮らしたいだけなのに、アナハイムと狂信者に神輿を担がれて逃げられない件〜(作者:なやむ)(原作:ガンダム)

「お願いだから、もうこれ以上俺(キャスバル)を神輿として担がないでくれ……!」▼目が覚めると、そこは宇宙世紀0090年代▼よりにもよって、グリプス戦役末期、ハマーン・カーンと一騎討ちに臨み、その後消息不明になっていた世紀のカリスマ、シャア・アズナブルーキャスバル・レム・ダイクンに憑依していた▼本物のシャアはすでに成仏してどこにもいない。残されたのは、ただ「早…


総合評価:13721/評価:8.78/完結:9話/更新日時:2026年07月28日(火) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>