停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

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第30話 予定が狂った

サイド6。

 

シャア・アズナブル少佐は新聞を読んでいた。

『各サイド代表、南極会議への参加を表明』

『ジオン議会、自治案の審議を継続』

『ギレン総帥、議会の決定を尊重すると表明』

 

シャアは記事を最後まで読み、新聞を置いた。

「ずいぶん変わったものだ」

 

部下が振り向く。

「何がです?」

「ジオンだよ」

 

少し前まで、ギレン・ザビの決定に異議を唱える者はほとんどいなかった。今では議会が政策を議論し、新聞がそれを批判し、総帥自身が議会の判断を尊重すると言っている。

 

シャアには、困った問題だった。ザビ家を許したわけではない。父ジオン・ズム・ダイクンの死後、ザビ家が権力を握ったことも忘れてはいない。復讐するつもりだった。そのはずだった。

 

だが、状況が変わっている。デギンは和平を支持している。キシリアまで連邦軍人と会っている。

 

シャアは新聞をもう一度手に取った。

『全サイドへの自治権拡大を検討』

そこで手が止まる。

 

スペースノイドが自分たちの政治を自分たちで決める。それは父が求めていたものだ。問題は、それを進めているのがザビ家だということだった。

 

部下が再び声をかける。

「少佐?」

「いや。少し予定が狂ったと思ってな」

「作戦ですか?」

「もっと長い予定だ」

 

◇

 

シャアは窓の外を見た。

 

もしザビ家を倒した結果、和平が崩れたらどうなる。再び連邦とジオンが戦争を始めれば、それは父の理想に近づくことなのか。答えは出なかった。

 

シャアは新聞を畳んだ。

「復讐というものは、相手が変わらないことを前提にしているのかもしれんな」

「何かおっしゃいましたか?」

「独り言だ」

 

◇

 

その頃、連邦軍ではレビル将軍が資料を見ていた。

 

副官が尋ねる。

「次のお見合いですか?」

「ああ」

 

レビルは資料を一枚めくり、手を止めた。

「次は、この男にしよう」

「どなたです?」

 

レビルが資料を渡した。

『スレッガー・ロウ中尉』

 

副官が顔を上げた。

「本気ですか?」

「本気だ」

「スレッガー中尉ですよ?」

「知っている」

「…………」

 

レビルは資料を閉じた。

「ブライトは説教になった。ワッケインは軍事会談になった」

「はい」

「なら、今度は違うタイプを試してみよう」

「違いすぎると思いますが」

「だからだ」

 

副官はもう一度、スレッガーの資料を見た。

「キシリア閣下には、どう説明します?」

「そのまま紹介すればいい」

「そのまま?」

「連邦軍の優秀な中尉だ」

「間違ってはいませんが」

「なら問題ない」

 

レビルは次の書類を手に取った。

 

副官は嫌な予感しかしなかった。




第38話で完結予定、最終回が近づいています。
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