停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

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第31話 別の戦い

あるサイドの宇宙港。

 

一隻の輸送船が、ゆっくりとドックへ入ってきた。船体にはジオンの企業名が書かれている。

 

港の職員が書類を確認した。

「積荷は?」

「工業用部品と精密機械です」

「武器は?」

「ありません」

「軍用品は?」

「ありません」

「本当に?」

「三回目です。その質問」

 

職員は書類をめくった。確かに、どこにも武器はない。

 

停戦前なら、ジオンの船が連邦側の港へ入ること自体が問題になった。しかし今は違う。停戦が続き、民間船については少しずつ航路が開かれていた。

 

「帰りの積荷は?」

「医療機器と食料プラントです」

「食料プラント?」

「サイド3で売れます」

「ジオンで?」

「モビルスーツより需要がありますよ」

 

職員は少し考えた。

「時代が変わったな」

「商売はもっと早く変わります」

 

◇

 

港の倉庫では、連邦側とジオン側の商人が価格について話していた。

 

「この部品は高すぎる」

「戦争中に生産設備が壊れましてね」

「こちらだって同じだ」

「では一割引きで」

「二割」

「一割五分」

「それでいい」

 

交渉は五分で終わった。

 

近くにいた港湾職員が感心した。

「早いですね」

 

連邦側の商人が答えた。

「何がです?」

「南極では何週間も話し合っています」

「あれは政治でしょう」

「こちらも交渉ですが」

「こちらは値段が決まれば終わりです」

 

ジオン側の商人もうなずいた。

「独立でも自治でも、部品は必要ですからね」

「それはそうだ」

「必要なところへ売る。それだけですよ」

「政治も、値段だけ決めればいいんですがね」

「まったくだ」

 

◇

 

翌日の新聞には、二つの記事が並んでいた。

『南極会議、自治権を巡り各代表の意見まとまらず』

 

その下には、

『連邦・ジオン間の民間交易、停戦後最高を記録』

と書かれていた。

 

記者が編集長に尋ねた。

「これ、同じ日の記事ですよね?」

「そうだ」

「和平交渉は進んでいないのに、取引は増えているんですか?」

「そうらしい」

「大丈夫なんでしょうか」

「何が?」

「まだ和平条約もありませんよ」

「商人に言ってみろ」

 

記者は窓の外を見た。港では、また一隻の輸送船が荷物を降ろしていた。

 

◇

 

南極。

 

マ・クベは新聞を机に置いた。

 

『連邦・ジオン間の民間交易、停戦後最高を記録』

 

連邦側の代表も記事を読んでいた。

「我々より進んでいますな」

「そのようです」

 

マ・クベは別の書類を見る。

 

自治権、税制、議会の議席、航路管理、各サイドの治安組織。決めなければならない問題は増える一方だった。

 

「こちらは今日も自治軍の扱いですか」

「その予定です」

「昨日も同じ話をした気がしますが」

「昨日は自治軍を認めるかどうかです」

 

「今日は?」

「認めた場合、どこまで武装を許可するかです」

「明日は?」

「指揮権かと思います」

 

マ・クベはため息をついた。

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