停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。 作:山田 川田
南極では、今日も会議が続いていた。
「自治軍の指揮権についてですが」
「各サイド政府が持つべきでしょう」
「しかし有事には連邦軍との協力が必要です」
「その『有事』を誰が判断するのです?」
また新しい問題が出た。だが、会議が止まっているわけではない。昨日は自治軍を認めるかどうかを話していた。今日は、その指揮権を話している。
少しずつではあるが、話は進んでいた。
◇
同じ頃、一隻の連邦軍艦艇がサイド3へ近づいていた。
「入港許可が出ました」
「そうか」
レビルは窓の向こうを見た。以前ここへ来た時、彼は捕虜だった。今回は違う。連邦軍の将軍として、正式に招かれている。
「護衛艦は?」
「予定通り、港の外で待機します」
「それでいい」
レビルはサイド3を見ながら言った。
「同じ場所でも、来る理由が違えば随分違って見えるものだな」
◇
サイド3では、デギン、ギレン、キシリアがレビルを迎えた。南極からマ・クベも一時的に戻っている。
キシリアがマ・クベを見る。
「久しぶりね」
「昨日も通信でお話ししましたが」
「直接会うのは久しぶりでしょう」
「それは、確かにそうです」
ギレンが二人を見る。
「何の話だ?」
「こちらの話よ」
そこへレビルが入ってきた。
デギンが立ち上がる。
「ようこそ、サイド3へ」
「以前とは随分違う歓迎ですな」
「今回は客人ですからな」
二人は握手した。
◇
公式の歓迎行事が終わると、小さな会議室に場所を移した。記者はいない。議事録も残さない。デギン、ギレン、キシリア、マ・クベ、そしてレビルだけだった。
レビルが尋ねた。
「南極の方はどうです?」
マ・クベが答えた。
「順調です」
「順調?」
「はい。決めることが増え続けております」
「それを順調と言いますかな」
「昨日よりは先へ進んでおりますので」
レビルは笑った。
ギレンが資料を見る。
「問題は自治軍だな」
マ・クベが答えた。
「それだけではありません。税制、議会の議席、航路管理、地球側の自治要求もあります」
「随分増えたな」
「和平交渉を始めた頃には、連邦とジオンの問題だけでした」
デギンがレビルを見る。
「将軍。ここでは決定をするつもりはありません」
「分かっています」
「南極が正式な交渉の場です」
「では、ここでは?」
「南極で話せそうな案を探しましょう」
レビルはうなずいた。
「それなら気楽ですな」
マ・クベが小声で言った。
「南極へ持って帰れば、気楽ではなくなりますが」
◇
話は自治軍の指揮権へ戻った。
レビルが言った。
「平時は各サイドが指揮する。有事には共同で対処する。それでは駄目ですかな」
ギレンが尋ねた。
「誰が有事を認定する?」
「そこです」
しばらく沈黙した。
キシリアが口を開く。
「一方だけで決められないようにすれば?」
「連邦だけでも、各サイドだけでも決められない仕組みですか」
「ええ」
マ・クベが考えた。
「共同の委員会を置く方法はあります」
レビルが言った。
「軍人だけでは駄目でしょうな。政治側も入れるべきでしょう」
ギレンが資料に何かを書いた。
「南極で出せるか?」
マ・クベが答えた。
「正式な案として出すには、まだ検討が必要かと思います。ですが、話し合いの材料にはなります」
デギンがうなずいた。
「では、それでいい」
ただ、南極へ持っていく案が増えた。
◇
その日の夕方、レビルたちは次の問題について話し始めていた。
ギレンが尋ねた。
「ところで、税収の配分はどうする?」
レビルが答えた。
「自治権を広げる以上、各サイドにどこまで残すか決める必要がありますな」
キシリアが言った。
「また南極で揉めそうね」
デギンが苦笑した。
「間違いなく揉めますな」
マ・クベは無言だった。
南極では正式な答えを決める。サイド3では、その答えになりそうなものを探す。
二つの会議は、同時に進んでいた。