停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

34 / 34
第34話 停戦に

サイド3側で新しい案が出されたので南極の会議は人員が不足していた。

ギレンはサイド3を長期間離れることができない。そのため、地球で行われる会議にはキシリアが出席することになった。

 

会議を終えたキシリアのもとに、スレッガーから連絡が入った。

「飲みに行かないか?」

 

以前は、スレッガーがお見合いのためにサイド3までやって来た。今度はキシリアが地球にいる。キシリアは少し考えた。

「いいわ。でも日程は合わせてもらいます」

 

◇

 

店の中では、連邦兵たちが酒を飲んで騒いでいた。扉が開き、キシリア・ザビが入ってきた。後ろには銃を持った護衛がいる。

 

皆がキシリアを見た。

「…………」

「…………」

「…………キシリア・ザビ?」

「なんでここにいるんだ……?」

「本人なのか?」

 

何人かがスレッガーを見る。スレッガーは何でもないことのように手を上げた。

「紹介するよ。キシリアさんだ」

「…………」

 

連邦兵の一人が小声で聞いた。

「閣下とか付けなくていいのか?」

「今日は仕事じゃないから付けない」

「……本気か?」

 

連邦兵の一人が隣の男に小声で言った。

「スレッガー、本当に連れてきたのかよ……」

 

◇

 

キシリアが席についた。後ろに護衛が立っている。連邦兵たちは明らかに緊張していた。

「お、お酒は?」

「少しなら」

「食べ物は?」

「何でも」

「趣味は?」

「美術」

「…………」

 

会話が続かない。別の兵士がスレッガーを見るが、スレッガーは知らん顔をして酒を飲んでいた。

 

キシリアが口を開いた。

「ところで連邦軍内部では和平について――」

「政治禁止」

「つまらないわね」

 

キシリアはグラスを手に取った。

 

◇

 

しばらくすると、少しずつ会話が始まった。一人の若い連邦兵が言った。

「自分は、ジオンのザクに撃墜されかけたことがあります」

「そう」

「本当に死ぬかと思いました」

「戦場だから、そういうこともあるでしょうね」

 

別の兵士がグラスを置いた。

「私の友人は、ジオンに殺されました」

 

空気が変わった。

 

スレッガーも黙った。キシリアも、すぐには答えなかった。

 

「こちらにも、連邦軍に家族や友人を殺された者が大勢いるわ」

「……はい」

 

しばらく沈黙した。誰も話さなかった。

 

キシリアが言った。

 

「だから、もう戦争はやめた方がいいわね」

 

また少し、沈黙があった。

 

スレッガーがグラスを持ち上げた。

「じゃあ、乾杯だ」

 

キシリアもグラスを上げる。

「停戦に」

 

兵士たちもグラスを上げた。

「停戦に」

 

グラスが触れ合った。

 

◇

 

それからしばらくすると、酒の力もあって連邦兵たちの緊張はかなり消えていた。

「キシリア閣下」

「何?」

「スレッガーのどこがいいんです?」

「…………」

「おい!」

 

スレッガーが兵士を見る。

「だって気になるだろ!」

「本人の前で聞くな!」

「本人がいるから聞けるんだろ!」

 

キシリアは少し考えた。

「私に遠慮しないところかしら」

 

一瞬、静かになった。

「おおおお!」

 

兵士たちが一斉に声を上げた。

「おい、本当に答えたぞ!」

「スレッガー!」

「やったな!」

「何がだ!」

 

スレッガーがキシリアを見る。

「そんなこと言えるようになったんだ」

「あなたのせいでしょう」

 

◇

 

一方、サイド3では、ギレンのもとに報告が届いた。

 

「キシリアが連邦兵と飲んでいるそうだ」

 

ギレンが顔を上げる。

「護衛は?」

「ついております」

「なら問題ない」

 

大柄なドズル・ザビ中将が勢いよく立ち上がった。ギレンとキシリアの弟で、ジオン軍の宇宙攻撃軍司令官である。

 

「俺も今度行くぞ!」

 

ドズルが机を叩いた拍子に、書類が散らばった。

 

ギレンはドズルを見る。

「お前は駄目だ」

 

「なぜだ!」

 

◇

 

翌朝、新聞の一面には一枚の写真が大きく掲載されていた。

『キシリア・ザビ、連邦兵と乾杯』

その下には、

『「停戦に」――元敵同士が同じテーブル』

と書かれていた。

 

デギンは新聞を見た。

「……いい写真だ」

 

◇

 

レビルも同じ記事を読んでいた。

「いい写真ですな」

 

◇

 

ギレンも新聞を開いていた。

「一面か」

「かなり大きく扱われています」

 

ギレンは写真を見る。

「悪くない」

 

そして新聞をめくった。二面にもキシリアの記事があった。

『キシリア・ザビ「スレッガーの遠慮しないところがいい」』

 

「…………」

 

側近が言った。

「こちらもかなり読まれているそうです」

 

ギレンは新聞を閉じた。

「一面だけでは済まなかったか」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【機動戦士ガンダム】七色の新星ガルマ・ザビ(作者:おかかと梅干)(原作:ガンダム)

若きガルマ・ザビは、肉体を失った後に後悔を重ねそして気付いた。自分がやるべきであった事を。▼─イセリナを幸せにする▼ただそれだけの為に彼は再び目覚める。▼思いをかなえるため、シャア・アズナブルを巻き込みジオンの改革を始める。▼国家としてのジオンと歪められたジオニズムを、2人の若者が改革をしていく。▼改革の中心者となったガルマの下には7人の英雄が集う。▼彼らを…


総合評価:193/評価:7.2/連載:15話/更新日時:2026年10月25日(日) 13:03 小説情報

ギレン社長の野望 ジオン食品の系譜(作者:はめるん用)(原作:機動戦士ガンダム)

 ガンダムの二次創作だからって戦争とか戦闘を書かなきゃいけないなんて決まりはないよねぇ?


総合評価:430/評価:8.36/連載:3話/更新日時:2026年08月08日(土) 08:22 小説情報

朱き蜉蝣の残光(作者:ゆのじさん)(原作:ガンダム)

※※作るにあたりAIを多分に使用しています。※※▼デラーズ紛争を生き延びたシーマ・ガラハウと、その艦隊。▼戦いの果てに彼女たちが辿り着いたのは、宇宙世紀ではない、別の歴史を歩む世界だった。▼知らないMS。知らない技術。知らない戦争。▼そして、この世界にもまた、利用される者と、利用する者がいる。▼帰る方法はない。▼ならば、生きるしかない。▼やがて彼女たちは、こ…


総合評価:356/評価:8.12/連載:65話/更新日時:2026年10月08日(木) 23:53 小説情報

技術試験隊斯ク戦ヘリ(作者:ザクスキー2世)(原作:ガンダム)

欠陥機、鹵獲艦、飛べるが帰れない試作機。▼まともなものが一つも回ってこない第603技術試験隊で、名家のお嬢様が愚痴を言いながら戦うお話。▼主人公は転生者ではないです。▼原作で死亡するキャラは、そのまま死んだり生き残ったりする予定です。▼基本的にMSIGLOO準拠ですが、一部ジオリジンの設定を持って来ます。▼箸休め程度に気楽に読んでもらえると幸いです。▼第1章…


総合評価:2755/評価:8.91/連載:46話/更新日時:2026年10月26日(月) 11:00 小説情報

地球連邦軍上層部はいつも多忙です。(作者:はにわはにわ)(原作:機動戦士ガンダム)

宇宙世紀0083年。核攻撃で観艦式が壊滅する中、地球連邦軍最高司令部の苦労人大将は、コロニー落とし阻止のため胃薬片手に奔走する。▼一旦、0083編で完結とさせてもらいます。Z編は制作に時間が取れなくなっているので、見通しも立たないですから、一旦、打ち切りの上、削除しました。


総合評価:6622/評価:8.3/完結:16話/更新日時:2026年06月24日(水) 01:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>