停戦の交渉をしていたはずが、なぜかギレン総帥が猫を飼い始めました。   作:山田 川田

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第38話(最終話) 明日から

南極で、連邦とジオンの会談が行われていた。広い会議場には、両陣営の代表者たちが集まっていた。

 

長く続いた和平交渉も、ようやく最後まで来ている。

 

自治権、軍の制限、通商、捕虜交換、領土問題。

決まったこともあれば、まだ決まっていないこともある。

 

レビルとデギンは文書を確認していた。

 

『未解決問題が残っていることを理由として、戦闘を再開してはならない。』

 

デギンが顔を上げた。

「つまり、領土問題が一年で解決しなくても?」

 

レビルが答えた。

「戦わない」

 

「五年かかっても?」

「戦わない」

 

「交渉が決裂した場合は?」

「別の交渉方法を探す。戦争には戻らない」

 

「…………」

 

マ・クベは二人を見る。

「それでよろしいかと存じます」

 

ギレンはもう一度、文書を見た。

「……同意します」

 

マ・クベが口を開いた。

「では、未解決の問題については、交渉を継続することで合意といたします」

 

最後の確認が終わった。

 

レビルがペンを取った。デギンもペンを取る。

 

二人が文書に署名した。

 

拍手が起こった。

 

地球連邦とジオン公国の和平条約が、正式に成立した。

 

◇

 

数日後。

 

キシリアはまだ地球に残っていた。

 

副官が入ってくる。

「スレッガー中尉から連絡です」

「…………」

 

キシリアは顔を上げた。

「何と言っている?」

「『和平になったんだから飲みに来い』と」

 

キシリアは書類を見る。

「公務だ」

「和平後の連邦軍人との交流も必要だ」

 

副官は何も言わなかった。

 

◇

 

シャアは新聞を読んでいた。

一面には和平条約の記事が載っている。

 

足元を猫が走った。

部屋の端まで走り、向きを変え、また走ってくる。

相変わらず速い。

 

シャアは新聞を畳んだ。

「戦争は終わった」

 

猫が止まった。

「あれから何か考えたか?」

「ニャー」

 

猫は再び走りだした。

「…………」

 

シャアは走り回る猫を見ていた。

「私にも分からん」

 

◇

 

ギレンは執務室に戻っていた。

 

和平条約が成立しても、仕事はなくならない。

机の上には書類が積まれている。

軍の再編。

通商。

軍需産業の転換。

 

その横に、一通の手紙があった。

ギレンは手紙を見る。

 

『今日こそ猫を見せていただけるのでしょうね?』

 

「…………」

 

秘書が聞いた。

「どうされますか?」

「行く」

「はい」

「猫を見せるだけだ」

 

◇

 

その夜。

 

ギレンは見合い相手の家の前に立っていた。

 

「…………」

 

猫がギレンを見る。

 

「国家間の和平交渉は終わった」

「ニャー」

「領土問題は五年かかってもいい」

「ニャー」

 

ギレンは呼び鈴を見る。

「なぜ、こちらは今日なのだ」

「ニャー」

 

「…………」

 

ギレンは呼び鈴を押した。

 

しばらくして、扉が開いた。

「遅いです」

 

女性はギレンを見る。

「猫は?」

「この猫です」

 

女性が笑った。

「かわいい」

 

ギレンも猫を見る。

 

「では、中へどうぞ」

「…………」

 

ギレンの動きが止まった。

 

「どうしました?」

「いえ」

 

猫を見せるだけではなかったのか。

 

「入らないのですか?」

「入ります」

 

ギレンは家に入った。

扉が閉まる。

 

「ニャー」

 

地球連邦政府とジオン公国の間に和平条約が結ばれた。

 

しかしギレンの戦いは、まだ終わっていなかった。

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