仮面ライダーカレクサ:episode0 ~月下のあだ花~(一応リクエスト作品)   作:大島海峡

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後編

 夜の闇は、さらに深くなっていく。

 満月が昇る。

 

「えーと、確かこの辺りかしら……」

 そこに、厚かましくも奴は現れた。人畜無害そうな歩き方で、怪物の姿のまま。

 

 だがこれ以上、殺されてたまるか。

 オレは、立っている。

 バキバキと音を立てて、再生する足で。

 さながらテープの早回しのように、折れた箇所を元の角度に戻っていく腕で、銃器を握りしめて。

 

 あら、とあどけなく異形の頭を傾ける彼女に、オレは弾丸を握り締めた。空だった薬莢に、自身の身体を介してオレンジ色の液体が流れ込む。その中を、銀穂が踊る。

 それを、半ばを折った銃器に込めた。

 

 それを皮切りに、何処からかシンプルな青磁色のベルトが転送されて、腰を巻き取る。

 そこからフォークメタルのような音楽が鳴り響き、それを糧に、足下より芒が伸び繁る。月光を浴びて、さらなる成長を

 

〈インプラント・オーン〉

 その鉢型のバックルに、折ったままの銃器をセットすると同時に、そこから短剣を逆手で引き抜いた。

 頭に流れ込んできた、その言葉を口にする。

 

 ――変身――

 

 瞬間、大きくうねりをあげた銀穂の波が、身体を覆い侵し、一体化する。彼の姿を、対面した相手と同質の存在へと変異させる。

 月光の粒子を散りばめた紫のボディスーツ。丸みとシャープさを均等に割り振った銀の外殻は、さながらエイリアンか近未来の宇宙服のようだった。

 触覚とも兎耳とも、あるいは銀穂ともつかぬアンテナが、顔の前に垂れた。それを両手でぐいと押し上げ立てると、月の煌めきを宿した双眸が鋭く閃く。

 

「――そう、そういうこと」

 いかにも、桜の鬼が悲しげな声を発する。だが、それが醜悪な狂気に裏づけられていることは明らかだった。

 そんな怪物の前に侍るように、学生服をまとった男女が追いついてきて、並び立った。

 繚覧女学院と、合同でボランティアに参加していた、また別の高校の人間。

 

「木華さま、お下がりください」

「後の始末は、我々が」

 

 そう言い放つと、それぞれ件の銃器を携えて、自らの手や腕に向かって銃器を押し当て、引鉄を引いた。

 

〈エッグプラント〉

〈キューカンバー〉

 

 たちまちのうちに、それぞれ茶褐色の木目を刻んだ四肢を持つ、怪物たちに変じた。

 茄子紺の身体に、(ヘタ)を鼠の耳に見立てたもの。

 あるいは、飛蝗とも馬ともつかない造形の頭部、長い首に、黄色い花と蔓をマフラーに見立てて巻いたもの。

 

 何だろうとどうでも良い。問うまでもない。

 あの鬼にまつわるモノは、そのことごとく、刈る。

 

 オレは、湧き上がる殺意と力のままに、奴らに飛び掛かった。

 四肢を掴むようにして、駆動音めいた唸り声と共に飛び上がった茄子野郎と、抜き取った互いの銃器で、撃ち合う。

 奴は上から、オレはそれを仰ぐように、連射を見舞わせる。

 

 弾道が交錯する。互いの弾を相殺し、肉薄し合て武器や脚を打ちつけまくる。

 なんのことはない。不良どもとやった喧嘩と変わりない。怖じた方が負け、命や我が身を惜しんだ方が、押される。その前には数的不利などどうとでもなる。

 

 次第に壁へと追い込んだエッグプラントの腹部に蹴りを叩き込み、動きを封じる。背の壁面に、亀裂が奔る。

 四肢をばたつかせて暴れるそれと合わせるように、空気を切るような音と共に、飛蝗が跳び上がって宙で旋回しながら飛び蹴りを背に叩き込まんとした。

 

 それをかわすと同時に足を下ろした。同時に、銃と分離させて抜いた刃で袈裟懸けに一気に挽き下ろした。

 オレが転身すると同時に、内部のエネルギーが統制を失い、爆散した。巻き上がる炎の中、枯れ草となって焼け落ちていくのを背と拡張された視野で感じ取る。

 

 残りの飛蝗の伸び切った脚を下から蹴り上げ、月光の弾丸と斬撃をさらに畳み掛けて、バランスを崩す。

 

 その間隙に、オレはベルトに銃を戻して引鉄を弾いた。

 

〈オーン・エリミネイト〉

 

 腹部に銃剣を突き刺し、それを足裏で押し込む。そこからエネルギーを流して相手の身体を破り抜く。飛蝗は枯れ花となって散った。

 

「みんな……」

 さも寂しげに弥生だったモノが呟く。だが、そんな資格がこの怪物にあろうはずもない。反転して、一気に押し捲る。

 

〈ムーンホッパー!〉

 鋭い兎の横顔を模した、オレンジ色の頭部を持つハンマーが、満月の影より転送されて、すぐ横の地面に落ちて跳ね上がった。

 そのバウンドの最中に掴み取るや、桜の鬼の腹部へと叩き込む。

 

 何度も、何度だって。

 ありさが受けただろう、痛みの分だけ。

 

 だが途中、奴の手がそれを掴んだ。銃口を向けて、撃ち放つ。

 吹き飛ばして間を作るや、季節外れの夜桜が旋風と共に巻き上がり、そこから生じた真空の刃がオレへと送られて、外殻を切り裂いた。

 

 だったら、対抗する術が必要だ。

 オレは短剣を、ムーンホッパーという、その武装の頭部、兎の眉間のソケットに差し込んだ。

 

〈シックルモード〉

 低く男の声でそう呟いたそれに、

「なるほど、草刈り鎌ってか」

 皮肉げに、嗤いかけた。

 

 コレを屠るには、相応の武器だ。

 迫り来る桜旋風を、一息に両断して、再び間を詰める。

 弦月を描いて斬り立てる。腕も胴体も、剪定でもするかのように。

 その度に、血に変わって薄紅色の花弁が散った。やはりこいつらは、人間ではない。

 

 耐え切れずに傾いた奴の身体を蹴り付け、体幹を完全に打ち崩す。

 すぐさま起きあがろうとした弥生の首元に、即座に刃を添えた。

 

「……残念ね」

 浅く呼吸をしながら、仇は言った。

「私たち、お友達にはなれないのね……ありさで繋がっているというのに」

 自分が悲劇の被害者だとでも言いたげな、ふざけた物言いだった。

 

「お前みてぇな狂った化け物と、ダチになれるわけがねぇだろうが」

 低く冷たく、オレは返した。

 

「……可哀想ね」

 まだ、繰り言は続く。

「私には、ありさとの想い出がある。あの娘の笑顔も、言葉も、共に過ごした日々も、肌の温もりも、たしかに心に残っている」

 けど、と継ぎ足して、女は言った。

 

「貴方には、何も残らなかったのね」

 心底憐れむような、声の調子で。

 

「それを奪ったのが、お前だ」

 

 そう宣い、ベルトのトリガーに再び力を込める。

 

〈エリミネイト・ムーン〉

 ベルトのコマンドに連動した刃が妖光を帯びる。

 一気に腰と腕に力を込めて、振り下ろした。

 全身が桜花の欠片となって、風に流されて、跡形もなくその場から消え去った。

 

 〜〜〜

 

 人間に戻れたオレは、再びあの渡り廊下へと戻ってきた。不思議と、誰に出会すことはなかった。

 荒涼とした思いを抱きつつ、スポーツバッグと、その中に詰め込んでいた制服を拾い直す。

 

〈レジェンダ〉

 

 背に、一人分の気配を感じる。

「無事に勝利したようで、何よりだ」

 芝居がかった物言い。生死の境で、聴いたあの女の声だった。

 

 差し出されたその手には、一通の便箋。裏面に書かれた差出人の名前、そしてその筆跡は妹のもの。相手先は、『木華さま』と、まるで一線ごとに心血を注いだかにような丁寧ぶりで記されている。

 

「やはり、あの女が隠し持ってやがったか」

 それを受け取るが、中を解いて読む気にもならず、かと言って破く気にもなれず、制服のポケットへと返してやる。

 

「だが、完全に滅ぼしたわけではない。君が切り裂いたのは、その枝葉(アバター)に過ぎない。本株はまだ学院の中だ」

「……は?」

「君の仇討ちは、まだ終わりではないということだ」

「……は、はは」

 乾いた笑いと共に、オレは銃と共に顧みた。

 

「何なんだよ、()()()は」

 と。

 

 そこに立っていたのは、またしても異形。

 まるで瓦のように敷き詰めた、緑の甲冑が全身を覆い、笹葉のような鋭く、かつ暗く落ち窪んだ眼窩が、くり抜かれた東洋の龍のような造詣の頭部。その後ろには、白い花が簪のように挟まれている――怪人が、そこに立っている。

 

「あれは――我らは、プラネテス」

 凛と張った少女の声で、彼女は言った。

 

「草木の女神。惑うモノ。宇宙より飛来した種子が、知性と肉体を獲得したモノ。いずれ世界の深奥にその枝葉を伸ばす存在」

「……意味が分からねぇな」

「別にそこは君の訊きたいことではないだろうからな」

 あっさりとした調子で、怪物は言った。

 

「その生長がために、我々は互いに競い、チギリ――いわば人間を眷属(プラネテスの)化させることで、そこから精製されるアンブロシアを活性剤として成長する。先ほど君が倒したのも、その類だ」

 そう言って彼女が手紙と併せて取り出したのは、件の弾丸、もといアンプルが二本。そこには、茄子の花と胡瓜の花が紫色の薬液に沈められていた。

「君の妹は――そこに巻き込まれて命を奪われた」

 ぎり、と奥歯が軋る。

 激情のままに銃口を傾けるオレに、動じた様子も無く、

 

「落ち着け。君を担いだり害を成そうとするならば、わざわざ力や情報など与えるものか」

 と手で制し、

「私は、月華(げっか)

 と名乗った。

 月華の君――とでもいうことか。

 木華の君と、春ヶ塚弥生が称されていたのなら、おそらくそれも本名ではないのだろう。

 

「私は、そんなプラネテスの在り方を憎悪する。地球と人類のために、この種は広がる前に絶やさねばならないと。その点において、私と君の目的は同じだ。今後も、手を組まないか」

「何処に自分の種族を滅ぼしたい奴がいる? そんなことを信じられるか」

「別に頭から信じてもらおうとは思わないが――春ヶ塚弥生は、いずれ再生する。学院内、君に手出しができない場所で。私なら、その手引きや根絶を、手伝ってやれる」

「だったらまず教えろ! あの女を殺し切るには、どうしたら良い!?」

「学院内のどこかに存在する本株を滅ぼすか。配下のチギリを撫で斬りにすることで、アンブロシアの供給を断つことで枯らす。その二つだ」

 

 間を置かずすんなりと、月華は答えた。たしかに打算をするでもないその反応の速さには、一分の誠意は感じられた。

 一方で、オレは思案する。

 これからどうすべきか。妹の遺品たちを見下ろしつつ。

 

 そして考えれば、認めざるを得なくなる。

 

 制服の裾にこびりついていた、一片の、コスモスの華。

 それを丁寧に指で剥がしながら、棺に納められていたモノを思い返しつつ、最後の質問をした。

 

「あいつは――ありさは、本当に華になったんだな」

 と。

 

「あの女、木華が殺した」

 その独語に対して、答えはなかった。いや、訊くまでもないことだった。

 

「良いだろう。いったんは手を組んでやる。だが」

 身を起こしざま、オレはあらためて銃口を、月華の君に突き付けた。

 

「お前もだ。プラネテスとやらは、オレが例外なく根絶やしにしてやる」

 闇の下、冷たく冴える月の下。

 真っ直ぐに睨み据えて、そう伝える。

 

「――あぁ、私もそれを望んでいる」

 竜頭の奥底で、噛みしめるように女はその宣告を、受け入れたのだった。

 

 

 

「で、女学院にはどう潜入する?」

「幸いなことに、君は必要なものをすべて持っている。それを利用すれば良いだろう」

 

 は、と呆れたような呼気と共に、無事なガラスを鏡代わりに、我が身を写し取って確かめる。

 そこには、女学院の制服を携えたまま怪訝そうにしている、眉目と鼻筋が中性的な超絶美少年の姿があった。




 リクエスト内容
 ・ドライバー及び変身アイテムの根幹が『魔術(魔法)』寄り
  →ギリシャ神話モチーフだし設定上はギリOK
 ・主人公は感覚派だが物事を見抜く洞察力とセンスがある
  →間違いなく感覚派…………見抜いてるんじゃない……かなぁ?(すっとぼけ)
 ・ヒロインは美人系で主人公とは敵対しない、双方に人並みの正義感と倫理観がある。
  →妹は美人系で正義感と倫理観があった……んじゃないかなぁ?
 ・怪人は人間がアイテムで変異するタイプ
  →人間が変異してるからOK(戻れるとは言ってない)
 ・幹部怪人のモチーフは聖剣の剣士(アナザー寄り?)+黄道十二宮の天使(悪魔)?
  →そもそもオレ君はスパーダ+フォーゼモチーフで、かつ本編の主人公じゃなくて幹部怪人みたいなモンだから
 ・過去作オマージュライダーもしくは変身者のゲスト出演。
  →一言だけ出したし、一応変身はしたから

 この時点でかなり条件を満たしてるな、ヨシ!(錯覚)

 ただどっちかというと鎧武っぽくなってしまった感はありますが。
 一応こういう構想でやっていきますよ的なお話。雰囲気は本来もっと、明るい感じにはなります(コンマ一ミリぐらい)。

 上でもチラッと触れましたが、本作の主人公と本編の主人公はまた別になります。
 ちなみに、妹の死にまつわる真相は、一応この話だけでなんとなく分かるようにはなっています。

 リクエスト主様にふざけんなと言われたら、ここで打ち切りとなり、また別のアイデアを考えることになります。

 それでは、続けるにせよ新規分を書き直すにせよ、また何処かにて。
 ではでは。
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