機動戦士ガンダムOOR   作:ミスト12523

156 / 156
最終話 その先へ

最終話 その先へ

 

西暦2364年――外宇宙

地球は、もう見えない。

太陽すら。

無数に存在する星々の中の一つに過ぎなかった。

人類が初めてELSと出会ってから、五十年。

あの日。

地球近傍に咲いた銀色の花は、人類に一つの事実を突きつけた。

宇宙には。

自分たち以外の生命がいる。

そして。

異なる生命同士であっても。

分かり合うことはできる。

少なくとも。

分かろうとすることはできる。

それから五十年。

人類は。

地球を離れた。

     ◇

外宇宙航行艦《スメラギ》――艦橋

巨大な星図が艦橋中央に浮かんでいる。

既知の星域。

観測済み宙域。

未踏領域。

そして。

その中央を進む一隻の船。

外宇宙航行艦《スメラギ》。

かつて地球圏で運用されていた戦闘艦とは、規模も設計思想も異なる。

戦うためだけの船ではない。

観測。

調査。

交流。

長期間の航行。

そして。

まだ人類が知らない何かと出会うための船。

その艦橋中央。

艦長席に、一人の女性が座っていた。

短いダークブラウンの髪。

灰色がかった瞳。

若い。

見た目だけなら。

十代の少女と言われても通る。

だが。

その目は違う。

五十年。

人類とELS。

その双方が変わっていく時間を見てきた目。

右腕。

袖口から覗く指先は。

銀色。

アーミア・リー。

六十七歳。

外宇宙航行艦《スメラギ》艦長。

「予定航路との差異は?」

「〇・〇〇三以内。問題ありません」

「周辺の重力異常は?」

「観測されていません」

「ELS群は?」

「本艦周辺に十二。先行個体が三」

「分かりました」

アーミアは星図を見る。

「先行個体から何かあれば、すぐに報告してください」

「了解」

落ち着いた声。

五十年前。

何かあるたびに「先生」と誰かを呼んでいた少女の面影は。

外見よりも。

その仕草の方から消えていた。

艦橋のクルーが。

自然に彼女の判断を待つ。

それが。

この船で積み重ねてきた時間だった。

「艦長」

通信士が振り返る。

「前方のELSから反応」

アーミアの視線が動く。

「内容は?」

「まだ……解析できません」

「映像を」

メインモニターが切り替わる。

暗い宇宙。

星々。

その中。

銀色のELSが漂っている。

一体。

二体。

三体。

普段とは違う。

何かを囲んでいる。

アーミアが立ち上がった。

「拡大」

映像が寄る。

そこには。

何もない。

少なくとも。

人間の目には。

「……何かいますね」

「艦長?」

「ELSが見てる」

右手を持ち上げる。

銀色の指。

微かな感覚。

五十年前より。

ずっと鮮明に分かる。

だが。

すべてではない。

それでいい。

分からないから。

聞く。

それを。

五十年前に教わった。

「減速」

「了解」

「警戒レベルを一段階上げてください。ただし武装は固定」

「了解」

《スメラギ》が速度を落とす。

アーミアは艦長席へ戻った。

「さて……」

その時。

艦橋後方の扉が開いた。

足音。

アーミアは振り返らない。

「遅いですよ」

「時間通りだろ」

聞き慣れた声。

クルーの何人かが振り返る。

だが。

誰も驚かない。

男が一人。

紙コップを片手に艦橋へ入ってきた。

レイナス・レノアーク。

五十年前。

ELSとの戦いで。

最前線に立っていた男。

そして。

五十年経った今も。

外見はほとんど変わっていない。

「何か出た?」

アーミアがメインモニターを示す。

「ELSが前方で何かを見つけたみたいです」

レイナスが画面を見る。

「また追加業務か」

「まだ何も分かってません」

「こういうのは大体増えるんだよ。予定表にない仕事ってのは」

「五十年経ってもそれ言うんですね」

「五十年働いてるから言うんだよ」

アーミアが小さく笑う。

そこだけ。

ほんの少し。

昔の少女に戻る。

レイナスが艦長席の横まで来る。

「で?」

「確認します」

「俺も?」

「当然です」

「俺、乗客なんだけど」

アーミアが振り返る。

「誰がですか?」

「俺」

「格納庫に専用機まで持ち込んで?」

「荷物だよ」

「全高十八メートル以上ある荷物を初めて見ました」

「宇宙船なら誤差だろ」

「整備スペースまで使ってます」

「必要経費」

「請求しますよ」

レイナスが一瞬黙った。

「……お前、言うようになったな」

「誰に教わったと思ってるんです?」

レイナスは紙コップを傾ける。

「教育を間違えたかもしれない」

「五十年遅いです」

「返品できる?」

「できません」

「だよな」

アーミアが笑った。

艦橋のクルーは。

誰もそのやり取りを気にしない。

いつものことだった。

     ◇

「艦長」

通信士の声で。

空気が戻る。

「先行ELS、移動開始」

アーミアが前を見る。

銀色の三体が。

ゆっくりと左右へ分かれる。

その向こう。

星の光が。

歪んだ。

レイナスの表情が変わる。

「……あれは?」

アーミアの銀色の右手が反応する。

微かな震え。

だが。

恐怖ではない。

何か。

知らないもの。

ELSにも。

分からない。

「先生」

無意識に。

その呼び方が出た。

レイナスが横を見る。

アーミア自身も気づく。

少しだけ笑った。

「……久しぶりに呼びましたね」

「そうだな」

五十年。

艦長になっても。

多くの人間を率いるようになっても。

その関係だけは。

完全には消えなかった。

アーミアが前を見る。

「どう思います?」

レイナスも星の歪みを見る。

「分からん」

即答だった。

アーミアが笑う。

「変わりませんね」

「分からないものを分かったふりするよりマシだろ」

「それもそうですね」

「で、艦長」

レイナスが言う。

「どうする?」

アーミアは答えなかった。

数秒。

星図。

ELS。

未知の反応。

そして。

遥か後方にある。

もう見えない故郷。

地球。

五十年前。

一人の少年が。

未知の生命へ手を伸ばした。

分からないから。

知ろうとした。

あの日から。

人類は。

ここまで来た。

アーミアが立ち上がる。

もう。

レイナスへ判断を求める少女ではない。

「進みます」

艦橋の全員が動く。

「《スメラギ》、微速前進」

「了解!」

「ELS先行個体との距離を維持。観測系統を全開」

「了解!」

「未知反応に変化があれば即時報告」

「了解!」

レイナスが横から見る。

その表情に。

何も言わない。

アーミアは艦長席の前に立った。

「私たちは」

星の海を見る。

「まだ、宇宙のことを何も知らない」

知らない星。

知らない生命。

知らない世界。

この先。

何が待っているのか。

誰にも分からない。

だから。

行く。

「外宇宙航行艦《スメラギ》」

アーミアが告げる。

「前進してください」

巨大な船が。

ゆっくりと動き出す。

未知の宙域へ。

その周囲を。

銀色のELSが飛ぶ。

艦橋。

レイナスが紙コップを見た。

空。

「……コーヒー切れた」

アーミアが前を向いたまま答える。

「自分で淹れてきてください」

「艦長命令?」

「そうです」

「偉くなったなあ」

「五十年経ってますから」

「見た目は全然変わってないけどな」

「先生に言われたくありません」

「それもそうか」

レイナスが笑う。

扉へ向かう。

その途中。

一度だけ。

振り返った。

艦長席。

アーミア・リー。

かつて。

映画館帰りにELSに襲われた。

ただの少女。

その少女が今。

人類の船を率いて。

宇宙の果てへ向かっている。

レイナスは何も言わなかった。

扉が閉じる。

アーミアは前を見る。

星々が。

ゆっくりと流れ始めた。

五十年前。

人類は。

宇宙からやってきた者と出会った。

そして今。

人類の方から。

宇宙へ。

誰かに会いに行く。

まだ見ぬ世界へ。

まだ見ぬ生命へ。

その先に。

何があるのか。

答えを知る者はいない。

だからこそ。

物語は。

その先へ続いていく。

機動戦士ガンダムOO-REYNAS-

 

 

END

 

 

 

    ◇

 

 

 

外宇宙航行艦《スメラギ》――艦橋

「そういえば」

アーミアが、ふと思い出したように振り返った。

まだ扉の前にいたレイナスが足を止める。

「何だ?」

「先生って、結局何歳なんです?」

「七千……」

「えっ?」

「……あ」

沈黙。

アーミアが目を細める。

レイナスが視線を逸らす。

「先生?」

「……コーヒー淹れてくる」

「待ってください」

「休憩時間だ」

「七千って何ですか?」

「聞き間違いじゃないか?」

「聞き間違える数字じゃありません」

扉が開く。

「先生」

「じゃ、艦長。後よろしく」

「先生!」

レイナスが逃げた。

扉が閉まる。

アーミアは数秒。

その扉を見つめた。

そして。

「……七千?」

艦橋のクルーたちも。

誰一人。

何も言わなかった。

   

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

TO BE CONTINUED IN

機動戦士ガンダムOOA

 




これで一応完結です
文章のほとんどをAIに任せっきりで変な所がたくさんあると思います。
ボチボチ直していきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

機動戦士ガンダムOOA(作者:ミスト12523)(原作:機動戦士ガンダムOO)

前作機動戦士ガンダムOORのアーミア・リーが2307年に跳んでしまう話▼原作のタクラマカン砂漠辺りまではほぼ原作通りの展開になります


総合評価:30/評価:-.--/連載:25話/更新日時:2026年10月02日(金) 22:08 小説情報

界渡りの不確定な切り札(作者:アルフレッド)(原作:スーパーロボット大戦)

前世の記憶を持つ、シャドウミラー世界のキョウスケ・ナンブ。▼彼はやがて世界を渡り、数多の物語と出会っていく。▼本来死ぬはずだった者。救われなかった者。運命に翻弄される者。▼「選択肢は作る。選ぶのはお前だ」▼原作を知っていても、未来は確定していない。▼世界を渡り、運命を変え、仲間と力を得ていく――▼《不確定な切り札》キョウスケ・ナンブの物語。


総合評価:129/評価:-.--/連載:31話/更新日時:2026年09月28日(月) 17:00 小説情報

続・黒いガンダムの宇宙世紀(作者:いずりょう)(原作:ガンダム)

 一年戦争は終わった。▼ 黒いガンダムを駆り、多くの者たちの運命を変えたレン・イズミ。しかし終戦後、ニュータイプとして高い軍事的価値を持つレン、アムロ、ララァを、地球連邦軍がそのまま自由にするはずもなかった。▼ 研究対象として囲い込まれるくらいなら、その立場そのものを利用する。レンはゴップ大将のもと、新たな特殊部隊――**BLACK RAVEN〈黒鴉隊〉**…


総合評価:1496/評価:8.26/連載:72話/更新日時:2026年10月02日(金) 12:00 小説情報

【完結】黒いガンダムの宇宙世紀(作者:いずりょう)(原作:ガンダム)

U.C.0070、地球。▼三歳のレン・イズミは、前世で三十五年間を生きた記憶を取り戻す。自分が生まれたのは、人類が宇宙へ進出した未来――宇宙世紀。▼そして九年後には、ジオン公国と地球連邦による一年戦争が始まる。▼レンは原作はある程度知っている。▼ジオン軍のモビルスーツ コロニー落とし サイド7への襲撃▼アムロ・レイがガンダムへ乗り、ホワイトベースの戦いが始ま…


総合評価:1603/評価:6.92/完結:103話/更新日時:2026年08月17日(月) 18:00 小説情報

機動戦士ガンダム 不死鳥戦記(作者:だいたい大丈夫)(原作:ガンダム)

宇宙世紀0079。ジオン公国の有力名家フロートニック家の長男、カリス・ジークフリード・フロートニック(16歳)は、実家の財力で少尉任官し、私兵を率いてルウム戦役へ出陣した。▼「金の力で遊んでいるお坊ちゃん」と、同期のシャア・アズナブル中尉から冷酷に嘲笑されるカリス。しかし、初陣の激戦の最中、彼は敵の射線が光の道筋として見える「ニュータイプ」の力に覚醒する。▼…


総合評価:704/評価:7.07/連載:46話/更新日時:2026年09月23日(水) 00:13 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>