第43話 それぞれの理由
西暦2307年――宇宙・プトレマイオス
ロックオン・ストラトスの手術が終わってから、六時間。
プトレマイオスは戦闘宙域を離れ、静かな航行を続けていた。
追撃はない。
少なくとも、今のところは。
だからといって、艦内が休息に入ったわけではなかった。
損傷箇所では修復作業が続き、格納庫では整備員たちが機体に群がっている。廊下を端末片手に行き交うクルーの足取りも速い。
次がある。
誰も口にはしなくても、それだけは分かっていた。
国連軍は退いた。
だが、敗れたわけではない。
GN-Xは残っている。
サーシェスも生きている。
そしてこちらは――一人、欠けた。
◇
プトレマイオス・医務室
ロックオンは眠っていた。
腹部と右肩には処置が施され、身体にはいくつもの医療機器が接続されている。
レイナスのアニマによる治癒と、その後の手術。
命の危険は脱した。
だが、戦闘へ復帰できる状態ではない。
ベッドの横には絹江がいた。
何度か休むよう勧められたが、結局ここへ戻ってきている。
規則正しく動く医療機器の表示を眺めていると。
ロックオンの指が僅かに動いた。
「……」
瞼が開く。
焦点が定まるまで少し時間がかかった。
天井。
医療機器。
そして。
「……よう」
掠れた声。
絹江が顔を上げた。
「ニールさん」
「まだ……そう呼ぶのか」
「自分から教えたんでしょう?」
「そうだったな……」
笑おうとして。
腹部に響いたらしい。
顔をしかめる。
「笑わない方がいいですよ」
「それ、結構きつい注文だぞ」
「死なれるよりはましです」
ロックオンは返事に詰まった。
絹江を見る。
怒っている。
けれど。
それ以上に、安心している。
「……悪かった」
「何がですか?」
「約束したのに、この有様だ」
絹江は少しだけ考えた。
「帰ってきました」
「ああ」
「なら、約束は守っています」
そこで一拍。
「満点ではありませんけど」
「採点厳しいな」
「当然です」
しばらく。
二人とも話さなかった。
艦の微かな振動と、医療機器の電子音だけが室内に残る。
やがてロックオンが口を開いた。
「サーシェスは?」
「生きています」
目つきが変わる。
ほんの一瞬。
あの男と戦っていた時の顔が戻った。
「そうか」
「追いかけますか?」
絹江は静かに訊いた。
責める口調ではない。
だからこそ。
ロックオンもすぐには答えられなかった。
「……分からない」
やがて出たのは、それだった。
「家族のことを忘れたわけじゃない。あいつを許せるとも思わない」
視線が天井へ戻る。
「でも、今回やってみて分かった」
「何がですか?」
「死んだら、その先がない」
絹江は黙って聞いている。
「昔なら、それでもよかったのかもしれない」
自分で言って。
少しだけ苦笑した。
「今は……帰らないと怒る奴がいるらしい」
「そうですね」
「怖いな」
「何が?」
「死ねなくなるってのも」
絹江は少し考えてから。
「私は、その方がいいと思います」
「だろうな」
ロックオンは目を閉じた。
疲労が戻ってきたらしい。
「……少し寝る」
「はい」
「起きた時もいるか?」
絹江の目が僅かに見開かれた。
ほんの短い沈黙。
「いますよ」
「そっか」
それだけ確認すると。
ロックオンは再び眠りへ落ちていった。
◇
プトレマイオス・格納庫
大破したデュナメス。
その隣には、鹵獲したGN-Xが固定されていた。
外装だけなら、こちらはまだ綺麗なものだった。
問題は中身だ。
「ここ」
イアンが端末を指す。
「それからここ。こっちもだ」
レイナスが横から画面を覗き込んだ。
OVER RISE使用時の各部データ。
フレーム。
駆動系。
推進器。
擬似GNドライヴ。
通常運用では出ない数字が並んでいる。
「……思ったより請求が来たな」
「だから言っただろうが」
「いや、もっと派手に壊れてると思ってた。これなら分割払いで済みそうだ」
「何の話をしとるんだ、お前は」
「機体寿命の前借りだよ。使った分はどこかで払う。世の中、大体そういう仕組みだろ」
イアンが眉を寄せる。
「嬉しそうに言うな」
「嬉しくはないよ。慣れてるだけだ」
レイナスは表示を切り替えた。
破損と呼べるほどではない。
タクラマカンで機体全体をアニマ強化した時と比較すれば、フレームへの負荷は明らかに小さい。
それでいて性能上昇は大きい。
「方向は合ってるな」
「一回使っただけで決めつけるな」
「決めちゃいないよ。少なくとも、大赤字じゃなかったってだけだ」
「その言い方をやめろ」
「分かりやすいだろ?」
「お前にだけな」
レイナスは肩を竦めた。
イアンが別のデータを表示する。
「次に使うなら、こことここの数値を見ろ。限界を超えたら即座に切れ」
「了解」
「本当に分かっとるんだろうな?」
「信用ないな」
「フラッグ」
「……うん」
「イナクト」
「それも俺だな」
「このGN-X」
「分かった。俺が悪かった」
素直に両手を上げる。
「過去の実績が強すぎる。反論するとこっちが損する」
「最初からそうしろ」
「長く生きてるとな、負け戦から降りる判断だけは早くなるんだよ」
イアンが鼻を鳴らした。
その視線が。
隣へ移る。
大破したデュナメス。
レイナスも追って見る。
右胸部は大きく抉られ、各所の装甲が失われている。
さっきまでの軽さが薄れた。
「……こいつは?」
「直す」
イアンは即答した。
「時間はかかるがな」
「次には?」
「無理だ」
機体だけの話ではない。
二人とも分かっている。
「ロックオンが乗れん」
「だろうな」
レイナスはデュナメスを見上げた。
四機だった戦力が、三機になる。
自分のGN-Xを足して、頭数だけなら四機。
だが。
数が同じなら同じ戦力、などという都合のいい話ではない。
「一人欠けると、急に財布が軽くなった気分になるな」
「戦力の話だろうが」
「同じようなもんだよ。あると思ってた余裕が、なくなって初めて重さが分かる」
イアンがレイナスを見る。
「お前は出るのか?」
「ああ」
「OVER RISEも?」
「必要なら使う」
迷いはない。
イアンは端末を下ろした。
「まだ何が起きるか分からんぞ」
「分かってる」
「機体だけじゃない。お前自身への影響もだ」
「今のところ身体に異常はない」
「今のところ、だろ」
「だから調べてるんだよ」
レイナスは端末を指した。
「使えるか。どこまで使えるか。どこから先が破産ラインか」
「結局それか」
「限界って言うより実感があるだろ」
イアンは深く息を吐いた。
「怖くないのか?」
「怖いよ」
レイナスはあっさり認めた。
「死ぬのも嫌だし、痛いのはもっと嫌だ。危ない仕事には危険手当が付くのが普通だと思うんだけどな」
「給料すら出とらんぞ」
「……改めて聞くと酷い職場だな」
「今さらか」
「待遇改善を要求するには、ちょっと遅かった」
イアンが呆れたように笑う。
レイナスも口元を緩めた。
だが。
その視線は再びデュナメスへ向かう。
「それでも出るよ」
「ソレスタルビーイングのためにか?」
「そこまで立派じゃない」
返事は早かった。
「理念を全部信じてるわけでもないし、自分が正義の側にいるなんて思ったこともない」
最初から。
そこは変わっていない。
王留美についてきた。
この船へ乗った。
戦った。
助けた。
機体を奪った。
全部。
誰かに強制されたわけではない。
「ただまあ……ここまで好き勝手に首を突っ込んで、勘定が悪くなった途端に『部外者です』じゃ、さすがに通らないだろ」
「誰に対してだ?」
レイナスは少し考えた。
「俺自身かな」
イアンは黙った。
「逃げるならもっと早く逃げとくべきだった。もう遅いよ」
レイナスは苦笑する。
「知り合いも増えた。放っとけない奴も増えた。おまけに敵まで増えた」
指を折るように数えて。
「こういうのを何て言うんだろうな」
「自業自得だ」
「……それだ」
即座に認めた。
「実に嫌な言葉だな。反論できないところが特に」
イアンが笑った。
レイナスも少し笑う。
そして。
「まあ――」
デュナメスを見る。
「ここにいる奴らを死なせたくない。それだけなら、俺にも分かる」
イアンはしばらく何も言わなかった。
やがて。
「分かった。なら、そいつを仕上げる」
GN-Xを指す。
「次も動くようにな」
「頼むよ」
レイナスもGN-Xを見上げる。
「借り物にしちゃ、ずいぶん働いてもらってるからな。もう少しだけ付き合ってもらおう」
◇
プトレマイオス・展望区画
地球が遠くに見える。
アレルヤは窓の前に立ち、その青い光を眺めていた。
足音。
振り返る。
刹那だった。
「ここにいたのか」
「うん」
刹那も隣へ立った。
しばらく。
二人とも地球を見ていた。
先に口を開いたのはアレルヤだった。
「ロックオン、助かってよかったね」
「ああ」
「でも」
アレルヤは窓へ映った自分を見る。
「次は僕たちかもしれない」
刹那は否定しなかった。
否定できない。
「怖いよ」
アレルヤは静かに言った。
「僕は死ぬのが怖い」
少しだけ笑う。
「人を殺すのも怖い。仲間が死ぬのは……もっと嫌だ」
「俺もだ」
アレルヤが横を見る。
刹那は地球を見ている。
「怖い」
その言葉は。
以前の刹那なら、口にしなかったかもしれない。
「だが、戦う」
「ガンダムだから?」
刹那は答えるまで少し時間を置いた。
「それだけじゃない」
かつて。
自分はガンダムになろうとした。
今も。
その思いが消えたわけではない。
けれど。
「俺は変えたい」
眼下の地球。
そこには。
自分が生まれた世界も。
戦争も。
争いも。
生きている人間もいる。
「この世界を」
アレルヤは静かに頷いた。
「うん」
再び地球を見る。
「僕も行くよ」
ハレルヤに任せるのではなく。
自分で。
「僕も、ここまで来たんだから」
◇
プトレマイオス・個室
ティエリアの前にヴェーダはない。
正確には。
そこへ繋がる道がない。
以前なら当然のように存在したもの。
情報。
判断。
計画。
そして。
自分がどうあるべきかという答え。
今は何も返ってこない。
机上の端末にはナドレの整備状況。
TRANS-AMのデータ。
次の戦闘予測。
それだけだった。
ティエリアは自分の手を見る。
震えてはいない。
それでも。
不安はある。
ロックオンが死にかけた。
次は自分かもしれない。
刹那か。
アレルヤか。
この艦の誰かか。
何が正しいのか。
ヴェーダは教えてくれない。
「……」
以前なら。
それは恐怖だった。
今も怖い。
ただ。
答えがないから動けないとは思わなかった。
間違えるかもしれない。
それでも。
自分で決める。
「僕は……」
声に出す。
誰に聞かせるわけでもない。
「僕の意思で戦う」
そして。
小さく続けた。
「僕はガンダムマイスターだ」
与えられた役割としてではなく。
初めて。
自分で選んだ言葉として。
◇
プトレマイオス・ブリッジ
スメラギは一人、戦術画面を見ていた。
国連軍。
残存GN-X。
艦艇。
補給拠点。
再編成。
拾える情報は限られている。
ヴェーダはない。
これまでなら手に入ったはずの情報の多くが、今は見えない。
それでも。
次の戦いを組み立てなければならない。
手元のカップを取る。
空だった。
「……いつから空だったかしら」
「かなり前からです」
声。
振り返る。
クリスが新しいカップを持って立っていた。
「どうぞ」
「ありがとう」
受け取る。
クリスは自分の席へ戻らなかった。
「スメラギさん」
「何?」
「勝てますか?」
スメラギの手が止まる。
簡単な質問。
一番答えるのが難しい質問。
「……分からないわ」
クリスが僅かに目を伏せた。
「ごめんなさい」
「何で謝るんです?」
「作戦担当としては失格な答えだから」
クリスは首を横に振った。
「勝てるって嘘を言われるよりいいです」
スメラギはカップを見る。
「怖い?」
「怖いですよ」
クリスは笑おうとした。
うまくいかなかった。
「私、死にたくないです」
「私もよ」
クリスが少し驚いた顔をして。
「……ですよね」
「当然でしょう?」
二人とも。
少しだけ笑った。
スメラギは再び戦術画面を見る。
勝てる保証はない。
生き残れる保証もない。
だから。
考える。
「一人でも多く帰す方法を考えましょう」
「はい」
◇
プトレマイオス・医務室前
格納庫から戻る途中。
レイナスは医務室前で足を止めた。
フェルトがいた。
壁にもたれたまま、閉じた扉を見ている。
「まだいたのか」
「うん」
「ロックオンは?」
「さっき起きた。今はまた寝てる」
「なら一安心だな」
レイナスは医務室の扉を見る。
命は助かった。
それでも。
あの姿がフェルトの中から簡単に消えるはずはない。
「レイナス」
「ん?」
「次も出る?」
「ああ」
答えに迷いはなかった。
フェルトの視線が落ちる。
少し間があった。
「……怖い」
レイナスの足が止まった。
「ロックオンが帰ってこないかと思った」
「うん」
「次は、レイナスかもしれない」
レイナスはフェルトを見る。
その可能性はある。
戦場へ出る以上、絶対に帰るなどとは言えない。
それを正直に説明することもできる。
たぶん。
今のフェルトが聞きたいのは、そんな正論ではない。
「フェルト」
少しだけ声を低くする。
「覚えておいてくれ」
妙に真面目な声だった。
フェルトが顔を上げる。
「俺にはまだ、やり残したことがある」
「……やり残したこと?」
「ああ」
レイナスは一拍置いた。
「自分のMSを一機も持ってない」
「……」
フェルトが瞬きをする。
「百年以上生きて、最後に乗った機体が敵から盗ったGN-Xじゃ、さすがに締まらないだろ」
「……それ?」
「重要だぞ」
真顔だった。
フェルトがじっと見てくる。
「今、その話する?」
「今だからだよ」
レイナスは腕を組んだ。
「死ぬには明らかに時期が悪い。せめて自分専用機くらい手に入れて、ローンの一つでも残してからじゃないと死にきれない」
「ローン……?」
「……いや、待て」
レイナス自身が気づいた。
「残す相手がいないな」
「それ、もっと駄目じゃない?」
「確かに」
少し考える。
「じゃあローンは無しだ」
「そこじゃない」
フェルトの口元が僅かに緩んだ。
それを見て。
レイナスも小さく笑う。
「まあ、そういうわけだ」
「どういうわけ?」
「帰ってくる理由なら、ちゃんとあるってことだよ」
フェルトはしばらくレイナスを見ていた。
さっきまで強張っていた表情が、少しだけ柔らかくなっている。
「……変なの」
「最近よく言われる」
「誰に?」
「主にこの船で」
今度は。
フェルトがはっきり笑った。
小さな笑いだった。
それでも。
先ほどまでの顔よりずっといい。
レイナスは満足そうに頷く。
「その顔なら大丈夫そうだな」
フェルトが気づいたように目を細めた。
「……もしかして、笑わせようとした?」
「さてな」
「レイナス」
「こういうのは種明かしすると価値が下がるんだよ」
それだけ言って歩き出す。
「レイナス」
もう一度。
呼び止められた。
振り返る。
「帰ってきて」
レイナスは一瞬だけフェルトを見た。
そして。
片手を上げる。
「専用機もないのに死ねるかよ。割に合わない」
今度こそ歩き出す。
フェルトは遠ざかっていく背中を見ながら。
もう一度。
小さく笑った。
◇
プトレマイオス・ブリッジ
数時間後。
警報が鳴った。
静かな時間を切り裂く音。
フェルトが即座にオペレーター席へ向き直る。
「広域センサーに反応!」
クリスがデータを展開した。
光点が増える。
一つ。
二つ。
そんな数ではない。
「艦艇反応、複数!」
「MS反応も増加!」
スメラギが立ち上がる。
「数は?」
フェルトが表示を確認した。
表情が強張る。
「前回以上です」
ブリッジの空気が変わった。
国連軍。
再編成を終えた戦力が。
こちらへ向かっている。
スメラギは一度目を閉じた。
怖くないわけではない。
それでも。
目を開いた時には戦術予報士の顔へ戻っていた。
「総員、第一種戦闘配置」
艦内へ警報が響き渡った。
◇
プトレマイオス・格納庫
作業灯が切り替わる。
整備員たちが最終確認を終え、機体から離れていく。
エクシア。
キュリオス。
ナドレ。
三機のガンダム。
その隣。
一つだけ空いた発進位置。
本来なら。
そこにはデュナメスがいた。
誰も口にはしなかった。
刹那が一度だけ、その空間を見る。
アレルヤも。
ティエリアも。
そして。
その隣には鹵獲GN-X。
レイナスがコクピットへ乗り込む。
システムを起動。
擬似GNドライヴ。
正常。
駆動系。
正常。
イアンが手を入れた各部も問題ない。
OVER RISEの実戦データも反映されている。
まだ何度でも使えると保証されたわけではない。
それでも。
今ここで使える手札には違いない。
『レイナス』
スメラギから通信。
「聞こえてる」
『敵戦力は前回以上よ』
「向こうも懲りないな。こっちは人手不足だってのに」
『ロックオンもいない』
空いた発進位置へ目を向ける。
「ああ。四人分の仕事を三人と借り物一機で回すわけだ」
『言い方』
「現場ってのは、大体そういうもんだろ。人が減っても仕事は減らない」
『妙に実感がこもってるわね』
「昔からこの手の貧乏くじには縁があるんだよ」
スメラギが小さく息を吐く。
『それでも出る?』
レイナスは少しだけ眉を上げた。
「今さら?」
一拍。
「ここまでタダ働きして、最後の一番面倒なところだけ他人に押しつけたら、それこそ丸損だろ」
『そういう問題?』
「俺にとっては結構大事だよ」
操縦桿を握る。
「せめて元くらい取らせてくれ」
通信の向こう。
スメラギが僅かに笑った。
『何をもって元が取れたことになるの?』
レイナスは少し考える。
「全員帰って、あとで文句言えるくらいかな」
今度は。
スメラギから返事が来るまで少し間があった。
『……了解』
「出るよ」
GN-Xがカタパルトへ移動する。
◇
国連軍・艦隊後方
艦隊が進む。
多数のGN-X。
それを運ぶ艦艇。
そして。
さらに後方。
それらとは明らかに異なる巨大な影があった。
黄金。
MSとは比較にならない巨体。
大量のGN粒子を放出しながら。
ゆっくりと前進している。
その内部。
アレハンドロ・コーナーがモニターを見つめていた。
「いよいよだ」
ソレスタルビーイング。
イオリア・シュヘンベルグの計画。
そのすべてを。
自分の手で終わらせる。
そして。
自分の手で始める。
「これで終わらせる」
黄金の巨体。
アルヴァトーレが。
戦場へ向かって進んでいった。
◇
プトレマイオス・格納庫
カタパルト。
エクシアが前へ出る。
『刹那・F・セイエイ。ガンダムエクシア――出る!』
射出。
青白いGN粒子を残し、宇宙へ飛び出す。
続いてキュリオス。
ナドレ。
三機のガンダムがプトレマイオスを離れた。
最後。
鹵獲GN-Xがカタパルトへ入る。
レイナスは前を見る。
敵の数。
こちらの戦力。
どう計算しても。
割のいい仕事ではない。
「高い授業料になったな」
操縦桿を握る。
フラッグ。
イナクト。
GN-X。
ガンダム。
TRANS-AM。
OVER RISE。
この世界へ来てから見たもの。
関わった人間。
自分で選んだこと。
全部まとめて。
ここまで来た。
遠く。
三機のガンダムが待っている。
そして。
ブリッジには。
帰ってこいと言った少女がいる。
レイナスは僅かに笑った。
「まあ――元を取るまでは死ねないか」
青白いアニマが灯る。
『レイナス、発進どうぞ』
フェルトの声だった。
「ああ」
一拍。
「行ってくる」
カタパルトが作動する。
GN-Xが射出された。
四つ目の光が。
三機のガンダムを追う。
その先には。
再編された国連軍。
そして。
まだ誰も知らない黄金の巨体。
最後の戦いが。
始まろうとしていた。