機動戦士ガンダムOOR   作:ミスト12523

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第45話 好敵手

第45話 好敵手

西暦2307年――宇宙・最終決戦宙域

二つの機体が真正面から激突した。

赤いGN粒子と、青白いアニマ。

振り抜かれた刃が噛み合い、火花が散る。

互いに押し込み――ほぼ同時に離れた。

レイナスは操縦桿を引く。

つい先ほど奪ったばかりのGN-Xが反転した。

コクピットハッチは歪んでいる。警告表示も消えていない。

まともに考えれば、強敵と一騎打ちを始めるような状態ではなかった。

「乗り換えて一分も経ってないんだけどな……!」

『戦場で敵機を奪っておいて、慣らし運転を要求するつもりか!』

グラハム機が追う。

速い。

一瞬で間合いを潰してくる。

「言われてみれば、その通りだ!」

レイナスは機体を横へ滑らせた。

直後。

刃がコクピットのあった空間を通過する。

そのままグラハム機が旋回。

もう次の攻撃に入っている。

レイナスの目が細くなった。

「速いな……!」

GN-Xを反転。

ビームサーベルを抜く。

「でも――!」

激突。

二機が弾かれる。

レイナスの口元が上がった。

「いいじゃないか!」

『ほう!』

グラハムも笑う。

『ようやくその気になったか!』

「最初からやる気はあるさ! ただ、こっちは機体を調達したばかりなんでね!」

『ならば性能を確かめるには絶好の機会だろう!』

「それを言われると弱いな!」

グラハム機が再び加速した。

レイナスも迎え撃つ。

二つの光が、再びぶつかった。

          ◇

宇宙・戦闘宙域側面

キュリオスの横をGNビームが抜ける。

アレルヤは即座に機体を変形させた。

飛行形態。

加速。

だが、その先に。

もう一機。

セルゲイのGN-Xが回り込んでいる。

「っ!」

回避。

直後。

ピーリス機が上方から斬り込んだ。

『被検体E-57!』

「ピーリス……!」

脳量子波。

頭の奥を抉るような痛み。

視界が揺れる。

キュリオスの動きが一瞬だけ鈍った。

ピーリスは見逃さない。

『そこだ!』

ビームサーベル。

だが。

『少尉、深追いするな!』

セルゲイの声が飛ぶ。

『しかし中佐!』

『相手は誘っている! 連携を崩すな!』

ピーリスが反応する。

その判断は正しかった。

次の瞬間。

キュリオスのGNビームサブマシンガンが、ピーリスの進路を薙いだ。

『くっ!』

ピーリス機が後退する。

アレルヤは荒く息を吐いた。

意図的に作った隙だった。

だが。

セルゲイには通じなかった。

「やっぱり……強い」

一人でも厄介な相手。

それが二人。

しかも。

ピーリスが近くにいるだけで頭痛が続く。

『どうした、アレルヤ』

頭の中。

別の声。

ハレルヤ。

『ビビってんのか?』

「……怖いよ」

隠さなかった。

『へえ』

「死ぬのも怖い。二人を相手にするのも怖い」

操縦桿を握り直す。

「でも――逃げたくない」

キュリオスが再び変形した。

          ◇

宇宙・プトレマイオス直衛宙域

六機。

ティエリアは一瞬で数えた。

ナドレを包囲するGN-X部隊。

一機が正面。

二機が左右。

残る三機が射線を重ねる。

『撃て!』

ビームが交差した。

ナドレが降下する。

頭上を光が走る。

すぐに左。

ティエリアがライフルを向ける。

一射。

GN-Xの腕を撃ち抜いた。

だが右からもう一機。

回避。

背後。

警報。

「くっ!」

間に合わない。

そう思った瞬間。

脳裏に浮かんだ。

デュナメス。

これまでなら。

ここで狙撃が来た。

ロックオンが、何でもないことのように死角を埋めた。

だが。

来ない。

「……彼はいない」

ティエリアはナドレを強引に捻った。

ビームが装甲を掠める。

なら。

自分でやるしかない。

「僕が――!」

粒子放出量が跳ね上がった。

赤。

TRANS-AM。

ナドレが加速する。

「僕が埋める!」

GN-X部隊の照準からナドレが消えた。

『速い!?』

一機目。

ライフルを破壊。

二機目。

脚部を撃ち抜く。

三機目。

背後へ。

ティエリアの指が引き金を引いた。

GN-Xの推進器が爆発する。

「ヴェーダの指示ではない」

ナドレが赤い残光を引く。

「これは――僕の意思だ!」

          ◇

宇宙・アルヴァトーレ周辺

巨大な光が宇宙を薙いだ。

エクシアが急上昇。

アルヴァトーレのGNビームが、その足元を通過する。

『逃げ回るだけか、ガンダム!』

アレハンドロ。

刹那は答えない。

GNソードを構える。

加速。

黄金の巨体へ接近。

「はあっ!」

斬撃。

だが。

刃が届く直前。

光の膜が現れた。

GNフィールド。

GNソードが弾かれる。

「っ!」

エクシアが離れる。

『無駄だ!』

アルヴァトーレから砲撃。

回避。

再接近。

またGNフィールド。

硬い。

それだけではない。

火力。

推力。

防御力。

どれもガンダムを上回る。

だが。

刹那の目は。

その向こうを見ていた。

先ほど。

プトレマイオスへ向けられた主砲。

レイナスが止めた。

あれをもう一度撃たせれば。

今度も守れるとは限らない。

「お前は――」

エクシアが旋回する。

「俺が倒す!」

          ◇

宇宙・レイナス対グラハム

速い。

グラハムは。

本当に速かった。

機体性能だけではない。

一度見せた軌道を、そのまま繰り返さない。

加速すると見せて減速。

正面から来ると見せて、射線の外へ。

機体の癖を理解し切っている。

レイナスのGN-Xがサーベルを振るう。

空振り。

「そこか!」

機体を捻る。

直後。

側面からグラハム機。

刃。

受ける。

衝撃。

「っ……!」

押し込まれる。

レイナスはスラスターを噴かした。

強引に距離を開ける。

『どうした!』

「急かすなよ!」

グラハムが追う。

『君ほどの男が、その程度ではあるまい!』

「期待されると給料が上がらない割に仕事だけ増えるんだよ!」

『ならば私が相応の働き場を用意しよう!』

「そういうサービスはいらないって!」

刃が交差。

レイナスがかわす。

グラハムが追う。

「――っ!」

サーベルがGN-Xの肩を掠めた。

装甲が飛ぶ。

警告。

「危ないな!」

『まだだ!』

さらに来る。

レイナスの口元が。

また上がった。

「いいね……!」

操縦桿を握る手に力が入る。

強い。

戦い方が上手い。

そして。

MS戦を分かっている。

久しぶりだった。

力任せではなく。

能力任せでもない。

純粋に。

操縦で食らいついてくる相手。

「だったら――!」

青白い光がGN-Xへ流れ込む。

グラハムが反応する。

『その光か!』

「せっかく見に来たんだ!」

アニマが全身へ。

駆動系。

フレーム。

推進器。

機体そのものを。

一段上へ。

「特等席で見ていけ!」

OVER RISE。

GN-Xが青白く輝いた。

次の瞬間。

消える。

『何っ!?』

グラハムが反射的に機体を傾ける。

その脇を。

サーベルが通過した。

装甲が裂ける。

『これほどか!』

「まだだ!」

レイナスが追う。

一撃。

グラハムが受ける。

二撃。

かわす。

三撃。

グラハムが反撃。

レイナスが頭部を振って避ける。

「速い!」

『君ほどではない!』

「だったら――!」

GN-Xがさらに加速。

「追いついてみろ!」

『望むところだ!』

二機が戦場を駆ける。

青白い残光。

それを追うグラハム機。

レイナスが上昇。

グラハムも。

急降下。

追う。

反転。

正面。

「そこだ!」

サーベル。

グラハムが受ける。

押し込まれる。

だが。

グラハムは笑っていた。

『素晴らしい!』

「本当に楽しそうだな、あんた!」

『無論だ!』

グラハム機が強引に刃を弾く。

『これほどの相手を前に、心躍らぬパイロットがいるものか!』

「俺も人のことは言えないか!」

レイナスも笑った。

二機が離れる。

そして。

同時に加速。

再び激突した。

          ◇

プトレマイオス・ブリッジ

「レイナス機、速度上昇!」

フェルトが表示を追う。

速い。

前回OVER RISEを使った時よりも。

制御が洗練されている。

無駄な出力上昇を抑え、必要な瞬間へ集中させている。

クリスがモニターを見る。

「なんか……」

「何?」

「楽しそうじゃない?」

フェルトは通信波形を見る。

聞こえてくるレイナスの声。

普段より明らかに大きい。

「……うん」

少しだけ。

不満そうだった。

スメラギが横目で見る。

「フェルト?」

「何でもありません」

即答だった。

          ◇

宇宙・アレルヤ対ピーリス/セルゲイ

セルゲイが前。

ピーリスが後ろ。

崩れない。

アレルヤは二機の動きを見る。

ピーリスを狙えばセルゲイが入る。

セルゲイへ向かえばピーリスが側面へ回る。

「このままじゃ……」

『だから言ってんだろ』

ハレルヤ。

『一人で全部やろうとすんな』

「……一人じゃない」

『あ?』

アレルヤは息を吐いた。

「君がいる」

沈黙。

一瞬。

そして。

『今さら気づいたかよ』

笑い声。

アレルヤも。

僅かに笑った。

「力を貸して、ハレルヤ」

『貸す?』

声が変わる。

『俺の身体でもあるんだよ!』

アレルヤの目が開く。

「だったら――」

キュリオスが赤く輝く。

TRANS-AM。

「二人で行こう!」

セルゲイが叫ぶ。

『少尉! 来るぞ!』

『はい!』

キュリオスが。

二機の視界から消えた。

          ◇

宇宙・レイナス対グラハム

二機は。

既に何度交差したか分からない。

レイナスのGN-X。

左肩装甲損傷。

右脚部に浅い斬撃。

グラハム機。

右腕装甲損傷。

左肩部損傷。

どちらも。

まだ動く。

二機が距離を取った。

「……やるな!」

レイナスは息を吐く。

疲労ではない。

高揚。

『君もな!』

グラハム機が武器を構える。

『レイナス・レノアーク!』

「何だ!」

『私は君と戦いたかった!』

「知ってるよ! 会うたび顔に書いてあった!」

『ならば話が早い!』

「こっちはもう少し穏便に済ませたかったけどな!」

そう言いながら。

レイナスは笑っていた。

グラハムも気づいている。

『その割には楽しそうではないか!』

「……否定できないのが腹立つな!」

二人の笑みが。

消える。

空気が変わった。

次。

互いに。

決めるつもりだった。

レイナスはサーベルを下段へ。

グラハムは武器を構える。

「行くぞ、グラハム!」

『来い、レイナス!』

同時。

最大加速。

距離が消える。

五百。

三百。

百。

グラハムが振り下ろす。

レイナスは。

半歩。

機体をずらした。

刃がGN-Xの右腕を捉える。

「っ――!」

右腕が飛ぶ。

だが。

その瞬間。

レイナスは既に左手のサーベルを振り抜いていた。

「もらった!」

閃光。

二機が交差した。

          ◇

静寂。

GN-Xの右腕が。

ゆっくりと宇宙を漂っていく。

レイナスは計器を確認した。

「……高くついたな」

声から。

さっきまでの熱が少しずつ引いていく。

一方。

グラハム機。

武器が中央から断たれていた。

胸部装甲にも斬撃痕。

浅い。

コクピットまでは届いていない。

グラハムは。

その傷を見る。

『……私の負けか』

レイナスは振り返った。

「そういうことにしといてくれ」

『とどめを刺さないのか?』

「必要ないだろ」

即答だった。

「俺はあんたを殺したいわけじゃない」

グラハムは黙る。

「それに」

レイナスは戦況表示を見る。

アレルヤ。

ティエリア。

刹那。

全員まだ戦っている。

「こっちも忙しいんだ。決闘の延長料金まで払ってられない」

『……レイナス・レノアーク』

「何だ?」

『次は――』

「待て」

嫌な予感がした。

『万全の機体で改めて――』

「予約制にしてくれ」

『承知した!』

「承知するのかよ……」

グラハム機が離れていく。

機体は損傷しているが、戦線離脱には問題ない。

レイナスは追わなかった。

「まったく……」

一息。

そして。

操縦桿を握り直す。

右腕を失ったGN-X。

それでも。

まだ動く。

「一件片付けたと思ったら、まだ残業か」

戦況表示へ目を向ける。

アレルヤ。

ティエリア。

そして。

アルヴァトーレ。

その黄金の巨体へ。

赤く輝くエクシアが突っ込んでいく。

レイナスは目を細めた。

「一番面倒なのは――」

小さく笑う。

「刹那に任せるか」

          ◇

宇宙・アルヴァトーレ周辺

GNフィールド。

刹那は見ていた。

攻撃を防ぐ瞬間。

僅かな揺らぎ。

完全ではない。

なら。

突破する。

「エクシア」

赤い粒子がさらに強くなる。

TRANS-AM。

「俺たちが――」

エクシアが加速。

赤い残光。

黄金の巨体へ。

「未来を切り開く!」

アルヴァトーレの砲撃。

刹那は正面から突っ込んだ。

最終決戦は。

まだ終わらない。

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