機動戦士ガンダムOOR   作:ミスト12523

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第46話 帰るための戦い

第46話 帰るための戦い

西暦2308年――宇宙・国連軍最終決戦宙域

グラハムの機体が戦場を離れていく。

レイナスはそれを追わず、片腕になったGN-Xを反転させた。遠方ではTRANS-AMを発動したエクシアが、アルヴァトーレのGNフィールドへ何度もGNソードを叩き込んでいる。

アレルヤはセルゲイとピーリス、ティエリアも複数のGN-Xと交戦中。

そして残存するGN-Xの一部が、プトレマイオスへ進路を変えた。

「……母艦狙いか」

『レイナス、敵GN-X九機が本艦へ接近中』

フェルトからの通信だった。

「ああ、見えてる」

右腕はグラハムとの戦闘で失った。左手にはビームサーベル。左肩にも損傷がある。

決して万全ではない。

「戻る。迎撃は?」

『強襲用コンテナを使う。GNフィールドも展開準備中』

「了解。なら、俺は近い奴から片付ける」

GN-Xを加速させる。

機体各部から警告が出たが、レイナスは一瞥しただけだった。

「もう少し働いてくれ。俺も付き合うからさ」

          ◇

プトレマイオス・ブリッジ

「敵部隊、射程に入ります!」

「GNミサイル、発射!」

スメラギの指示で強襲用コンテナからミサイルが放たれた。

接近していたGN-Xが一斉に散開する。

「GNキャノン!」

閃光が走り、一機を正面から捉えた。

爆発。

だが残る機体は止まらない。左右へ展開しながら、プトレマイオスへ一斉射撃を開始する。

「GNフィールド展開!」

光の防壁が船体を包み、その直後から次々とビームが着弾した。

ブリッジが低く揺れる。

「フィールド出力低下!」

クリスの前に警告が並ぶ。

「まだ維持できます!」

「そのまま。第二波に備えて!」

フェルトは戦術画面を追う。

「レイナス機、敵部隊と接触します!」

          ◇

最初のGN-Xがライフルを撃つ。

レイナスは機体を横へ滑らせてかわし、そのまま距離を詰めた。

敵もビームサーベルを抜く。

二本の刃が交差する寸前、レイナスは機体を沈ませた。敵の斬撃を頭上へ流し、すれ違いざまに胴体を斬り抜く。

背後で爆発。

次の機体はすでにプトレマイオスへ向かっていた。

「そっちは駄目だ」

背後から追いつき、推進器ごと斬る。

だが三機目からの射撃が左肩を掠めた。

装甲が弾け、警告が増える。

「……新品なら文句の一つも言えるんだけどな」

敵GN-Xがサーベルを抜いて接近する。

レイナスも左腕を上げた。

刃と刃が激突する。

同型機。

押し合えば機体性能に大差はない。

レイナスは一度だけ力を抜き、相手の姿勢を前へ流した。その脇を抜けながら、胸部を深く斬る。

三機目が爆発した。

それでも敵は残っている。

しかも全機がレイナスへ向かってくるわけではない。

「全部こっち見てくれりゃ楽なんだが」

プトレマイオスへ抜けようとする機体を追う。

          ◇

プトレマイオス・医務室

船体が大きく揺れた。

絹江が壁へ手をつく。

ベッドの上でニールが目を開けた。

「……近いな」

「起きないでくださいね」

「まだ何もしてないだろ」

「しようとしたでしょう」

ニールは苦笑した。

もう一度、振動が伝わる。

今度は笑みが消えた。

「デュナメスがある」

「あなたが乗れません」

「分かってる。ただ――」

身体を起こしかけた瞬間、腹部に痛みが走る。

「っ……!」

絹江がすぐに肩を支えた。

モレノも振り返る。

「傷が開くぞ。今のお前が出ても足手まといだ」

「……容赦ないな」

「医者だからな」

絹江がニールをベッドへ戻す。

「あなたはもう戦いました」

「まだみんなが戦ってる」

「だから待ってください」

絹江はまっすぐ彼を見る。

「今度は、みんなが帰ってくるのを」

ニールはしばらく黙っていた。

やがて天井へ目を向ける。

「……頼むぜ」

絹江は何も聞かず、その隣に残った。

          ◇

プトレマイオス・ブリッジ

「GNフィールド、出力低下!」

集中砲火が続いていた。

光の防壁が着弾のたびに大きく波打つ。

「制御系の温度が上がってます!」

クリスが振り返る。

「このままじゃ焼けます!」

スメラギは数秒だけ表示を確認した。

「フィールド解除!」

「スメラギさん!?」

「ここで壊したら張り直せない。解除して!」

「了解!」

光の防壁が消える。

「回避運動!」

「了解ッス!」

リヒティが船体を傾けた。

最初のビームが横を抜ける。

二射目もかわした。

三射目。

巨体では避けきれない。

右舷へ直撃した。

轟音とともにブリッジが激しく揺れる。

「右舷被弾!」

「第三ブロック減圧!」

「隔壁閉鎖!」

艦内に警報が響く。

スメラギは損傷表示を見る。

まだ致命傷ではない。

だが、今までとは違う。

敵の攻撃が直接船体へ届き始めている。

「強襲用コンテナ、迎撃継続! フィールドの復旧を急いで!」

          ◇

爆発はレイナスからも見えた。

プトレマイオスの右舷から装甲片が飛び散っている。

「……やられたか」

敵GN-Xが正面から迫る。

レイナスはサーベルをかわし、すれ違いざまに斬り抜いた。

次。

一機がプトレマイオスへ回り込もうとしている。

今の機体では間に合わない。

なら。

「OVER RISE!」

青白い光がGN-Xを包む。

出力が跳ね上がった。

同時に、機体各部へ警告が表示される。

無視。

レイナスは一気に敵へ追いついた。

相手が振り返り、ライフルを撃つ。

機体を捻って回避。

そのまま懐へ飛び込む。

「そこだ!」

左腕を振り抜いた。

ビームサーベルが敵GN-Xを斜めに切断する。

爆発の向こうに、傷ついたプトレマイオスが見えた。

『レイナス』

フェルト。

「聞こえてる」

『機体、大丈夫?』

レイナスは警告だらけの表示を見る。

「大丈夫とは言いにくいな」

『……』

「でも、まだ動く」

プトレマイオスの周囲には敵が残っている。

「なら今は、それで十分だ」

          ◇

遠方では、エクシアとアルヴァトーレの戦いも決着へ近づいていた。

TRANS-AMの赤い残光を引き、エクシアが再び黄金のGNフィールドへ突入する。

『なぜだ! なぜ貴様たちはそこまでして戦う!』

アレハンドロの声。

刹那はGNソードを握り直す。

「俺は――」

加速。

「俺たちは――!」

刃がGNフィールドへ突き刺さる。

「変わるんだ!」

光の壁に亀裂が走った。

一気に広がる。

『馬鹿な……!』

GNフィールドが砕けた。

エクシアが黄金の巨体へ飛び込む。

          ◇

同じ頃。

プトレマイオスへ回り込んだGN-Xが、強襲用コンテナの迎撃を抜けた。

「一機、突破!」

フェルトの声。

敵がライフルを構える。

レイナスも気づく。

だが、遠い。

「――っ!」

ビームがプトレマイオスの右舷後方へ直撃した。

爆発。

さらに二射目が推進部を捉える。

プトレマイオスの船体が大きく傾いた。

ブリッジの照明が消える。

通信も途切れた。

「トレミー!」

レイナスは目の前の敵を斬り倒し、暗くなった船体を見る。

「フェルト、聞こえるか」

ノイズだけが返る。

「スメラギ。クリス。誰でもいい」

数秒。

非常灯が点いた。

『……聞こえてるわ』

スメラギの声。

レイナスが息を吐く。

「状況は?」

『右舷推進系に大きな損傷。姿勢制御も一部死んだ。まだ沈んではいないわ』

「そうか」

その後ろから、小さく声が入った。

『レイナス』

フェルトだった。

「いるよ」

『……うん』

それだけ確認すると、レイナスは前を向いた。

まだ敵はいる。

GN-Xも限界が近い。

プトレマイオスも、もう無傷で帰れる状態ではない。

それでも戦闘は終わっていなかった。

「まったく……」

レイナスは左手のビームサーベルを構え直す。

「帰るだけで、ずいぶん高くつくな」

片腕のGN-Xが再び加速する。

その背後で、傷だらけのプトレマイオスがゆっくりと姿勢を崩し始めていた。

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