第64話 ダブルオーガンダム
西暦2312年春――軌道資源採掘コロニー外周
赤いGN-X IIIが宇宙を駆ける。
レイナスが現地調達した機体と、それを追うアロウズのGN-X III。
同型機同士。
機体性能に大きな差はない。
正面から二条のビームが飛んだ。
レイナスは操縦桿を倒し、機体を横へ滑らせる。入力に対する反応は素直だった。アステリオンほど鋭敏ではないが、初めて触る人間でも一定以上に動かせるよう、よく纏められている。
「量産機ってのはいいな。素直で扱いやすい」
敵機がビームサーベルを抜く。
「こういうのでいいんだよ。乗るたびに取扱説明書が必要じゃ、現場が回らないからな!」
正面から斬撃。
受ける。
粒子が弾けた。
鍔迫り合いからGN-X IIIを横へ滑らせ、敵の力を逃がす。
姿勢を崩したところへ蹴り。
敵機が流れる。
右上からもう一機。
「っと!」
ビームが肩を掠める。
「危ないだろ! まだ操縦席の位置くらいしか覚えてないんだぞ!」
『十分動かしているように見えるが』
セラヴィーからティエリアの声。
「動かすだけならな!」
二機目が接近。
レイナスが反転し、ビームサーベルを振り抜いた。
敵のライフルが真っ二つになる。
「細かい仕様は帰ってからイアンに聞く!」
『持ち帰ることを前提にするな!』
「もう乗ってるんだから今さらだろ!」
セラヴィーのGNバズーカが火を噴いた。
敵部隊が散開する。
レイナスは追わなかった。
輸送艇を見る。
収容者たちを乗せた機体は、既に離脱軌道へ入っている。
「ティエリア!」
『分かっている』
「俺たちの仕事は勝つことじゃない」
レイナスの声から軽さが消える。
「全員連れて帰る。そこまでやって仕事は終わりだ」
『……ああ』
「だから帰ろう。今日はもう十分働いた」
沈黙。
『最後の一言がなければ格好がついたんだがな』
「格好つけたって勤務時間は減らないんだよ」
『君という男は……』
「褒めるな。照れる」
『褒めていない』
「知ってる」
赤いGN-X IIIとセラヴィーが反転する。
二機は輸送艇を守りながら、戦場を離脱した。
◇
同時刻――小型輸送艇
沙慈は窓の外を見ていた。
遠ざかっていく収容施設。
赤いGN-X III。
白いガンダム。
その間を光が走っている。
数時間前まで自分がいた場所で、戦闘が起きている。
そして自分は、突然現れた昔の隣人によってそこから連れ出された。
「……刹那」
操縦席の刹那が僅かに振り返る。
「何だ」
「君は……」
言葉が止まる。
聞きたいことはいくらでもあった。
なぜ自分を助けに来たのか。
あの白いモビルスーツは何なのか。
レイナスという男は何者なのか。
そして――五年前から、どこか引っ掛かっていたこと。
「君は、今まで何をしてたの?」
刹那は少し黙った。
「戦っていた」
「……戦って?」
「ああ」
沙慈は再び窓を見る。
白い機体。
ガンダム。
その姿に、五年前の記憶が重なった。
世界各地へ現れ、武力介入を繰り返したガンダム。
ソレスタルビーイング。
沙慈の表情が変わる。
「まさか……」
刹那を見る。
「君……ソレスタルビーイングなの?」
「ああ」
「じゃあ……ガンダムに乗ってたのも……」
「俺だ」
沙慈は言葉を失った。
五年前。
突然世界へ現れたガンダム。
戦争根絶を掲げながら、世界各地で戦闘を繰り返した組織。
それと、かつて日本で隣に住んでいた少年が繋がる。
「……そんな」
それ以上、言葉が出なかった。
助けてもらった。
その事実は分かっている。
けれど、今知った事実をどう受け止めればいいのかは分からない。
刹那もそれ以上は何も言わなかった。
輸送艇は静かに戦場から離れていった。
◇
数時間後――ソレスタルビーイング宇宙再建拠点
地球連邦の公式記録には存在しない軌道施設。
王留美が確保していた民間用宇宙施設を改修し、ソレスタルビーイングが再建拠点として使用している。
外観だけなら、資材保管や船舶整備を目的とした民間ドックにしか見えない。
だが内部にはMS整備区画、居住区、医療区画、中央管制室が設けられていた。
施設最奥。
外部から隔離された大型建造ドックには、一隻の宇宙艦が係留されている。
プトレマイオス2。
外装の大半は既に形になっている。
しかし内部設備や制御系、各種艤装は未完成。
まだ宇宙へ出られる状態ではない。
新しい母艦が完成するまで。
ここが、現在のソレスタルビーイングの家だった。
◇
再建拠点・第一格納区画
輸送艇が着艦した。
ハッチが開くと医療班が動き、救出された収容者たちを順番に誘導していく。
沙慈もその中にいた。
周囲を見る。
整備設備。
大量の資材。
そして先ほど宇宙で見た白い機体――セラヴィー。
「本当に……ソレスタルビーイング……」
もう疑う余地はなかった。
その横へ赤いGN-X IIIが入ってくる。
着艦。
固定アームが機体を掴んだ。
コックピットが開く。
レイナスが降りる。
床へ着地したところで、待っていたイアンと目が合った。
「……」
「……」
イアンがGN-X IIIを見る。
レイナスも見る。
「帰ってきたぞ」
「見れば分かる」
「全員無事だ」
「ああ」
「任務成功だ」
「ああ」
レイナスが頷く。
「じゃあ解散ってことで」
踵を返す。
「待て」
止まった。
「……駄目か」
「それは何だ」
「GN-X III」
「名前を聞いてるんじゃない!」
「分かってるなら聞くなよ」
イアンが額を押さえた。
「出る前に何て言った?」
「敵のMSを拾ってくるな」
「覚えてるじゃないか!」
「拾ってないぞ」
レイナスがGN-X IIIを指す。
「自分で取りに行った」
「もっと悪いわ!」
近くにいたクリスが吹き出した。
「やっぱり持って帰ってきた!」
「人聞き悪いな。あの状況じゃ必要だったんだよ」
「アステリオンあるじゃん」
「ここにな」
レイナスは格納庫の奥を指す。
専用機アステリオンが立っている。
「現地にはなかった」
「だからって敵の機体取る?」
「他に帰る足がなかったんだよ。さすがにあそこから生身じゃ帰れない」
クリスが首を傾げる。
「レイナスって宇宙でも平気じゃなかった?」
「真空で活動できるだけだよ」
《アニマ》で身体と周囲の空気を包めば、宇宙空間でも活動できる。
だが酸素を作り出せるわけではない。
まして収容コロニーとこの再建拠点の距離は、生身で渡れるようなものではなかった。
「俺だって無限に飛んでいけるわけじゃない。できるなら最初からMSなんか盗んで――」
止まる。
イアンの眉が上がった。
クリスが笑う。
「今、盗んだって言った」
「……言葉の綾だ」
「認めたじゃん」
「百年以上生きてても失言くらいする」
「そこは成長しないんだ?」
「人間、何でも成長すればいいってもんじゃない」
「絶対今考えたでしょ」
「三秒くらいはな」
イアンが深いため息をついた。
「まあいい。機体は調べる」
レイナスの表情が変わる。
「ほら見ろ。持って帰って正解だった」
「結果論だ!」
そこへフェルトが歩いてきた。
「レイナス」
「ん?」
フェルトはレイナスを一度、上から下まで見る。
「怪我は?」
「見ての通り。傷一つない」
「ならいい」
それだけ確認すると、今度はGN-X IIIを見上げる。
「それで?」
「……何が?」
「出る前にイアンから『敵のMSを拾ってくるな』って言われてたよね」
レイナスが黙った。
クリスが笑う。
「フェルト、聞いてたんだ」
「聞こえてたから」
レイナスがGN-X IIIを指す。
「これは拾ったんじゃない」
「自分で取りに行ったんでしょ?」
「……イアンから聞いた?」
「今、レイナスが自分で言った」
「誘導尋問かよ」
「勝手に喋っただけでしょ」
フェルトの口元が少し緩む。
レイナスは諦めたように肩をすくめた。
「まあいい。全員連れて帰ってきた。俺も無傷。そこは評価してくれてもいいだろ?」
「それはちゃんと評価してる」
「だろ?」
「でもMSを盗んだのは別」
「評価項目が分かれてる……」
「当然でしょ」
レイナスは少し黙る。
それから、妙に真面目な顔になった。
「いいか、フェルト」
「何?」
「男にはな、どんな状況でも最後まで守らなきゃならないものがある」
フェルトが少しだけ目を細める。
「……何を?」
「帰りの交通手段だ」
「……」
「宇宙で足がなくなると、本当に帰れないからな」
フェルトが呆れたように笑う。
「ちょっと格好いいこと言うのかと思った」
「無事に帰る以上に格好いいことなんてないだろ?」
「それはそうだけど」
「だろ?」
「でも盗んだんでしょ?」
「そこへ戻るのか……」
「戻るよ」
クリスが二人を見ながら笑う。
「フェルト、強くなったねえ」
「レイナス相手ならこれくらいでいいって分かったから」
「教育方針を間違えた気がするな……」
「誰のせい?」
「……俺かな」
「正解」
◇
再建拠点・医療区画前
簡単な検査を終えた沙慈は、廊下の椅子に座っていた。
他の収容者たちも順番に診察を受けている。
足音。
顔を上げる。
刹那だった。
「刹那」
「ああ」
沙慈はしばらく黙っていた。
「……どうして?」
刹那が見る。
「どうして、ソレスタルビーイングなんかに……」
助けてもらった。
それは分かっている。
だが、目の前の少年が五年前に世界を揺るがした組織の一員だった。
その事実は簡単には飲み込めない。
「僕は……」
警報が鳴った。
二人が同時に顔を上げる。
『全員、戦闘配置!』
スメラギの声が施設内へ響く。
『接近する艦艇及びMS部隊を確認!』
刹那の表情が変わる。
「ここにいろ」
「刹那!」
刹那は走り出した。
沙慈はその背中を見る。
また戦いが始まる。
そして刹那は、迷わずその中へ向かっていった。
◇
再建拠点・中央管制室
大型モニターへ敵影が次々と表示される。
アロウズ。
収容施設から撤退した部隊だけではない。
増援を伴っている。
クリスが端末を操作する。
「数、多いよ!」
フェルトも索敵情報を確認する。
「GN-X III多数。後方に艦艇もいる」
スメラギは戦力表示を見る。
この施設は秘匿を前提とした再建拠点。
長時間の防衛戦を想定していない。
しかも最奥では、未完成のプトレマイオス2を建造している。
ここを失えば、四年間積み上げてきた再建計画そのものが大きく後退する。
「セラヴィーを出して」
『了解』
ティエリア。
「アステリオンも」
通信が繋がった。
『了解――と言いたいところだが』
レイナス。
『今日二回目だぞ』
スメラギが眉を寄せる。
「嫌なの?」
『まさか』
一拍。
声の温度が変わる。
『仲間の帰る場所に手を出されて黙ってるほど、俺も行儀よく育っちゃいない』
『きっちり追い返してくる』
スメラギが僅かに笑う。
「頼んだわ」
『任せろ』
そこで終われば格好がついた。
『ただし、終わったら明日は休みにしてくれ』
スメラギが目を閉じる。
「……考えておくわ」
『よし。俄然やる気が出てきた』
通信が切れた。
クリスが呟く。
「途中までは格好よかったのに」
フェルトが端末を操作したまま答える。
「いつものレイナスでしょ」
「慣れたねえ」
「何年も一緒にいるから」
◇
第一格納区画
アステリオンのカメラアイが光る。
レイナスが操縦桿へ触れる。
先ほどまで乗っていたGN-X IIIとは違う。
入力した瞬間、機体が意図を先読みするように応える。
自分のために造られた機体。
「やっぱり自分の席が一番だな」
固定アームが外れる。
正面ハッチが開く。
その向こうには宇宙。
そして敵。
「人ん家まで押しかけてきたんだ。茶くらい出してやるのが礼儀だろ」
アステリオンが発進位置へ入る。
レイナスが笑う。
「熱湯しかないけどな!」
アステリオンが射出された。
◇
第二格納区画
刹那が走り込む。
そこに00ガンダムが立っていた。
両肩には二基のGNドライヴ。
ツインドライヴシステム。
二基の太陽炉を同調させることで、従来とは桁違いの粒子生成量を得る。
理論は成立している。
だが、現実には一度も安定稼働していない。
これまで複数の組み合わせを試した。
どれも必要な同調率には届かなかった。
イアンが端末から顔を上げる。
「刹那!」
「00を出す」
「無理だ!」
即答だった。
「ツインドライヴが安定してない! 今出したところでまともに動かん!」
「エクシアのGNドライヴを使う」
イアンの手が止まる。
刹那は00を見上げた。
「まだ試していない」
エクシアのGNドライヴ。
イオリアが残したツインドライヴに関するデータとの関連が疑われ、最後まで保留されていた一基。
イアンも00を見る。
警報が続いている。
外ではセラヴィーとアステリオンが戦闘に入った。
時間はない。
「……分かった」
イアンが端末を叩く。
「やるぞ!」
◇
再建拠点外周
アステリオンが敵部隊へ突っ込んだ。
一機。
二機。
さらに後方。
数が多い。
レイナスがライフルを撃つ。
GN-X IIIが回避。
その進路へセラヴィーの砲撃が走った。
「いい連携だ!」
『当然だ』
「五年前ならもう少し可愛げがあったぞ!」
『記憶を捏造するな!』
「そうだったか?」
ビームが飛来する。
アステリオンが急降下。
光が頭上を通り過ぎる。
そのまま敵の懐へ飛び込んだ。
「悪いな!」
斬撃。
GN-X IIIの腕が飛ぶ。
右から二機。
さらに上方から三機。
「随分と大所帯で来たな!」
敵の狙いは明確だった。
アステリオンやセラヴィーとの撃破戦ではない。
再建拠点への突破。
「新居が完成する前に仮住まいまで壊されたんじゃ、さすがに笑えないぞ!」
『レイナス、左!』
フェルトの声。
「見えてる!」
アステリオンが反転。
一機を蹴り飛ばす。
二機目のライフルを斬る。
三機目が抜けた。
「チッ!」
セラヴィーが砲撃。
敵機が回避する。
レイナスが追おうとする。
だが、その前へ新たなGN-X IIIが三機入った。
進路を塞ぐ。
『数で押し切るつもりか』
ティエリア。
「だろうな」
レイナスの目から笑みが消える。
この先には仲間がいる。
未完成のプトレマイオス2もある。
ここから先へは通せない。
「ティエリア」
『何だ』
「ここは通すな」
『言われるまでもない』
レイナスが操縦桿を握り直す。
アステリオンの装甲表面へ青白い光が走った。
《アニマ》。
機体全体を包み、出力と反応速度を引き上げる。
「じゃあ、もう一踏ん張りだ!」
アステリオンが敵部隊へ突っ込んだ。
◇
第二格納区画――00ガンダム
二基のGNドライヴが回転を始めた。
一基。
そして、エクシアから受け継いだ一基。
左右から放出されたGN粒子が、00の内部を巡る。
『同調率、上昇です!』
ミレイナの声。
数値が上がる。
これまでの組み合わせより明らかに高い。
だが――止まった。
『……駄目です! 安定領域まで届かないです!』
イアンが端末を睨む。
「くそっ……エクシアのドライヴでも足りんのか!」
二基とも正常。
組み合わせも悪くない。
それでもツインドライヴシステムが要求する同調領域には届かない。
外から戦闘音が通信へ流れ込む。
『一機抜けた!』
レイナス。
『僕が止める!』
ティエリア。
爆発。
刹那は計器を見る。
二基のGNドライヴ。
そして、システムの一角に表示された文字。
TRANS-AM。
「……トランザム」
イアンが顔を上げる。
『刹那?』
「トランザムを使う」
「何だと!?」
刹那は操作系へ手を伸ばす。
「二基のGNドライヴを強制的に高出力状態へ移行させる」
イアンにも意味は分かった。
通常出力で同調領域へ届かない。
ならばトランザムで二基の粒子生成量を一気に引き上げ、その領域へ押し込む。
だが、まだ一度も正常起動していないシステムだ。
「待て! ツインドライヴはまだ安定してない! その状態でトランザムを使えば何が起きるか分からんぞ!」
「やる」
刹那に迷いはなかった。
五年前。
エクシアに乗り、世界を変えようとした。
だが世界から戦争は消えなかった。
歪みは形を変え、今も残っている。
同じことを繰り返すためではない。
その先へ進むために。
「俺たちは――」
刹那が前を見る。
「変わらなければならない」
システムを起動する。
「トランザム!」
00ガンダムが赤く染まった。
二基のGNドライヴが一気に回転数を上げる。
膨大なGN粒子が噴き出した。
『粒子生成量、急上昇です!』
ミレイナの声が弾む。
『同調率も上がってるです!』
「何!?」
イアンがモニターを見る。
止まっていた数値が再び動き始める。
70。
80。
90。
二基のGNドライヴから生み出される粒子が干渉する。
そして――増幅。
イアンの表情が変わった。
単純な二基分ではない。
「これが……ツインドライヴ……!」
『安定領域に到達!』
二基の回転が重なる。
瞬間。
00ガンダムから膨大なGN粒子が噴き出した。
格納区画が光に包まれた。
ツインドライヴシステム。
ついに起動した。
◇
再建拠点外周
敵機を斬り払ったレイナスが振り返った。
「……何だ?」
再建拠点から赤い光が漏れる。
見覚えがある。
「トランザム?」
ティエリアも反応した。
『00か!?』
だが次の瞬間。
レイナスの表情が変わった。
センサーの粒子量が跳ね上がる。
「……待て」
一基のGNドライヴではあり得ない。
二基分ですら説明がつかない。
数字がまだ上がる。
「おいおいおい……」
思わず声が漏れた。
「何だ、この粒子量……!」
赤い光の中から、一機のガンダムが姿を現す。
00ガンダム。
両肩に二基のGNドライヴ。
それぞれから放出された粒子が互いに干渉し、機体の周囲を埋め尽くしている。
レイナスは敵がいることすら一瞬忘れた。
「本当に動かしたのかよ……!」
ティエリアも00を見る。
『ツインドライヴ……』
「二つ積んだら二倍って話じゃないな、これ!」
00が発進位置へ入る。
レイナスの目が輝く。
「……いいな」
『レイナス』
「俺もああいうの欲しい」
『アステリオンがあるだろう!』
「分かってるよ!」
『完成してまだ二年程度だぞ!』
「欲しいって言うくらいタダだろ!」
『そういう問題ではない!』
「新型見て欲しくならない方がおかしいだろ!」
『お前だけだ!』
「そんなわけあるか!」
通信へフェルトが割り込む。
『レイナス』
「何だ?」
『前』
「前?」
警報。
レイナスが振り返る。
目の前にGN-X III。
「うおっ!?」
アステリオンを急旋回。
ビームが鼻先を掠めた。
『戦闘中』
「……はい」
『新型見るのは後にして』
「ごもっともで」
ティエリアが呆れた声を出す。
『締まらない男だな』
「俺だって今ちょっと反省してるよ!」
その時。
00の両肩からGN粒子が噴き上がった。
レイナスも今度こそ黙る。
新しいガンダムが宇宙へ踏み出す。
『00ガンダム』
刹那の声。
『刹那・F・セイエイ――出る!』
00が加速した。
一瞬でアステリオンの横を抜けていく。
「速っ……!」
レイナスが反射的に機体を向ける。
だが、すぐに笑った。
五年前とは違う。
エクシアでもない。
新しい刹那のガンダム。
「主役は遅れてやってくる、か」
一拍。
「……俺も一回くらいやってみたいな、それ」
『今やる話か!』
「こういうのはタイミングが大事なんだよ!」
00ガンダムが敵部隊へ飛び込む。
二基のGNドライヴが生み出す圧倒的な粒子の光が、暗い宇宙を鮮烈に染め上げた。