境界のアルカナ・コード 〜隣ん家の子が何か主人公っぽいんだけど、もしかして俺は師匠枠なの?〜 作:夜月詠
手札に目を落とす。今、僕が手にしているカードは【聖竜レイ】【断崖竜クェイク】【護竜アクア】【竜契師キキョウ】【竜契術"竜血"】の計5枚。そのいづれもが、残りの1マナで
最低でも【フレイム】や【竜血】の2マナ必要だ。
故に、此処は一端のターンエンドを行うしかない。
「僕はまだまだ戦える。まだ、詰めには及ばないよ……!」
ターンチェンジ。これから輝堂さんの4ターン目が始まる。
彼女の手札は5枚。おそらく【
【ルビー】【サファイア】【エメラルド】【トパーズ】だ。
これまでに2枚、1枚、2枚、2枚ずつ消費している為、どれを引いていてもおかしくないし、全て手札に持っているかも知れない。
──いや、【ダイヤモンド】に【クリスタル】もまだあるし、【アレキサンドライト】に至ってはまだ1度も見ていない。
記憶の限り【輝石兵】
【破魔の矢】と言った汎用カードを積んでいる以上、【輝石兵】術式を3種4枚ずつ積んではいない筈だし、汎用カードに気を配り過ぎる必要は無いだろう。
踏み倒しを多用する【輝石兵】の都合上、【輝石兵】ユニットは多い方が良い。よって、彼女のデッキに存在する【輝石兵】は全て4
手札補充&
「ふん。運は良いのね。それともデッキ構築かしら。──メインフェイズ。3マナ支払い、詠唱術式【輝石兵法:撤退術】を発動するわ」
輝堂キセキ :CHANT : MANA 1/4
◆輝石兵法:撤退術
COST:3 種別:詠唱術式
墓地に存在する名前の異なる【輝石兵】を1枚ずつ手札に加える。この効果を発動したターン中、自分はユニットを場に出せない。
輝堂キセキ :5→11
「そしてターンエンド。言っておくけど、次の2ターンで私の勝ちよ。見なさい──」
そう言って、輝堂さんは手札の中から1枚のカードを僕に見せてきた。カードの効果処理では等では無い、慢心からくる行いだ。
公開した所で何のメリットも無い。
「輝堂の力をもってしても、1枚しか手に入れられなかったレアカードよ。効果は当然、知っているでしょう?」
──それは、1枚の、焔を描いたカードだった。
ページを左右に開いた魔導書。その中央から立ち昇る紅蓮の焔。そのカードはあまりにも有名な──人類史に名を刻み付けた
それは人類最強の
【代償詠唱】により、支払うべきマナをオドで代行して詠唱するその詠唱術式は『相手の場のカードを全て破壊されない効果を無視して破壊する』と云うシンプルながら極めて強力な効果を有している。デメリットとしてそのターン中ユニットを場に出せなくなるが、それにしても強力極まりない効果だ。
だが、それでもゲームは終わらない。彼女の勝利は定まらない。【輝石兵】は展開能力に優れ、【突撃陣形】という強力な強化術式も持っているがそれでも【神速】──召喚酔いを無視してプレイヤーを攻撃できる能力──は持っていない。
「そして、【輝石兵法:突撃陣形】」
コスト6。詠唱術式【輝石兵法:突撃陣形】。その効果は──
「効果は単純。自分の【輝石兵】全ての
◆輝石兵法:突撃陣形
COST:6 種別:詠唱術式
自分の場に存在する全ての【輝石兵】のATKを+1する。ターン終了時、自分の場のユニット全てはゲームから除外される。
「次のターンで私は下級【輝石兵】を5枚召喚して、手札の【輝石兵】全てを場に出す。そうして、再び私にターンが帰ってきた瞬間、【代償詠唱】で全ての護りを焼き払い、【陣形突撃】の強化が乗った一斉攻撃で貴方のオドを0にしてあげる」
やはり、召喚酔いを無視する方法は無いらしい。ならば、この手札公開と宣言は──
「【竜骸の息吹】か、【崩れ落ちる足場】。4枚ずつ、なんて事はないでしょうし──2枚ずつ、といった所かしら。コトハ君、貴方に引けるのかしらね」
ターンチェンジ。僕のドローフェイズ。配布されたドローカードを確認する前に、祈る様に思考を整理する。
──【竜骸の息吹】に【崩れ落ちる足場】を
しかし、ドローソースの【竜契術"竜血"】があるとはいえ、どちらも2枚しかデッキに入っていない。
壁ユニットを出したとて、彼女の【裁きの章】によって焼き払われる。
理想は此処でそのどちらかを引き当てる事。
次善は【竜系術"竜血"】によって、そのどちらかを引き入れる事。──山札の残り枚数的に、そう悪い賭けでは無い。【竜血】は4枚採用だ。最悪、【竜血】からの【竜血】で引き当てに行けるだろう。
──ドローカードは、【竜王ファフニール】。
1枚採用の、このデッキのフィニッシャー。
「メインフェイズ、【竜契術"竜血"】を発動! 手札の"種族:ドラゴン"──【断崖竜クェイク】を捨てて、2枚ドローする!」
詩式コトハ :CHANT 6→6:MANA 3/5
引いたカードは【駆竜ウィンド】と【破魔の矢】。
最悪だ。対応札のどちらかどころか、【竜血】すら引けなかった。
「3コスト、【護竜アクア】を召喚……!」
詩式コトハ :SUMMON 6→5:MANA 0/5
◆護竜アクア
種族:ドラゴン 属性:水
COST:3 ATK:1 DEF:5
常在:【守護者】
現れたのは、蒼い竜だ。首の長く、首長竜の様な鰭所の四つ足を持つその竜はちらりとこちらを向いて嘶くと、僕の周りの空間をぐるりぐるりと自在に遊泳し始めた。
苦し紛れの壁役の召喚。【裁きの章】に焼かれると分かってはいるが、今はこれしか対応できない。
「後1ターン。手札から、【輝石兵ルビー】【輝石兵サファイア】【輝石兵エメラルド】【輝石兵トパーズ】【輝石兵トパーズ】を召喚」
──そして【貴輝閃鉱】。
場に並んだ数多の【輝石兵】。召喚酔いによって攻撃を禁じられた輝石の騎士達が、アクアによって護られたぼくをジロリと睨んで各々が手にした槍をゆらりと揺らめかせた。
「僕のターン。スタート、ドロー……」
──最後のターン。
引き当てたカードの名は【竜の献身】。相手の直接攻撃に対して反応できる、反応術式。そして、逆転に繋がるカードの一つ。
アイカ兄ちゃんがこのデッキの中核に据えていたコンボを達成する為のカードは既に揃っている。後は、次のターンの猛攻を凌ぐだけだ。
場にあるユニットは
僕の残り
【破魔の矢】でクリスタルを倒し、ダイヤモンドの片方を【竜の献身】で防げば2だけ残る。
それに必要なマナは2。よって、このターン中に使えるマナは4──
「──【聖竜レイ】を召喚! 効果によりマナを増やす!」
詩式コトハ :SUMMON 6→5:MANA 3/7
◆聖竜レイ
種族:ドラゴン 属性:光
COST:4 ATK:2 DEF:4
召喚時:マナ上限値を1増やす。増やしたマナは、このターン中使用できない。
常在:【守護者】
六枚の翼持つ、天使の如き白竜が降臨し、その翼をばさりと広げる。その羽1枚1枚が振りまく光は、辺りを優しく照らし出して、神聖な気配を振りまいていた。
「……残念。私の勝ちね」
輝堂さんのターン。指揮棒の様に腕を振るう彼女に付き従って、無数の【輝石兵】達が武器を構えた。