毒蛇は10年後のドルフロ世界へ 作:チキンスネーク
1995年、アウターヘイヴン。
南アフリカ・ガルツバーグ付近に設立された武装要塞国家は一人の若き兵士の手によって崩壊の時を向かえていた。
サイレンが鳴り響くアウターヘイヴンの基地の中で一人の男が最後の時を迎えようとしていた。
額に角の様な破片が刺さり、左腕が義手の男、ヴェノムスネーク。
BIGBOSSの影武者であり、もう一人のBIGBOSSと称された兵士である。
「終われば呆気ないものだな……」
ヴェノムはそう自虐的に笑い、BIGBOSSの影武者としての長い任務を終え、最後の時を静かに待っていた時だった。
ヴェノムの前に一人の女性が現れ、ヴェノムは女性を見て力なく微笑む。
「迎えに来てくれたのか……」
ヴェノムはそう呟くと女性はヴェノムの頬を優しく撫で、ヴェノムは力を無くしていく。
「そうだな……もう、銃は……持たなくて良いのか……」
ヴェノムはそう言って目を静かに閉じた時、アウターヘイヴンは自爆装置の定められた時間通りに爆発、事実上、アウターヘイヴンは崩壊した。
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ヴェノムは目を覚ました。
鈍い重さを身体で感じながら周りを見渡すと設備が整った病室の様な場所にいた。
「此処は……?」
自爆でアウターヘイヴン諸とも消え去った筈の自分が何故、生きて病室で寝ているのか分からずにいると病室に入ってくる者がいた。
ヴェノムの視線はまだボヤけていて誰なのか分からずその人物に視線を向けているとその人物は驚いた様子を見せて手にしていた物を落っことした。
「目を覚ましたんですね!指揮官!しきかーん!目を覚ましましたよぉ!」
その人物はヴェノムを見て興奮気味に言いながら駆け出して行ってしまった。
置いていかれたヴェノムは漸く身体を動かす気力を得るとゆっくりと身体を起こして寝かされていた医療用のベットに腰掛けた所で複数の人間が入ってきた。
その人間達は三人で全員が女だった。
赤いジャケットを着たピンク髪の女、長い髪を結んだ冷静そうな女、そして何処か幼さを残している中国系の女の三名だ。
「あッ!?駄目ですよ!まだ寝ていないと!」
中国系の女がそう言ってくるもヴェノムは軽く断る。
「いや、大丈夫だ。寧ろ身体を起こした方が気分が良い。それよりも俺を此処に運んだのはお前達か?」
ヴェノムはそう聞くとピンク髪の女が責任者なのか前に出て頷く。
「えぇ、そうよ。私達がこのエルモ号で移動している時に砂地のど真ん中で貴方が倒れてたのよ。貴方は何処の兵士なの?」
「何処の兵士?」
ヴェノムは砂地のど真ん中で倒れていたと言うのにも訳が分からないのに何処の兵士なのかと聞かれて首を傾げた。
自分の肩には所属を示す腕章があり、嘗てはダイアモンド・ドックズの腕章だったが今はアウターヘイヴンの腕章になっている。
それを見て分からないとなると軍とは何も関係ないのかとヴェノムは考える。
「一応、所属を示す腕章は付けているが?」
「分からないわね。アウターヘイヴン……聞いた事がないわね。着ていた戦闘服も他のPMCでは見た事がない。貴方はどうして彼処で気を失っていたの?衰弱してたから遭難か何かと思うのだけど」
「衰弱?それだけか?」
「それだけって?」
ピンク髪の女はそれ以外に何があると言わんばかりの表情だった。
ヴェノムは身体を見てみると確かに戦闘でおった傷がなく寧ろ、ダイアモンド・ドックズで活動していた時期くらいまで若返った気分だった……いや、明らかに若返っている。
ヴェノムはどうなっているのか分からずにいると冷静そうな女性がピンク髪の女に話し掛ける。
「指揮官。彼は何かしら訳ありみたいよ。どうするの?」
その言葉はヴェノムの処遇を求めるものだった。
やってきた事を思えば報いなのだとヴェノムは分かるのだが訳も分からないまま命を取られ兼ねないなら抵抗するつもりだった。
ヴェノムの義手に力が入ってくる中、ピンク髪の女は頭をかきむしった所で処遇を伝えた。
「確かに訳ありかもしれないわね。流石にほっとけないし集落に行くまでにどうしたいのか決めて貰いましょう」
その言葉は処刑でも拘束でもなく、保留とも取れるものだった。
「良いのか?俺が得たいの知れないのは分かっているのだろ?」
「えぇ、そうね。でも助けておいてどうこうするなんてしないわよ。それに貴方は私達から仕掛けない限りおかしな真似をするとは思えない」
「だから置いておくと?」
「此処で置いてきぼりにしてもまた倒れるだけでしょ?なら、目的地の集落に着くまで乗っていてくれた方が此方も目覚めが良いわ」
ピンク髪の女のその言葉にヴェノムは何処かBIGBOSSを重ねた。
戦地で敵として対峙し、回収した兵士達が忠誠を誓って仲間になった様に目の前のこの女はそのカリスマ性に近い何かを持っているのがヴェノムでもよく分かった。
「私はジャンシアーヌよ。このエルモ号の指揮官をしているわ。此方にいるのが整備士のメイリンと人形のグローザよ」
「人形……?」
ヴェノムは人形と言う単語に聞き覚えがなく、疑問を抱きつつも自分はどう名乗ろうかと思考を凝らす。
メディック、ヴェノムスネークそしてBIGBOSS。
何れも本当の名前ではないし、人ならしくない。
嘗ての本当の名前は既に覚えていない。
暫く考えたヴェノムは結論を出す。
「エイハヴと呼んでくれ」
それは嘗て与えられた影武者としての最初の
何れも必要を無くした名前であり、ヴェノムことエイハヴにはとうの昔に過去のものとなっていた故の判断だった。