毒蛇は10年後のドルフロ世界へ 作:チキンスネーク
ジャンシアーヌ達に拾われたエイハヴは移動する基地と呼べるエルモ号でジャンシアーヌ達が言っていた集落を目指した。
エイハヴ自身、役目を終えた以上はヴェノムスネークやBIGBOSSとして生きるつもりは無く、また新たな生き方も知り、得る為にも人のいる場所にいた方が良いのだろうと考え、ジャンシアーヌ達とは短い付き合いで終わるだろうと考えていた。
だが、その結果はエイハヴが考えているよりも気が楽になる様なものにはならなかった。
エイハヴ達が集落に来たのだがそこは黒煙が立ち上ぼり、怪我人や死者が大勢いた。
「これは……」
「指揮官。もしかしたらヴァリャーグに襲われたのかもしれない」
「ヴァリャーグ?」
「知らないのエイハヴ?ヴァリャーグは人や集落を襲う盗賊の様な奴等よ。この集落が此処まで酷い有り様にされたとしたら襲撃。略奪の跡もあるからヴァリャーグの仕業と見ても良いわ」
ジャンシアーヌの説明にエイハヴは予想以上に物騒な場所だと考えていると怪我をした集落の人間が足を引き摺りながらエイハヴ達の前へ来た。
「あ、あんたら賞金ハンターか?頼む……怪我人を見てやってくれないか……十分な報酬は用意できないと思うが頼む……」
集落の人間はそう言って痛みを覚えたのか体勢を崩し、それをジャンシアーヌが支えるとグローザに指示を出した。
「グローザ。エルモ号から医療用具を持ってきて。出来るだけの事をするわ」
「分かったわ。でも、指揮官とエイハヴさんを残しては……」
「私だって自分で身を守る手段くらいはあるわ。エイハヴは?」
ジャンシアーヌに言われてエイハヴはバックパックを漁ってみるとAM D114があり、マガジンを抜いて見れば弾もあった。
エイハヴは問題なく使えるか入念に確認した後、ホルスターにしまった。
「大丈夫だ。俺も手伝おう。治療には人が多い方が良い」
「ありがたいけど経験はあるの?」
「これでもメディックだった。ブランクはあるがやり方は忘れた事はない。一通りの道具があれば大抵の治療は行える」
エイハヴのその言葉にジャンシアーヌは頷くとグローザは少し迷いながらもエルモ号に治療用具を取りに走った。
そこからエイハヴは忙しくなった。
かなりのブランクがあるとは言え、エイハヴのメディックとしての腕と知識は衰えていなかった。
寧ろ、暗示で強制的に忘れさせられていた事が幸いしたのか衰えすら見えない。
エイハヴは次々に集められる負傷者達を治療した。
「先生!この子を!この子を助けて!」
「分かった!この患者の治療はすぐに終わる!それまで待て!」
「先生!お、俺の腕が!」
「撃たれてはいるが死にはしない!止血して待っていろ!」
重傷者と軽傷者とエイハヴは判別しながら治療を行っているとグローザがやって来た。
「エイハヴさん!医療道具の消毒は済ませたわ!それと新しい包帯よ!」
「助かる!」
エイハヴはグローザが持ってきた物を受け取り、治療を行う。
暫くして今度はジャンシアーヌと動ける集落の住民が一人の男を抱えて駆け込んできた。
「エイハヴさん!この人、危篤よ!」
「そこへ寝かせろ!」
エイハヴの指示した場所へジャンシアーヌ達は患者を寝かせるとエイハヴは患者を見てこのままでは危険だと判断した。
「このままじゃ不味い!麻酔をしたいが間に合わん!無しで回復する!」
「無しで!?」
「そうだ。ジャンシアーヌ!それとそこのお前!押さえているんだ!」
エイハヴはそう指示し、ジャンシアーヌは少し躊躇するもすぐに押さえ、近くにいた集落の住民の男も加わって押さえる。
エイハヴは緊張を覚えながら麻酔の無い患者の負傷箇所へメスを入れた。
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数時間後。
集落での治療を終えたエイハヴは久しぶりの緊張と疲れを感じながら近くの瓦礫に座っていた。
「お疲れ様、エイハヴ。貴方がいてくれて助かったわ」
「いや、大した事はしていない。何人かは助けられなかったからな」
「それでも集落の人達は貴方に感謝しているわ。貴方が懸命に治療してくれた事で助かった命もあるのだから」
ジャンシアーヌのその言葉にエイハヴは苦笑いするとグローザがやって来た。
「指揮官。負傷者の収容が終わったわ」
「ありがとうグローザ。それより今回の襲撃はやっぱり……」
「ヴァリャーグよ。話を聞いたのだけど私達が来る前の昨夜に夜襲を掛けられて死傷者を出して物資を奪われたそうよ。幸いな事に持ち直せる分の物資は隠し通したみたいだけだヴァリャーグがもう来ないとは限らないわ」
「そうね。奴等は貪欲よ。放っておけばまた襲われるでしょうね」
ジャンシアーヌはどう対応しようかと考えていた時、近くで騒ぐ者達がいた。
「止めろ!そんな状態で行っても死にに行くようなもんだぞ!」
「離せ!俺の娘が彼奴らに拐われたんだ!彼奴は俺に残された唯一の宝なんだ!」
「助けるって腹を撃たれたんだぞ!命は助かってもそんな状態で行く奴があるか!」
そんな会話が聞こえ、ジャンシアーヌ達は騒いでいる集落の住民達の元へと行くと取り押さえられながらも必死に振り離そうとしていた腹部に包帯を巻く男がジャンシアーヌ達を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
「あんた!助けてくれた事は本当に感謝する!だが、もう一つ!もう一つだけ手を貸してくれ!俺の娘を!俺の娘を奴等から……ゴホゴホッ!」
懇願する男は咳き込み、血を吐くと回りで取り押さえていた者達が驚いて騒ぐ。
「言わんこっちゃない!傷が開いたりしてないか!?」
「早くこいつを運ぶんだ!」
男は他の集落の住民達に連れられて奥へと戻って行くと残された集落の住民がジャンシアーヌ達に視線を向けて申し訳なさそうに頭を下げる。
「申し訳ない。彼奴は妻を亡くしてから娘と二人で暮らしていたんだ。だが、ヴァリャーグの襲撃で何人かの住民は連れ去られてしまって……我々としては悔しいですが我々にはこれ以上の報酬は出せません。ですので気にしないで頂きたい」
「気にするなって言われても連れ去られた住民達は?」
「大方、我々に対する人質か闇市に売りに出すのでしょう。このイエローエリアは生きるのに厳しい場所です。諦める事も必要なのです」
集落の住民はそう言って力無く去っていく。
ジャンシアーヌはその後ろ姿を悲しげに見ているとグローザがジャンシアーヌに声を掛ける。
「指揮官。連れ去られた住民の事をこのままにするの?」
「……私達には奪還する為の戦力が無いわ。いくらグローザが強くても多数のヴァリャーグを相手にして更に人質を抱えているなら厳しいわ」
ジャンシアーヌはそう言って悩む素振りを見せ、決断を迷っていた。
エイハヴはそんなジャンシアーヌを見て、何処か放ってはおけず再び戦場に立って戦う意思を抱く。
「俺が行く」
エイハヴのその言葉にジャンシアーヌとグローザは視線をエイハヴに向けた。
「ヴァリャーグの拠点に行き、住民を取り戻す」
「無茶よ。たった一人で住民を助けるなんて。それに助けられたとしてもヴァリヤーグからの報復があるわ」
「報復か……」
報復。
嘗て、エイハヴも報復と言う言葉に囚われた一人として思い返す。
スカルフェイス率いるXOFにMSFのマザーベースを破壊され、仲間を殺された怒りや憎しみ。
仲間を売った疑惑を持つヒューイへの失望。
パスやチコを助けられなかった悔しさと哀しみそして後悔。
それらの感情と言葉がエイハヴに重く突き刺さりながらもエイハヴは再び銃を手にする事を止めなかった。
「なら報復も出来ない程の損害も与える。俺も考えなしで向かったりはしない」
「だとしても……」
「必ず帰ってくる。任せてくれないか?」
エイハヴのその言葉にジャンシアーヌは長く迷いを見せたが覚悟を決めたのかエイハヴに視線を向けて考えを伝える。
「分かったわ」
「指揮官!」
「分かってるわグローザ。私だってたった一人に向かわせるなんて馬鹿げてるって思うわ。でも……貴方ならたった一人でもやり遂げられるって何故か信じられる。そんな気がするの」
ジャンシアーヌはそう言ってエイハヴを見る。
エイハヴのその見る目は鋭く、エイハヴが只の兵士ではない事を何処か悟った様なものだった。
「だからと言って何もしない訳ではないわ。バックアップはする。必要な物を言って頂戴。用意させるわ」
「助かる」
エイハヴは短くそう返すと出撃の為の準備に取り掛かった。