毒蛇は10年後のドルフロ世界へ   作:チキンスネーク

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混沌の演緯
ヴァリャーグの襲撃


エイハヴがエルモ号の医療担当及び唯一の人間の戦闘員として迎えられてから時は流れた。

 

エルモ号で各地を移動しては仕事や面倒事、時折やらかすジャンシアーヌのドジに巻き込まれながらもエイハヴは自身の役目を果たしながら今いる世界について学んでいた。

 

第三次世界大戦、コーラップス汚染、そして戦術人形。

 

エイハヴが今いるこの世界を知れば知る程に過去にいた世界とは遥かに異なる程の進歩した技術と変わり果てた戦争の形式に戸惑いを覚えつつもそれらに目を反らさずに一通りに歴史と今いる世界の最低限の常識だけは身に付けた。

 

エイハヴがエルモ号に来て間もない頃、グローザと任務に出た際にヴァリャーグとの戦闘でグローザは掠り傷ではあったが負傷した。

 

その際にエイハヴが傷を見た時、機械の部品が体にあった際は心底驚いたのだ。

 

戦闘が終わって戻った際にそれをジャンシアーヌに話すとグローザは戦術人形と呼ばれる所謂、ロボットだと初めて知り、ジャンシアーヌに今まで気付かなかったのかと首を傾げられたしまったのはエイハヴの良い思い出だ。

 

戦術人形の台頭で戦場の戦士達の在り方も変わったのかと思えば戦術人形が全てを取って変わった訳でもなく普通の人間の兵士もいるらしい。

 

何でも10年前に起きた鉄血工造の戦術人形が反乱を起こした事で全ての戦力を戦術人形に置き換える事を危険視されたとか単純に予算が高過ぎると言う観点から人間の兵士の需要は今もあるそうだ。

 

エイハヴは知れば知る程に変わり果てた世界に複雑な思いを抱きつつ、今を生きようと前を向いて仕事に取り組んでいた時、医務室の自動ドアが開いた。

 

「エイハヴいる?」 

 

「どうしたキャロリック?」

 

エイハヴの元に来たのはエルモ号の新人であるキャロリックだ。

 

キャロリックは剣を使う近接主体の戦術人形であり、勝ち気な兎(ウサ耳はキャロリックの趣味)だ。

 

「ちょっと忘れたの?格闘戦の訓練に付き合ってくれって話したじゃない」

 

「もうそんな時間か?すまない。必要な医療品を纏めていて時間を忘れていた」  

 

「全く……まともに格闘戦の訓練を出来るのはあんただけなんだから忘れないでよ」

 

キャロリックはそう言って少し拗ね、エイハヴは苦笑いする。

 

エイハヴはキャロリックに格闘戦、CQCの訓練を着けていた。

 

近接戦闘を主体とするキャロリック相手にグローザともう一人のメンバーは相手にならない訳ではないが戦闘スタイルが根本的に違う為、キャロリックが満足する訓練にはならないのだ。

 

その為、キャロリック個人の訓練や部隊全体の近接戦闘での訓練ではエイハヴが指導する事も仕事となった。

 

最初こそ戦術人形と生身の人間での近接戦闘に心配されたがエイハヴがキャロリックとの模擬戦の際にカウンターを決めて見事な背負い投げを見せた事で評価を上げ、指導するに値する事を示したのだ。

 

その日以来、合間を縫ってキャロリックがエイハヴに訓練を着けてくれる様に頼みに来る様になり、エイハヴも断る理由もないので付き合っている。

 

「すまないな。必要な物は既に纏めた。行くとしよう」

 

エイハヴはそう言って立ち上がった時、エルモ号が大きく揺れた。

 

エイハヴは咄嗟に近くの机に掴んで転けずに済むがキャロリックは盛大にスッ転んだ。

 

「大丈夫か?」

 

エイハヴは転んだキャロリックの腕を掴んで起こすとキャロリックは頭を押さえながら痛そうな顔を見せる。

 

「頭を打った……いや、それよりも何が起きたの!」

 

「わからん。だが、只事ではないな」

 

エイハヴはそう言ってAM D114を手にした時、医務室の自動ドアが開かれたと思いきや入ってきたのはヴァリャーグの達だった。

 

ヴァリャーグの突然の侵入と襲撃は余りにも予想外な事態だった。

 

エイハヴは一瞬、反応が遅れ、構えるのが遅くなってしまいヴァリャーグの銃口がエイハヴに向けられ撃たれようとしていた。

 

「エイハヴ!」

 

その時、キャロリックが咄嗟にエイハヴを庇い撃たれてしまった。

 

「キャロリック!」

 

エイハヴはキャロリックが倒れるのを見てすぐにヴァリャーグ達を倒すとキャロリックの安否を確かめる。

 

撃たれたキャロリックは機能を停止しており、エイハヴは無理だと判断してキャロリックを置いてエルモ号に侵入したヴァリャーグを相手に戦闘を開始した。

 

ヴァリャーグ達はエルモ号に入り込んでから何かを探す素振りを見せつつ、エイハヴの存在に気付いては発砲してきた。

 

ヴァリャーグの応戦にエイハヴは冷静に対象し、エルモ号内部にいたヴァリャーグ達を倒していく。

 

「こ、こいつ化け物か!?」

 

「おい!目的のもんは手に入れた!ズラかるぞ!」

 

ヴァリャーグ達はエイハヴの強さに恐れを抱きながら目標を達成したのか逃げていく。

 

エイハヴは警戒しつつそれを見届けていると走ってくる音が聞こえ、エイハヴは咄嗟にAM D114を向けると現れたのはメイリンだった。

 

「わぁ!撃たないでくださいぃ!」 

 

「メイリン!無事だったか」

 

「は、はいぃ……空の燃料タンクに入って何とか……そ、それよりもネメシスさんが!」

 

「ネメシスもやられたのか!」

 

「え?ネメシスさんも?」

 

メイリンはその言葉の意味が分からないとばかりに困惑していたが徐々に理解してきたのか顔を青くしていく。  

 

因みにネメシスとはエルモ号の仲間でジャンシアーヌ達の旅の途中で何故か一緒に着いてきたエルモ号の狙撃主の戦術人形だ。

 

「ま、まさかキャロリックさんやグローザ隊長もですか!?」

 

メイリンのその言葉は絶望で溢れ、更に顔を青くする。

 

「グローザは分からない。だが、キャロリックが俺の代わりに撃たれた」

 

エイハヴはそう言って悔しげに顔をしかめた後、メイリンと共にエルモ号の司令室へと行くと大穴が空いており、その床では撃たれたグローザが倒れていた。

 

「ぐ、グローザ隊長!?」

 

「グローザもか……指揮官は?」

 

「あれ?え、えーと……エイハヴさん!指揮官がいません!それと今回の依頼の箱も!」

 

メイリンのその言葉にエイハヴはヴァリャーグの目的が何なのかを理解した。

 

「狙いはその箱と指揮官か。メイリン。グローザ達を起こせるか?」

 

「よ、予備の素体が無いかすぐに調べます!」

 

メイリンはそう言って慌ただしく駆けて行き、残されたエイハヴは壊されたエルモ号の司令室を見てジャンシアーヌの無事を祈った。

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______

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暫くしてメイリンがグローザとネメシスを連れて戻ってきた。

 

「エイハヴ。無事で良かったわ。メイリンから状況は聞いたわ。指揮官を助けないと」

 

「分かっている。その準備は俺の方でしておいた。キャロリックは?」

 

「依代無き沈黙」

 

エイハヴの質問にネメシスの意味は深そうだが訳が分からないその言葉にエイハヴは困っているとメイリンが代わりに答えた。

 

「それが運良く残っていた素体は二体だけでして……」

 

「指揮官の救出には一刻を争うわ。それに距離を大幅に取られているとなると長距離からの攻撃が出来るネメシスを優先するしか無かったの」

 

「そうか。仕方ない。俺から後でキャロリックに埋め合わせしておこう。今は指揮官の救出を優先する。行くぞ」

 

「わ、私はドローンエレベーターの様子を見てきます!あの爆発ですからもしかしたら壊れてるかも……そ、その時はすぐに直して向かわせますからどうか気を付けて行ってください!」

 

「わかった。その時のバックアップは任せる。頼むぞメイリン」

 

エイハヴはそう言ってグローザとネメシスを連れてジャンシアーヌの救出へ向かった。

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