毒蛇は10年後のドルフロ世界へ 作:チキンスネーク
ヴァリャーグの包囲に去らされたエイハブ達は戦闘を開始した。
エイハブ達は遮蔽物に隠れ、ヴァリャーグの接近に備えて迎撃の構えを取って待ち構える中、ヴァリャーグ達が射程に入った。。
「オラオラ!逃げられるもんなら逃げてみろ!」
「遮蔽物に隠れやがった!」
「とにかく足止めしろ!ボスが来たら箱を奪い取ってやる!」
ヴァリャーグ達は口々に言いながら近くの遮蔽物に隠れるとエイハブ達に発砲、エイハブ達も応戦を開始する。
互いに遮蔽物に隠れての戦闘となり、膠着状態になりつつある中、エイハブが手榴弾を投げた。
「ッ!?グレネード!」
ヴァリャーグが手榴弾の存在に気付いて叫んで逃げようとしたが間に合わず回りにいたヴァリャーグごと吹き飛んだ。
辛くも生き残ったヴァリャーグはグローザとネメシスは見逃さずに手榴弾によって遮蔽物に這い出てきたヴァリャーグを仕留める。
「クソ!あの角野郎……人形共だけしか戦力がいないんじゃなかったのかよ!」
「お、俺、噂で聞いたんだけどよ……俺達が束で掛かっても仕留められねぇ鬼がいるって聞いたんだ……」
「お、俺は周りに仲間がいたのにいつの間にか一人になってて視界の遠くで角を生やした男がいたって聞いた……」
「何だ!何が言いたい!」
「そ、その噂の奴が彼奴じゃないのか……?」
ヴァリャーグの一人の指摘に他のヴァリャーグ達は顔を青くし始めた。
ヴァリャーグの間で噂となっていた。
曰く、イエローエリアの荒れ地には鬼が出る。
曰く、鬼神の如き強さでいくら数が多くても逆に全滅させられたと。
曰く、仲間がいたのに角を生やした男が近くにいた事を目撃した日には仲間の殆どが行方知れずになったと。
何れもヴァリャーグ達いや、イエローエリアで広がる鬼の噂だった。
その鬼は当然、エイハブであるのは言うまでもない。
普段はエルモ号の医療担当ではあるがグローザ達、人形では対象が難しい任務や精密な潜入が必要な時はエイハブが進んで行っていた。
戦闘、潜入、救出と高い成果と痕跡をほぼ残さないエイハブに特徴的な角の情報を元にヴァリャーグを始め、イエローエリアで活動する他の勢力からもこう伝わっていた。
イエローエリアには神出鬼没の鬼が出ると。
鬼の名はイエローエリアに広がっていき、恐れ戦かれる事となった。
故にその噂を思い出したヴァリャーグ達の顔は一斉に顔を青く染め上げていく中、エイハブをチラ見する。
角がある。
互いに視線を交わしてもう一度だけチラ見する。
また仲間が吹き飛ばされた。
また視線を交わしてゆっくりとチラ見する。
目茶苦茶強い。
ヴァリャーグ達は何度もエイハブをチラ見してはまさかとばかりに否定するが頭では嫌でも理解してきた。
あれは紛れもなく噂の鬼なのだと。
「何で最初に気付かなかったぁ!?」
ヴァリャーグの虚しい悲鳴が響く中、エイハブはヴァリャーグを相手に押していた。
「エイハブ。更に増援が来るわ。弾はまだあるかしら?」
「あぁ、まだ余裕がある」
エイハブはそう言ってマガジンを変えた所でヴァリャーグのボスの怒鳴り声が響く。
「行け!箱を奪え!」
そんな指示が飛び、ヴァリャーグ達はエイハブ達からの思わぬ反撃に騒ぐが包囲はまだされたままだ。
「全く、穏やかじゃないわね……グローザ。そっちの状況は?」
「タイヤをやられたわ。低速での移動が限界よ」
グローザは戦闘の隙を見て軍用車の状態を見てタイヤがやられている事を伝えた時、再びヴァリャーグのボスの怒鳴り声が響く。
「この役立たず共!相手は数人だぞ!怯むな!掛かれ!」
ヴァリャーグのボスの怒鳴り声に臆していたヴァリャーグ達の攻勢が再び強まってくる。
「ドローンによる救援は?」
「メイリン曰く、エレベーターの修復に掛かる時間は概算不可だそうよ。ストームの干渉が強過ぎて通信が繋がらない。現在の状況は分からないわ。……指揮官、もう少し持ちこたえて頂戴」
状況は最悪に等しく、メイリンからのドローンの救援が無ければジリ貧となり、数の暴力でヴァリャーグに押さえる事になる。
「もう少し持ちこたえた暁には新しい指揮官を迎える事になりそうね」
ジャンシアーヌはそう悲観的に言った時、ヴァリャーグのボスの怒鳴り声がまた響いた。
「デカいのを持ってこい!奴らをさっさと片付けろ!」
ヴァリャーグのボスのその言葉が終わると同時に遠くから大きな音と地鳴りが響き、巨大な影が現れた。
「あれは……?」
ジャンシアーヌが目にしたもの、それは錆びた巨大な二足歩行兵器だった。
「改造機甲!大口径の火砲を搭載してるわ!今すぐ車両から離れるのよ指揮官!」
巨大二足歩行兵器を視認したグローザはそう叫ぶ。
大きな地鳴りを鳴らしながら近付いてくる二足歩行兵器を見たエイハブの警戒はピークを達した。
粗末なものではあるがメタルギアの様な巨大な機体であり、ジャンクパーツで構成されていると思われるが装甲は今のエイハブ達の武器では足りないのは明白だった。
「俺様の火砲の威力をとくと味わうといい!」
どうやらヴァリャーグのボスが自ら搭乗しているらしく、ヴァリャーグの車両を掻き分ける様に向かってくる。
搭載されている火砲をまともに受ければ一溜りもない。
エイハブはアレをどうにかしない限り勝ち目は無いと判断し、周りを見渡して使える物がないかを探す。
だが、見つからない。
「どうやら……此処までね」
ジャンシアーヌも打つ手なしと諦め始めたその時、通信が繋がった。
《指揮官!聞こえますか!指揮官!》
その声の持ち主はメイリンだった。
エイハブはその通信を聞き、空を見上げると二機のドローンが向かってきているのが見えた。
メイリンのドローンによる支援だ。
「メイリン!丁度良い所に、機動基地の様子は?」
《じ~ぎ~が~ん~!今度こそオシマイですぅぅぅ!機動基地の風通しが最高に良くなってしまいましたぁぁ!》
「……あぁ……」
メイリンの絶望に満ちたその言葉にジャンシアーヌは何とも言えない中、メイリンは泣きながら続ける。
《倉庫の蓄えも在庫のパーツもオジャンですよぉぉ!あのロクデナシ共、私がへそくりしてたコーラップスピースすら盗んで行きやがったんですぅぅ!》
メイリンは絶望してるのか、はたまたブチキレているのか分からない様な叫びにエイハブは苦笑いし、ジャンシアーヌはとりあえず慰めの言葉を言う。
「その、メイリン……大丈夫よ。コーラップスピースはまた手に入る……とにかく、まずは此処を離れましょう。ドローンはあと何れくらい飛べそう?」
《あっ、あああそうでした!ご無事で何よりです!指揮官がいなきゃ給料は貰えませんから!》
メイリンはそう言って一台のドローンで改造機甲を牽制、もう一台のドローンを安全な場所に降下させようとしている。
《この燃料ならあと56分は稼働できます。早く乗ってください指揮官!》
「グローザ、ネメシス、エイハブ、撤退よ!箱も忘れずに!」
ジャンシアーヌの撤退を指示聞き、グローザとネメシスは先行、エイハブは牽制射撃をした後、スモークグレネードを投げて視界を奪ってから二人を追いかける様に走る。
ヴァリャーグとの追いかけっこは終局に近付こうとしていた。