──「全国高等学校野球選手権大会、準々決勝第二試合がまもなく開始となります。実況は
「よろしくお願いします」
「飯山さん、準々決勝ですが率直にどう思われますか」
「そうですね、どちらのチームも勢いがありますよね。ただ
「なるほど、ちなみにそれはどのような理由になりますか」
「
「花弁和歌山ですが、二回戦で
「ただ、水流選手のここまでの投球も驚異的ですからね。今年は
「ここで両校の監督からコメントが入っております。先攻花弁和歌山
「一方の後攻蓮華学園
「私の予想ではこの試合、選手層の違いが明暗を分けると思いますね」
「ありがとうございます。さて、準々決勝第二試合まもなくプレイボールです」
◇ ◇ ◇
──「1回の表花弁和歌山の攻撃、打席には一番の山本が入ります。…ピッチャー初級投げましたストライク!アウトコース真っ直ぐ152キロ!」
「速いですねぇ、まだまだ元気がありますよ」
「続いて二球目投げました…ボール。やや低めか」
「スライダーですね。スピードがあって鋭く曲がります」
「三球目投げた…打ちました!打球は一二塁間抜けてヒットになります」
「飛んだコースが良かったですね。しかし一巡目からしっかり真っ直ぐを弾き返しました、やはり打撃力は凄いですよ」
「打席は二番田中、ここはバントの構え」
「花弁和歌山は小技も上手いですよ、強引な攻めだけではなく作戦もしっかり使ってきます」
「初球投げた…転がした!ランナーは二塁へバント成功!」
「打席三番の中村、今大会ここまで三打点を上げています…ストライク!初球真っ直ぐ151キロ低め決まりました」
「二球目…ファール!スローカーブでした。二球で追い込みます」
「あのカーブが素晴らしいですよね、真っ直ぐと合わせればバッターは苦しいですよ」
「三球目……空振り三振!最後は高めストレート三球で仕留めました!」
「いやーいいボールですね。思わず手が出たといった感じでしょう」
──「さあそして注目の対決!四番
「彼は速い球に対応できますからね、ここは慎重にいきたいところでしょう」
「さあ初球…ボール。まずは落ちる球で入りました。」
「二球目…ストライク!内角真っ直ぐ154キロ!」
「ギアが上がりましたね。でも力んではいないですよ」
「三球目…ファール!またも内角ストレートやや振り遅れたか」
「四球目…ボール!スライダー良いところにいきましたがよく見逃しました」
「高江選手選球眼も抜群ですからね。真っ直ぐが来てもカットできる自信もあるでしょう」
「五球目…ファール!鋭い打球三塁線でした。場内おおっと声が上がります」
「タイミングが合ってきてますね、バッテリー苦しいですよ」
「六球目…ボール!きわどいところでしたがしっかり見極めましたこれでフルカウント!」
「……ピッチャー首を振ります。バッテリー少し息が合っていないか」
「…さあ初回のチャンスものにするか花弁和歌山……打ちました!!打球が上がる、レフト下がって、下がって…入ったー!!!四番高江!今大会屈指の剛腕水流から先制の2ランホームラン!!」
「いやー素晴らしいバッティングですね!真っ直ぐ少し内に入って来たボールを完璧に捉えました。フルスイングも見事です!」
「五番松本初球打ち、サードゴロでスリーアウトです。蓮華学園は初回からビハインドの展開となりました!」
◇ ◇ ◇
──「四回の裏蓮華学園の攻撃、ランナー二人を置いて打席は三番の水流」
「ここは点が欲しいところですよ。ピッチャーはとにかく長打は打たれたくないでしょう」
「…投げました初球ボール、真っ直ぐが大きく外に外れます」
「二球目…空振り!変化球をフルスイングです、この試合まだ見たことのない軌道でした...飯山さんこれは挟んでますか」
「はい挟んでます、フォークですね。しっかり落ちてますよ」
「…ボール。三球目変化球ワンバウンドになりました」
「かなり警戒してますね、間違っても高めにいかないように投げてます」
「四球目…打ちました!!打球はセンタへー!」
「二塁ランナー帰ってきたー!一塁ランナーも三塁へ!タイムリーヒットで蓮華学園一点を返しました!」
「ナイスバッティングですよ!外角低め遠い所ですが上手く拾って運びました、パワーだけでなく技術も持ち合わせてますね」
◇ ◇ ◇
──「さて、試合も大詰め九回の裏を迎えようとしています。スコアは4─3、点差はわずかに1点。飯山さんここまでの試合はどうですか」
「お互いにギリギリの所で踏ん張っていますよね、守備も固いのでヒットは出ても点に繋がらない場面が多く見られました」
「蓮華学園のバッテリーは少し正面から行きすぎかなとは思います、バッターのタイミングに合わせてしまっていますね。対して花弁和歌山は四球もありますが水流選手や
「勿論花弁和歌山の打線の強さもあります。九回の表も150キロ出してますからね水流選手。この投手から四点は高校生としては本当に素晴らしいと思います」
「さあ九回の裏、先頭は七番の
「七回からリリーフで登板した前田投手ですがかなりいいピッチングをしてます。飯山さんどうですか」
「変化球が低めにしっかり決まりますね、甘い球もないです」
「二球目…空振り!変化球しっかり落としてきます」
「追い込まれました三球目…打ちました!打球はショートへ…取って一塁へ送球…アウト!まずは先頭取りました!」
「打席八番
「…空振り!膝元スライダーバットが空を切ります!」
「素晴らしいキレです。一年でこれを打つのは至難の技ですよ」
「三球目…ボール、やや外にそれたか」
「……空振り三振!!最後は大きなカーブでした!これでツーアウト!」
「さあラストバッターになるのか、打席九番
「初球……打ち上げた!打球が高々と上がるー!ライトの足が止まった…取ったー!!」
「スリーアウト試合終了!花弁和歌山準決勝進出!蓮華学園はベスト8で姿を消しました!」
◇ ◇ ◇
──ライトのグラブにボールが収まった瞬間、水流はへたり込み動けなくなってしまった
他の選手も同様に、脱力し下を向く…そして敗戦したことを理解し、涙を流すものもいた
──重い足取りで整列する、まだ現実感のない者、ひたすらに号泣するもの、やりきった顔で背筋を伸ばすもの…三者三様だった
校歌を歌うことは出来ない。ここで甲子園を去らねばならない…どれだけやり残したことがあっても、試合前に戻ることは叶わないのだ
声を上げ涙を流す水流に瀬尾が近づき肩を叩く。目に涙を滲ませながら声をかけた
「泣くな…!泣くなよ!また春に…夏に来ればいい!お前ならできる…お前達なら……ありがとな!
──こうして蓮華学園の夏の甲子園は終わった。ここからは水流達が最高学年となり、最後の夏へと向かっていく……
◇ ◇ ◇
──あの敗戦から二日が過ぎた…ようやく心の整理がついたかな
新チームになって一月もすれば秋の予選は始まる。いつまでも引きずっているわけにはいかないんだ…もう俺達が一番上だから
新キャプテンは遠藤がやってくれる。一年ともよく話してるし瀬尾先輩からアドバイスも貰ってたらしい
……先輩達には申し訳なく思う。投手能力をもっと上げていたら…いや、そうじゃないな
あの一球…サインに首を振っておいて打たれた。割りきってボールでもいいって思えない所…ステータスとか関係ない。俺の弱さが出たんだ
もう負けたくない。絶対に...必ず甲子園を制覇する!来年こそは俺達が日本で一番長く野球をする!
やれることは全部やる!自分の能力だけじゃない…チームの皆ともっと話して、もっと練習して...信頼を作る。一年も、俺に教えられることは少なくても、ちゃんと見本になる
──もうみっともなく泣かない。次に涙を流すなら、優勝した嬉し涙だけだ──
誤字脱字報告よろしければしていただければ幸いです。
ちなみに夏の甲子園は花弁和歌山が優勝しました