朝日杯:新星登場
1. サウジアラビアRC
10月上旬、東京レース場芝1600mで行われるG3サウジアラビアRC。
ジュニア級の有力ウマ娘が集まるレースに、今年は二人のスター候補が現れた。
一番人気のステルヴィオ。そして、彼女を破った二番人気のウマ娘。
ジュニア級では抜けた力を持つ二人は、このレースでワンツーフィニッシュを果たす。
控え室に戻った二人。
ステルヴィオが軽く微笑みながら言った。
「次は負けない」
シンプルながら熱のこもった一言。
このレベルのウマ娘は、一度の敗北で身を引くほどヤワじゃない。
「そうかい。でもボクも譲る気はないさ」
不敵な笑みを浮かべ、もう一方は続ける。
互いの目が、すでに次の決着を見据えている。
「キミも次の目標は朝日杯、だろ?」
「G1の舞台こそ、ボク達の決着には相応しい」
そのウマ娘は手を差し出しながら名乗った。
「ボクは、ダノンプレミアム。
ステルヴィオ、だったね。次も楽しみにしてるよ」
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2. 朝日杯FS
前走から二ヶ月、年の瀬迫る十二月に、二人は再び相まみえた。
「やあ、ステルヴィオ。久しぶりだね」
「ダノンプレミアム、今日が待ち遠しかったわ」
互いに、あのときよりも成長しているのを感じた。
ステルヴィオはやや小柄だが、ダノンプレミアムは体格も一回り大きく、その体の力強さと脚力の面で一歩リードしている。
ゲートが開くと、ダノンは好スタートで二番手に収まる。
先頭を追う形での追走は無理なく、スムーズにリズムを刻む。
ステルヴィオは中団から、鋭く前を狙って進む。
最終直線に差し掛かると、ダノンは自然と加速した。
前を行くウマ娘を抜き去ると、そのままリードを広げる。
ステルヴィオが追い込もうとするタイミングで、ダノンはさらにスパート。
一歩、また一歩と、差を広げる。視界に映るライバルは小さくなるばかりだ。
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3. 栄光のゴール
加速に合わせ、周囲の景色が流れてゆく。
しかし意識は、ゆっくりと、鮮明に回る。
観客席の歓声も、ステルヴィオの必死な視線も、すべて自分に向けられているのがわかる。
胸の奥で、自然に、確信が膨らんだ。
――今、ボクは世界の主役だ。
光に包まれたゴール板が、栄光へのゲートとして、目の前に開かれた。
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4. 新星
「これはモノが違う、実力が違う!」
「ダノンプレミアム三戦三勝!」
「センス抜群、無敗でG1を制しました!」
二着に三馬身半差の圧巻のパフォーマンス。
走破タイムはレコードを更新し、圧倒的な強さを示した。
この実績で、ダノンプレミアムはURA最優秀ジュニアウマ娘に、圧倒的得票率で輝くことになった。
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おまけ:世代の双璧
URA賞の表彰式に参加したダノン。控室で、一人のウマ娘が歩み寄ってきた。
阪神JFを制し、ティアラ路線のジュニア女王に輝いたラッキーライラックだった。
「あらー、初めまして。ダノンプレミアムさん」
「うちはラッキーライラック、もうします」
人好きのする笑みを浮かべ、自然に近づいてくる。
「この度はおめでとうございます。レースも拝見しましたが、素晴らしい走りでしたなぁ」
そのいい人オーラに、ボクの直感が何かを警告している。
「ああ、よろしく」
変に警戒するのもおかしいと、握手しようと手を伸ばした――そのとき、突然声が響いた。
「トレーナー!今日大事な日なんだから、それやめてって言ったでしょ!」
振り返ると、最優秀短距離賞のレッドファルクスさんと、最優秀ダート賞のゴールドドリームさんだった。
「そっすよ。私はまぁマシでしたけど、レッド姐、顔引きつってましたよ。
顔真っ赤なのに青筋浮いて。自己紹介してるみたいに」
「ゴールド!あんた、どっちの味方だい!」
「Oh、ごめんなさい」
二人のやり取りに、トレーナーさんは右往左往している。
「トレーナー!とにかく、今後しばらく納豆禁止!」
「OK、OK。菌糸だけにね」
「おいコラ、トレーナー」
「Sorry、レッド。そんなに顔真っ赤にしないでも、あなたの名は知れ渡ってますよ」
「あ、アタシのネタパクったな」
レッドファルクスさんは笑顔のまま拳を固める。
あっ、トレーナーさんが逃げた。
ボクは呆然と、目の前のやりとりを眺めていた。
ふとライラックさんに目を向けると、彼女も三人組に満面の笑みを向けていた。そして、ぽそっと呟く。
「さすがやでぇ、レッド姐さん。あのキレ芸はもはや職人芸や」
「トレーナーさんもやけど、ゴールド先輩のアシストが光る。あの人が影の司令塔ってやつやな」
「…ライラックさん?」
「あっ、ごめんなぁ。思わず呆気に取られてまったわ」
いや、今のはそんなんじゃ…
やめておこう、藪を突くのは今じゃなくてもいい。
「改めて、これからよろしく」
「えぇ、こちらこそ」
ライラックさんの笑顔の裏側が、少しだけ気になる――そんな1日だった。