ウマ娘プリティーダービー 〜黄金の時代〜   作:リンゴ糖

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宝塚記念:今と見つめる先

1.熱を帯びた教室

 

昨年の秋、マイルCSから有馬記念まで、衝撃のG1四連勝。

高まる熱は世代の壁を打ち破った。

 

 

「…私たちの世代って、けっこう強いんじゃない?」

「…かなり、強いと思う」

 

 

教室の一角で始まったヒソヒソ話は、周りを巻き込み盛り上がっていく。

 

 

「…今年入ってからも好調だし」

「高松宮記念に、春天…」

「こないだのヴィクトリアマイルも」

 

 

テンション上がった女学生は無敵で、

勢いづいた彼女たちは止まらない。

 

 

「春天は掲示板ほぼ独占したし!」

 

「アイちゃんはドバイ勝ったよ!」

 

「G1以外も好調だって!」

 

騒ぎ始めたら止まらなかった。

 

 

「これ!あたし達の時代きてるよー!」

 

「委員長! 次の宝塚たのんだよ!」

 

教室から拍手があがる。

クラスが一つにまとまった。

 

 

 

「――うるさーい!!」

 

前に出てきたのは、委員長――エタリオウ。

 

「あんた達、自習だからって騒ぎすぎ!」

「ちょっとは大目にみようと思ったけど…」

 

びしっと指を鳴らす。

 

「いい加減、静かになさい!」

 

「はーい……」

「撤収、撤収ー……」

 

なんとか落ち着きを見せ始めた教室の空気に

 

「…まぁ、なんだ。あたしも頑張るから」

「その、少しは期待しときなさい」

 

そう言って教室を出た彼女の頬は赤かった。

教室のテンションは再び最高潮を迎えた。

 

 

 

2.宝塚記念

 

宝塚記念の結果が掲示板に表示される。

 

委員長の応援だー。

とやってきた一団は静まり返っていた。

 

「……エタリオウが、負けた?」

 

「いつものことだぞー」

 

「…それ、本人にいっちゃダメ」

 

「残念だけど、委員長らしいよねー」

 

…静まり返っていたが、別に悲壮感はなかった。

 

 

───

 

宝塚記念は少々珍しい結果となった。

ある世代による掲示板の独占である。

 

五着、レイデオロ。

「ふざけんなー! もっかいだ、もっかい!」

 

四着、アルアイン。

「ペルちゃーん! 見ててくれたー?」

「うぉー! アルちゃーん!」

 

三着、スワーヴリチャード。

「……私、影薄くない?」

 

二着、キセキ。

「また、二着……!

リスグラシューさんの呪いですか!?」

 

そして――

 

一着、リスグラシュー。

 

「あらあら、怖いこと言わないで」

「みんな、いいレースだったわね」

 

にこやかに。

余裕すら感じさせる笑み。

 

 

騒がしくて、賑やかで、

それでいて強い。

上の世代の強さを再認識させられた。

 

 

3.見上げた背中

 

観客席の一角。

ブラストワンピースは、表彰式の様子を見ていた。

 

歓声の中心に立つリスグラシュー。

その周囲で騒ぐ、四強たち。

 

「……あいつら、つよいなー」

 

ぽつりと、漏れた声。

 

隣でフィエールマンも、同じ方向を見ていた。

 

「ブー達も……」

「負けてられないな」

 

次の瞬間、ブラストワンピースの表情が弾けた。

 

「よし!」

 

振り返って、勢いよく言う。

 

「決めた!」

 

「……何を?」

 

「いっちょ、世界に挑んでくるぞ!」

 

「…乗った」

 

ブラストワンピースはフィエールマンを伴い駆け出した。

思い立ったら一直線。

笑顔が弾ける。

イタズラ心がさわぐ。

その足取りは軽かった。

 

 

4. でっかいプレゼント、届けに行こう。

 

「というわけで」

「いっちょ凱旋門賞挑んでくるぞ!」

 

軽い調子で、ブラストワンピースは言った。

 

「…いえーい。エポカ、見てるー?」

 

冗談みたいな声色。

でも、決意は本物だった。

 

ビデオ通話越しの宣言にエポカドーロは目を白黒させた。

 

 

───

 

おまけ:デオロ先輩

 

「レイデオロさー、もっかいって騒いでるけどさー」

「今日はあんたが最下位よ」

 

「ぅぐ」

 

騒いでいたレイデオロだが、スワーヴリチャードに痛いところをつかれた。

 

「ドバイも海外でテンション上がっちゃって失敗しちゃったもんねー」

 

「ぐぬぬ」

 

この二人はいまいち反りが合わない。

普段はうるさいレイデオロだが、今日は反論できずやられっぱなしだ。

 

「まぁまぁスワーヴさん。

今日はそれぐらいで!」

「せっかく同期大活躍ですし、ね」

 

キセキが仲裁に飛んでくる。

 

「そうね。せっかくのリスちゃんの勝利に水さすのもわるいわ」

「レイデオロ、もういいわ。

あとは打ち上げ、で、も」

 

スワーヴリチャードも言いすぎたと思ったか、レイデオロに声をかけようと向き直った。

 

 

そこにいたのは土下座したレイデオロ。

 

「…アタシ、レイデオロは無様にも負けた身で再戦を要求しました!」

「恥知らずな対応を謝罪しますので、もっかい勝負じゃ! このヤロー!」

 

「うわぁ」

 

「負けず嫌いにも程がありますよー」

 

スワーヴとキセキは同期のトラブルメイカーに頭を抱えた。

 

 

───

 

おまけ:同期を一蹴

 

あの後、へそを曲げたレイデオロをキセキが宥め、同期組は打ち上げに向かうことにした。

 

アルアインとペルシアンナイトは二人でとっとと先に行ってた。

 

 

「あの二人がとりあえずファミレス押さえたって」

「ごめんね、リスちゃん

あいつが騒いだせいで」

 

いいのよ。とスワーヴに答えたリスグラシューは、

 

「レイデオロの負けん気にも困ったものね」

とため息をついた。

 

 

「レイデオロさんー、そろそろ機嫌直してくださいよー」

 

「んだよ、謝ったじゃねぇか」

 

「ほらー、そんなに拗ねないで」

 

「拗ねてねぇ!」

 

 

レイデオロが遅れがちで二組は距離が離れ始める。

レイデオロは遠くに見えるリスグラシューに毒づいた。

 

「たくよ、リス子もあんだけ強いなら堂々としてろってんだ」

「何がリスだよ。

ゴリラみてぇーな強さしやがって」

 

ガシッ

 

うつむいてたら頭を掴まれた。

アイアンクローの形だ。

 

「ひっ!」

 

キセキの叫び声が聞こえた気がした。

 

 

───

 

「んがっ!」

 

「あら、起きたのね。レイデオロ」

 

「あれっ、ここは?」

 

「打ち上げのファミレスよ。

あなたついてすぐふて寝したのよ」

 

「おぅ、そうか」

「わりーな。 せっかくの祝いの席を」

 

「気にしてないわ」

「それより目が覚めたなら再開しましょう?」

 

「そーだな、カンパイ」

 

なぜかいつもよりリスグラシューの言葉に素直に従えたレイデオロだった。

変な体勢で寝たせいか、体が痛い気がした。

 

一部始終を目撃した、キセキとスワーヴは隅で震えていた。

 

アルアインとペルシアンナイトは二人で二軒目を堪能していた。

 

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