ウマ娘プリティーダービー 〜黄金の時代〜   作:リンゴ糖

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遠く離れてるほどに
クイーンエリザベスステークス:揺れる世界


1. 二〇二〇年

 

二〇二〇年春、世界は未知のウイルスに包まれた!

 

街から人が消え

歓声が消え

 

あらゆる娯楽が絶滅したかにみえた

 

だが……ウマ娘は、トゥインクルシリーズは死滅していなかった!

 

 

緊急事態宣言が発令され、レース場も無観客開催となった。

 

レース場からは歓声が、拍手が消えて、

静かに粛々とプログラムが進んでいく。

 

 

そんな中、カレンチャン、マヤノトップガン、そしてラヴズオンリーユー。

配信や動画投稿につよいウマ娘を中心に情報の発信を続けた。

 

暗いニュースが続くなか、盛り上げようと動いた。

後に続く者たちもどんどん現れた。

 

世界は静まり返っても、

闘志までは封じられていなかった。

 

 

 

───

 

2. ドバイミーティング

 

しかし、想いだけではどうにもならないこともあった。

 

三月末に開催を予定していたドバイミーティング。

 

アーモンドアイ

グローリーヴェイズ

ラヴズオンリーユー

ペルシアンナイト

 

その他、総勢19名のウマ娘はドバイの地で、中止の決定を聞かされた。

 

ギリギリまで開催に向けて調整を進めていたが、無念の帰国が決定した。

 

 

───

 

3. クイーンエリザベスステークス

 

ドバイ中止の報を、ダノンプレミアムはオーストラリアで受け取った。

 

ダノンプレミアムはドバイ組が出発する裏で、単身オーストラリアに渡航していた。

目的は四月の初旬、シドニーランドウィックレース場で行われるG1クイーンエリザベスステークスに参加するためであった。

 

先のドバイのように直前で中止が決定する可能性もある中、彼女はなんとか当日の出走まで漕ぎ着けていた。

 

「ララっちはああ言ってくれたけど――

 それでも、対等ではありたいからね」

 

G1二勝目に向けて、五度目の挑戦が幕を開ける。

 

 

───

 

ダノンプレミアムは好スタートを決めると中団の内側に、じっくりと構える。

 

前日の雨も上がり、晴れ渡ったシドニーの空。

しかし馬場の回復は間に合わず、不良馬場でのレースとなった。

 

大きな波乱もなく、皆がプラン通りにレースを進めていく。

仕掛けのタイミングを見計らい、静かに緊張感が高まっていく。

 

最終コーナーで、集団が固まり、あとは末脚勝負。

最後は荒れ馬場での意地の張り合いとなった。

 

ダノンプレミアムはコーナーで並びかけたが、

抜け出したのはイギリスのアデイブ。

こういった条件に強い荒れ馬場巧者だ。

 

ダノンプレミアムは二番手で必死に追い上げるも地元の強豪、ベリーエレガントとの二着争いにも敗れ、三着に終わった。

 

 

───

 

4. 二〇一八年会@オンライン

 

 

ダノン

「手続きも終わって戻ったよ」

 

フィエ

「おつ」

 

ワグ

「おつ」

 

ララ

「おかえりー、ダノっち」

 

エタリオ

「お疲れ様。残念だったわね」

 

ダノン

「とんでもない馬場だったよ」

「日本のレース場はやっぱすごいね」

 

ユー

「設備に関しては世界トップレベルですもんね」

 

ブー

「おみやげ!」

 

フィエ

「おみやげ!」

 

ワグ

「おみやけ」

 

エタリオ

「あんたら、黙ってなさい」

 

 

───

 

最近は大勢で集まることも自粛が求められて、こんな風にチャットで会話することが増えた。

 

直接会えないのは寂しいが、なんだかんだでみんな適応している。

 

しかし、

 

「…アーモンドアイはやはり参加してない、か」

 

有馬記念のあと、寮に戻らず調整を続けていたアーモンドアイ。

 

トレセン学園に対しても、

URAから

「G1最多勝の記録に挑むため、施設利用の申請がありました」

「彼女の希望を尊重し、URAとしても協力させていただきたく思います」

と、いった感じで報告があった。

 

彼女の突然の離脱に小さくない動揺はあった。

しかしそれ以上に大きな社会情勢の変化に、それ以上の追求をするものはなかった。

 

 

───

 

ララ

「グロちゃん、ドバイでアイさんどうやった?」

 

グローリー

「向こうでも特別メニューで、詳しくはわかんない」

「遠目だけど元気そう? 」

「弱ってるようには見えなかった」

 

ノームコア

「ラヴちゃんの配信にもちらっと映ってたよ」

「軽く会釈して離れちゃってた」

 

ララ

「そなんや」

「おおきにラヴユー」

 

ノームコア

「ええんやでラヴユー」

 

フィエ

「ラヴミー」

 

ワグ

「ラヴユー」

 

ユー

「ラヴズオンリーユーキャンスマイルでーす♡」

 

エタリオ

「ユーキャン、あなた…」

 

グローリー

「ね。チャットだと雰囲気ちがうよね」

 

ワグ

「てれるね」

 

エタリオ

「チャットで通訳ネタは伝わらないわ…」

 

 

───

 

「…相変わらずだな」

 

いつもと変わらないみんなのやり取りに遠征のダメージが癒されていくのを感じる。

 

「いや、いつもと変わらない、とも言えないな」

 

この場にいないプリンセスを思う。

 

「アーモンドアイ…」

「ララっちを悲しませてるのは、どっちだよ」

 

 

 

───

 

おまけ:推し活勢

 

ノームコアには秘密がある。

 

レースではアイ、ララに続くティアラの三番手として活躍している。

マイルを主戦場とするが、エリザベス女王杯や香港遠征もこなす、バイタリティに溢れた存在。

 

一つ下の妹はクロノジェネシス。

合わせて現役最強姉妹としても注目されている。

オルフェ、ドリジャの最強姉妹の牙城を崩すのは、この二人とも噂される芦毛姉妹でもある。

 

そんな公私共に頑張るノームコアの秘密とは、

 

「もうやだー」

「つかれたー」

 

部屋に戻る。

ベッドに突っ伏す。

 

「私なんかがアイちゃん、ララちゃんと並ぶなんて…」

「オルフェさん、ドリジャさんと比べられるなんて…」

 

「おこがましいにも、程があるよ…」

 

ノームコア、究極の普通を意味するファッション用語に由来する名を持つ彼女は、メンタルも究極の普通なのであった。

 

「あっ! いけない!」

「配信始まっちゃう!」

 

そんな彼女の癒しは

 

『ラヴミー、ラヴユー』

『ラヴズオンリーユーでーす♡』

 

「ぁあ、ラヴちゃん。

今日も愛らしいわー♡」

 

ラヴズオンリーユーの推し活であった。

 

妹の同部屋ということで、なんとなく配信を見ていたらどハマりしてしまったのである。

 

「ラヴちゃん、癒されるわー」

「私のお姉ちゃんになってくれないかしら」

 

年下の姉に萌える、ノームコアの明日はどっちだ。

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