1. 集いし強豪たち
⚪︎アメリカジョッキークラブカップ
勝者 ブラストワンピース
有馬記念には間に合わなかったが、
ブラストワンピースが一ヶ月遅れの凱旋勝利を果たす。
次走は大阪杯を予定。
⚪︎京都記念
勝者 クロノジェネシス
雨の影響で重馬場での開催に。
昨年のジャパンカップで荒れ馬場適性と強さを示したカレンブーケドールを二馬身引き離しての快勝。
次走は大阪杯を予定。
⚪︎中山記念
勝者 ダノンキングリー
好スタートから三番手追走。
直線早めに抜け出した。
ラッキーライラック、
インディチャンプ、
ウインブライトらG1ウマ娘の追撃を振り切り、ダノンキングリーは重賞三勝目。
次走大阪杯でG1戴冠を狙う。
⚪︎金鯱賞
勝者 サートゥルナーリア
前半1000メートルが63秒。
スローな流れを中団五番手で追走。
最終コーナーで集団が固まったところを楽な手応えで抜け出す。
残り200メートルで先頭に立つと、上がり最速の末脚で押し切った。
次走は大阪杯と香港遠征の両睨みで調整中。
大阪杯に向けての前哨戦が繰り広げられ、続々と有力ウマ娘が参戦を表明していた。
凱旋門賞以来の復帰戦を勝利で飾り、復権を狙うブラストワンピース。
シニアに入り充実期を迎えた2019世代も、クロノジェネシス、ダノンキングリーが参加を明言した。
また昨年のジャパンカップ以来となるワグネリアン、マカヒキも参戦濃厚との噂だった。
リスグラシューが去り、アーモンドアイが不在の中、覇を唱えるのは果たして。
───
2. 遠く離れた談話室で
G1レースの日の談話室はいつもなら人であふれ、大画面のテレビの前には思いよ届けとばかりに声援を送る生徒がひしめき合っていた。
しかし今は人影もまばらで、テレビの前もお互い距離を保って座っている。
「あっという間に様変わりしてしまったね」
「…キミも距離をとってくれないかな?」
ダノンプレミアムは、閑散とした談話室に思わず言葉が漏れた。
ついでに隣に居座るこの後輩にも。
「えー、せんぱーい? ひどいですよー」
「一人寂しく応援するっていうからついてきてあげたのにー」
「サートゥルナーリア、ソーシャルディスタンス守ろうね」
「えー? 静かにしますからー」
「ダメだよ。 ルールはルール」
ちぇ〜、と言いながら、サートゥルナーリアはしぶしぶ離れた。
…前回といい、やたら絡んでくるが何が目的なんだろう?
「まぁーいいや」
「せんぱーい、大阪杯どう見ます?」
「…キミは少しは静かにしなさいよ」
「あっ! それならチャットにしよ!」
「せんぱい! アドレス教えて!」
ボクはこのまま嗜めながら相手するのと、この後輩にアドレスを教える危険性を天秤にかけ、今日を我慢することに決めた。
「…正直な話、キミたちの世代は強いと思うよ」
「キングリーの強さは知ってるし、ティアラ路線の子もしっかり実績を積んできている」
「せんぱい、あたしは? あたしは?」
「…だけど、ワグもブラストも強いからね」
「そして何より、ララっちだ」
「中山記念はキングリーの二着だけど、したたかな彼女のことだ、何か布石を打ってる気がする」
「生真面目なキングリーと曲者なララっちなら前哨戦と順位は入れ替わるかもね」
「おおー。 解説のプレミアムさん、熱く語ってくれましたー」
そうこうしているうちに本馬場入場が始まった。
人気上位は上から、
キングリー、ララっち、ブラスト、クロノジェネシス、ワグ。
ボクの見立てもそんなに外してないようだった。
「…がんばれよ、みんな」
遠く離れた地から、ボクは小さくエールを送った。
───
3. 仁川の地で、君を思う
枠入りの準備が進むゲートの後方にて、
「…しずか、だね」
ワグネリアンが、ガランとしたスタンドを見上げた。
「だな」
ブラストワンピースも、いつもなら歓声が響くはずの空間を見つめる。
「ほんまになぁ」
ララも、小さくため息をついた。
「ドバイの中止に、無観客レース、ウチら特別な時代に生きてるなぁ」
「こんなの考えたこともなかったぞ…」
ワグネリアンもこくりと頷いた。
言葉を失う三人。
そんな沈黙を破ったのはワグネリアンだった。
「…あれから、いちねん」
「エポカに、元気とどけよ?」
「それやったら、アレやらへん?」
「あのダービーの名乗りってやつを!」
「あっ、ブーもそれ見てたぞ!」
「決まりやな!」
三人は向き直るとめいめい宣言する。
「ラッキーライラック。
勝つのはウチや!」
「ブラストワンピース!
やーってやるぞ!」
「…ワグネリアン。
ゆずる気はないよ?」
───
4. 大阪杯
好スタートを決めたラッキーライラックをかわすようにダノンキングリーが先行する。
明確な逃げウマ娘が不在のため、そのまま押し出されるようにダノンキングリーはハナを切った。
ややスローペースで進む一団は、
先頭ダノンキングリー。
三番手の内にラッキーライラック。
外側にクロノジェネシス。
それを見るようにワグネリアンが追走し、
ブラストワンピースは後方から仕掛けのタイミングを見計らう。
第三コーナーを回ったあたりでブラストワンピースが動き出す。
外からまくって先頭に並びかける。
呼応するようにクロノジェネシスもペースをあげ、ラッキーライラックは内側に閉じ込められた。
先頭ダノンキングリー、外からクロノジェネシス。
ブラストワンピースは大回りした分、一手遅れた。
先頭二人が身体を合わせる。
その寸前、
失速した二番手と入れ替わるように、ラッキーライラックが一気に加速し、抜け出した。
狭い隙間をすり抜けて、伸びる末脚はゴールまで駆け抜けた。
───
5. ありがとう、ふたたび
ララはスタートからダノンキングリーを標的に定めていた。
能力上位の彼女に先着すれば、勝ちの可能性が高いと読んでいた。
…キングリーちゃんは早めのペースで追走しても、末脚をある程度まとめてくる。
でも、きっちり溜めたらウチのが早い。
やったら、キングリーちゃんが苦手な、ウチが得意なスローペースにしてもらおかな。
───
好スタートを決めたララはそのまま先行した。
自分でスローに落としてもよし、前に行きたいキングリーが競ってくるなら、それも良しだった。
結果慣れない逃げの形になったキングリーはセオリー通りのスロー逃げに。
そのペースであれば先行しても脚がためられる。
してやったり。
ララは賭けに勝った。
あとは直線ぶち抜くだけ。
クロノジェネシスの粘りにはヒヤリとしたが、最後は根性!
概ねプラン通りだった。
───
「みんなー! 応援おおきにー!」
会心の勝利にララは空に向かって指を一本突き立てた。
友に捧げる「ありがとう」のポーズだった。
───
おまけ:画面越しの
「みんなー! 応援おおきにー!」
にししっ、と笑うララっちを見る。
ボクは相棒の勝利を中継のカメラ越しに見ていた。
大切な相棒の勝利に対する喜びと誇らしさ。
そして、ほんのちょっとの胸の痛み。
アレ以来ララっちとの間にわだかまりはないけど、やっぱりまだ悔しい。
「せんぱい?」
サートゥルナーリアがそっと肩に手を触れる。
…心配してくれたのかな?
自由奔放なやつだけど悪いやつではないんだろうな。
「…なんでもないよ」
「そう?」
「そうさ。 さすがボクの相棒だ」
画面の中のララっちは空に指を一本突き立てた。
ああいうことができる、素敵な人なんだ。
「サートゥル、今日はお開きにしようか」
「あっ、うん」
「ボクの次走は安田記念だけど、キミは?」
「あたしは、宝塚、かな?」
「そうか。 それならお互い忙しくなるね」
「うん。 あの、せんぱい、えーと」
「…ううん、またね!」
彼女に軽く手を振って応えた。
強くなりたい、そう思った。
ーーそんな一日だった。
───
おまけ:同盟
せんぱいと別れてから、なんとなくぼーっとしていると。
「あなた、サートゥルナーリアね」
謎の二人組に声をかけられた。
「えーっと、どなたです?」
「私はステルヴィオ。
こっちはフィエールマンよ」
「…おぅ」
「単刀直入に言うわ、あなた、私たちの仲間にならない?」
「…へぇー」
「一体なんの集まりなんです?」
「教えてくださいよ、先輩?」
警戒を怠るな。
目的を探れ。
「…きっと気にいるはず」
「ダノンが気になる、ならね…」
…せんぱいに、関すること?
「サートゥルナーリア、私たちは」
「ダノンプレミアムをイジりたい同盟よ」
「……はい?」
「イジりたい同盟よ」
「あ、聞き返したわけじゃないっす」
「あなたの後輩ムーブに振り回されるアイツを見て分かったわ」
「…あなたもきっと同類だってね」
何を言っているんだ、この人は。
せんぱいをイジるなんて、
そんなこと、
そんな、こと、
「楽しいに決まってるじゃないですか!」
「…ほらね」
「歓迎するわ、同志サートゥル」
「ぅいっす。
先輩、お世話になりまーす」
───
「…危険な奴らが手を組んだ!
ダノンの明日はどーなっちゃうんだ!」
「あ、フィエさんのナレーション風イジりだ」