ウマ娘プリティーダービー 〜黄金の時代〜   作:リンゴ糖

3 / 8
桜花賞:瞳の先に

1.足元注意

 

ワグネリアンとの直接対決を制したダノンプレミアム。

クラシック一冠目の皐月賞に向けて視界良好、一ヶ月後の本番に向けて調整を重ねていた。

 

ここまでのレース選択、結果に内容も全て予定通り。

すこぶる順調だった。

今や世代の最有力として周りからも期待の声をかけられている。

 

「ダノンちゃーん、がんばってねー」

 

「ふふっ、ありがとう!

きっと期待に応えてみせるよ」

 

 

…好時魔多し。とはよく言ったもので、足元の注意を怠った彼女は石を踏んづけてしまう。

踏んだその石が尖っていたのは不運というほかなかった。

 

「いったぁーいっ!」

 

素っ頓狂な声をあげたダノンプレミアムは、

この後大事をとって皐月賞の回避を発表した。

 

 

───

2.休日の過ごし方

 

足裏の怪我はダメージの程度がわかりづらい。

現状歩くことは可能なので、ウォーキングや上半身を鍛えることにした。

ダービーを、そしてその先を見据えた調整だ。

 

「せっかく時間ができたことだしね」

 

この日ダノンプレミアムは阪神レース場を訪れた。

 

メインレースの桜花賞には先日会ったラッキーライラックが参加する。

無敗のジュニア女王は年明け初戦を制し、一番人気で今日を迎えた。

 

同じ舞台の阪神JF、チューリップ賞を制した彼女に死角はない。今日はもらったも同然だ。

 

「…と、先日までのボクなら思っていたんだけどね」

小さくため息をつく。

 

「ライラックさんも、足元には気をつけなよ」

 

 

───

3.踏んづけたのは

 

桜花賞のラッキーライラックにミスはなかった。

好位につけ、直線で抜け出し、後続を引き離す。

お手本通りの王道パターン。

あとはゴールへ飛び込むだけだった。

そのはずだった。

 

そのとき、一陣の風が吹き抜けた。

 

大外から現れた一人のウマ娘が、全てを飲み込み突き抜けた。

 

アーモンドアイ。

この世代の一番星が、一つ目の勲章を手にした瞬間だった。

 

 

───

4.アイとララ

 

ダノンプレミアムはラッキーライラックの控え室へと向かっていた。

本当は今すぐにでも駆け出したかった。

 

ラッキーライラックは、ただの顔見知りだ。

まだ友人と呼べるほどの仲ではない。

 

それでも今はそばにいたいと思った。

 

「ライラックさん!」

 

 

扉を開けた先にいたのは、

 

「いやー、アイさんさすがやわ〜」

 

「ララ、離して」

 

「だーめ。もうちょっと撫でさせてーな」

 

「そろそろ着替えたいんだけど」

 

アーモンドアイを抱きしめ、頭を撫でる、ラッキーライラックの姿であった。

 

 

「…ライラックさん?」

 

「あっ、ダノンさん。応援来てくれてたん?」

 

「あー、うん、そう」

 

「それはごめんなぁ。

かっこいいとこ見せたかったんやけどな」

 

普通に会話してるが、その間もアーモンドアイを抱きしめていて、アーモンドアイは逃げ出そうともがいてる。

 

 

「仲、いいんだね」

 

「そーなんよ

ねーアイさん」

 

「ララ、いいかげん離して」

 

…なんだこれ。

 

 

───

 

おまけ:ララ、語る

 

あのあと、アーモンドアイは拘束から抜け出しぴゅーっと音が聞こえそうな勢いで走り去った。

 

「あぁん、アイさん」

 

横でライラックさんは情けない声をあげている。

なんだこれ。

 

「心配して損したよ…」

 

「そうやったん?やさしいお方やわ〜」

 

ライラックさんに向き直り目線を合わせる。

 

あら、大胆。

なんて言って、ライラックさんは目を逸らすから。

 

「ライラックさん、たぶん世界でボクだけがキミの気持ちが理解できるはずだ」

 

ライラックさんは俯く。

 

「ボクは怪我で直接対決できないから、今日のキミとは少し違う」

「でも僕たちはジュニア王者だからね。

相方としてそばに居させておくれ」

 

「ズルいな、ダノンさんは」

 

少し潤んだ目がボクを捉える。

 

「こういう時は一人にしてあげるんがスマートなやり方なんやで」

 

「おあいにく様、ボクは王子に憧れてるからね」

 

「ふふっ、なんなんそれ」

 

 

 

───

 

少し、話そ。

そう言ってライラックさんはお茶を淹れてくれた。

 

隣に座ってお茶を一口。

 

「アイさんな、初めて会ったときもっとトゲトゲしくて、警戒心マックスの仔猫さんやったんよ」

「詳しい事情はわからんけど、なんか遠巻きに、寂しそうにみんなのこと見てたからさ」

「こう、捕まえて、わちゃわちゃわちゃってしたったんよ」

 

…なんか流れ変わったぞ?

 

「とりあえずかまい倒して、甘やかしてやったら、ちょっと懐くようになってな」

 

ライラックさんは立ち上がって背を向けた。

 

「だから、今日アイさんがみんなの前ですごいとこ見せてくれて、嬉しかったのもほんと」

「…悔しかったのもほんと」

 

振り返った彼女はいつもの人好きする笑顔を浮かべて。

 

「負ける気はないよ」

「次は勝つ」

 

彼女はボクに手を差し出し、

 

「ダノンさんもがんばり、ね」

 

そう言って、ボクを引き上げてくれた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。