1. 安田記念
揃ったスタート。
ダッシュ一番、抜け出したダイワキャグニーが、今日は緩めず、早いペースで先行する。
ダノンプレミアムは三番手。
一馬身後方には、インディチャンプが控え、さらに一馬身後ろにはダノンキングリーが構えた。
一番人気のグランアレグリアは後方十番手から足を進める。
最終コーナーを回って直線へ、
集団は大きく左右に広がり、グランアレグリアは内側に閉じ込められる。
内からじわじわ伸びるダノンプレミアムは一瞬先頭に立つ。
しかし、外から芝の良いところを進めたインディチャンプが勢いそのまま前に出る。
グランアレグリアは抜け出したインディチャンプの後ろを通って、足を進める。
外へ持ち出すインディチャンプ。
内をさらって、グランアレグリア。
窮屈なとこから抜け出したのはグランアレグリア。
インディチャンプの外、きれいな芝を通って、後方からダノンキングリーが飛んできた。
インディチャンプを交わし、グランアレグリアに競りかける。
内外並んだところがゴールであった。
───
2. “絶対王者”と“ダノン”
際どいタイミングだったが、ダノンキングリーには確信があった。
そして、掲示板の一番上に自分の番号が灯ったとき、彼女は感情を爆発させた。
前走の天皇賞(秋)は最下位に敗れた。
そこから半年間、一から鍛え直した心身はついにG1の壁を突破した。
相手は短距離マイルの絶対王者。
昨年の安田記念から該当距離のG1は四連勝。
そんな相手を正面から打ち倒した。
───
後輩の大金星をダノンプレミアムは後方、七着から見届けた。
“絶対王者”を“ダノン”が打ち破る。
感情を爆発させるキングリーの姿に、あの日のアーモンドアイと自分が重なった。
高揚感と寂寥感にしんみりと眺めていると、スタンドから声がかかる。
「何負けてんのよ」
アーモンドアイが、
「“ボクには気づいたことがある”」
「なんてドヤ顔で言ってたのにね」
ステルヴィオが、厳しい言葉を投げてくる。
…ドヤ顔ではなかったはずだ。
記憶の捏造には断固抗議したい。
「み、みんなそれくらいに」
エポカドーロがフォローに入るも、
「…さすが、残念王子」
「だぞ!」
「…だぞ」
フィエールマンとブラストワンピースが面白がって引っ掻きまわす。
ワグネリアンも乗っかってきた。
人が戻ったスタンドはうるさいくらいに賑やかで、
「…ダノっち」
「やったな。キングリーちゃん」
…たぶんララっちには伝わったんだろう。
ボクたちは、あの日同じ夢を追っていたから。
「先輩! やりましたー!」
勢いよく飛び込んでくる後輩を受け止めきれず、ボクはターフに倒れ込んだ。
曇り空には、晴れ間がのぞいていた。
(完)
私がウマ娘というコンテンツに触れたとき、初めて意識して競馬を見たのがその年のダービーでした。
あの時代を振り返れば、それは牝馬の時代でした。
それでも私を競馬とウマ娘の沼に沈めたのはダノであり、エポカであり、ワグネリアンでした。
彼らも私の知らない所でウマ娘の世界にいてほしいなと、そんな思いで書きました。
改めて、お付き合いいただきありがとうございました。