魔力2では魔術師は厳しい。ヤミの邪神を魔力源にしてみたら 作:病みのジャシン
私を他の人にやるくらいなら一緒に死ぬ。
レグルはほんの僅かな迷いもなく即答した。
仮にはったりだというのなら、この闇の神である
いや、もしも打算や嘘が混じるのならば、僅かでも綻びが生まれるはず。
あんなに真っ直ぐな瞳ができるはずがないよ。
あなどっていた。見誤った。
私を初手で魔力吸引装置にしようとするような人物のポテンシャルを。
彼を試すようなことを言った自分が恥ずかしくなった。
それなのに彼は私を咎めることもなく
五大属性神でありながら、いつからか分からなくなるような長い年月で、いまだに人間と一度も契約をしたことがなかった私を……。
風評被害だ。
私は風評被害に苦しんでいた。
だって、私、闇属性ってだけで、悪意を好む神じゃないのに!
それなのに、闇の邪神、闇の邪神って……!
私は多少、
おかげで私の元に来る人間は、殺人鬼やら、自分よりも弱い者を苦しめる暴君ばかり。
全然、好みじゃないっての!
そんなところに初めて来てくれたとてもミステリアスな人……。
レグル、君は『私がいなくなるなら自爆して自分も一緒に死ぬ』と言ってくれた。
こんな私を、出会ったばかりの私を誰かに譲るくらいなら死ぬって……。
そんなの……ずるい……よ。
「ソルン」
『ふぁい!』
「……大丈夫か?」
し、しまった……。一人で考えているうちに、気が付けばレグルは神殿の外に……。
『ご、ごめん、大丈夫だよ』
「そうか、なら見てほしい。早速の客人だ」
『え……?』
レグルが見上げる視線の先を追う。
神殿を出てすぐ、そこには待ち構えるように巨大な魔物が立っていた。
「……サイクロプス……か。久しぶりだな……」
……久しぶり? レグルがそんなことを言っている。
巨大な棍棒をその右腕に携え、そびえ立つ様に立っているのは一つ目の巨人サイクロプスだ。
魔物の中では、そこそこの上位に位置する。
次の瞬間には、サイクロプスはその棍棒をレグル目掛けて荒々しく振り降ろしてきた。
レグルはそれを水平に素早く移動しながら、回避した。
そのままサイクロプスに的を絞らせないように勢いを保ったまま移動を続ける。
「サイクロプス、なぜお前がここにいるのかは分からないが、俺はお前に感謝している」
レグルは独り言のように呟いている。
「お前のおかげで、俺は自爆魔術を手に入れた。根源的な恐怖を克服したんだ。そのお礼はしっかりさせてもらうぞ」
そう言った瞬間、レグルから殺意を感じた。
憐みの感情を排したような、冷たい冷たい殺意だ。
『レグル……! 私の
「あぁ……、ありがとう。ソルン」
……っっ! ありがとうだなんて……!
なんだかその言葉だけで……お腹の辺りがきゅんって……。
って、そうじゃなくて……!
レグルが私の魔力に干渉して、優しく、だけど遠慮することもなく奪ってくる。
私の魔力がレグルの中に溶け合って、絡み合って、混ざり合って……。
この感覚……癖になりそう。
「
え……?
今、レグルが使った魔術は
氷属性の初歩の初歩の魔術だ。
……そうか。レグルは魔力が2しかないから……、こんな弱い魔術しか……。
「ブォオ!」
……やっぱり。
レグルが放った氷の棘をサイクロプスは棍棒でなんなく叩き落とし、ニタニタと気色悪い笑みを浮かべている。
……当然だ。きっとレグルができる魔術は、魔力2以下で運用できるものだけなんだ。
だったら、私の能力を……!
っ……!
そう思った時だった。
戦慄した。先程まで笑みを浮かべていたサイクロプスもその汚い面に似合わない真顔になってしまっている。
「すごいな……。ソルン、これだけ使っても全く魔力が尽きる気配がない」
え……? わ、私……?
「……あぁ、魔力がたくさんある奴らって、こんなこともできたんだな」
い、いやいや、こんな一瞬で、こんな量の氷を生成するなんて……。
「ぎぎゃぁああああああああああ!!」
無数の氷の棘がサイクロプスを貫いていく。
それから、サイクロプスの動きが完全に停止するまでの時間は僅かなものであった。
……。
結局、レグルは
『ねぇ、レグル……私の力も使って欲しかったな……』
「……! ……あ、あぁ……、だけどソルンの能力はいざという時の切り札だった」
『……! ま、また……しょんなこと言って……』
「……?」
…………私のこと、大切にしてくれてるんだ……。
あぁ……私、報われたんだ。
邪神といういわれのない風評被害を受けながら、ずっとずっと待ち続けて……。
そうして現れた人間がレグルだった。
魔力2しかないのに、神をも畏れないレグルだった。
つくづく思う。レグルが最初に選んでくれたのが私でよかった。
だって、こんな人、どんな神でも……悪魔であっても、絶対に魅かれてしまうから。
こんなレグルを……独占できた幸運に……感謝しなきゃな。
『ねぇ、レグル……この私を手に入れて、それで、これからどうするつもりなの?』
「ん……? あー、……ソルンのおかげで、実は一つ、新たな欲が出てきた。考えを整理したらまた伝える」
……私のおかげ?
私の存在がレグルの思考は変化させたんだ……、へへ……へへへ……。
それってもう実質、私はレグルの一部ってことだよね。
あぁ、これからレグルが何をしでかすのか……本当に楽しみ……楽しみすぎる。