魔力2では魔術師は厳しい。ヤミの邪神を魔力源にしてみたら 作:病みのジャシン
「せい! せい! せい!」
森の中、一人、無心に剣を振るうが、私は頭の中のもやもやを中々、断ち切れずにいた。
どうしてレグルくんは、
本人は「俺はソルン以外のことは考えられないので」などと言っていたが……。
「……」
いくらなんでも等級Dのレグルくんがあの五大属性神の一角で闇の邪神といわれるソルンを手に入れたいだなんて無謀がすぎるのだ。
だが、逆に言えば、そんな純心なところが等級Dでしかないレグルくんを気にかけてしまう理由なのかもしれないな。
……最初に彼を見かけたのはギルドでのことだったな。
◆
私はギルドに掲示されていた依頼内容を食い入るように見つめている魔術師の青年を見かけた。それがレグルくんだった。
レグルくんは等級Bの依頼内容を見ていた。
ひょっとすると同ランク帯の人なのかと思い、私は挨拶がてら声を掛けた。
「いえ、自分は等級Dなので受注できません」
聞くと、彼は魔力量が2しかない魔術師であり、等級はDであるとのことであった。
彼は基本的にソロで等級Dの依頼をほそぼそとこなし、日々の生活をつないでいると言う。
私は剣士であるから詳しくはなかったが、不思議に思った。
魔力量が2しかない魔術師が等級Dの依頼をこなすことができるものなのだろうか。
しかし、その時はそんな疑問を抱いた程度のことであった。
だが、ある朝、この森でのことだ。
私は、仕事前に短時間の鍛錬をしようと訪れた。
すると、その日は先客がいた。
どこかで見た顔だなと思い、先日、話をした等級Dの魔術師であると思い出した。
殊勝なことだと感心しつつ、私も一人で鍛錬をしたかったので、ひょっとすると、すぐにいなくなるかもしれないと、様子を見ることにした。
しかし、彼は中々に熱心で、同じ魔術、おそらく
そうして、一仕事をこなし、軽く休憩した後、暗くなる前にもう一度、森へ鍛錬に向かうことにした。
朝と全く同じ状況であった。
レグルくんが同じ魔術、おそらく
私は思わず声を掛けていた。なぜ魔力2なのに、そこまで頑張るのか? と。
彼は少し考えてから、こう答えた。
「死に方を自分で選びたいから……ですかね」
よく意味がわからなかったが、それから彼のことがどうにも気になってしまい、見かければ声をかけるようになっていた。
◆
「…………はぁ」
いかんいかん、集中できない。なぜ私はこんなことを考えているのだろうか。
などと、ため息をついた時であった。気配を感じた。
「やぁ……」
……!
現れたのはレグルくん……ではなく、見知らぬローブを羽織った男であった。
木々の影になっていてよく視えないが、その背後に、人ならざる存在の気配を感じる。
契約者……か。
「……えーと、なんだろうか?」
「等級Aのネフィア殿とお見受けする」
「そうだったら、何だ?」
「えーとー…………殺そうかな、と」
「っっ……!」
男は猛然と突っ込んでくる。
速いっ……。
男は、私の剣の間合いに入る直前で急停止し、手の平を突き出す。
大きな赤く染まった石の塊が発生し、私に向かってくる。
……だが!
「ふーん、これが等級Aかぁ……」
私は、血の結晶を拳で殴り破壊する。
「剣士なのに剣使わないんだー。その力……、君の上位存在の力だね」
「あぁ、私が契約しているのは高位の精霊だ」
私が契約したのは力の精霊アイゼノア、通称、アイちゃんだ。
『きゅーん』
アイちゃんが羽をぱたつかせながら、私の背後でふわふわしている。
女の子の姿をしているがこれでも立派な高位精霊。
こんなに小さくて可愛らしい見た目をしていながら、実はとっても力持ちなのだ。
その能力は『怪力の加護』。
剣士である私にぴったりの性能だ。
「で、突然、攻撃を仕掛けてくるとはどういう了見なのだろうか?」
「へへ……僕は戦うのが好きでして……」
……!
男がせせら笑った時、背後の上位存在の姿がはっきりと見えた。
血のように赤い長い髪がうねり、やせ細った身体の背中からは闘気が結晶化したような鋭利な刃が何本も生えている。
「まさか……貴様……『
「そうなんだ」
男は満面の笑みを浮かべると、今度は小さな血の塊を断続的に飛ばしてくる。
私は身を投げ出すようにして、なんとかそれを回避する。
それにしても……まさか、神の契約者だったとは。
しかも、悪名高い『血晶の武神バーゲス』。
戦闘に魅入られた人間を好み、次々に使い捨てにするという。
だが、私とて日々、剣の研鑚を重ねた高位精霊との契約者なのだ!
「アイちゃん、反撃いくよ! 力を借りるよ!」
『きゅーん!』
……力が全身に溢れてくる。
強く地面を蹴って、全力の一撃を奴に叩きこむために、その距離を一気に詰める。
「このような神に乗っ取られたような輩には! 遅れを取ら……」
「ふーん、この程度なんだ」
「っ……!? ……きゃぁああ!」
……後ろ……から? 硬いものが? 岩……?
なんとか……なんとか立ち上がらなければならない……のに、くっ……、力が入らない。
「高位精霊持ちのA級ってこんなものなのだな」
……!
「全然、おもんないからさっさと殺すか」
くっ……、これが神の契約者の力なのか……?
……何も……何もできなかった。
奴の言葉は、単なる煽りではなく、心の底からの落胆を感じた。
悔しい……、悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい……悔しい!!
「ははっ、こいつ泣いてる。泣くくらいならもっと強くなればいいのにな。……で、お前、誰?」
え……?
最後の問いは私ではない誰かに向けられているように感じた。
私は辛うじて首を上げて、状況を確認する。
そこに静かに佇んでいたのは知った顔の青年だった。
「…………」
男の問いに対して、レグルくんは特に答えることもなく、手の平を男に向けた。