魔力2では魔術師は厳しい。ヤミの邪神を魔力源にしてみたら 作:病みのジャシン
「……で、お前、誰?」
……ローブを羽織った男が尋ねてくる。
その質問、俺が聞きたいのだが。
この男が恐らくネフィアさんを襲撃したのだろうか?
「レグルくん、逃げて……! こいつは血晶の武神バーゲスの契約者だ……」
男の背後に、赤い髪の痩せこけた奴が視えるが、こいつが血晶の武神バーゲス、か。
確か……、血を求める人間を好む神だったはずだ。
その契約者は強者を求め、戦いの日々に身を投じるとかなんとか……。
つまり、まぁ……俺がもっとも嫌悪するタイプの神ってことだ。
「ん……? おぉ……、やる気なんだね」
「
「…………って、なんだい? その攻撃は?
……
身体が丈夫……というよりは奴に接触する直前に何か硬いものに防がれたような感じだ。
要するにこれが血晶か。
「レグルくん、相手は神の契約者だよ? それに今ので君の魔力は……。勝てるわけない。私のことはいいから逃げるのだ……!」
「……逃げませんよ」
勝てそうにないのなら、自爆するだけだ。
俺は俺自身の自爆魔術には全幅の信頼を寄せている。
ネフィアさんを巻き込まずに奴だけをみちずれにすることも理論上、可能だ。
「僕さぁ、弱い奴に興味ないから、逃げたいなら逃げてもいいよ?」
「……」
……だから、逃げないと言ってるんだが。
「うーん、弱い奴には興味ないんだけど、無視する奴はちょっとむかつくから、一応、殺すことにするね」
「っ……」
赤い石のような
奴はそれを飛ばしてくる。
数は、20程度……か。
「え……? 血晶弾の数に合わせて
「レグルくん……、なんでそんなに魔術を……?」
ネフィアさんは俺が魔術を連発できることに驚いているみたいだ。
流石にソルンのことに気づいただろうか。
「面白いよ。そこのA級とかいう剣士より面白いんじゃないかな!? じゃあさ、これはどうかな?」
また礫か。
だが、今度は俺の周囲を囲うように。
数は……やはり20程度。
やることは同じだ。
「へぇー、これも同じやり方で防ぐんだ。なかなかの精度……、のわっ!」
……防がれたか。
「僕の攻撃を防ぎながら、こちらに
やはり
……恐らく、奴には、血晶を操る能力がある。
その硬度は高く、攻撃にも防御にも応用できる。
使い勝手のいい能力だ。
だったら……。
「おぉー、すごい数の
奴が操れる血晶の自由度と正確性は相当に高いな。
ならば、
「
「……!
……俺にはそれが必要だったというだけだ。
世の中には、魔力量は多くないが物理的に強い魔物はいくらでもいる。
そういう相手と戦う時、一度に吸引する魔力量は節約しないといけない。
一方で単発の初歩魔術で勝つことは不可能であり、数を稼ぐ必要があった。
そのような条件下において、
吸引(魔力2)→魔術(魔力0)→吸引(魔力2)→魔術(魔力0)→吸引(魔力2)
という動作を可能な限り短時間に行う必要があった。
今はソルンのおかげで、吸引魔術を挟まなくていい分、かなり楽になったがな。
「ただ、残念だよ」
……。
「確かに君の魔術を繰り出す速度は尋常じゃないけどさ、しょせんは初歩魔術。その一つ一つの威力に上限がある以上、僕のような防衛性能を持つタイプは相性最悪だったね。どんなに数を繰り出しても僕の血晶の防御網は突破でき……なっ!?」
少しは驚いているようだな。
攻撃の間に、俺が奴に接近していることに。
やはりこいつが操れる血晶の総量には限りがあるようだな。
もしも無限に扱えるなら防衛時は血晶の壁を貼った方が効率的だし、これまで観察した限り、礫の数も20程度。
おかげで、こちらから攻撃を仕掛ければ、血晶は防衛に手一杯になり、容易に接近することができた。
「魔術師が……接近戦を……?」
そこに驚くのは俺も同意だ。
魔術師というのは基本的には距離を保ったままの戦闘を好むからな。
「距離を縮めてその威力を上げるつもりか……! だが無駄だよ……! どんな攻撃が来ようと全身を固めれば……!」
俺が腕を振りかぶったのを見て、血晶で全身を覆ったようだ。
思いの外、想定通りにことが運んでいる。
「…………な、なんだその腕は?」
どうやらこいつも俺の腕の違和感に気が付いたようだ。
「あ、暗黒の……腕……? なんなんだ……それ……?」
ソルンから闇の形状は変化させることができると教わった。
だから俺は『闇』を右腕に集約させた。
ソルンなら、もっと自在に扱えるのだろうが、今の俺にできるのはこの程度のこと。
闇の力の本質……、それは『闇に引きずり込むこと』。
俺はそれを対象の力を闇に引きずり込み、消失させることと理解した。
ゆえに……、相手の硬度など関係ない。
『はぁ……はぁ……はぁ……はぅん……はあぁん……————』
……ソルンの荒い息のようなものが聞こえるような気がしないでもないが、俺が力を使うと、ソルンも消耗するのだろうか。
「や、やめろぉおおおお。この力は僕の……僕が手に入れた力なんだよぉおおおおお」
「……知ったことか」
「へ……?」
俺はその腕を振り下ろした。